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発表日  : 12月22日(月)

タイトル : 12/22付:国際公専公接続の自由化に関する方針の決定





 国際特別第二種電気通信事業者が国際専用線の両端に公衆網を接続すること
(いわゆる「国際公専公」接続)による基本サービス(注)の提供の自由化につ
いては、本年7月8日付け報道資料「国際専用線の利用自由化(いわゆる「国際
公専公」接続の自由化)に関する意見の受付について」において、内外の意見の
提出を求めたところです。今般、郵政省では提出された意見、諸外国の状況等を
踏まえ、別紙2のとおり国際公専公接続の自由化に関する方針を決定しました。
(概要については別紙1参照)
 なお、国際公専公接続による基本サービスの一形態である国際インターネット
電話サービスについては、本年8月26日付け報道資料「国際インターネット電
話サービス提供の自由化に関する方針の決定」によりすでに自由化しているとこ
ろです。

  (注) ここでいう「基本サービス」とは、国際電話等の国際電気通信役務
     を提供する第一種電気通信事業者が国際特別第二種電気通信事業者と
     の間で締結している国際専用線の利用に関する契約の中で、当該国際
     特別第二種電気通信事業者が国際専用線と公衆網とを接続して提供す
     ることが禁止されてきたサービスであり、基本音声サービス(例.通
     常の電話)などがある。


       連絡先:電気通信局電気通信事業部データ通信課
              (担当:玉田課長補佐、墳崎企業通信係長)
                   電話:03−3504−4836
           同 業務課(別紙2中【国際第一種電気通信事業者に関
              する統一計算料金制度の見直し等】の部分のみ)
              (担当:副島課長補佐、乾国際通信係長)
                   電話:03−3504−4832



別紙1
      国際公専公接続の自由化に関する方針の概要

【国際公専公接続の自由化に当たっての措置】
○ 国際公専公接続による基本サービスを提供する国際特二事業者について
 は、現行の計算料金制度、比例リターンルールのいずれも義務付けない。
                                  
○ 公正な競争を阻害する片方向バイパス等の行為の事後的是正     
  電気通信事業法(以下「法」という。)第92条第1項に基づく定期的
 な通信量等・収入報告を求めるとともに、必要な場合には追加的報告を求
 める。事後的に是正すべき行為が見られる場合には是正すべき等の旨指導
 し、原則として指導した旨を公表する。               
  なお、法第37条の要件に該当する場合には、業務改善命令を発動する
 場合もある。                           

【現行の計算料金制度・比例リターンルールを義務付けない理由】

  計算料金制度・比例リターンルールの意義

 ・ 国際通信は両国側事業者間での共同事業であるため、国際伝送路等の互い
  に必要な設備を共通に利用している一方、利用者料金の収納は発信側事業者
  が行っていることから、着信側事業者の着信取扱いコストを補填するため、
  両国側事業者の収入をその取扱量等に応じて精算することが必要。

 ・ 現在、国際一種事業者と外国事業者との間の精算については、原則として
  「統一計算料金方式」を採用。その3原則は、
   
[1]計算料金(両国事業者間の精算レート)は、複数の事業者間で同
  一にする(同一計算料金)                  
[2]計算料金の決済に当たって、その分収を均等にする(均等分収)
[3]取扱い通信量については、相手側複数事業者からの着信通信量の
  シェアに応じて発信通信量の配分を行う(比例リターン)    
 ・ 統一計算料金方式の3原則は、国際通信が基本的に独占体制であるという
  前提の下で、外国独占事業者が我が国の複数の事業者に対して「競り合わせ」
  を行うことにより、自らにとって最も有利な精算条件を我が国の複数の事業
  者に押しつけることにより、我が国の事業者全体として不利益を被ったり、
  差別的な取扱いを受けることを防ぐために採用されてきた措置。

  国際公専公接続により国際電話等のサービスを提供する国際特二事業者
  には、計算料金制度や比例リターンルールの適用を義務付けない

 ・ WTO基本電気通信合意の発効により世界的に競争環境が構築されること
  を前提とし、国際公専公接続の自由化により国際通信分野での競争の一層の
  促進を図る観点から、これら国際特二事業者と外国事業者との間の提携条件
  については基本的に当事者間の自由意思に任せることとし、国際公専公接続
  により国際電話等のサービスを提供する国際特二事業者については、現行の
  計算料金制度や比例リターンルールの適用を義務付けない。

【公正な競争を阻害する片方向バイパス等の行為の事後的是正】

  定期的な通信量等・収入報告と追加的報告、是正措置
  ・ 事後的に是正すべき行為(例.公正な競争を阻害する片方向バイパス
   (下図参照))の有無をチェックする等の観点から、国際公専公接続によ
   り国際電話等の市場に参入する国際特二事業者等の二種事業者から、定期
   的な通信量等、収入の報告を求める。
    公正な競争を阻害する片方向バイパスの着信を受けていることが疑われ
   る場合等、必要がある場合には、追加的報告を求めた上で、当該行為が明
   らかに認められる場合にはこれを是正すべき等の旨文書で指導。また指導
   した旨を原則として公表。

     【公正な競争を阻害する片方向バイパスのイメージ】
公正な競争を阻害する片方向バイパスのイメージ図

【諸外国の制度】
○ 米国
  「外国事業者の米国市場参入に関するFCC規則」(本年11月25日採択)
 及び「国際精算料金のベンチマークに関するFCC規則」(本年8月7日採択)
 において、国際公専公接続による基本音声サービス提供事業者に対する以下の
 事前及び事後の規制がある。
  なお、これらの事前・事後規制のほか、外国関連事業者に対しては市場支配
 力を有する外国事業者による反競争的行為防止のための規制(外国の関連事業
 者との間の会計及び設備所有の分離、外国の関連会社から調達したネットワー
 ク設備・サービスについての年4回の報告義務等)がある。

・ 事前措置(参入規制)

 (1)同等性テスト(米国と同等の国際専用線の再販の機会を米国事業者に認
   めている国に対してのみ再販サービスの提供を認めること)の適用を、W
   TO加盟国に対しては廃止(WTO非加盟国に対しては引き続き適用)

 (2)ベンチマーク・ルールを適用(米国と相手国との間で米国が精算料金を
   支払う対象となる通信量の50%以上の精算レートがベンチマーク(FC
   Cが定める上限精算料金:日本の場合は1分あたり15セント)以下の水
   準でなければ、認証を受けられない。ただし、これを満たさない場合でも、
   同等性テストを満たす場合には片方向バイパスのおそれがないものとして、
   サービス提供を認める。)

・ 事後措置

  定期的に求める通信量報告(年度報告及び四半期報告)をチェックした結果、
 「米国発の通信量の米国着の通信量に対する比率が、2四半期連続で10%以
 上増加した場合」には、片方向バイパスによる競争の歪曲が生じていることを
 推定し、さらに調査の上、認証取消等の措置をとる場合がある。(10%とい
 う数値は、事業者の意見を参考に設定された模様)

