会議資料・開催案内等



第28次地方制度調査会第8回専門小委員会 次第



平成16年10月1日(金)
10時30分〜12時30分
ホテルルポール麹町「マーブル」


1   開会

2   議題

  1) 道州制のあり方について
  2) その他

3   閉会

配付資料(PDF)
 
資料1   道州制に関する検討の必要性(291KB)
資料2   道州制の制度設計に関する論点(2,198KB)
資料3−1   国の地方支分部局の定員(188KB)
資料3−2   国の地方支分部局が実施する事務の類型(128KB)
資料3−3   国の地方支分部局の概要(7,836KB)





松本小委員長 それでは、まだお見えになっていない委員の先生もいらっしゃいますけれども、時間がまいりましたので、第8回の専門小委員会を開会いたします。
  本日は、「道州制のあり方」についてを議題とし、その基本的考え方という観点から意見交換を行います。
  最初に、事務局において関係資料をとりまとめておりますので、事務局から説明させます。
久元行政課長 それでは、事務局として用意いたしました資料を順次ご説明申し上げたいと思います。
  まず、資料1「道州制に関する検討の必要性」をご覧いただければと思います。
  前回まで国と地方の役割分担、また都道府県や圏域の現状からの議論を行っていただきました。このペーパーはそれらの議論を踏まえまして、今なぜ道州制について検討を行う必要があるのかということについての論点をラフに記したものであります。
  道州制を行うに当たっての基本認識ですけれども、我が国の地域社会は、人口減少と高齢化の同時進行、経済のグローバル化と産業・就業構造の激変、こういったかつてない構造変化に直面している。今後、こうした課題に的確に対応していくためには、地域における総合性・機動性・柔軟性を備え、広域的な圏域を単位として戦略的な施策を展開できるような、安定的で持続可能な行政体制を構築していくことが必要ではないか。
  このため、国と地方の役割分担の基本的な考え方に即して、国の役割は、国際社会における国家としての存立に関わる分野等に重点化・純化していくことが必要ではないか。内政における諸課題への対応は、基本的には地方が主体的に担うことができるようにしていくことが求められているのではないか、こういう基本認識を記しております。
  検討の視点ですけれども、前回のご論議を踏まえまして、3つの観点から必要性を論じております。
  第1は、役割と権限の観点からであります。Iのような基本認識に立ちまして、市町村合併の進展による基礎自治体の規模・能力が拡充しているといった状況を踏まえますと、今後の広域自治体は次のような方向を目指すことが必要ではないかということで2点書いております。
  1つは「補完性の原理」、これは事務配分に当たって、まず個人ができないことを共同体がやる。共同体の中でも一番身近なところがやって、それができないものを順次上のレベルがやっていくと、こういう原理だと思われますが、この「補完性の原理」や「近接性の原理」、これは最も近いところでの行政主体が事務を担う、こういう考え方かと思われますが、こういう原理に基づいて、住民に最も身近な基礎自治体が担うことができるよう、現在の都道府県が担っている権限・事務の多くを規模・能力の高まった基礎自治体に移譲していくことが1つであります。
  一方、1)の考え方によって基礎自治体が担うこととなる事務以外の事務については、現在は国が処理しているものも含めて、広域自治体において企画立案から管理執行までをできる限り一貫して行うことができようにする。そういうことが求められているのではないかということを書いております。
  また、全国的な統一性の確保等の必要性から国が企画立案を担うべき事務、これは限定すべきという考え方になろうかと思いますが、そういうものであっても、現在、とりわけ地方支分部局が有している管理執行に関する権限については広域自治体に移譲していくということが求められているのではないかということであります。
  2番目に圏域に関する現状と課題の観点であります。前回もご論議いただきましたように、都道府県単位で見ますと、各地域の経済力や財政力等に大きな格差がありますが、広域的なブロック単位で見ますと、規模・能力に関して自立的な発展が期待し得る圏域として把握することができる。こういう単位を、将来の広域的な政治行政単位の在り方として考えることができるのではないか。実際にそういうブロック単位であれば、国際社会において、ヨーロッパやアジアの幾つかの国にも比肩し得る規模・能力を有する圏域となり得るのではないか。現実に広域的な行政課題につきましては、現行の都道府県を単位として、広域連合や協議会等の活用による広域連携も模索されているわけですが、抜本的な対応のためには、道州制の導入等による区域そのものの拡大が必要ではないかと記しております。
