雑感

吉田 恭子(平成6年入省)
情報通信政策局 技術政策課 課長補佐
情報通信研究機構(NICT)の業務見直し


  入省してから今年ではや11年目を迎え、果たして「若手」と呼べるのか甚だ怪しいのですが、せっかくいただいた機会ですので、現在の業務について簡単にご紹介します。
  皆さんは「独立行政法人」という言葉を聞いたことがありますか?「国立大学の独立行政法人化」という話など、マスコミで何度か目や耳にされたことはあるのではないでしょうか(厳密には「国立大学法人」であって、いわゆる普通の独立行政法人とは異なるのですが)。
  いわゆる「橋本行革」の目玉として始まった独立行政法人の流れは、簡単に言えば、これまで国の直営で行ってきた学校運営、施設整備、研究開発、果ては紙幣印刷などの業務を、国から一旦切り離し、主に予算・人事の両面においてより高い自由度を認めることにより、業務の効率性を進めていこうというものです。当初は国の試験研究機関が独立行政法人化の対象だったのですが、その後、特殊法人改革の一環として多くの特殊法人も独立行政法人化することにより、各省庁所管の独立行政法人が雨後のたけのこみたいに続々と設立され、マスコミからは「看板の架け替え」なんて批判もされたりもしました。
  今、この独立行政法人の改革が第2段階に入ってきています。昔ほどマスコミの注目は浴びていませんが、改革にまさに魂を入れる作業です。大きく言えば、1) 非公務員化により人事面等における自由度を更に高める、2) 業務をより効率的に進めるために業務や組織の在り方を見直す、という二つの流れにより、名実ともに、「独立」の名にふさわしい業務・組織運営を目指そうというものです。でも、そもそも「独立」なんだから、独立行政法人の側で自由に見直せばいいんじゃないか、というご質問もあるでしょう。もう少し具体的にご説明してみましょう。
  私の業務は、総務省の情報通信関係の研究開発独立行政法人である「情報通信研究機構(NICT)」の業務見直しです。1)の非公務員化については、昨年末、改正法案も策定して道筋はつけましたが、2)については、現在、取り組んでいるところです。これまで作り上げてきた制度や内容を見直すことは、本来、役人にとって一番苦手な分野の仕事なのかもしれませんが、現在、多くの関係課に相談しながら、何が一番独立行政法人の趣旨にふさわしいのか、何がNICTひいては我が国の情報通信分野における研究開発機能を高めることにつながるのか、ということを同僚たちと一生懸命に考えています。その過程では、国の政策との連携の下で今後はどのような研究開発領域にNICTは力を注ぐべきなのか、そのためにはどのような組織体制が望ましいのかといった点について、様々な意見が出てきます。もちろん、組織の中からの議論だけではなく、NICTの業務・組織運営に対して評価を実施する総務省独立行政法人評価委員会という外部組織があるのですが、そこの委員の方々の意見も参考にしていく必要があります。
  このような仕事をしている中で、最近は省内の意識も変わってきたなぁと感じるのは、「今のまま何も変えずにいるのでいい」というだけの議論はほとんどないことです。どのような方向を目指すべきなのか、という方向でみんなで知恵を絞っています。ともすれば「抵抗勢力の大合唱」になる可能性もあるテーマをいかに生産的に進めるか、ここに花火の打ち上げだけには終わらないこれからの公務員の仕事のエッセンスがあると思っています。
  私自身は、これまでコンテンツ流通促進のための政策や国際的な政策提言(OECDでの勤務)など、どちらかというとゼロから考えを組み立てて、花火にして打ち上げるような仕事を行ってきました
  (http://www.soumu.go.jp/menu_01/saiyou/message/senpai/pdf/17_16.pdf参照)が、現在の業務を再検証・再構成して次の時代にふさわしいものに変えていく作業は、国の政策について国民に対する説明責任が強く求められる現在、重要性が増しているといえるのではないでしょうか。


吉田 恭子・執筆者近影
執筆者近景
吉田 恭子・執務風景
執筆者執務風景
吉田 恭子・職場風景
職場風景