○ 英国
  国際公専公接続による基本音声サービス提供事業者に対して現行の計算料金
 制度や比例リターンルールは事前に義務付けないものの、例えば独占事業者に
 よる片方向バイパスに対応するため、事後的措置として以下を導入する方向で
 検討中。

 (1)免許の際に、全ての国との通信に対して比例リターンルールを義務付け
   ることを留保。

 (2)四半期毎の通信量報告に基づき、著しい片方向バイパスが認められる場
   合には留保を解除し、比例リターンルールを義務づけ。

 (3)「著しい片方向バイパス」についての具体的な判断基準は設けられてお
   らず、ケース・バイ・ケースで反競争的な行為に関する調査を行う。



別紙2

           国際公専公接続の自由化に関する方針

               − 目 次 −


【国際公専公接続の自由化の目的・背景】

 1 国際専用線の利用の現状
 2 国際公専公接続の自由化の目的・背景
 3 諸外国の動向

【国際公専公接続の自由化に当たっての措置】

 1 現行の計算料金制度、比例リターンルールの適用は義務付けない
 2 公正な競争を阻害する片方向バイパス等の行為の事後的是正
 3 第三国中継による通信(ブレークアウト)に制限は課さない

【国際公専公接続の自由化の意義】

 1 国際電話等の市場への本格的な新規参入の促進と競争の一層の活発化
 2 国際電話等の料金の低廉化・サービスの多様化
 3 国際電話等に対する需要の拡大と国際通信市場の一層の発展
 4 WTO基本電気通信合意及び規制緩和推進計画の履行

【国際第一種電気通信事業者に関する統一計算料金制度の見直し等】



【国際公専公接続の自由化の目的・背景】

 1 国際専用線の利用の現状

  (1)国際特二事業者が国際専用線を利用して国際通信を行おうとする場合、
    国際一種事業者との間で、国際専用線の利用に関する約款外役務提供契
    約(以下「約款外契約」という。電気通信事業法第39条の3第2項)
    を締結し、当該国際一種事業者において郵政大臣の認可を受けなければ
    ならないこととされている。

       国際特二事業者− 国際特別第二種電気通信事業者
       国際一種事業者− ここでは国際電話等の国際電気通信役務を提
               供する第一種電気通信事業者

  (2)国際公専公接続とは、国際専用線の両端を公衆網と接続すること
    を言う。
     国際特二事業者がこの国際公専公接続により提供するサービスのうち、
    いわゆるVAN(付加価値)サービスについては、約款外契約上その提
    供が認められている。

  (3)一方、基本音声、基本FAX等の基本サービスを提供するための
    国際公専公接続は、国際一種事業者の経営に与える影響に鑑み、従
    来、約款外契約において禁じられてきた。

       なお、国際公専公接続による基本サービスの一形態である国際イ
      ンターネット電話サービスについては、本年8月26日付け(報道
      資料「国際インターネット電話サービス提供の自由化に関する方針
      の決定」)で先行的に自由化済み。

  (4)また、従来、郵政省においても、電気通信事業法の一部を改正する法
    律案に対する国会の附帯決議(昭和62年(1987年))(注)の趣
    旨を踏まえ、国際一種事業者の経営に与える影響を考慮して、基本サー
    ビスを提供するための国際公専公接続を禁止する内容の約款外契約
    を認可してきた。

     (注) 電気通信事業法の一部を改正する法律案に対する国会の附帯
        決議(昭和62(1987)年)(抜粋)
      ・「第二種電気通信事業者が回線の単純再販を行うことを目的とし
       て約款外役務の申込みを行った場合には、第一種電気通信事業者
       がこれに応じないことを認めること。」(衆議院逓信委員会)
      ・「約款外役務について、第一種電気通信事業者の経営に与える影
       響を考慮し、専用線の単純再販を目的とする第二種電気通信事業
       者の契約締結の申込みが行われた場合、第一種電気通信事業者が
       承諾しないことを認めること。」(参議院逓信委員会)


 2 国際公専公接続の自由化の目的・背景

  (1)大競争時代と言われる昨今、規制緩和の進展と相まって多くの社会経
    済分野において厳しい事業者間競争が展開されており、国際通信、特に
    社会経済活動にとって基本的かつ重要なサービスである国際電話市場に
    おいても、新規参入の促進・競争の活発化が重要課題となっている。

  (2)また、世界貿易機関(WTO)の基本電気通信合意(平成10年
    (1998年)1月1日発効予定)において、我が国は国際公専公接続
    による基本サービス提供の自由化を約束しているほか、規制緩和推進
    計画(平成9年(1997年)3月28日閣議決定)においても、
    国際公専公接続による基本サービスの提供を本年中に完全自由化するこ
    とを盛り込んでいる。


 3 諸外国の動向

  (1)米国
     「外国事業者の米国市場参入に関するFCC規則」(本年11月25
    日採択)及び「国際精算料金のベンチマークに関するFCC規則」(本
    年8月7日採択)において、国際公専公接続による基本音声サービス提
    供事業者に対する以下の事前及び事後の規制がある。
     なお、以下の事前・事後規制のほか、外国関連事業者に対しては市場
    支配力を有する外国事業者による反競争的行為防止のための規制(外国
    の関連事業者との間の会計及び設備所有の分離、外国の関連会社から調
    達したネットワーク設備・サービスについての年4回の報告義務等)が
    ある。

    ・ 事前措置(参入規制)

   [1]同等性テスト(米国と同等の国際専用線の再販の機会を米国事業者
     に認めている国に対してのみ再販サービスの提供を認めること)の適
     用を、WTO加盟国に対しては廃止(WTO非加盟国に対しては引き
     続き適用)

   [2]ベンチマーク・ルールの適用(米国と相手国との間で米国が精算料
     金を支払う対象となる通信量の50%以上の精算レートがベンチマー
     ク(FCCが定める上限精算料金:日本の場合は1分あたり15セン
     ト)以下の水準でなければ、認証を受けられない。ただし、これを満
     たさない場合でも、同等性テストを満たす場合には片方向バイパスの
     おそれがないものとして、サービス提供を認める。)

   ・ 事後措置
     定期的に求める通信量報告(年度報告及び四半期報告)をチェックし
    た結果、「米国発の通信量の米国着の通信量に対する比率が、2四半期
    連続で10%以上増加した場合」には、片方向バイパスによる競争の歪
    曲が生じているものと推定し、さらに調査の上、認証取消等の措置をと
    る場合がある。(10%という数値は、事業者の意見を参考に設定され
    た模様)

  (2)英国
     国際公専公接続による基本音声サービス提供事業者に対して現行の計
    算料金制度や比例リターンルールは事前に義務付けないものの、例えば
    独占事業者による片方向バイパスに対応するため、事後的措置として以
    下を導入する方向で検討中。