  3番目が組織・運営と財政の観点からであります。こういう位置づけや今後期待される役割からみますと、広域自治体の組織編成についても、あるべき広域自治体という観点から見直す必要があるのではないか。
  前回具体例でご説明申し上げましたが,今後の市町村合併の進展や電子自治体の実現などによりまして、市町村との連絡調整や内部調整といった業務が急速に効率化され、広域自治体の業務内容を含めた有り様が一新される可能性がある。その結果、少子化社会の到来、危機的な財政状況といった国・地方を巡る状況の中で、圏域を単位とした行政課題に戦略的に対応できるよう、広域自治体の組織・運営の在り方についても抜本的に見直す必要があるのではないか。こういう観点から必要性を論じております。
  別紙といたしまして、道州制が導入されたとした場合に想定される、国と地方の役割分担のイメージというものをつくらせていただきました。もちろん、この役割分担につきましては、まだ十分議論が熟しておりませんが、仮にこれから道州制の制度設計についての議論に進んでいくとなりますと、やや抽象度の高い論議になりますので、そういう議論の際に、想起される一つのイメージとしてお受け取りをいただければというふうに思います。
  1つのカテゴリーは、国が企画立案から管理執行までを一貫して担う事務、この部分については,仮に道州ができたとしたときに手を出さないというものであります。そういうものとしては、国家の存立に直接関わる政策に関する事務のほか、国際基準の遵守等の見地から全国的に統一されるべき基本ルールに関する事務であって、特に国自らがその実現を担う必要のあるもの、極めて高度の専門技術を要する事務などが考えられます。外交、防衛、安全保障など、そこにありますようなものが例として考えられるのではないか。またその際、これは個別分野の行政分野だけではなくて、そういう個別分野の行政を行っていく上に必要な内部的管理、財源ですとか、人ですとか、行政組織ですとか、そういう管理のために必要な事務が含まれる。国税、国有財産管理がそういうものに当たるのではないかということであります。
  それ以外の事務につきましては、幅広く地方、つまり広域自治体である道州制と基礎自治体である市町村が広く担うということになるわけでありますが、これを道州と市町村に分けて例示をしております。道州が担う事務の中でも、まず、道州が企画立案から管理執行までをできる限り一貫して担う事務が考えられます。これにつきましては、道州が企画立案を自らの判断で行うということでありますが、産業振興や国土保全管理を中心としたような事務が考えられようかと思います。例示といたしましては、地域経済振興、広域観光、あるいは次のページをご覧いただきますと、圏域における広域的な国土保全管理、広域的見地から行う環境管理、あとは防災関係のものといったようなものが考えられます。もちろん、これらのものも国として企画立案が全面的に排除されるものではありませんけれども、道州が基本的な企画立案を担うということが想定されるのではないかという考え方を書いております。
  その一方で、主として国が企画立案を担って道州が管理執行等を担う事務もあるわけで、こういうようなものといたしましては、例えば雇用労働基準、産業廃棄物対策、医療監視、骨格的・基幹的な交通基盤、水系管理、高等教育、広域警察といったようなものが考えられようかと思います。それ以外のものは市町村(基礎自治体) が幅広く担うということになります。
  例えば子育て支援や生涯学習のように地域の実情に則してきめ細かに対応する事務については、基本的には市町村が自ら企画立案をしていくということになろうかと思いますが、その一方で、国や広域自治体が定める基本ルールや基準等に即して行うような介護保険、生活保護、義務教育、こういった人的要素が強い事務ですとか、土地利用調整、身近な交通基盤のように住民の参画・合意を得ながら行うことが望ましい事務といったようなものもあるわけであります。一つのイメージであります。
  次に資料2をご覧いただければと思います。道州制の制度設計に関する論点として、10の事項を挙げさせていただきました。これらの事項を一つ一つ具体化していく、相互に関連させながら具体化していくということが道州制の制度設計につながっていくというふうに考えられますが、まだ今日は入口の段階でありますので、10の項目、この項目だけで果して十分なのかどうかということも含めてご議論をいただければというふうに思います。
