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第7節 接続関連費用の負担の在り方

1 接続関連費用の負担の現状

  第I章で述べたとおり、NTTのネットワークは、必ずしも接続を前提とし  た構造になっていないため、他事業者から接続の要望がある場合には、当該接  続のためにNTTのネットワークを改造する必要が生じ、このための費用が発  生している。   これらの費用は、新サービスを提供する事業者や事業基盤が確立していない  新規参入事業者にとっては大きな負担となり得るものであり、この負担の在り  方について合理的なルールを策定することが求められている。

2 接続関連費用の負担の考え方

(1)ネットワークの改造費用    接続が確保されることが、競争を促進し、利用者利便の増進を通じて公共   の利益に適うとの観点から、基本的な接続機能を提供するために発生するネ   ットワークの改造費用については、事業者間接続に固有の費用としてではな   く、ネットワークが本来有すべき機能を備えるための費用とみるべきである。    したがって、基本的な接続機能を提供するために発生するネットワークの   改造費用については、改造を施した設備に一般的に発生する費用として扱う   ことが適当である。    この結果、基本的な接続機能を提供するために発生するネットワークの改   造費用については、特定事業者の営業部門等及び他事業者から接続料金とい   う形で公平に回収されることになる。    基本的な接続機能を提供するために発生するネットワークの改造費用には、   少なくとも、   1.第6節において当面最低限のアンバンドルと考えられるものとして列挙    されている網構成設備ごとにアンバンドルするためのもの   2.上記1.にいう網構成設備の分界点において他事業者が共通に利用可能    な接続インタフェースを提供するためのもの   が該当する。 (2)接続装置    接続装置についても、上記(1)と同様に、基本的な接続機能を提供する   ためのものについては、事業者間接続に固有の費用としてではなく、ネット   ワークが本来有すべき機能を備えるための費用として扱うこととし、特定事   業者の営業部門等及び他事業者から接続料金という形で公平に回収すべきで   ある。具体的には、少なくとも、第6節において当面最低限のアンバンドル   と考えられるものとして列挙されているネットワークの構成要素の分界点に   おいて他事業者が共通に利用可能な接続インタフェースを提供するためのも   のが該当する。 (3)接続用伝送路    接続用伝送路の費用については、原則として、他事業者が負担すべきであ   る。    ただし、他事業者がCATV電話のように加入者系事業者である場合には、   接続用伝送路は双方の事業者が自らのサービスを提供するために相互に利用   するものとみなすことができることから、特定事業者と他事業者のどちらが   実際に設置するかに係わりなく、次のいずれかの方法により負担する。   1.双方の事業者がトラフィックの量に応じて負担する。   2.双方のネットワークの合理的な中間地点に接続ポイントを設定し、当該    接続ポイントまでの伝送路の費用はそれぞれが負担する。 (4)具体的な適用    1.ZCに設置されるIGS、2.PHS接続装置のうちISDNと同様   のインタフェースに係る部分及び3.GC接続のための網改造費については、   「基本的な接続機能」に含まれると考えられる。    その他の接続関連費用についても、ネットワークが本来有すべき機能とみ   なし得るのか等、その性格に応じて個別に判断されるべきである。    なお、接続協定に基づき既に行われた網改造や既に設置された設備につい   ては、特定事業者がこれを前提として投資を行ってきていることから、経過   的な措置を考慮する必要がある。

3 その他

  第I章で述べたように、米国や英国ではネットワークの改造費用の負担は大  きな問題となっていない模様であることから、今後、円滑な相互接続を確保す  るため我が国におけるネットワークの在り方に関して引き続き検討を行ってい  くことが求められる。

第8節 番号ポータビリティ

1 番号ポータビリティの確保の意義

  特定事業者の加入者は、番号変更に伴う周知等のコストを考慮し、事業者を  変更する際に番号が変わる場合には、事業者を変更しない可能性があることか  ら、特定事業者が競争上の優位性を保持し続けることとなる。   したがって、競争の促進及び利用者利便の増進の観点から、特定事業者の利  用者が他事業者に加入を変更する場合に、番号ポータビリティが確保されるこ  とが求められる。