   ・ 免許の際に、全ての国との通信に対して比例リターンルールを義務付
    けることを留保。

   ・ 四半期毎の通信量報告に基づき、著しい片方向バイパスが認められる
    場合には留保を解除し、比例リターンルールを義務づけ。

   ・ 「著しい片方向バイパス」についての具体的な判断基準は設けられて
    おらず、ケース・バイ・ケースで反競争的な行為に関する調査を行う。


    このように国際電話市場における新規参入の促進、WTO基本電気通信
   合意発効へ向けて自由化を進める観点から規制を見直す国際的趨勢に鑑み、
   今回、約款外契約における国際公専公接続による基本サービスの提供を自
   由化することにより、国際特二事業者による国際専用線を用いた国際電話
   等のサービスの提供を可能とするものである。


【国際公専公接続の自由化に当たっての措置】

  国際公専公接続の自由化は、世界的な競争環境が構築されていく中で、国際
 電話等の市場における新規参入を促進し、競争を活発化させることが目的。そ
 のため、我が国事業者と外国事業者との間の精算における現行の計算料金
 制度や比例リターンルールを、国際公専公接続により新規参入する国際特
 二事業者へ適用することを義務付けないこととする。

  ただし、国際公専公接続による国際電話等の国際基本音声サービス(注)が
 提供される場合にあって、公正な競争を阻害する片方向バイパス等の行為
 が認められる場合には、それを是正するための事後的措置が必要。

    (注) ここでいう国際基本音声サービスとは、現時点では国際電話、
       国際インターネット電話及び国際ISDNを指す。

1 現行の計算料金制度、比例リターンルールの適用は義務付けない
 (1)計算料金制度と比例リターンルールについて

    国際通信は、両国側事業者間での共同事業と言われ、国際交換設備・伝
   送路と両端の国内交換設備・伝送路とを共通に利用している一方、利用者
   からの料金の収納は基本的に発信側事業者で行っている。このため、着信
   側事業者の着信取扱いコストを補填するため、両国側事業者の収入をその
   取扱量等に応じて精算する必要が生じる。

    日本のように国際通信市場に複数の事業者が存在している場合、そのそ
   れぞれが同一の相手国事業者と業務協定を締結することが多い。特に、相
   手国事業者が独占事業者である場合、日本側の複数の事業者を競り合わせ、
   自らにとって最も有利な条件を求めることが想定される。

    このため、我が国では米英といった競争導入国と同様、これまでそのよ
   うな不利益を回避するため、次の3つの原則を精算に当たり採用してきた
   (「統一計算料金方式」;参考2参照)。
   
ア 計算料金(両国事業者間の精算レート)は、複数の事業者間で同一
 にする(同一計算料金)                    
イ 計算料金の決済に当たって、その分収を均等にする(均等分収) 
ウ 相手側複数事業者からの着信通信量のシェアに応じて発信通信量の
 配分を行う(比例リターン)                  
 (2)国際公専公接続により国際電話等の市場に参入する国際特二事業者への
   現行の計算料金制度・比例リターンルールの適用について

    統一計算料金方式は、国際通信が基本的に独占体制であるという前提の
   下で、外国独占事業者が我が国の複数の事業者に対して「競り合わせ」を
   行うことにより、我が国の事業者全体として不利益を被ったり、差別的な
   取扱いを受けることとなることを防ぐために採用されてきた措置。

    したがって、WTO基本電気通信合意の発効により世界的に競争環境が
   構築されていくことを前提とし、国際公専公接続の自由化により国際通信
   分野での競争の一層の促進を図る観点から、これら国際特二事業者と外国
   事業者との間の提携条件については、基本的に当事者間の自由意思に任せ
   ることとする。

    このため、国際公専公接続により国際電話等の市場に参入する国際特二
   事業者については現行の計算料金制度や比例リターンルールの適用を義務
   付けない。

    しかしながら、例えば、ある国の独占事業者の子会社が、自己の親会社
   による片方向バイパス(参考3参照)の相手方事業者として親会社からの
   着信を受けることにより、公正な競争を阻害している等の場合には、事後
   的措置によりこうした行為の是正を求めることが適当。

    以上から、国際公専公接続により基本サービスを提供する国際特二事業
   者には、同一計算料金、均等分収、比例リターンルールのいずれの原則に
   ついてもその適用を義務付けずに、公正な競争を阻害する片方向バイパス
   等を事後的措置により是正させることとする。

2 公正な競争を阻害する片方向バイパス等の行為の事後的是正
  国際公専公接続の自由化後、公正な競争を阻害する片方向バイパス等を是正
 する観点等から、電気通信事業法(以下「法」という。)第92条第1項に基
 づく通信量等・収入の定期的報告を求め(必要な場合には追加的報告を求める
 場合もある。)、是正すべき事態が認められる場合には是正の指導を行うとと
 もに、原則としてその旨を公表する。
  また、法第37条の要件に該当する場合には、業務改善命令を発動する場合
 もある。
  なお、公正な競争を阻害する片方向バイパス等の認定・是正は、行政による
 このような事後的措置により行うこととする。したがって、約款外契約におい
 て片方向バイパス等を防止することを目的とする制限を課すことは認められな
 い。

 法第92条第1項に基づく通信量等及び収入に関する定期的報告等

 (1)通信量等及び収入に関する定期的報告
    国際公専公接続による国際基本音声サービスの提供に関して、公正な競
   争を阻害する片方向バイパス等が行われているか否かをチェックする等の
   観点から、国際基本音声サービスを提供する二種事業者から、法第92条
   第1項に基づき、定期的に通信量等及び収入に関する報告を求める。
    この通信量等・収入報告は、国際公専公接続による国際電話等の市場の
   規模・動向を把握するためにも必要。
    なお、具体的な報告内容については、電気通信事業報告規則において定
   めることとし、当該規則改正以降、実際の報告を求めることとする。

 (2)追加的報告
    定期的な通信量等の報告等から、当該対象事業者が公正な競争を阻害す
   る片方向バイパスの着信を受けているとの疑義が生じた場合等、必要があ
   る場合には、法第92条第1項に基づき当該事業者から追加的報告を求め
   る場合がある。

 (3)是正措置
    提出された追加的報告から、当該事業者が公正な競争を阻害する片方向
   バイパスの着信を受けていることが明らかに認められる等の場合には、当
   該事態を是正すべき等の旨を、文書により指導し、原則として、その旨を
   公表する。

3 第三国中継による通信(ブレークアウト)に制限は課さない
 (1)国際公専公接続により国際電話等のサービスを提供しようとする国際特
   二事業者が、第三国中継による通信(ブレークアウト)により低コストで
   取扱対地を拡大することは、競争促進に積極的効果を有することから、こ
   れを可能とするのが適当。
    したがって、国際公専公接続の自由化に当たってブレークアウトに制限
   を加えることは適当でなく、約款外契約においてブレークアウトに対する
   制限を課すことは認められない。

 (2)また、ブレークアウトの場合において、国際特二事業者が外国法人等と
   の間で業務協定等を締結・変更するときは、法第40条に基づき郵政大臣
   の認可を受けることが必要である。