  なお、この中には、税財政制度、財政調整につきましては入れておりませんが、これらの事柄は、道州制の基本設計をどういうふうに考えていくのか、その如何によって大きく変わってくると考えられますので、もう少し論議が熟してから私どもなりの材料を用意させていただければというふうに思っております。
  では、順次ご説明を申し上げます。
  まず1つの論点は、憲法における道州の位置づけということであります。道州を現行憲法上の地方公共団体として位置づけることとするのかどうかということであります。位置づけるといたしますと、地方自治に関する憲法上の制度的保障が及びます。また、事項7(議決機関と執行機関の在り方)にも関連するわけですが、その場合には、議会の設置そして長と議会の議員を直接公選とする、こういうことが憲法上の要請になるわけであります。
  一般的には道州は大きな人口・面積を擁することになろうかと思いますけれども、道州を憲法上の地方公共団体と位置づけ、直接の公選の長を置くということが議員内閣制をとる国の行政制度と整合的と言えるかどうかという論点があろうかと思います。逆にこの点についての整合性を保とうとする、つまり何千万という有権者が直接道州の長を選ぶ、そういうようなことにはしないというふうにいたしますと、余り規模の大きい道州を出現させないということになるわけで、そういう意味からしますと、道州の規模に内在的な制約というものが出てくるのか出てこないのかといったようなことが論点になろうかと思います。
  逆に、現行憲法は、これは政府は一貫として二層制の地方自治制度を要請していないという立場に立っておりますけれども、そういう立場の下で、道州を憲法上の地方公共団体として位置づけないという選択肢があり得るのか。その場合には、憲法上の制度的保障が及ばない広域自治体として道州を位置づけることになるわけでありますが、そういうような道州を創出させることが地方自治、地方分権の観点からどう評価すべきなのかということが問題になろうかと思います。
  4ページをご覧いただきたいと思います。憲法上の論点からさらに進んで、立法政策上の法的性格をどう考えるのかという問題であります。道州を憲法上の地方公共団体と位置づける場合において、その法的性格は、基礎自治体たる市町村と基本的に同じかどうかということであります。憲法上の地方公共団体として位置づけない場合においても、立法政策として地方公共団体と位置づけるということにするのかどうか、換言いたしますと、「国の総合的な地方支分部局」、あるいは「国の機関でも地方公共団体でもない新たな中間的な団体」、こういうようなものは構想しないということにするのかどうかということであります。
  なお、この道州の法的性格をどう考えるかということによりまして、直接参政制度の適用、あるいは住民自治の在り方ということも変わってくるのではないかと考えられます。実際問題、道州が大規模な人口・面積を擁するといたしますと、実態的にも直接請求制度における署名収集や投票運動に制約が生じるというようなことも出てこようかというふうに思います。
  資料としては、かつて第4次地方制度調査会が国・地方の中間的な性格を有する「地方府」という構想を出したことがありますので、資料として添付させていただきました。
  8ページをご覧いただきたいと思います。3番目の論点、国と地方の役割分担についての考え方であります。国の役割を重点化していくことについては、大きな考え方としては大きな異論はなかろうかと思いますが、その基本的な考え方は2つの視点があるのではないか。1つは、この道州制の導入によって広域自治体の規模・能力は拡大することを踏まえ、現行では、全国的な規模・視点に立って行うべきものとして国が処理しているものを中心に道州に移譲する。つまり、区域が大きくなるから、今、都道府県を越えて行っているものを中心に移譲するというのが1)の考え方であります。
  2番目は、それだけにとどまらないで、国の役割を重点化・純化するという考え方をさらに強くとって、1)の観点にとどまらないで、国の役割の一部を移譲していくという考え方をとるのかということであります。この1)と2)は、相対立するものではありませんが、どちらの立場をとるのかということによって権限を移譲させていく範囲に差ができてくるというふうに考えられます。いずれをとるといたしましても、次に、国の役割の重点化・純化を図るに際しまして、これを担う主体をどう考えるのかという点が論点として出てまいります。
  1つは、国に残るものについては、できるだけ企画立案から管理執行までを地方支分部局を含めて直接担うということを原則にする。2番目は、法定受託事務制度方式を活用してできる限り道州において担うということを原則とする。その折衷的な考え方もあろうかと思います。