2 番号ポータビリティの具体的な内容

 (1)番号ポータビリティを確保すべき番号については、   1.一般加入電話番号   2.ISDN番号   3.着信課金サービス用番号   とすべきである。 (2)上記(1)1.及び2.の番号については、現時点においては、住所変更   の場合には番号が変わることが一般的であることから、同一住所において事   業者を変更する場合に限るべきである。 (3)CATV電話サービスや地域系NCCの双方向の電話サービスの開始が予   定されていることから、番号ポータビリティの早急な導入が求められている   現状を考慮し、郵政省において、関係事業者等の参加を得て、今後2年間を   目途に、具体的な実現方式、費用負担等について検討し、検討終了後の2年   以内(平成12年度目途)のできるだけ早い時期に番号ポータビリティの導   入を行うこととする。 (4)具体的な実現方式については、次の要件を満たすものとすべきである。   1.番号ポータビリティの導入に際して、既存の網サービス、機能、能力を    従来どおり提供すること。   2.番号資源の効率的利用を図ること。   3.番号ポータビリティの導入に際して、事業者が提供するサービス品質及    びネットワークの信頼性について、不合理な低下をきたさないこと。   4.番号ポータビリティの提供を受けている利用者とそれ以外の利用者との    間で、サービス品質、ネットワークの信頼性について、不合理な差が生じ    ないこと。

第9節 網機能提供計画

1 網機能提供計画の制度化

(1)接続を前提としない網構築の問題点    他事業者との接続を行う際に、網改造のため多大の時間・費用を要するこ   となどから円滑な接続が妨げられ、公正有効競争条件が確保されないおそれ   がある。また、接続を前提とする場合でも、他事業者の意見が反映されない   ときには、円滑な接続が妨げられるおそれがある。 (2)網機能提供計画の意義    不可欠設備を有する特定事業者が存在する電気通信市場においては、他事   業者は当該特定事業者の網機能を使ってサービスを提供せざるを得ない。    このような状況の中で、サービス開発に関する特定事業者と他事業者の公   正有効競争条件を確保し、円滑な接続を推進するためには、特定事業者に対   し、不可欠設備に関する網機能の追加・変更に関する情報を記載した網機能   提供計画の公表を義務づけることが適当である。