【国際公専公接続の自由化の意義】

  国際公専公接続の自由化により、国際通信に関して以下のように新規参入の
 促進、競争の活発化等が図られる。

 1 国際電話等の市場への本格的な新規参入の促進と競争の一層の活発化
   国際公専公接続の自由化により、従来から国際電話サービスを提供してい
  る一種事業者及び今年8月以降国際インターネット電話サービスを提供して
  いる二種事業者に加え、多くの電気通信事業者が国際電話等の市場へ参入す
  ることにより、国際電話等の市場における競争の一層の活発化が期待される。

 2 国際電話等の料金の低廉化・サービスの多様化
   国際電話等の市場への新規参入の増加に伴い国際電話等の料金における競
  争が活発化することにより、低廉な国際電話等のサービスが実現するととも
  に、利用者のニーズに対応した多様なサービスが提供されることが期待され
  る。

 3 国際電話等に対する需要の拡大と国際通信市場の一層の発展
   料金の低廉化・サービスの多様化に伴い、他の通信手段から国際電話への
  移行や国際電話による通信量の増大等、社会経済活動にとって基本的かつ重
  要なサービスである国際電話をはじめ、国際通信に対する需要が拡大し、も
  って国際通信市場全体の一層の発展が期待される。

 4 WTO基本電気通信合意及び規制緩和推進計画の履行
   本件自由化により、WTO基本電気通信合意において我が国は国際公専公
  接続による基本サービスの自由化を約束していること、規制緩和推進計画
  (平成9年(1997年)3月28日閣議決定)において平成9年中の完全
  自由化を規定していることが、具体的な措置として履行される。


【国際第一種電気通信事業者に関する統一計算料金制度の見直し等】

  国際公専公接続の自由化に併せて、国際一種事業者についても統一計算料金
 制度の適用の弾力化を図ることとする。
  また、国際一種事業者についても、国際公専公接続による基本サービスの提
 供の場合と同様、公正な競争を阻害する片方向バイパス等の行為を行う可能性
 があり得ることから、二種事業者の場合と同様、事後的是正措置を講じること
 とする。

 1 統一計算料金制度に係る弾力化
   国際一種事業者の国際電話サービスの提供に伴う国際精算の方式について
  は、これまで原則として統一計算料金方式(同一計算料金、均等分収、及び
  比例リターンルール)を適用してきたが、今後の国際公専公接続の自由化や
  外資の開放等国際通信の自由化を踏まえて、その適用の弾力化等を行う。
   具体的には、統一計算料金方式について、WTO加盟国以外の国の事業者
  との間では現行どおり適用することとするが、WTO加盟国の事業者との間
  では現行の内容を一部修正した比例リターンルールのみを適用することとす
  る。
   なお、いずれの場合も、反競争的行為の有無等について特別の事情が認め
  られる場合には異なった取扱いができるものとする。そのため、その他の関
  連事項を含めて、法第40条に基づく業務協定等の認可に係る審査基準の整
  備を行う。

 2 法第92条第1項に基づく通信量等の定期的報告等
   二種事業者の場合と同様、公正な競争を阻害する片方向バイパス等の是正
  等の観点から、従来どおり、法第92条第1項に基づき通信量等に関する定
  期的報告を求める(今回、内容を一部拡充する。)。また、当該片方向バイ
  パス等に係る文書による是正指導及び公表を行い、法第36条第5項に基づ
  く業務改善命令の発動等を行う場合もある。

 3 法第40条に基づく業務協定等の認可に係る審査基準の整備
   統一計算料金方式に関する事項を規定するとともに、二種事業者の場合と
  同様、公正な競争を阻害する片方向バイパス等の防止に係る規定を整備する。

 4 国際伝送路設定の自由化
   国際一種事業者の国際伝送路の設定方法に関する、取扱対地が100対地
  以下の場合の第三国中継の制限については、国際電気通信事業への影響等に
  ついて検討を行った上で、平成10年6月末までに廃止する。


参考1
国際公専公接続のイメージ図
参考2
A国事業者とB国事業者との間の清算イメージ図
参考3  公正な競争を阻害する方方向のバイパスのイメージ
公正な競争を阻害する方方向のバイパスのイメージ図


参考4

     国際公専公接続による基本サービス開始のための一般的手続
        (国際特別第二種電気通信事業者が行う場合)
(音声伝送役務について未登録の場合)                  
 音声伝送役務追加のための変更登録(電気通信事業法(以下「法」という。)
第27条)                               

国際専用線の利用に関する約款外役務提供契約を国際第一種電気通信事業者との
間で締結又は変更                            

当該契約の締結・変更につき国際第一種電気通信事業者が郵政大臣の認可を受け
る(法第39条の3第2項)                       

相手方外国事業者等との間で業務協定・契約を締結・変更する場合、国際特別第
二種電気通信事業者において郵政大臣に対して認可申請(音声以外の基本サービ
スの場合は不要;法第40条)                      

基本サービスに関する料金及び提供条件についての契約約款を定め、その実施前
に郵政大臣に届出(不特定かつ多数向けのサービスに限る。)(法第31条第6
項、第31条の2第5項)                        

参考5
         国際公専公接続に関するこれまでの経緯


1 電気通信事業法の一部を改正する法律案に対する国会の附帯決議(昭和62
 年5月)(関連部分抜粋)

 「第二種電気通信事業者が回線の単純再販を行うことを目的として約款外役務
  の申込みを行った場合には、第一種電気通信事業者がこれに応じないことを
  認めること。」(衆議院逓信委員会)

 「約款外役務について、第一種電気通信事業者の経営に与える影響を考慮し、
  専用線の単純再販を目的とする第二種電気通信事業者の契約締結の申込みが
  行われた場合、第一種電気通信事業者が承諾しないことを認めること。」
  (参議院逓信委員会)


2 「今後における規制緩和の推進等について」(平成6年7月閣議決定)(関
 連部分抜粋)

 「国際VANサービスにおける基本音声サービスを段階的に可能とする。」
  実施予定時期 国際的な検討を踏まえ実施


3 「規制緩和推進計画について」(平成7年3月閣議決定)(関連部分抜粋)

 「国際VANサービスにおける基本音声サービスについて、第一種電気通信事
  業者の経営への実態的影響及び国際的な検討を踏まえ、段階的に可能とする。」
  実施予定時期 平成7年4月(公衆網との接続のない形態)
         平成9年度 (公衆網との接続の実施時期及び内容を決定)


4 国際専専専接続(国際専用線を公衆網と接続しない形態)による基本サービ
 ス提供の自由化(平成7年4月)


5 「規制緩和推進計画の改定について」(平成8年3月閣議決定)(関連部分
 抜粋)

 「国際VANサービスにおける基本音声サービスについて、第一種電気通信事
  業者の経営への実態的影響及び国際的な検討を踏まえ、段階的に可能とする。」
  実施予定時期 平成9年中(完全自由化)

6 「規制緩和推進計画の再改定について」(平成9年3月閣議決定)(関連部
 分抜粋)

 「国際VANサービス(国際専用回線による再販サービス)における基本音声
  サービスについて、第一種電気通信事業者の経営への実態的影響及び国際的
  な検討を踏まえ、段階的に可能とする。」
  実施予定時期 平成9年中(完全自由化)