  次に4番目の論点でありますが、11ページをご覧いただければと思います。道州と基礎自治体の事務配分についてであります。現在の考え方は、「補完性の原理」、あるいは「近接性の原理」を採用されていようかというふうに考えられますけれども、まず基礎自治体に優先的に事務を配分して、そして次に都道府県に配分をするという考え方をとっております。
  下の括弧の中をご覧いただければと思いますが、地方自治法は、「普通地方公共団体は」というふうに書いて、「地域における事務及びその他の事務・・・・・・を処理する」と書いて、そして市町村は、基礎的な地方公共団体として一般的に処理する。そして都道府県は、こういうものを処理するという書き方をしているわけであります。これは現行の考え方ですけれども、それを踏襲するのか。あるいは、2)にありますように、基本的な考え方はこうであるにしても、道州がこういう役割を担うということをはっきりと積極的に位置づけて、道州がこういう事務を処理する、こういう役割を担う。市町村はこういう役割を担うということを明確に規定するという考え方が別途あろうかと思います。
  12ページをご覧いただければと思います。5番目に道州の区域についてであります。道州の区域は何を基準として定められるべきか。1つの考え方は、地理的、歴史的、文化的な結びつきを重視するという考え方で、現在も存在している大ぐくりのブロックを一つの基準としながら、画するという考え方であります。この場合には、道州間の経済規模や人口、財政力に大きな格差が生じることになるのではないかと思われます。
  別の考え方は、原則として各道州ができるだけ自立をしていくという考え方を重視するもので、この場合には、1)のようなブロックにこだわらないで、機能的に区域を設定するということになろうかと思います。ただし、この場合にも、三大都市圏に人口や経済が集中しておりますので、これでもって十分な均衡が図られるわけではもちろんありませんけれども、できるだけ、そういう方向を目指すということであります。
  もう一つの切り口は、首都あるいは三大都市圏の区域とその他の区域で異なる区域の設定基準を用いることはあるのかということであります。首都・三大都市圏には、人口あるいは産業が集積しておりますので、ここは必ずしも区域の広い狭いにこだわらないで、狭い区域で道州の区域を設定する都市州のような考え方もあろうかと思いますけれども、例えば、そういう考え方で道州の区域を画する。それ以外の地域については、上のような考え方で区域を画するということであります。
  6番目の論点、14ページをご覧いただきたいと思います。これは27次の答申の中にも触れられていることでありますが、道州の設置方法としては、都道府県の発意による申請方式ということが1つ。この場合にも、道州への移行について必要な要件は法律で定めることにするのかどうかということが論点としては出てまいります。もう一つの方法は、道州の区域は、「国のかたち」と密接に関連することから、法律によって定めて設置する。このいずれの方法をとるのか。いずれの場合においても一斉に移行するのか、順次移行するのかという選択肢が出てまいります。
  また、移行プロセスをどう考えるのかも論点として挙げられます。一気に都道府県から道州に行くのか、あるいは段階的に移行させるのか。その場合に経過的に都道府県を道州の中に地方公共団体として存続させるということがあり得るのか、あるいは普通地方公共団体としてではなくて、権能がより小さく、独立性がより低い特別地方公共団体として存置するということも考えられるのか、あるいは、さらにその後に従前の都道府県を地方公共団体ではなくて、行政区域として存続活用する。つまり出先機関を置くということですけれども、そういうようなことが考えられるのか。いずれにしても、移行の準備段階として、広域連合を活用するということが考えられるのかどうかということであります。
  7番目に議決機関と執行機関の在り方、16ページをご覧いただきたいと思います。最初の論点と関連するわけですが、道州を憲法上の地方公共団体と位置づけますと、道州の長と議会はともに公選制とすることが必要になります。憲法上の地方公共団体と位置づけない場合には、これは8月の4日に長谷部委員が意見陳述でおっしゃいましたように、かなり自由度が広くなります。首長制以外の執行機関の在り方ということも視野に入ってまいります。参事会などの合議制の執行機関、あるいは議会が執行機関を選任する、議院内閣制も選択肢として視野に入ってくるということであります。
