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第3節 接続会計制度の創設

1 接続会計の必要性

  現在、NTTの接続料金は、接続に関する会計制度が整備されていないため、  電気通信事業会計規則(役務別損益明細表等)及び料金算定要領(電気通信事  業法第31条の認可に関し具体的な料金算定方法を定めた通達)等のユーザー  料金の算定に係る基準を準用して算定する、あるいは、ユーザー料金の額をそ  のまま接続料金に適用する等して設定されている。   網使用料については、NTTの事業部制収支における地域通信事業部の費用  を基礎として社内の勘定科目の細目毎に配賦計算を行った結果に基づき算定さ  れている(長距離系NCC、地域系)あるいは、ユーザー料金と同様の課金が  行われている(携帯電話、PHS)等事業者の種別毎に決定されている。   また、接続に際して生じるNTT網の改造費用、接続装置及び付加に要する  費用については、NTTが所要額とその年割額を積算し、原則的にその全額  (事業者によっては半額)をNCCが負担している。   このように、接続に関する会計制度が整備されていないことが、事業者間に  おいて対立を生じ、ひいては接続協議が難航、長期化する一因となっている。  したがって、今後、接続会計制度の創設とこれに基づく料金の算定とが緊急の  課題となっている。

2 接続会計の基本的枠組み

(1)上記の要請を踏まえて、接続料金の適正な算定に資するため、接続に関す   る会計の基準を国が定め、特定事業者に対して、接続会計の整理を義務づけ   ることが適当である。 (2)接続会計の基本的な枠組みとしては以下の2つのタイプが考えられる。   1.特定事業者の収益・費用の総額から、他事業者との接続に関わる部分を    抽出した接続収支を示す方式。     この場合、接続料金は、不可欠設備の管理運営に関わる要素とユーザー    への営業活動等に関わる要素とが一体となった特定事業者の費用に基づき    算定される。   2.特定事業者の会計を、不可欠設備を管理運営する部門(不可欠設備管理    部門)とその設備を利用してユーザーにサービス提供を行う営業部門とに    区分し、不可欠設備管理部門が自社の営業部門と他事業者とに対して不可    欠設備を同一条件(料金)で提供する方式。     この場合、不可欠設備管理部門の収支が接続収支となり、不可欠設備の    管理運営に要する費用のみから接続料金を算定することが可能となるとと    もに、不可欠設備の利用に係る特定事業者自身と他事業者の支払いとが比    較可能な形で明らかになる。 (3)上記2.の枠組みは1.と比較して、以下のような利点を持つと考えられ   るので、「不可欠設備管理収支型」の枠組みを採用することが適当である。   1.網使用料が不可欠設備管理部門の費用を基に算定されることにより、会    計結果と接続料金算定の関連が明確になる。   2.特定事業者が、不可欠設備の利用に関して、他事業者を自社の営業部門    と同様に扱うことが会計上で明確となる。   3.設備に着目した収支計算であるので、設備毎に細分化(アンバンドル)    された料金算定のための費用集計・区分が容易である。 (4)接続会計は、不可欠設備の使用料(網使用料)に関わる収支を対象とする   ほか、ネットワークの改造や接続装置に関わる収支も対象とし、その収支の   状況を把握することが適当である。

3 収益・費用計上の基準

  不可欠設備管理部門の収益としては、自社の営業部門及び他事業者からの接  続料金収入(上記2(4)に示した各事項に係る収入の額)を計上する。   また、同部門の費用としては、不可欠設備の維持・管理に係る償却・除却費、  保守費等の費用、接続に関連した他部門との共通費・間接費及び資本コストを  計上する。なお、保守費や共通費・間接費等の費用の計上に際しては、伝統的  な費用配賦方式を見直し、当該部門の業務活動量を的確に表す尺度(コスト・  ドライバ)に基づき費用帰属を行うABC(アクティビティ・ベースト・コス  ティング)手法などを適宜導入する。これにより、接続との関連性を反映した  費用帰属とそのアンバンドルとを可能にする。

4 接続会計における設備の区分

  不可欠設備管理部門の費用は、アンバンドルされた接続料金算定の根拠デー  タとするため、交換機、伝送路等の設備単位(NTT電話網で十数項目程度)  に集計・区分するものとする。その際、他事業者のサービス提供に必要でない  設備の費用が接続料金原価に含まれることのないよう、設備の種類・用途に関  して厳密な区分を決定する。