参考6
      国際公専公接続自由化方針(案)に関する意見の概要等


【1 意見提出者(16事業者・団体)】

1 第一種電気通信事業者
  ・国際電信電話株式会社
  ・日本テレコム株式会社(意見提出時は日本国際通信株式会社)
  ・国際デジタル通信株式会社
  ・第二電電株式会社
  ・日本高速通信株式会社


2 第二種電気通信事業者(第二種電気通信事業者の団体を含む。)
  ・社団法人テレコムサービス協会
  ・フォーバル・インターナショナル・テレコミュニケーションズ株式会社
  ・ティー・エム・アイ・テレメディア・インターナショナル・ホンコン・
   リミテッド
  ・ワールドコム・ジャパン株式会社
  ・日本ファックスインターナショナル株式会社
  ・株式会社リムネット


3 外国電気通信事業者の在日法人
  ・日本AT&T株式会社
  ・日本BT株式会社
  ・グローバルワン株式会社


4 その他
  ・株式会社情報通信総合研究所
  ・株式会社ジャパンアジアネットワークコンサルティング


    【2 国際公専公接続自由化方針(案)に関する意見の概要】
      (注)国際インターネット電話に関するものを除く。

1 自由化時期
1 第一種電気通信事業者

  ・ WTO基本テレコム交渉での合意内容は、来年1月1日より国際的約束
   として効力を有することとなり、同時期までには市場の自由化がなされな
   ければならないものと認識。

  ・ 自由化は公正有効競争の担保措置について十分に検討、準備した上で行
   われるべきであるので、早くとも本年12月が目途。


2 第二種電気通信事業者
  ・ なるべく前倒しで実施して欲しい。
  ・ 遅すぎる。

3 その他
  ・ 妥当

2 公正有効競争担保措置
○ 比例リターンに関する義務

1 第一種電気通信事業者

  ・ 公正有効競争の担保措置として、国際計算料金支払の不当回避を防止す
   るための国際特別第二種電気通信事業者に対する比例リターン等のトラフ
   ィック規制、及び当該トラフィック規制を担保するためのトラフィック報
   告が必要。

  ・ 自由化により国際通信事業者間で国際計算料金支払いが不当に回避され
   ることのないよう、現在国際通信事業者間でルール化されている比例リタ
   ーンについては厳正に適用すべき。具体的には、郵政省での国際特二の業
   務協定認可にあたり、外国側事業者が我が国国際一種に対して比例リター
   ン義務を有するものである場合には、比例リターンを行うことを条件とし
   て認可すべき。
    また、外国側事業者が我が国国際一種に対して比例リターン義務を有す
   るもの以外の場合には、通信量の報告に基づき、当該事業者間の発着比率
   がわが国全体の発着比率と比較し一定のレベルを越えないことを認可の条
   件とすべき。
    なお、上記いずれの場合にも、条件に反してサービスを提供した場合に
   は、業務協定の認可を取り消すなどの強制措置をルール化すべき。

  ・ 国際公専公接続の完全自由化に乗じて、外国のメガキャリアや独占キャ
   リアが計算料金の支払回避のために日本着信の一方通行再販を行う恐れが
   あるが、このような反競争的行為は禁止されるべき。よって、比例リター
   ン又はその代替措置を、国際特二と外国の電気通信事業者との間の業務協
   定の認可に際し、条件として付すことが必要。
    なお、外国の電気通信事業者による計算料金バイパスは、関係会社でな
   い国際特二との間で行われることもありうるため、国際公専公接続による
   基本音声サービスを提供する全ての国際特二に対して下記のいずれかの担
   保措置を適用することが必要。

    ア 国際特二と業務協定を締結する外国の電気通信事業者が、国際一種
     に対して比例リターン義務を有する者の場合には、比例リターン及び
     その前提となる統一計算料金の適用を義務付けるべき。

    イ アを適用しない場合の担保措置については、「不当に回避されない
     ようにする」という抽象的な表現ではなく、条件遵守の有無を客観的
     に判断できるよう具体的なものとすべきであり、対地ごとに、国際特
     二に返されるトラフィックが日本着信に占めるシェアは、その国際特
     二が日本発信に占めるシェアを超ええてはならないこととするのが妥
     当。

  ・ 比例リターン義務適用の必要性自体につき慎重な検討が必要。仮に、義
   務を課すとしても、以下の点に配慮すべき。

    ア 比例リターン義務を課す必要性そのものについて、慎重な検討が必
     要であると考えるが、仮に比例リターン義務を課すとしても、直通対
     地国を介して第三国にブレークアウトする場合については、直通対地
     国の事業者との間でのみ比例リターン義務を課せばよい。また、この
     場合、第三国向けのトラフィックについても直通対地国向けのトラフ
     ィックとして扱うべき。

    イ 比例リターン義務を課される場合の「国際一種に対して比例リター
     ン義務を有する者」及びその基準(比例リターン義務が国内法等、あ
     るいは相手国の法律等のいずれにより義務付けられたものであるか等)
     が、新規参入事業者にとって不明であり、事実上の参入障壁となるお
     それがあることから、行政の透明化の観点からも継続的に公表すべき。

    ウ 設備的な問題等により着信が不可能な事業者については、リターン
     トラフィックを受け取る必要のない旨を明示すべき。


2 第二種電気通信事業者

  ・ 二種事業者とNTTとの事業者間接続のめどが立っておらず、国際一種
   との対等な競争が可能なサービスレベルには当面なり得ない状況を克服し
   てまで、新規参入しようとするインセンティブを阻害する懸念があるので、
   いかなる担保措置も設けず、市場原理に委ねるべき。

  ・ 自由競争に任せて制限を課さないことはできないか。

  ・ 国際公専公型の国際電話サービスでは、自由化時点においてNTTとの
   網間接続が事実上できない、国際専用線は国際一種から調達せざるを得な
   い、二種事業者への卸料金がない等のハンディを負っており、現段階では
   既存の国際一種と同じ比例リターン制度を適用することは望ましくない。
   従って、NTTとの相互接続、二種事業者への卸料金の導入等の条件がそ
   ろい、また、将来国際公専公電話サービスが一般的になった時点で、公正
   有効競争条件を検討することが望ましい。


3 外国電気通信事業者の在日法人

  ・ 比例リターン義務を最初から課すのは競争促進的でないので、競争阻害
   行為が発生した場合の事後制裁としてのみ適用すべき。

  ・ 外国事業者が母国において市場支配力がない場合は、仮に日本の二種子
   会社に多くのリターントラフィックを配分したとしても、今度は日本の国
   際一種がこれに対抗して、当該外国の別の事業者により多くのリターント
   ラフィックを配分することが可能であり、当該外国事業者は日本の国際一
   種に経済的損害を与えることはできない。また、日本の通信相手国の多く
   は自由化を進めており、日本も相手国に国際公専公で参入することが可能
   であるほか、経験では、国際公専公事業者にユーザーが殺到することはほ
   とんどない。
    結局、国際計算料金の回避という不公正な競争が起こり得るのは、外国
   事業者が母国において市場支配力を持ち、当該外国が自由化していない場
   合(当該外国事業者が実質的に独占事業者の場合)。しかし、このような
   場合は非常に限られており、国際計算料金の回避の危険性が過大に見積も
   られている。