  我が国の憲法のように、長も議会も必ず直接公選にしなければならないという規定は、諸外国の地方制度ではほとんど見当たらないところでありまして、制度的な国際比較なども行いながら、この点について議論していく必要があるのではないかというふうに思われます。
  いずれ、それぞれの項目につきまして、諸外国の制度について、私ども今調査を進めておりますので資料を用意させていただきたいと思いますが、とりあえず、資料の17ページ以降は、イギリスあるいはドイツでは、一つの国の中でも多様な執行機関の在り方、地方自治制度の構造が見られるという資料を添付させていただきました。
  事項8、資料の20ページは、長の補助機関・内部組織をどういうふうに考えるのかということであります。やや各論的な部分になりますので、こういう項目があるということについてだけ指摘させていただきます。
  事項9、23ページですけれども、道州に対する国の関与の在り方であります。現行の関与の法定主義や基本原則は分権改革によって確立されたわけでありますけれども、それを基本としながら、関与の類型の見直しを検討する必要はないか。道州は内政に関する事務の相当部分を担うことになりますので、国による適法性の確認、あるいは確保をどう図っていくのかという視点があるのではないかということであります。
  また逆に、道州の方から国の政策形成についての参画ですとか、意見具申についてどう考えるのかという議論もあろうかと思います。
  我が国の地方自治制度は、中央集権的であというイメージが流布しておりますけれども、国の地方公共団体に対する監督という面に着目いたしますと、そのツールは比較的謙抑的であると考えられます。
  例えば25ページをご覧いただきますと、世界地方自治憲章草案、これを抜粋させていただきましたが、その8条5項を見ますと、地方議会の停止又は解散、執行機関の停職又は解職ということが制度的にあり得るということが前提になって書かれております。現実に諸外国の制度を見ますと、これらの規定がかなり幅広く見られるところであります。この種のものをすぐに考えようということではもちろんありませんで、道州制という新しい地方制度を構築する場合には、国・地方関係のルールについても新たな観点から見直す必要があるのではないかということであります。
  10番目の論点ですけれども、26ページをご覧いただきたいと思います。大都市等に関する制度であります。道州制における大都市制度をどういうふうに考えるのかということは、道州制の制度設計に当たっての重要な論点であると考えられます。大きなラフな選択肢といたしましては、現行の指定都市と同じように、道州の中に置かれ、市に関する特例と位置づけるという選択肢であります。この場合に、今の都区制度、指定都市制度に手をつけるのかつけないのか。この二つの制度は全く逆の方向を向いた制度でありますので、これを併存するということに仮になりますと、その点についてどう考えるのかということであります。
  もう一つの選択肢は、首都及び三大都市圏、場合によれば三大都市圏以外の大都市圏域も含み得るかと思いますが、かつての特別市と同様に、道州の区域から外れて、道州とみなされる特例的な市の制度を考えるかということであります。これは都市州的なイメージであります。この場合は都市州に区を設けて、公選の区長と区議会の議員を擁するというふうにするということも選択肢の中に入ってこようかと思います。例えば東京都から市町村を除きまして、つまり東京都の区部ということになりますが、これを東京広域市というような形で道州と同じように位置づけるといったようなイメージであります。あるいは首都または首都圏についてのみ、この2のような制度を設けて、それ以外の圏域については、1のような制度を設けるということもあり得るのか。あるいは2のような制度をほかの大都市圏にまで拡大をするといったような選択肢もバリエーションとしてあろうかというふうに思います。
  29ページですけれども、韓国が広域州、広域都市州の制度をとっております。ソウル特別市、それから、釜山、大邸などの6つの広域市は、道と併存する形で広域自治団体として位置づけられておりますので一つの例としてつけさせていただきました。
  以上が資料2の道州の制度設計に関する論点であります。
  それから、前回などについてご指示がありました地方支分部局の資料を3種類用意さていただきました。
  まず概括的なデータですけれども、資料3−1をご覧いただきたいと思います。国の地方支分部局の定員であります。国家行政組織法9条に基づきます地方支分部局につきまして平成15年度末の定員をまとめております。12の中央省庁の中で、内閣官房と、環境省が地方支分部局を持っておりませんで、それ以外の省庁がここにありますような地方支分部局を持っております。
