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発表日  : 1999年 9月21日(火)

タイトル : 接続料算定の在り方についての電気通信審議会への諮問







 郵政省は、本日、「接続料算定の在り方について」について、別紙により電気通
信審議会に諮問しました。
 なお、諮問の理由は下記のとおりです。

                  記

 現在の接続制度においては、各都道府県において加入者回線総数の2分の1を超
える規模の固定伝送路設備及びこれと一体として設置される概ね都道府県内の電気
通信設備を「指定電気通信設備」として指定し、当該設備を設置する事業者(東日
本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社)に対して、接続に関する会計の
整理や約款の作成を義務づけています。
 現在の指定電気通信設備の接続料は、指定電気通信設備接続会計規則の規定に基
づいて整理された指定電気通信設備の管理運営に実際に要した費用(ヒストリカル
・コスト)を原価として算定されています。
 一方、接続料の一層の低廉化を図る観点から、接続料の原価を、実際に要した費
用ではなく、ネットワークを現時点で利用可能な最も低廉で最も効率的な設備と技
術を利用する前提で算定する、「長期増分費用方式」の検討が諸外国で進められて
おり、英国や米国の一部の州内通信等では既に導入が図られています。
 我が国においても、平成8年12月の電気通信審議会答申「接続の基本的ルール
の在り方について」において、技術モデルの構築等の長期増分費用方式に関する検
討を行う必要性が提言されています。また、平成11年3月に閣議決定された「規
制緩和3か年計画」においては、「長期増分費用方式について、できるだけ早期に
導入することができるよう、平成12年春の通常国会に所要の法律案を提出する」
とされています。
 さらに、平成10年5月の「規制緩和及び競争政策に関する日米間の強化された
イニシアチブ」共同現状報告においては、長期増分費用方式のできるだけ早期の導
入とともに、導入に際してのユニバーサル・サービスの確保並びに既存の地域電話
会社の利用者料金及び経営に関する配慮がうたわれています。
 以上を踏まえ、指定電気通信設備の接続料の低廉化を促進するため、今般、長期
増分費用方式を用いた接続料算定の在り方について諮問するものです。

                  連絡先:電気通信局電気通信事業部業務課
                     (担当:本間課長補佐、山中係長)
                  電 話:03−3504−4831


資 料 1
                             平成11年9月21日
          接続料算定の在り方について
  1 接続料金の概念
  2 接続料金の低廉化への期待
  3 接続料金の算定方法
  4 日米共同現状報告と規制緩和推進3か年計画
  5 接続料金の推移
  6 接続料金の諸外国との比較
  7 長期増分費用モデル研究会報告概要
   (1) これまでの経緯
   (2) 研究会報告書の前提条件
   (3) 報告書(案)に対する主な意見(概要)       
   (4) 試算結果
   (5) 留意点


1 接続料金の概念 

 ○ 代表的には、長距離・国際通信事業者や地域通信事業者が、既存の通信事業
  者(東西NTT)の地域通信網を使用する場合に支払う事業者間の料金。

接続料金の概念図

2 接続料金の低廉化への期待 

 東西NTTの地域通信網に接続する事業者にとっては、接続料金が低廉化すれば、
自己の通信料金を引下げることが可能となることから、その低廉化を求める声が強い。

1 長距離系3社(KDD、DDI、JT)の収入に占める接続料金の割合
 (平成10年度)

  収入合計  
 東西NTTに支払う接続料金合計 
  収入に占める割合 
 4,879億円 
         1,889億円 
     38.7% 
   注1:国内電話・ISDNに係る分のみ。
   注2:KDDについては、合併前の日本高速通信(TWJ)の収入額及び
      接続料金相当分を除外。

2 東西NTTの接続料金収入(平成10年度)

NCCからの接続料金収入
 6,768億円 
NTT長距離部門現(NTTコミュニケーションズ)
からの振替接続料
 4,867億円 
   注:接続専用線料金収入、網改造料等を含む。