4 その他

  ・ 比例リターンを課すのは、相手国事業者が選択の余地のない独占事業者
   で、一方通行バイパスの場合に限るべき。

  ・ 「国際計算料金の支払いが不当に回避されない」という場合の「不当」
   の意味が不明瞭。国際公専公事業は、そもそも国際計算料金の支払いの回
   避を目的としている以上、「不当な回避」とは何を指すのかが明らかでな
   ければならない。

  ・ 比例リターンについての考え方は理解できるが、実際の運用は困難(国
   際計算料金の支払いの不当な回避の事実が確認できても、是正するのは困
   難)。日本の国際一種に不当行為を行った事業者と同様の対抗措置を取ら
   せる。


○ 通信量等の報告義務

1 第一種電気通信事業者

  ・ 国際公専公接続自由化後は国民生活、国民経済に関わりの深い基本的サ
   ービスである国際電話サービスの市場動向は国際第一種電気通信事業者か
   らの報告のみを以てしては把握不可能であり、公正有効競争の確保も困難。
   よって、国際電話サービスを提供する全事業者からトラフィック報告、収
   入報告等を求めることが公正有効競争確保の大前提。

  ・ 国際特二を利用した計算料金バイパスの禁止を担保するため、郵政省に
   よる通信量の把握は必須。よって、国際公専公接続による基本音声サービ
   スについては、定期的に国際一種と同等の内容による通信量の報告を求め
   るべき。
    このほか、[1]外国キャリアとの間の精算方法及びその金額(外国キ
   ャリアによる国際計算料金の競り合わせ行為を防止するため)、[2]サ
   ービス提供料金及び収支(外国キャリアの関係会社による略奪的料金設定
   によって公正有効競争が阻害されることがないよう監視するため)につい
   ても国際特二に報告を求めるべき。

  ・ 報告内容については規制緩和の観点から必要最小限の内容にするととも
   に、設備、システム上の対応等の観点から、参入当初における暫定的な措
   置を講じるべき。
    また、報告の具体的な内容について、改めて今回のような公式の意見提
   出の機会を設けることが必要。


2 第二種電気通信事業者

  ・ いかなる担保措置も設けず、市場原理に委ねるべきだが、報告義務を課
   す場合でも、頻度及び内容は必要最小限にすべき。

  ・ 負担が少ないよう、低頻度かつ簡易な内容とすべき。特に、報告にシス
   テム開発が必要となるような項目は避けるべき。

  ・ 業務面での負担が大きくならないようにすべき。

  ・ 求められる情報の出力のため多大な時間とコストを費やすことを避ける
   ため、その頻度及び内容とも必要最小限とすべき。

  ・ トラフィック動向の把握、国際電話市場の変化や推移の分析等、市場に
   対する評価目的を持って実施すべき。


3 外国電気通信事業者の在日法人

  ・ 事後的制裁措置を郵政省が留保すれば、定期的に(理想としては年1回)
   トラフィック報告義務を課すだけで十分に効果がある。郵政省が的確に市
   場を管理するに当たり、事業者が負う義務は最小限にすべき。

  ・ トラフィック報告義務を課すのであれば、FCCと同様、機密資料とし
   て扱うべき。


4 その他

  ・ 事業者間で計算料金の支払いが正確に行われていることを確認するため
   にはトラフィック報告は必要であり、当然の措置。

  ・ トラフィック報告により収集されたデータは、公開されることが望まし
   い。事業者別のデータが機密事項に属するのであれば、国別のデータを一
   般に提供することが望ましい。


○ その他の公正競争担保措置に関する意見

1 第一種電気通信事業者

  ・ 外国設備事業者との間の公正有効競争の確保

  (1)外国設備事業者の日本市場参入と公正有効競争阻害行為
     国際公専公接続自由化が実現した際には、外国設備事業者が子会社・
    関連会社等を通じて第二種電気通信事業者として日本の国際電話サービ
    ス市場に参入してくることは明らか。その際、当該外国設備事業者は自
    らの子会社・関連会社のみを差別的に優遇する等の公正有効競争を阻害
    する行為を行う可能性が小さくない。

  (2)国際計算料金支払の不当回避の問題
     外国設備事業者による公正有効競争阻害行為のうちの1つに、国際計
    算料金支払の不当回避の問題がある。この国際計算料金支払の不当回避
    の問題は、当該外国設備事業者傘下の第二種電気通信事業者の国際専用
    回線(約款外回線)が当該外国設備事業者の中央局交換設備に直接又は
    間接的に接続される形態により行われ得る。従って、この国際計算料金
    支払の不当回避を防止するためには、外国設備事業者の中央局交換設備
    に第二種電気通信事業者の国際専用回線(約款外回線)が接続されてい
    る場合には特に監視が必要。


  (3)国際計算料金支払の不当回避以外の問題
     自国市場で国際公専公接続を自由化している諸国は、その自由化の際、
    外国事業者の参入に対しては相互主義の立場を採ったことは周知のとこ
    ろ。相互主義的考え方は採り得ないWTO体制下において、各国は自国
    市場に参入した外国設備事業者がその子会社・関連会社との間で不公正
    な取引等を行うことに対して、より一層警戒心を強めている。
     国際計算料金支払の不当回避以外の不公正行動として、例えば、[1]
    外国設備事業者が接続品質(運用保守水準、保守対応期間等)で自己関
    連会社を優遇する、[2]サービスの継続提供に影響する或いは新サー
    ビス開発に関連するようなネットワークの変更に関する通知等で自己関
    連会社を優遇する、[3]競合他社の秘密情報を自己関連会社に漏らす、
    [4]顧客情報を自己関連会社と共有する、[5]自国市場での市場支
    配力を利用して自己関連会社と共同マーケティング活動を行う等のこと
    が問題だとされているところ。
     各国はこれらの諸点に十分に注意を払いながら、自国市場を開放し、
    または開放しようとしている。我が国が外国事業者に対して市場開放を
    行おうとする際にも当然、同様な問題点の整理が不可欠。

  (4)外国設備事業者との間の公正有効競争は国益の問題
     仮に外国設備事業者との間での公正有効競争条件が確保されぬままに
    日本市場が開放された場合には、日本の国際電話市場は外国の有力設備
    事業者に席巻される可能性が大きいと言える。その場合には日本の第一
    種電気通信事業者は日本と各国との間の電気通信回線の維持が不可能と
    なり、日本の国際通信ネットワークは外国依存型のものに変貌し、引い
    ては日本の国際通信の安定的供給に支障を来す等、国益にも関わる。