  その定員の状況ですけれども、この表で数字をお読み取りいただきたいと思いますが、トータルで見ますと、2ページ目でございますが、この15年度末の国の省庁の定員76万5,000 人のうち、本省の定員が54万6,000 人余り、地方支分部局の定員が21万8,000 人余りということになっております。この地方支分部局の具体的な事務の内容、設置の経緯、それぞれの省庁が個の地方支分部局を必要と考える理由、また組織図につきましては資料3−3に用意をさせていただきましたので、後ほどご覧いただきたいと思います。
  資料3−2は地方支分部局が行っている事務を私どもなりに類型化をさせていただきました。絶対的に必ずこういうふうになるというわけではないわけですけれども、地方との関わりという見地から幾つかのラフな分類をさせていただきました。一定の割り切りでつくらせていただいたものであります。
  地方支分部局が実施している事務の一つのカテゴリーは、国の行政機関限りで概ね完結しているのではないかと考えられるものであります。そのうちの、最初の類型が個別行政分野に関するものであります。国の行政機関限りで完結しているかどうかを考える場合に一つの参考となる材料が、分権一括法改正前の地方自治法2条10項であります。この規定では地方公共団体が処理することができない国の事務を列挙しておりました。8つの項目を列挙したわけでありますけれども、これを参考にいたしますと、刑罰及び国の懲戒に関する事務は、地方公共団体は処理することはできない。これには矯正管区の、例えば刑務所等の管理が当たるのではないか。国の航行、気象及び水路施設に関する事務も同様に、地方運輸局が行っているもの、管区気象台が行っているもの、管区海上保安本部が行っているものなどがこれに当たるのではないかというものであります。
  あと4以下のものにつきましては、JRNTT、あるいは独立行政法人制度の創設などによりまして、事業の実施はここに書いておるようなところに移管されております。こういう8つのカテゴリーに入らないようなものでも、公正取引委員会地方事務所が行っております独禁法関係の事務、防衛施設局、総合通信局、法務局、地方入管局、公安調査局、財務局が行っておりますこれらの事務につきましては、概ね国の行政機関限りで完結しているのではないかというふうに考えられます。
  第1のカテゴリーに属するもののうち別の観点からの分類ですけれども、国税や国の行政組織、管理に関するものとして、税関、国税局、管区行政評価局、財務局の事務というものが挙げられようかと思います。このほか、一部の事務、例えば、窓口対応、あるいは経由事務といったようなものを地方公共団体が担っておりますけれども、大部分のものは国で完結しているものと考えられるものとしては、法務局が扱う戸籍に関する事務、地方社会保険事務局が行っております国民年金事業の実施といったものが考えられようかと思います。
  もう一つの大きなカテゴリーが地方公共団体の事務と関連する事務であります。同種の事務事業を地方公共団体と役割分担して実施していると考えられるものであります。このカテゴリーといたしましては、地方厚生局が行っておりますような医療法人、社会福祉法人の認可・指揮監督などをはじめ、資料に記載しておりますようなそれぞれの地方支分部局が行っておりますような事務があるのではないか。また、地方公共団体の事務の連携調整に関するものとして、沖縄総合事務局あるいは管区警察局が行っている事務ということが考えられるのではないかというようなラフな分類をしております。もちろん、これはすべての地方支分部局の事務について、悉皆的に分類したものではありませんで、あくまでも例示であります。一つのイメージとしてお受け取りいただければというふうに思います。
  地方支分部局の概要につきましては、もし、後ほどご指示をいただければ、アウトラインについて後ほどご説明申し上げたいと思います。
  私からの説明は以上でございます。
松本小委員長  ありがとうございました。それでは、本日は、二、三の先生方が先に席をお立ちになりますので、そういうことも勘案しまして、「道州制に関する検討の必要性」というところについて、まずご質問とかご意見がありましたら、先にそちらの方からご意見、ご質問を伺いたいと思います。資料1の「道州制に関する検討の必要性」ということについて、ご質問なりご意見などございましたら先生方からご発言をいただきたいと思います。
  神野先生、お先に立たれるそうですので、もしよろしければお願いいたします。
