統計データの話

佐伯 宜昭(平成9年入省)
情報通信政策局 総合政策課 情報通信経済室 課長補佐
情報通信白書の作成
情報通信統計データの集計・分析


  私の所属する情報通信経済室では、毎年発行する「情報通信白書」の作成と情報通信統計データの集計・分析を主に行っています。情報通信白書の話は、既出(http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/wakate/ando_m.html)のようですので、ここでは比較的地味な扱いを受けがちな「統計」の話題に触れさせていただきます。
  現在、当室では、情報通信政策を企画・立案する上で欠かすことのできない基礎データを収集するため、一般の世帯・事業所・企業を調査対象とした通信利用動向調査と、通信産業に属する企業を対象とした通信産業実態調査(通信産業基本調査、設備投資調査等)とを行っています。一例を挙げると、しばしばメディア等で引用される「日本のインターネット利用率は、平成15年末時点で6割を超えた」というデータは、当室で実施した「通信利用動向調査」の結果から得られた数字です。
  こうした統計データは、調査項目を適当に作って適当にばらまき、返ってきたものを回収・集計するだけで簡単に得られるようなイメージがありがちですが、陰では意外と涙ぐましい努力がなされています。というのも、統計データというものは、調査票の設計やサンプル抽出時などにバイアスがかかると、調査結果が非常に偏ったものになってしまうからです。
  例えば、不特定多数の世帯を対象とした調査票を集計したところ、一般的に考えられているよりもかなり高い数字が出てしまうことがあります。よくよく分析すると、回答者が情報通信機器を使うことに抵抗の少ない若年層に偏っていたなどというときで、こうした場合には、国内世帯の実際の分布構成に合わせて「一票の格差」を是正することにより、より実態を反映していると考えられる値を計算し、データを公表しています。
また、特定産業を対象とした調査では、一部上場会社など大規模な企業からの回答が得られない場合、産業全体の動向を正しく反映できないことがあります。こうした場合は、企業の担当者に繰り返し連絡を取り、調査の意義を理解して頂いた上で回答をお願いし、より正確なデータに近づけることが必要になります。
情報通信政策は、本来、このようにして集計された定量的データに基づき企画立案がなされるものですから、その基礎となるデータに間違いがないようには細心の注意を払って数字を公表しなければならないのです(そのせいで公表が遅れがちというご批判もありますが・・・)。
  一方で、統計データは、政策の立案や民間企業の経営戦略などに使われる機会が少なければ、単なる数字の羅列以上のものではありません。統計を実施することは、回答者にとって余計な作業を増やしてしまうだけではなく、我々行政官にとっても「仕事のための仕事」を行うムダ作業を作ってしまうことになりかねません。政府で統計を集計している部署は数多ありますが、いずれもこの問題に直面して危機感を持っており、現在では内閣府の経済社会統計整備推進委員会や、総務省統計局でも政府統計全体の見直し作業が行われています。
  長々と書いてきましたが、何が言いたかったかというと、「このコラムを読まれている方々も、自宅あるいはお勤めになる職場で、将来調査票を受け取る可能性がある」ということです。より正確な統計が集計されるため、ひいてはより良い政策を享受するため、ご面倒でも回答していただければ幸いですので、どうぞよろしくお願いいたします。


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