2 外国電気通信事業者の在日法人

  ・ トラフィックのバイパスに伴う競争力低下を防ぐための担保措置が必要
   な場合は、国際公専公による基本サービスが自由化されているルートにお
   いて、国際一種にコストベースの国際計算料金の適用を義務付ける方法に
   より、より効果的にその目的を達成できる。

  ・ 国際計算料金支払いのバイパスに関して、実際の着信コストを超過した
   国際計算料金の支払いを単に永続化させることにつながるような方法を採
   用すべきではない。国際公専公に国際計算料金制度を適用することは、廉
   価なサービスの提供を不可能とし、また、実際の着信コストを超過した国
   際計算料金の引下げ圧力を取り除いてしまう。より望ましい方法は、国際
   公専公で基本サービスが提供されるすべてのルートで、国際一種の国際計
   算料金をコストベースにすることを要求し、郵政省がコストベースの国際
   計算料金の導入を直接推進すること。

3 通信量等の報告における第三国中継(ブレークアウト)呼の扱い
1 第一種電気通信事業者

  ・ 国民生活、国民経済に関係の深い基本的サービスである国際電話サービ
   ス市場の状況等を正確に把握し、当該市場における公正有効競争の実現を
   確保するため、また、国際計算料金の不当な支払い回避の有無を検証する
   ため、最終対地へのトラフィックを把握する必要がある。
    また、直通回線による我が国国際電話市場の縮小の状況を把握し、当該
   縮小現象に対して適切な措置を講ずるための前提として、直通回線による
   トラフィック疎通であるか、第三国中継によるトラフィック疎通であるか
   を区別して、トラフィック疎通状況を把握することが重要。

  ・ 我が国の通信状況を把握するため、少なくとも日本と最終着信国との間
   のトラフィック及び直通/第三国中継の内訳については報告を求めるべき。

  ・ 通信量等の報告は直通対地とのもののみとすべき。


2 第二種電気通信事業者

  ・ 複数の外国に設備を持つケースなどでは報告が極めて複雑となるため、
   報告対象外とすべき。報告が必要な場合は、負担が少ないよう、低頻度か
   つ簡易な内容とすべき。

4 外国事業者の関連会社である場合の回線等の取引状況の報告
1 第一種電気通信事業者

  ・ 外国設備事業者との間の公正有効競争の観点から、外国設備事業者とそ
   の子会社・関連会社との間での不公正行動に対するセーフガードとして、
   会計ディスクロージャー、外国設備事業者(親会社)との間の全取引記録
   の提出、外国設備事業者(親会社)との間の全契約/協定の提出、外国設
   備事業者(親会社)との共同マーケティングの禁止、顧客情報共有の禁止、
   外国設備事業者(親会社)のサービスとの抱き合わせ販売の禁止等の措置
   についても検討することが必要。特に外国側で地域網を提供している外国
   設備事業者については特段の規制が必要。

  ・ 外国の設備事業者とその子会社、関連会社等との間では様々な不公正な
   行為が行われる可能性がある。従って、両者間の契約、取引等については
   常に監視する必要があり、仮に公正有効競争を阻害するような行為が確認
   された場合には、それに対する適切な是正措置が講じられることが必要。

  ・ 当該取引状況等の報告は、内部相互補助を禁止し、公正有効競争を担保
   するために必要。郵政省はその報告の結果に基づき、国際特二の料金等に
   つき業務改善命令等の適切な措置をとるべき。

  ・ 海外の通信事業者と我が国におけるその子会社の間に内部相互補助が生
   じないよう、一種事業者が提出を義務づけられている財務諸表と同等の会
   計報告を国際特二にも義務づけるべき。


2 第二種電気通信事業者

  ・ 報告を求めることにより、公正有効競争が担保されるようにすべき。

  ・ なぜ外資系のみが報告義務の対象となるのか、「取引状況等」とは具体
   的に何を指すのか等、不明な点があり疑問を感じる。


3 外国電気通信事業者の日本法人

  ・ 二種事業者が回線を調達する関連会社が日本の第一種電気通信事業者で
   あろうと、外国のキャリアであろうと、同じ規制を適用すべき。

5 第三国中継(ブレークアウト)の場合の最終対地との業務協定
1 第一種電気通信事業者

  ・ 仮に最終対地国の事業者との間の業務協定について認可が不要だとすれ
   ば、日本とX国との間での国際計算料金の不当パイパス行為を、間にY国
   を介在させることによってカムフラージュし、脱法的な行為が行われる可
   能性もあると考えられることから、最終対地国との間の業務協定について
   も認可対象とすべき。

  ・ 事業者間において国際経過線路の合意を求めるITU規則を遵守するた
   め、国際特二についても、国際公専公接続による基本音声サービスの提供
   に際しては、国際一種と同様に全ての最終対地の電気通信事業者と業務協
   定を締結することを義務付け、これを認可対象とすべき。

  ・ 国際公専公接続により、わが国に発着する通話が国際公専公接続自由化
   国を経由して、接続非自由化国に迂回して発着することが想定される。こ
   のような形態は、発信国と最終着信国の間の国際計算料金を不当に回避す
   る結果になるものでもあり、ITUにおけるD1勧告の趣旨、最終対地国
   の利害等を考慮した措置が必要。
    具体的には、国際特二についても国際一種と同様、直通対地の事業者に
   限らず、最終対地の通信事業者との間にも相互協定の締結を義務付け、こ
   れを認可対象とすべき。

  ・ 業務協定の認可については、規制緩和の観点から最小限のものに限定す
   べき。
    「国際公専公+ブレークアウト」により直通対地国を介して第三国との
   間で通信を行う場合、当該通信が国際特二というリセール事業者により行
   われること等の観点から、日本と直通対地国との間の業務協定のみを認可
   の対象とすべき。直通対地国と第三国との間の業務協定等は、両国間のみ
   で措置すべき課題。

  ・ 既に「規制緩和推進計画の再改定について」(平成9年3月閣議決定)
   において発表されているとおり、国際特別第二種電気通信事業者が国際公
   専公により基本サービスを提供することについて平成9年中に完全自由化
   し、同時にブレークアウトによる通信も可能となるが、これを事実上の制
   限等が無い形で実現し、全世界への通信サービスの提供が可能となること
   が必要。


2 第二種電気通信事業者

  ・ 第三国中継における最終対地との業務協定締結及びその認可には、多大
   な時間とコストが必要となることが予想されることから、原則的には不要
   にすべき。

  ・ 最終対地の数は200を超えると考えられるので、最終対地の外国事業
   者すべてと業務協定を締結することは非現実的。

  ・ 最終対地との業務協定を認可対象とした場合、国際公専公事業者は実質
   的にサービス提供区域が限定されることになり、競争上著しく不利。


3 外国電気通信事業者の日本法人

  ・ 第三国中継の通信に追加規制は不要。事後的制裁措置と報告義務の2つ
   で十分。リファイルサービスは新規参入コストの低下や新規参入の促進の
   点から、必要で望ましい。