5 接続会計報告書の公表等

(1)特定事業者に、毎年度、接続会計に関する報告書を郵政大臣に提出すると   ともに公表することを義務づける。提出する報告書については、接続会計の   ルールに基づいて適正に作成された旨の公認会計士による計算結果の証明を   付することとする。 (2)会計部門設定の詳細、費用帰属の具体的内容、会計報告や料金算定に必要   な勘定科目、開示内容等については、郵政省において、事業者、有識者等の   参加や意見も得て検討を行い、接続会計が平成10年度を目途に実施できる   よう準備することとする。   (注)ABC(アクティビティ・ベースト・コスティング)手法      企業等における諸活動(アクティビティ)から発生するコストを個々     に集計し、この活動量を計量的に表現するコスト・ドライバに基づいて     製品やサービスなどの原価計算対象に賦課する手法。当初は製造間接費     の正確な帰属計算を目的として提唱されたが、今日ではその適用領域が     企業内の様々な業務に拡大している。

第4節 接続料金の算定

1 接続料金算定の考え方

(1)接続料金の算定については、NTTを例にとればユーザー料金と同様の考   え方に立って総括原価方式に準拠して行われている。この方法については、   他事業者から、営業費や試験研究費をはじめ接続に関連のない費用も負担さ   せられているのではないか、接続料金原価への配賦が恣意的ではないか、と   いった意見が出されている。また、細分化(アンバンドル)に関する基準が   未整備であるという問題も指摘されている。 (2)適正な接続料金の算定のためには、新たに創設する接続会計との連携を前   提に、郵政大臣が接続料金の算定要領を定め、特定事業者に対しこれに従っ   た料金算定を義務づけることが適当である。 (3)具体的には、接続料金原価は、接続会計において設備の区分ごとに集計・   区分した不可欠設備管理部門の費用を基礎として算定しなければならないこ   ととする。これにより、営業費は接続に関連がないため原則的に接続料金原   価から除外される。また、試験研究費についても、不可欠設備の管理運営に   要することが明確にされたもののみが接続料金原価に算入され、それ以外の   部分は原価から除外される。    さらに、保守費や不可欠設備管理部門と他部門との間の共通費・間接費等   の費用も、接続会計におけるABC手法の導入などにより、「接続との関連   性」を厳密に反映して各設備の区分毎に適正に帰属させることとする。 (4)これらにより、接続に関連して発生した費用のみを基礎とするアンバンド   ルされた接続料金の算定が可能となる。この点で、本ルールは長期増分費用   方式と同様の視点に基づくアプローチであると考えられる。    また、郵政大臣は料金表・約款の認可に当たり、特定事業者の不可欠設備   運営の著しい不経済性により生じた費用が接続料金原価に算入されることの   ないよう制度の適正な運用を行うべきであり、その旨を接続料金算定要領で   明らかにすることが適当である。 (5)なお、長期増分費用方式については、接続ルールの見直し時期までに、郵   政省において、事業者、有識者の参加や意見も得て、外国モデルの解析、設   備に関するフォワード・ルッキング(将来指向的)なコスト・データの収集、   技術モデルの構築等の作業を行うこととする。その上で、長期増分費用方式   の扱いについて、ルール見直し時に決定することが適当である。

2 料金体系

  料金体系については、他事業者が設備のうちの接続に必要な部分又は機能だ  けを利用し、その費用のみを負担すれば足りるよう、設備の構成要素や機能を  アンバンドルしたものとする。   また、アンバンドルされた設備・機能の料金は上記第3節のとおり会計上区  分されたコスト・データを基礎に、回線数ごと、通話回数ごと、通話時間ごと  等の費用発生の態様を考慮し、適正に算定されなければならないこととする。

3 接続装置の使用料等の算定方式

(1)接続装置の費用については、第7節において述べるように、基本的な接続   機能を提供するためのものについては、原則として網使用料として回収する   こととする。 (2)他事業者から網使用料とは別個に費用を回収することとなる接続装置等の   使用料については、現在のNTTの場合、内部的に計算された創設費(機器   購入費に取付費及び諸掛費を加えた額)及び全社平均比率を用いた保守・営   業費等を基にした費用等から成る年間使用料を算定する方式に拠っている。    しかし、この方式には、機器購入費等創設費の価額に関する正規の会計情   報がない、創設費に乗じる保守・営業費比率の根拠が不明確である、耐用年   数経過後も減価償却費に対応する年経費を支払っている等の問題が指摘され   ている。 (3)したがって、現在の方式を見直し、原則として当該装置に関する償却・除   却費、保守費等の会計数値を個別的に積み上げる算定方式を適用することが   適当である。    なお、費用の個別把握が著しく困難な場合には、現行方式を踏襲した方法   も認められるが、その際にも、創設費に乗じる保守費等の費用の比率は全社   平均値ではなく接続会計により算出された値を用い、また、耐用年数経過後   は減価償却費に対応する年経費を控除する等の改善を図ることが適当である。