神野委員 ちょっと私、専門ではないので、うまいコメントはできないのですけれども、かつ最近欠席をしておりまして、議論の流れからいってとんちんかんなことになるかもしれませんが。
  あとの資料2や3でご説明していただいたことの方向性を決めますので、どうして道州制が必要なのか、何のために必要なのかという点は少しきちんと議論して、わかりやすくしておいた方がいいと思うのですね。例えば、ごく単純に言って、行政面で効率よくやりたいからつくるのだという話になれば、区画のやり方もそういうふうになるでしょうし、それから自立というような意味でも、そこで営まれている人間の生活の自立ということを考えるのであれば、歴史的、文化的要素を考えざるを得ないと思いますので、何のための道州制かということを少し議論しておいた方がいいかと思うのです。
  私の理解では、ヨーロッパ地方自治憲章なども出てくる背景で、グローバル化といわばローカル化みたいなものが出てくる。グローバル化によって国民・国家の役割が非常に薄くなってきて、今まで国民・国家が行っていた仕事がかなりローカルな政府が担わざるを得なくなってくる。そのときにローカルとして意識されているのは、広域自治体がかなり念頭に置かれているはずなのですね。一方で、福祉とか生活面は市町村が担っていきますけれども、産業政策面で今までのような国民・国家レベルでやっていたのではなくて、国民・国家が成立する前にあったような、そういうローカルなリージョンというか、地域、バイエルンとか、フランスで言えばアルザス・ロレーヌとかというようなところが個性に満ちた地域の能力を出し合って新しい産業をつくって、国民・国家を越えて情報や知識として発信していくというようなことはかなり意識されているのではないかと思うのですね。
  ですから、私、前から思っているのですが、そういう意味で道州ということを考えるときには、産業政策というか、産業面の視点というのをかなり強く意識、市町村合併は、対人社会サービスとかというようなことを意識しなくちゃいけないと思うのですけれども、それぞれの持っていた地域的な個性と、伝統的に産業を営んできた蓄積を生かして世界にどうやって発信していくのかという話になるのだろうと思うのですね。どうして道州なのかという点を少しきちんとやっておかないと、例えば単に行政の問題だけで、道府県だけでは広域化してきて行政がいろんな面で不具合が起きていると、だからやるのだという話なのか、それとも、今まで国民・国家が握っていた産業政策にかかわる権限を下ろしていくのか。多分、私の考えではそちらの方に近い。中を見てみると、フランスのリージョンみたいなものをイメージしていて、本当の連邦制みたいなものをイメージしているわけではありませんので、国民にも、どうして道州をつくらないとまずいのかということを、わかりやすい論理を、まず基本認識というか、目的で示した方がいいのではないか。ここでまとめられなくても、こんな考え方もあって、こんな考え方もあるということを少なくとも幾つかの考え方でまとめておく。そうすると、次の区域をどうしますかとか、性格をどうしますか、役割分担をどうしますかというようなことがそこから出てくるのではないかという気がいたしました。ちょっと抽象的ですが。
松本小委員長 ありがとうございました。そのほかの先生方いらっしゃいますか。世古先生も11時半ごろお立ちになるというお話ですので、できましたらお願いいたします。
世古委員 私は前回休んだので、今回拝見して、国の方からの国がやるべきことからずっと整理されていただいたと思うんですが、資料1の別紙のところで市町村が担う事務という形で、「例えば」というふうに幾つか書いてくださっているのですが、今、神野先生がおっしゃったように地域のそこに住んでいる人たち、地域の住民にとってというか、道州制になったときに何が一体よくなるのかということをはっきりさせるためには、今回の整理は国からの、上からのずっと整理をしてきましたが、今度もう一度市町村レベルが担う事務をもうちょっときちんとやってみて、国と市町村との役割分担が明確になるように、この3のところについてのもう少し詳しい整理というのをしていただくといいのではないかなと思います。
  特に、例えばというふうに「子育て支援や生涯学習のように」と書いてありますが、住民に最も身近な総合的行政主体として、きめ細かに対応することが望ましいものというのはもっとたくさんあって、それが国と地方との役割分担のところで、地方と国との考え方の違いがあるのじゃないかというふうに思いますから、多分、市町村レベルに担うべきものというのが、地方六団体の方もおられますので、特に、地方だったら、このことは道州になったときもっと担えるよというものを出していただいて、その意見をまとめていくというのも必要ではないかというふうに思っております。