  ・ ブレークアウトを認めるべき。

  ・ 業務協定を必要とすると様々の制約を受け、競争の促進やユーザー利益
   の増進の点でほとんど貢献しない。

6 その他
1 第一種電気通信事業者

  ・ 電気通信市場は、競争を通じてユーザの利便性向上を目指すために、公
   正競争条件の担保と規制緩和を推進する必要がある。こうした観点から、
   国内では接続ルール等も整備されつつあり、また、専用線の利用に関する
   制限は撤廃されている。電気通信には国内、国際等の事業領域の区分が無
   いことは既に明確となっていることから、国内で利用が完全自由化されて
   いる専用線については、国際についても同様に利用が完全自由化されるべ
   き。

  ・ 国内第一種電気通信事業者の国際公専公接続電話事業への参入の問題

  (1)国際第一種電気通信事業者の直通回線設定に係る政策
     現在、国際第一種電気通信事業者は、我が国の国際通信を安定的に確
    保するため、他国事業者に回線設定を依存することなく、できる限り自
    ら回線設定を行うことが望ましいという観点から、100対地までは自
    ら直通回線を設定して国際電話サービスを提供している。これは、国際
    第一種電気通信事業者は他国事業者に依存することなく直通回線を設定
    せよという政策に基づくもの。

  (2)国内第一種事業者の国際第二種兼業による国際電話サービス市場参入
    の問題点
     仮に国内第一種電気通信事業者が国際第二種電気通信事業を兼業して
    国際公専公接続による国際電話サービスを提供することが認められると
    すれば、当該国内第一種電気通信事業者は、米国等の特定国との間に国
    際専用回線(約款外回線)を引き、当該特定国経由で全世界との間の国
    際電話トラフィックの発着信を行うことになるものと想定。(第三国配
    信料の低廉な特定国を経由して本邦発信呼の疎通を行い、自らが保有す
    る国内電話ネットワークを通じることによる低廉な配信料で本邦着信呼
    の集中を図るという行動が想定される。)
     我が国の(国内・国際を通じた)電話市場において相当のシェアを有
    する国内第一種電気通信事業者(NTTは勿論のこと、いわゆる国内N
    CCをも含む。)に上記のような形態での国際電話サービスの提供を認
    めた場合には、多数国との間での直通回線を設定、維持することについ
    ての国際第一種電気通信事業者の意欲を削ぎ、国際第一種電気通信事業
    者は他国事業者に依存することなく直通回線を設定せよという政策に反
    することになる。
     このことは、日本の通信ハブ化を断念し、国際電気通信ネットワーク
    の外国依存度を高めることを良しとして、我が国の国際通信の安定的供
    給の確保は二の次とするということを意味することになるため、この国
    内第一種電気通信事業者の国際第二種兼業による国際電話サービス市場
    参入の問題も十分な検討を尽くさなければ国益に反する結果を招来する。
     なお、国内第一種電気通信事業者が、上記のような形態による国際電
    話サービス提供を認められることとなれば、既存の国際第一種電気通信
    事業者との間の公正有効競争上も問題。

  ・ 国内第一種電気通信事業者の国際第二種兼業による国際電話サービス市
   場参入の問題についても検討が必要であり、例えば国内第一種電気通信事
   業者が国際第二種兼業を行う場合には、国際公衆網経由の第三国への配信
   の禁止等が必須。
    なお、仮に国内第一種電気通信事業者が国際第二種兼業により提供する
   国際電話サービスについて料金届出制が採用されるような状況となれば、
   料金認可制の国内電話サービスと料金届出制の国際電話サービスとの間で
   の内部相互補助の問題についても、検討が必要。

  ・ 国際公専公接続を自由化している先進国の中で設備事業者に対する総括
   原価方式による料金認可制を維持している国はない。我が国でも国際公専
   公接続自由化とセットで国際第一種電気通信事業者に対する料金認可制を
   料金届出制に改めることにより、一種事業者と二種事業者との間の非対称
   規制の問題(特に料金規制の問題)を、国際公専公接続自由化と同時に解
   消すべき。

  ・ 積極的な海外市場の開放要求
    国益確保、国際競争力強化の観点からの我が国事業者の海外進出のため、
   また、国際公専公接続自由化後に我が国市場に参入してくる外国事業者と
   公正な競争を行うため、当該外国市場への参入が認められることが必要。
   従って、一方的に自国市場を開放するだけではなく、WTO基本テレコム
   交渉の約束表で自由化を留保している国、WTO基本テレコム交渉に参加
   しなかった国であっても、当該国の事業者が我が国市場に参入してくる場
   合には、我が国としても当該国に対して積極的に市場開放を求めるべき。

  ・ 日本の電気通信市場だけが外国の電気通信事業者によって一方的に侵食
   されることにならないよう、国際公専公接続の完全自由化に際しては相互
   主義が原則。万一、相互主義をとらない場合には、日本の電気通信産業の
   国際競争力が損なわれることがないよう、日本の電気通信事業者が外国の
   電気通信市場に進出する際に同等の条件を確保できるよう、一貫した対外
   交渉を継続すべき。

  ・ 今回の国際専用線の利用自由化により、国際特二が既存の国際一種と同
   様の基本サービスを「国際公専公+ブレークアウト」の形態により提供す
   ることが可能となるが、その際国際一種と国際特二との間の公正競争条件
   の担保及び規制緩和の観点から、国際一種のトランジット100対地規制
   の撤廃を要望。


2 第二種電気通信事業者

  ・ 現行の国際計算料金制度を適用しないことを要望。

  ・ 実質的に地域網を独占しているNTTが、国際通信サービスに進出する
   場合の課題整理を同時にすべき。二種事業者とNTTとの間の事業者間接
   続の目処が立っていない状況下において、NTTが子会社を通じ実質的に
   国際公専公に参入することは認められるべきではない。参入する場合は、
   二種事業者との公正有効競争条件が確認され、かつ二種事業者と同時期に
   サービスが開始できる可能性が担保されるべき。

  ・ 二種事業者が「0091ー××」の番号を利用できるまでに、NTT交
   換機の改造等に1年半程度を要するとされており、NTTに対しこの期間
   をもっと短縮するよう指導すべき。


3 外国電気通信事業者の在日法人

  ・ 日本の国際一種及び国内に確固たる基盤を持つ国内キャリアが、国際公
   専公市場に参入する場合、その市場支配力を利用して新規参入者の市場機
   会を奪わないように保証することが必要。

  ・ 国際公専公の自由化は、国際一種の売上げや事業展開に悪影響を与える
   ものではない。他国での経験からは、売上げの増加、効率向上による経費
   節約、新製品の誕生は、国際競争と料金の低下により生まれる。

  ・ 既に国際公専公電話が自由化されている国(米、英、カナダ、豪、ニュ
   ージーランド等)では、国際計算料金制度及び比例リターンは適用されて
   いない。国際公専公電話は、完全に国際計算料金制度及び比例リターンの
   枠外に置くべき。この方が、コストが安くなる場合もあり、また、競争が
   導入されることからユーザーにとって有益。また、国際公専公電話は既存
   の設備ベースキャリアに対して大きな脅威とはなっていない。



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