3 接続料金の算定方法 

 現在は実際費用に基づいて接続料金が決定されているが、その低廉化を進めるた
め、長期増分費用方式の考え方を導入することが課題となっている。

1 実際費用方式(Historical Costs)
  地域通信網の管理運営に実際に要した費用に基づき算定する方式。我が国のほ
 か米国(州際通信及び一部の州内通信)、独、仏等で採用。

2 長期増分費用方式(Long-Run Incremental Costs)
  現時点で最も低廉で効率的な設備と技術の利用を前提として計算した地域通信
 網の費用(Forward-looking Costs)を用いて算定する方式。米国(一部の州内
 通信)、英国等で採用。
  独、仏もモデル作成を検討中。

4 日米共同現状報告と規制緩和推進3か年計画 

 ○ 日米共同現状報告(平成10年5月)(抜粋)

   「日本政府は、出来るだけ早期に接続料に長期増分費用方式を導入すること
    ができるよう、所要の電気通信事業法改正案を2000年春の通常国会に
    提出する意図を有する。

     この法案が成立すれば、日本政府は可能な限り早い期日に長期増分費用
    方式を実施できるように、所要の手続き(例えば、省令の制定や接続約款
    の認可)を迅速に行う。

     仮に全ての適正な手続きが迅速に完了されれば、長期増分費用方式は
    2000年中に実施されよう。

     この過程において、ユニバーサル・サービスの確保に支障を生じたり、
    既存の地域電話会社の利用者料金及び経営に破壊的な影響を与えないよう
    適切に配慮する。」

 ○ 規制緩和推進3か年計画(平成11年3月30日閣議決定)(抜粋)

   「長期増分費用方式について、できるだけ早期に導入することができるよう、
    平成12年春の通常国会に所要の法案を提出する。」

5 接続料金の推移 

 東西NTTの接続料金はこれまで着実に低廉化してきている。
(電話の場合)

接続料金の推移図

6 接続料金の諸外国との比較 
  (3分間通話した場合の料金)

                              1999年(平成11年)9月1日現在
 
    日本   
(NTT東日本・西日本)
    アメリカ    
(ベル・アトランティック・
 ニューヨーク)    
  イギリス  
(ブリティッシュ
・テレコム)  
 フランス 
(フランス・テレコム)
  ドイツ 
(ドイツ・テレコム)
中継交換機
接続の場合
  11.98円 
    4.67円 
   (3.57 セント)
+136.1〜560.3円(1.04〜4.
28ドル)/月・回線
  3.73円
 (1.72 ペンス)
   8.05円
 (36.29 サンチーム)
   9.48円 
 (12.75 ペニヒ)
 加入者 
 交換機 
接続の場合
  5.81円
    3.03円
   (2.32 セント)
+136.1〜560.3円(1.04〜4.
28ドル)/月・回線
  2.56円 
 (1.18 ペンス)
   3.85円
 (17.37 サンチーム)
   4.40円 
  (5.91 ペニヒ)
 注1:日本については、平成10年度の料金。
 注2:アメリカでは地域により異なった接続料金が設定されている。
 注3:アメリカについては、接続通話のトラヒックの大宗を占める長距離電話会
    社向けの料金。地域電話会社向けには、中継交換機接続で4.24円(3.24
    セント)、加入者交換機接続で1.85円(1.41セント)が適用される。
 注4:為替レートは、1ドル=130.91円、1ポンド=216.84円、
    1フラン=22.19円、1マルク=74.39円で換算。(1998年
    平均:IMF『International Financial Statistics, March 1999』)
 注5:ドイツの中継交換機接続の料金は、50〜200kmの市外通話の場合の
    料金。


