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これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会(第1回)議事概要

日時

平成28年11月18日(金)10:00〜12:30

場所

総務省 1002会議室

出席者(敬称略)

・構成員
 小田切徳美(座長)、景山亨弘、作野広和、勢一智子、田口太郎、丹羽克寿、宮城治男、 山下祐介

・事務局
 地域力創造審議官、地域自立応援課長
 

議事概要

1.「検討の目的」に対する意見交換
・これまでは首都圏の視点での議論が支配的であった。過去の地制調の答申はその点不十分ではないかと考えている。それを確認する意味でも当時のアンケートなどを共有してこれまでの施策の位置づけを考えてみるのはどうか。
・ふるさとを大切に思う気持ちや、応援したいと思う気持ちをさまざまな形で地域づくりに生かすということは、いろいろなパターンを想定して幅広く議論するということだと思うが、これを丁寧に考えていくと、地域の人たちと外から来た人たちの価値観の違いなどで、若干コンフリクトが起こるという場面もあり得る。そういうところもあわせて少し施策としてどういう方向性がいいのかというのを、ここでは丁寧に考えていくべきではないか。
・例えば都市と農村の交流とか、対流とか、そういった非常に大きなフィールドで、必ずしも移住・交流に限定せずに議論する必要があるのではないか。移住・交流の概念については、人によってその捉え方が違う場合がある。一方、移住・交流という言葉でものすごく大きな領域をカバーしているということもある。フィールド名を別途検討することが必要ではないか。
 
2.事例発表「鳥取県日野町の取組について」
・(景山構成員より資料に基づき説明。)
・日野町は毎年夏の祭りやお盆の時期に町出身者の帰省などで大変賑わう。この人たちは日野町の住民ではないが、日野町を自分たちに関係のある「ふるさと」と考えてくれていて、関心を非常に持っている。この人たちに、(ふるさと住民票への登録を通じて)日野町という「ふるさと」のために知恵や、寄附なども頂くなど、まちづくりに参画して欲しいと考えている。
・登録していただいた方には、日野町の町報などをふるさと定期便として毎月送付している。また、公共施設の利用料も住民の料金で利用してもらうことができることや、まちの計画や政策への意見募集などにも参画できることとしている。
・ただ地域間のサービスを競うだけではなく、登録者に日野町の町民としての意識をもってもらい、本来のふるさと納税の意義や、将来のUターンやIターンに結びつけるということができれば非常にうれしい。
 
3.事例発表「長野県の取組について」
・(丹羽構成員より資料に基づき説明。)
・移住して地域に溶け込んでもらうことは非常に大切なことだが、移住される方はライフスタイルが多様化する中で、それぞれいろいろな思いを持って移住されている。行政が移住を支援していくというのは限界もあるので、地域住民の方や、ボランティアの方に多く入っていただいて移住者を支援していくという仕組みをつくっていく必要があると強く感じている。
・地域に溶け込むためには、自治組織に入っていただくということになるが、地域によっては、自治組織に入るために加入金が必要となる。これが結構高く、移住者の方の加入が進まない場合などがある。
・移住を受け入れる側からすると、入ってきた方に地域を守って欲しいという気持ちで、消防団への加入をお願いすることや、いろいろな活動をお願いすることになるが、移住者の方にしてみると、それぞれのライフスタイルを楽しみたいということもあり、そこに温度差もあって、それをどのように薄めていくかも非常に大切だと感じる。
 
4.事例発表「民間における取組について」
・(宮城構成員より資料に基づき説明。)
・(東北の)地域の中で立ち上がってきている事業というのは、従来のビジネスのロジックで割り切れないようなところを彼らが新しい形で震災復興のサポートをしつつ、コミュニティと非常に近い距離で社会起業家的な事業を起こしてきているものがある。優秀な人材というか、違いを生み出せる、変化を生み出せるような人材というのが大手企業ではなくて、地域やソーシャルな事業の現場に入り始めている。これはアメリカやヨーロッパで起きていることだが、日本でも、3.11を非常に大きな契機として加速してきている。これまでの「地域に行く」という概念が変わり、東京などの大手で勤めているようなビジネスパーソンがあっさり仕事を辞めて地域に入っていくということが震災以降起こってきている。これは当然ながら、地域おこし協力隊の隆盛にもつながってきている。
・(ふるさとプロボノという形など)さまざまな階段として多様な入り口を設けるということが大事である。加えて、地域の中でのそれを支えていく基盤、例えば創業からその事業が育っていくようなプロセスも含めて、あるいは適切な現場に人をつなげていくということも含めて、地域の中で、コーディネート機能とかプロデュース機能ということをどうつくり出していくかが重要である。地域の中の体制づくりということにも力を入れており、多様な機会の創出という部分と、地域の中で能動的、有機的なエコシステムをつくっていくということをぜひ留意し、この議論も進めていくことが大事なのではないか。
 
