社会に役立つ制度を作ろう

豊重 巨之(平成17年入省)
総合通信基盤局 電波部 移動通信課 システム企画係
新たな無線システムの導入に向けた制度整備


 総務省に入省してから1年半近くが経ちました。キャッチフレーズのようなタイトルを書きましたが、私が総務省に就職を決めた時も、そして今も、社会に役立つ制度を作ろうと心がけて仕事をしています。

 私が大学に入った時は、インターネット全盛期の幕開けの頃で、その後、ADSLや光ファイバに代表されるブロードバンド化が進み、企業はもちろん、個人においても情報通信技術を使い、より豊かな生活を享受する時代が到来していることを実感した覚えがあります。

 そのような時代だからこそ、時流の最前線で情報通信分野に関する仕事をし、社会に最適な制度を作ることに少しでも貢献することができればと、日々努力をしています。しなければならないと思います。

 行政官ですから、新たな技術そのものを開発することや、営業活動をすることはありませんが、「社会にとって何が一番本質的なことであるか」を論理的に考え、必要に応じて深く議論し、時には利害関係を調整しています。

 私が所属している移動通信課では、移動する無線局、例えば携帯電話やBWAといった、電波を出し、自由に移動する無線局などに関する技術基準の策定や許認可などに関する業務が主に行われています。

 私自身は、入省して1年半の間、主に、UWB(超広帯域:Ultra Wide Band)無線システムという新たな技術に関する制度化に携わりました。新たな無線システムですので聞き慣れない言葉だと思いますが、屋内におけるパソコン周辺機器間の高速ファイル転送やTVディスプレイ・スピーカ間の映像等のストリーミングが実現できる無線システムとして期待されています。

(参考)平成18年3月27日報道資料
「マイクロ波帯を用いた通信用途のUWB無線システムの技術的条件」
 http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060327_3.html

 ここ数ヶ月は、物品の管理、物流の管理への応用が期待されている電子タグシステム(RFID)のうち、UHF帯の周波数を用いる新たなシステムの導入に向け、そのシステムに要求される技術的条件の検討のための有識者や関連企業を交えた委員会・作業班を開催し、技術基準の策定に向けた仕事もしています。

 入省して1年半近くが経ち、改めて実感することは、このような新たな無線システムに関する技術的条件を検討し、制度化するためには、クリアにすべき課題がいくつもあるということです。

 技術的条件として、新たな無線システムが放射する電力が大きければ、他の無線システムと干渉するおそれがあります。一方で、電力が小さければ、その無線システムを実現するためのスペックを満足できずに、市場に導入されたとしても無用なものになりかねません。

 あるいは、そのシステムを導入したい企業や研究者の間でも、複数の技術的条件の案があり、電力に限らず、その他の技術的条件、利用シーンや普及予測など、様々な観点から最適解を模索する必要があります。

 そのために、様々な資料を調べ、多くの方と議論し、時には夜遅い時間まで作業をし、苦悩することもありますが、新たな無線システムの導入のために、最適な技術的条件を検討し、社会に役立つ制度を作ろうという強い意志を持ち、仕事をしています。

 そして、これからも「これって便利だよね」と言えるサービスが市場に導入されるよう、情報通信分野で必要とされる制度整備に少しでも貢献できるよう様々なことに関心を持ち、知見を深めようと思います。また、総務省に関心を抱き、情報通信行政に携わりたいと思う方が少しでも増えればと期待します。



豊重 巨之・執筆者近影
執筆者近影
豊重 巨之・打合せ風景
打合せ風景
豊重 巨之・UHF帯電子タグシステム作業班風景
UHF帯電子タグシステム
作業班風景