   (参考)  ○ 日米格差を「最大8倍」とする指摘があるが、その際の日米「比較」では、   米国内でも低額のベルアトランティック・ペンシルバニアの接続料金により、   比べているもの。  ○ この「比較」においては、一部のもの(トラヒックの4%を占める地域電話   会社向けのもの)の加入者交換機接続での料金のみを採り上げて比べている。  ○ しかしながら、接続料の大宗を占める長距離電話会社向けの料金では、その   ペンシルバニアとの比較においても、格差は縮小する。 参考図
7 長期増分費用モデル研究会報告概要 

 (1) これまでの経緯

  ○ 平成8年12月:電気通信審議会答申「接続の基本的ルールの在り方につ
   いて」(抜粋)
     「長期増分費用方式については、接続ルールの見直し時期(注 平成1
    2年度目途。)までに、郵政省において、事業者、有識者の参加や意見も
    得て、外国モデルの解析、設備に関するフォワード・ルッキング(将来指
    向的)なコスト・データの収集、技術モデルの構築等の作業を行うことと
    する。その上で、長期増分費用方式の扱いについて、ルール見直し時に決
    定することが適当である。」

  ○ 平成9年 3月    :「長期増分費用モデル研究会」設置。モデル案公募
  ○     12月    :公募締切    
  ○ 平成10年 1月〜4月:モデル案討論会
          7月   :郵政省モデル作成着手
  ○ 平成11年4月    :ワークショップ開催(海外専門家等を対象)
  ○ 平成11年7月    :報告書(案)公表、パブリック・コメント募集
  ○ 平成11年9月    :報告書確定

 (2) 研究会報告書の主な前提条件

  ○ モデルで提示されるネットワークは、現時点で利用可能な最も低廉で最も
   効率的な設備や技術を採用するものとする。
  ○ 技術関係法令、接続関連法令等の現状の我が国の規制・政策と整合性のと
   れたものとする。
  ○ 諸外国モデルとの整合性を可能な限り確保すると同時に、地理的条件等に
   おける我が国の独自性を適切に考慮する。
  ○ モデルで想定するネットワークは、特定の事業者の設備構成を前提とせず、
   合理的・一般的な仕様の機器を効率的に組み合わせたものとする。
  ○ モデルの作成に当たっては、コスティング(費用把握方法)を目的とし、
   プライシング(料金算出方法)の議論には立ち入らないこととする。

 (3) 報告書(案)に対する主な意見(概要)

  ○ 米国政府
    ・ モデルで使用した耐用年数は有効な経済的耐用年数を過小評価してい
     る。
    ・ NTTのトップダウン・モデルを採用すべきでない。
    ・ RTのコストを相互接続の対象となる交換機のコストとせず、加入者
     回線のコストとして割り当てるべき。

  ○ 外国事業者
    ・ GC相互接続料金をさらに低減すべき。
    ・ モデルが前提としている耐用年数が短すぎる。
    ・ 保守コストの前提が高すぎる。
    ・ NTTのトップダウン・モデルは使用すべきではない。

  ○ 国内事業者
    ・ 耐用年数は外国モデル等も参考に継続検討すべき。
    ・ 保守コストの入力値は内外事業者等の意見も参考に継続検討すべき。
    ・ 付加機能使用料等はモデルの算定コストから控除すべき。
    ・ NTTのトップダウン・モデルは具体的なデータ等が公表されておら
     ず認知できる環境にない。
    ・ RTコストは端末回線コストに配分すべき。
    ・ 加入者交換機で呼が折り返す場合には、RTを2回カウントすべき。

 (4) 試算結果

1 ケースAのうち、GCコストに算入されているき線点RTのコストを端末回線につけ
 替えると、2のケースBとなる。GCのコストが低下する一方で、端末回線コストが
 上昇する。

2 日米共同現状報告にもあるように、利用者料金への影響、ユニバーサル・サー
 ビスへの影響、東西地域NTTの経営に与える影響に適切に配慮して、接続料金
 の在り方を検討する必要がある。
                                 (参考)
 