5.フリーディスカッション
(1)移住・交流・「ふるさと」との関わりの必要性
・知識層の流出の結果、知の再生産ができていないということに対応すべきではないか。大都市圏から有意義な人材が入ってきた場合や、一定の政策が実施されたとしても地域の中で合意形成ができないことがある。正しいことを正しいと捉える力自体がなくなっている地域もあるのではないか。IターンやUターンによる知の再生産・人口の質の再生産が必ず必要なのではないか。
・地元の人がずっと守ってきた田舎の良さや、自然との向き合い方をどのように捉えるかが重要ではないか。都会の人は有料だと思っていない。だから無賃乗車するが、(景観を維持するための)草との闘いは自然との闘いであり、その役務やお金を地域が出している。そういう実態があるから都会の人が喜ぶ「ふるさと」の良さが維持されていることを訴えるべきではないか。
・都市から農山村への一方的な人の流れ、あるいは情報、金の流れではなく、やはり相互の流れをつくっていくことが重要ではないか。           
 
(2)段階的な移住・交流・「ふるさと」との関わり
・定住は別として、子育て世代が循環するような地域づくりでも良いのではないか。
・移住の次が定住だというのは、ちょっと飛び過ぎで、もっと多様な選択肢がある。再移住や、5年ぐらい移住先で過ごして、また戻るという選択肢もあっていいのではないか。少なくとも段階的に移住するというような仕組みもできる方がいいのではないか。また、地域の距離についても、東京圏でなれ親しんだ人が、いきなり人口1,000人の村に行くのはハードルが高いので、少しずついろいろなところで過ごしながらの移住という選択肢もあっても良いのではないか。
・移住という狭い世界を捉えた場合にでも、関わりの階段をつくっていくことが重要ではないか。例えばふるさと産品を買うことから始まって、ふるさと納税をする、そして二地域居住、そして最終的に移住するなど、階段をつくることが大変重要ではないか。また、施策というのはその階段を1段1段低くしていくのが施策であって、そういったプロセスを改めて確認するというのが重要なのではないか。
・多様な入り口として、中学生、高校生といった子どものときから地域とどう触れ合うかが重要であり、また、例えばクォーター制が導入される大学で大学生と地域の現場をつなげていく基盤づくりをすることも考えられるのではないか。
                  
 
(3)地域づくりの担い手
・地方創生で移住・交流が加速しているときに、社会の動きと集落の中の住民のスピード感の違いを感じている。地域の中でアクティブ層とネガティブ層がいて、アクティブな層にのみ注目が集まっている。ネガティブな層の底上げをきちんとしないと、本質的な地域づくりにつながらないのではないか。
・移住者が入ってきて良かった面と悪い面を整理する必要があるのではないか。全ての移住者が入ってくるのが良いことではなく、地域が必要とする人は入ってくるとしても、不要な場合は規制が必要ではないか。それは国がやるのか、あるいはもしかすると、ふるさと住民票とか何かの関所的な制度によって、悪いものは未然に見えてくるとか、そういうものが必要ではないか。
・「県人会」などは非常に重要なアクターではないか。帰る(Uターンする)わけではないが、地方の出身者が都市でまとまって、いろいろとやってみようとする動きが東京の中で始まっている。これらを全体の中でどのように位置づけるかということは大事なのではないか。                             
 
(4)移住を受け入れる環境づくり
○地域の中の体制づくり
・地域に入る場合の面倒くささや、悪しき伝統を変えていくべきではないか。また、移住者の意識改革も必要であり、その両者が歩み寄る仕掛けづくりが重要なのではないか。
・金、物、人、情報の流れの中で、マッチングコーディネーターの存在が重要だということがわかってきた。そういった人々が今まさに農山村で生まれているソーシャルイノベーターであり、都市、農村、海外の3つをシームレスに考えている。そのような現象が一時的なのかを突き詰めていくことが必要になるのではないか。
・地域におけるリーダー的な人材の確保が重要ではないか。
 
○移住定住の環境整備
・若い世代が地域に出た際に活躍できる労働・雇用環境の整備が必要ではないか。また、彼らが地域で培った経験をもって他の場所でも活躍できるような環境整備や支援体制が必要ではないか。
・雇用環境だけが問題で移住できないのではなく、教育環境や交通の利便性にも問題がある。行政サービスを落としすぎたせいで、過疎地では若い人が住むことができないような感覚になってきていることに大きな問題があるのではないか。過疎対策を適切に実施することで安心して暮らすことができるよう、広く移住・定住の条件整備が必要となるのではないか。
 
(5)その他
・「ふるさと」への想いを政策的にどう捉えるかということを議論すべきではないか。「ふるさと」は感情を持った考え方であり、このような主観的な側面から切り込む必要があるのではないか。
・国としてもっと省庁横断的に、田舎の価値をどう肯定的に捉えていくかということを打ち出していかないとなかなか改革がすすまないのではないか。
 
 

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