4 その他

  制度の運用に当たっては、不可欠設備管理部門における資本コストの事前・  事後の比較を行うことが重要である。特定事業者の不可欠設備運営の効率化や  稼働率の向上によって同設備管理部門に所定の資本コストを上回る利益が生じ  た場合には、営業部門と他事業者とに同一の条件で還元することが適当である。  その取扱いの具体的内容を資本コスト水準の設定方法とともに接続料金の算定  要領に定めることとする。   (注)長期増分費用方式      接続によるトラヒックの増加により追加的に必要となる設備の増加額     等の将来的かつ経済的な費用(長期増分費用)を計算し、これを基礎と     して接続料金を定める方式。

第5節 技術的条件

1 技術的条件についての基本的な考え方

  現在の事業者間協議による相互接続においては、必ずしもすべての技術的条  件が明らかにされていないこと等から、相互接続が円滑に進展していない事例  が生じている。   他事業者、参入を計画する者が自ら接続の技術的な検討を行うことを容易に  するとともに、接続に要する期間を短縮するためには、接続において必要とな  る技術的条件が明確にされ、公開されることが必要である。   このため、接続条件の透明性を確保し、接続を推進する観点から、特定事業  者に対し技術的条件を約款に規定することを義務づけることが適当である。

2 技術的条件として規定すべき範囲

(1)接続に必要な技術的条件を規定するにあたっては、技術的条件全体につい   て他事業者等の意見を反映させること及び特定事業者による一方的な内容の   決定・変更を防止することを可能とする必要がある。この点を踏まえ、透明   性、公平性、迅速性の確保の観点から、接続に必要となる技術的条件はすべ   て約款に規定し明確にする必要がある。 (2)具体的には、接続を実現するために必要な以下の項目について、接続の態   様毎に接続に必要な技術的条件をすべて規定することが適当である。   1.接続形態   2.接続対象範囲   3.番号方式   4.網構成   5.信号方式   6.接続シーケンス   7.課金方式   8.試験方式   9.物理的・電気的条件   10.その他接続に必要な事項 (3)なお、すべての技術的条件の変更・追加について約款の改正が必要となる   ことから、約款の改正に際しての迅速性の確保が必要である。

第6節 網構成設備・機能の細分化(アンバンドル)

1 アンバンドルについての考え方

  アンバンドルとは、他事業者が特定事業者の網構成設備や機能のうち、必要  なもののみを細分化して使用できるようにすることである。これは他事業者が  多様な接続を実現するために必要なものであることから、基本的には他事業者  の要望に基づいて行われるべきである。また、競争の促進及び相互接続の推進  の観点から、積極的にこれを推進すべきである。   このため、特定事業者は、他事業者が要望する網構成設備及び機能について、  技術的に可能な場合にはアンバンドルして提供しなければならないこととする。  これにより、技術やサービスの進展に対応して、他事業者の要望に応じて、多  様なアンバンドルが進んでいくことになると考えられる。   なお、特定事業者が技術的に実現不可能であることを一定期間内に示せない  場合には、技術的に可能とみなすことが適当である。

2 アンバンドルの方法

  アンバンドルの義務化により、今後多様なアンバンドルが進展していくと考  えられるが、アンバンドルを円滑に推進するためには、現時点において他事業  者がサービス提供上必要であり、また、これを利用できない場合にサービスの  提供が阻害されるおそれがあると判断されるものについては、当初からアンバ  ンドルとして規定し、特定事業者に提供を義務づけるのが適当である。この場  合、接続の分界点において技術的に明確に区分することが可能である網構成設  備に着目してアンバンドルすることが適当である。   以上を踏まえ、特定事業者に対し、以下の網構成設備について、当面、最低  限のものとして、アンバンドルして提供することを義務づけることが適当であ  る。   なお、技術やサービスの進展に応じ、最低限のものとしてアンバンドルする  ことが適当であると認められるものは、これを追加するものとする。  1.加入者側終端装置(加入者側に設置される加入者回線の終端装置)  2.加入者回線(加入者交換機と加入者側終端装置間の伝送路)  3.加入者交換機  4.中継交換機  5.市内伝送設備(加入者交換機同士を接続する伝送設備)  6.中継伝送設備(加入者交換機と中継交換機を接続する伝送設備)  7.信号網







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