2 網機能提供計画の記載事項

(1)網機能提供計画の記載事項及び公表時期    網機能提供計画には、他事業者が接続可能性を検討できる程度の詳細な情   報を記載する必要がある。また、公表時期については、網機能の詳細仕様等   がある程度固まる時期及び網機能提供計画の公表を受けて関係者が検討に要   する期間を考慮すると、特定事業者は、網改造着手の遅くとも半年前までに、   当該詳細な情報を網機能提供計画に記載する必要がある。 (2)負担すべき費用の扱い    他事業者の接続申込みの判断には、負担すべき費用の水準は極めて重要な   要因であることから、特定事業者は、網機能提供計画公表の段階で、他事業   者が負担すべき費用について、その算定の透明性を高めるために算定方式・   費用項目を示すとともに、他事業者の接続申込みの判断の目安となるよう、   概算費用を可能な限り詳細に示すよう努めるべきである。 (3)自己使用の網機能の扱い    上記(1)の考え方に従い、網機能提供計画を公表する場合において、特   定事業者の自己使用の網機能(特定事業者が自らエンドユーザー向けに提供   しているか又は提供を予定しているサービスに用いる機能)については、企   業秘密事項であり公表対象になじまないとの考え方もある。    しかし、公正有効競争条件の確保、円滑な接続の推進という網機能提供計   画の趣旨にかんがみ、特定事業者と他事業者との網機能利用の同等性の検証   を可能とするとともに、網機能公表に当たっての特定事業者の恣意を排除す   るため、特定事業者の網機能については、可能な限りオープンにされ、基本   的に公表対象とすべきである。    したがって、特定事業者は、不可欠設備に関する自己使用の網機能につい   ては、他事業者が当該網機能を用いたサービスをユーザーに提供することや   他事業者のユーザーが特定事業者から当該網機能を用いたサービスの提供を   受けることが見込まれない場合を除き、網機能提供計画の策定等の段階にお   いて、その概要等を公表するとともに、その後の他事業者の意見反映手続に   おいて、他事業者からさらに詳細な情報の開示要求があった自己使用の網機   能については、当該他事業者に詳細な情報を開示することが適当である。    なお、制度の具体的運用においては、特定事業者のサービス開発インセン   ティブが維持され、特定事業者と他事業者との間で健全なサービス開発競争   が行われるよう配慮する必要がある。    また、網機能の具体的な公表範囲については、上記の考え方に沿って、郵   政省において関係事業者の意見を踏まえ、接続ルールが施行されるまでに決   定することとする。 (4)他事業者要望の網機能の扱い    特定事業者が他事業者の要望及び費用負担に基づき開発する網機能につい   ては、当該他事業者の許諾が得られた場合に公表するものとすることが適当   である。    ただし、不可欠設備の網機能については、基本的にどの事業者も利用でき   るようにすることが、円滑な接続の推進や電気通信市場の発展にとって望ま   しいと考えられることから、当該他事業者の許諾が得られず公表できなかっ   たものについても、できるだけ早期に、適切な対価を支払うことなどにより   利用できるような仕組みを検討する必要がある。

3 網機能の細分化(アンバンドル)

  特定事業者に網機能提供計画策定を義務づけても、当該計画にアンバンドル  に関する記載がないと、どのような接続を行うかを他事業者が検討するのに支  障を来す。したがって、網機能提供計画において、アンバンドルの有無及び程  度に関する情報を公表することが必要である。具体的な方法としては、新しい  技術やサービスの登場を契機に網機能提供計画への網機能の記載が行われるの  で、特定事業者に対し、まず最低限基本的な伝送・交換に係る機能等について  アンバンドルを義務づける。   その上で、それ以外は他事業者が特定事業者と同等の条件でサービスを提供  できるレベルにまでアンバンドルすることを基本的考え方として、他事業者の  意見反映手続の過程でできるだけアンバンドルを促進する。

4 網機能提供計画の策定手続等

(1)他事業者の意見反映及び国の関与    特定事業者と他事業者の公正有効競争条件を確保し、円滑な接続を推進す   る観点から、網機能提供計画に他事業者の意見を反映させるための手続を整   え、さらに他事業者の意見反映を担保するための国による関与の手続を整え   る必要がある。    具体的な方法としては、網機能提供計画に他事業者の意見を反映させるた   め、特定事業者に対し、説明会の開催、他事業者の意見に対する回答(他事   業者からの要求による網機能に関するさらに詳細な情報の開示も含む。)及   び他事業者からの意見に関する処理状況についての郵政大臣への報告を義務   づけることが適当である。また、網機能提供計画の内容に関して、他事業者   の意見が反映されることを担保するため、網機能提供計画への他事業者の意   見反映手続において、特定事業者と他事業者との協議が不調に終わった場合、   郵政大臣が勧告等の形で関与すべきである。 (2)網機能提供計画の公表方法    網機能提供計画については、関心を有する者がその内容を知ることができ   るとともに、さらに詳細な情報を希望する者にはこれを提供することが必要   であるため、その概要を官報において公表するとともに、特定事業者の営業   所等において全体を閲覧に供することが適当である。

第10節 反競争的行為の防止

1 現行制度

  現在、電気通信事業法第36条においては、「第一種電気通信事業者が接続  の提供について特定の電気通信事業者に対し不当な差別的取扱いを行っている  ため、公共の利益が著しく阻害されるおそれがあると認めるとき」に業務改善  命令が可能とされているが、この要件においては、   1.接続の意図的な遅延   2.接続に不要な書類の提出要求  といった円滑な接続を阻害する行為に対して的確に対応することは困難な状況  にある。