現行接続料
1ケースA   
2ケースB    
(き線点RTをGCから
 端末回線コストに
 つけ替えた場合)
NTTのトップ 
ダウンモデル  
 ZC接続 
 11.98円
     5.11円
  (▲57.3% )
      3.69円
    (▲69.2%)
    10.44円
   (▲12.9%)
 GC接続 
  5.81円
     4.84円
   (▲16.7%)
      3.42円
    (▲41.1%)
     5.69円
  (▲ 2.1% )
 端 末 
 回 線 
 (PHS用)
 1,631円
   1,400.6円
   (▲14.1%)
    1,741.8円
    (+ 6.8%)
    1,899円
   (+16.4%)

 (注) ZC・GCについては3分あたりの料金
   端末回線については1回線あたりの
   月額の料金
   ( )内は現行接続料との対比
   最新のトラヒックを入力すると数値
   に変動が生じ得る
  ・
 (5) 留意点

  ○ 1現実のネットワークは長期間にわたり徐々に構築されてきたものである
   のに対し、モデルは全設備を一気に最新かつ最も低廉な価額で取得すること
   を前提としている、2現実には一定の将来需要を見越した設備構築をしてい
   るのに対し、モデルでは現在の需要に対する設備のみ対象としている。この
   ようなモデルの性格から、本モデルで算定された長期増分費用が算定対象と
   なった現実の設備の費用を下回り、投下資本の接続料による回収が困難とな
   るということも場合によっては起こり得る。今後、接続料算定の議論の際に
   は、本モデルのこのような性格にも留意する必要がある。

  ○ 耐用年数が諸外国の事例に照らして短く、見直すべきとの意見が提出され
   たが、諸外国の間でも耐用年数は相当異なっており、単純に外国の数値を入
   力値として用いることは、むしろ我が国においてモデルを利用する際の信頼
   性を損ないかねず、適当ではない。
    但し、今後、我が国の設備の使用実績について、信頼できるデータが蓄積
   できればその段階で状況に応じたデータの更新を行うことについては検討さ
   れる必要がある。

  ○ 付加機能使用料や施設設置負担金をモデル算定結果から控除すべきとの意
   見が提出されたが、これらについては今後のプライシングの議論の際に、現
   在、東西NTTの設定している料額を参照しつつ検討せざるを得ない。

  ○ 東西NTTからトップダウン・モデルが対案として提出されているが、これ
   は現実のネットワークや会計データに基礎を置いたものであり、NTTの財務
   的な実態をより重視する観点からの提案であることから、今後、財務的視点
   をも含めたプライシングの議論の中で参照されることが適当である。


   (参考) 現行接続料におけるRTコストの帰属の図
   (参考)             各モデルの耐用年数の比較
    設備    
 NTTトップ 
 ダウンモデル 
(法定耐用年数 
 に等しい)  
 研究会モデルの
  耐用年数  
  米国政府意見書の  
    耐用年数    
 (米国のコンサルタント
  会社の数値と同じ) 
 BTの意見書の
  耐用年数  
   交換機   
   6年   
  11.9年 
   16.17年   
 13−14年 
光ファイバケーブル
   10年  
  11.2年 
25.91−26.45年
 20−24年 
 メタルケーブル 
   13年  
   13年  
 21.61−25.0年
   15年  
    管路    
   27年  
   27年  
     56年    
   25年  
 アナログ公衆電話 
   9年   
  10.9年 
      −     
    −   
ディジタル公衆電話
   6年   
  6.3年  
      −     
    −   
  機械室建物  
 22.1年※ 
  33年※  
    46.9年   
    −   
  共通用建物  
 21.2年※ 
  37年※  

 ※ 建物と建物付帯設備の耐用年数の加重平均値を設定しているが、トップダウ
  ンモデルと研究会モデルでは加重平均の方法が異なっているため、異なる値と
  なっている。




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