2 業務改善命令の要件及び手続の見直し

  上記1の状況を踏まえ、現行業務改善命令要件を抜本的に見直し、円滑な接  続を阻害する反競争的な行為に対し、的確に対応することを可能とする。   なお、この措置は、特定事業者のほか他事業者の接続についても適用するこ  ととする。   これと併せて、苦情申告窓口の設置、業務改善命令の具体的な運用基準の作  成等業務改善命令の決定手続の整備を行うべきである。

第V章 その他

1 多数事業者間接続の取扱い

  今後、多数の事業者が複雑に接続されていく状況において、接続協定の締結  が円滑に行われることが、競争の促進及び利用者利便の増進の観点から必要で  あるが、第III章において述べた第一種電気通信事業者に対する接続の義務  化、接続協定の公開、料金表・約款手続の利用及び裁定手続の活用の容易化等  によって、多数事業者間の接続の円滑化が図られる。   さらに、多数事業者間の接続が今後ますます増加することに鑑み、事業者統  一の標準協定等により多数事業者間接続に対応する仕組みについて、郵政省に  おいてワーキング・グループ等を設置し、事業者等の参加を得て、検討するこ  ととする。

2 相互接続と業務委託の関係

  現在業務委託されているもののうち、恒久的にネットワークを物理的に連結  する形態のものについては、接続と同様の問題が生じるおそれがあるため、接  続ルールの準用を可能とすべきである。  具体的には、国際電気通信事業者の国内伝送業務が該当する。

3 赤字負担の在り方

  特定事業者のサービスの赤字については、原則として他事業者に負担を求め  ることは認めるべきではなく、仮に、赤字負担に一定の合理性がある場合にお  いても、負担の水準については、赤字解消に向けて経営改善努力を行うことを  考慮して決定されるべきである。   これに関連して、地域における競争の進展状況を踏まえ、ユニバーサルサー  ビス確保のための方策について検討する必要がある。   このため、郵政省において、マルチメディア化の進展も踏まえつつ、ユニバ  ーサルサービスの範囲及びそのコスト等について、今後2年を目途に検討を行  うことが適当である。

4 実装可能な技術仕様の策定・公開

  今後より一層円滑な相互接続を推進していくためには、国際的な動向も踏ま  え、事業者、メーカー等の関係者が協議を行い、実装可能な技術仕様(それに  より製品化することが可能となるような詳細な技術仕様)を策定、公開し、円  滑な利用を可能とする体制を確立すべきである。

5 接続ルールの見直し

  接続ルールについては、定期的に見直すこととし、次回の見直し時期につい  ては、今般の接続ルールによる会計データに基づく接続料金の算定が平成11  年度に行われる見込みであることから、平成12年度を目途に行うことが適当  である。   なお、早急に見直すべき問題が生じた場合には、次回の見直し時期を待たず  に、個別に対応していく必要がある。

6 新ルールへの移行までの経過措置

  事業者間において、可能な限り今般のルールの趣旨を踏まえた接続協定を締  結すること、及び接続協定の認可、接続命令・裁定の基準として今般のルール  を可能な限り適用することにより、現行制度下において実施可能なものについ  ては早急な実現を図るべきである。

7 接続ルールの策定・執行手続

  接続ルールの策定・執行に関する行政における透明性及びデュープロセスの  確保を図るため、以下のような措置をとることが適当である。  1.接続ルールの見直し、接続約款の認可など接続ルールの策定・執行に関し   て措置を講じる場合には、原則として、審議会に諮問すべきこととすること  2.審議会においては、関係者に対して意見を述べる機会を与えるとともに、   当該意見をどのように取り扱ったかを明らかにすること  3.審議会の会議については、審議過程の透明性を確保するため、原則として、   議事内容を明らかにすること







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