松本小委員長 ありがとうございました。茂木先生、もしよろしければお願いします。
茂木委員 私も欠席がちでピント外れのことを言うかもしれませんが。
  つい二、三日前に、日本・米国中西部会という会がありまして、そこへ出たわけですが、アメリカの中西部から4人の知事が来られていろいろな議論をしたわけですが、それぞれの知事が自分の州に来ればこういういいことがあるということで一生懸命企業を誘致しているわけですね。これは別に今始まったわけではなくて、前からそうなのですけれども、日本の知事さんも何人か出ておられたわけで、もちろん日本の県でもやってできないことはないと思うのですが、恐らく限界があるのだろうと思うのです。今、小泉さんは日本向けのFDI(海外直接投資)を倍増するのだ、あるいは観光立国で行くのだということを言っておられていろいろなことをやっておられますけれども、一番手っ取り早いのは、各地方を競い合わせるということだと思います。そうすると、アメリカでもそうであるように各県が競い合うことによって全体の直接投資も増えるということにもなると思うのです。ですから、そういう意味で、今の県でもできないことはないけれども、県よりも少し大きな規模にして、そこで権限を与えて、競い合うことよっていろいろな経済効果が出てくる。経済効率もよくなるということで、国民の福祉につながるのだろうということを、この間アメリカの知事さん方の話を聞いていて感じたわけです。
  そういう意味で道州制を日本でどんどん進めるということは大変結構なことだろうというように思うのですが、ただ、今までも道州制の議論というのは何回もあったはずです。私がちょっと伺いたいのは、今度こそ真剣にやっているのかどうかということです。そろそろ時期としては真剣に考えるべきだと思うのです。ここで議論しているばかりではなくて、いつ、どうするのだということを、これは、もちろん、いろいろな政治との絡みがありますからそう簡単にいかないけれども、イメージとしては、あと10年ぐらい経ったらこういう形にしたいという、地方制度調査会としてのイメージというのがあっていいのではないかなと思うのです。それがそのままいくかどうかは別にして、ただ、議論だけしていると、必要だよ必要だよと言いながらいつまで経ってもできない。また30年ぐらい経って同じような議論をやっているということになるのではないかと思うのです。つまり、いつごろどうなるのだということを考えながらやるべきではないかという感じがいたします。
  それから、そういう意味からすれば、一遍にこうあるべきだという姿でぼーんと持っていく、一遍にヨーイドンでやるのではなくて、イメージとして、こういう姿にするのだということはもちろん描いておかなくてはできませんけれども、そこへ行く道筋としてはいろいろな方法があって、できるところからやっていっていいのではないかというのが私の意見です。
  以上です。
松本小委員長 ありがとうございました。会長、今のことについて何か・・・・・・。道州制をこの地方制度調査会で今度は真剣に取り上げるのかとおっしゃいましたので、会長から。
諸井会長 これは総理の諮問にもちゃんと入っているのだから、それは真面目にやるべきものだと思いますね。それでもう一つ言うと、多分、実際に実現するのには、おっしゃるように10年、あるいはもっと時間がかかる。要するに今世紀の課題ぐらいの大きな問題だと思うのですけれども、しかしそれだけに、逆になるべく早く議論を始めて、なるべくその方向性をだんだん絞って、そして世論がそれを十分理解して賛成をしてくれると、そういうふうな体制を早くつくる。早く始めないことにはなかなかそれができない。それができないと、政治的ないろんな駆け引きでやっているようなことではなかなか実現しないと思うのですね。我々は任期が何しろあと1年半でしょう、1年半でとにかく答申をまとめなくちゃいけないわけですから、あんまり抽象的な議論ばかりしてもしょうがない。やはりおっしゃるように、実現をするのだというまず意欲が非常に強くあって、そのためにこうこうこういう選択肢があると、皆さんひとつ大いに議論して世論を固めてくださいという、そういう感じに持っていかなきゃいけないのじゃないかと思います。それでいいですか。
松本小委員長 ありがとうございました。それでは、ほかの委員の先生方ございますか。どうぞ林先生。
林委員 いろんなところで道州制の検討が行われて、そのときに、なぜ道州制なのかということが必ず出てくるわけですね。その場合に小を大にするという議論と、それから大を小にするという議論があって、やはり一つの流れとしては、国の役割を重点化・純化するという流れの中で地方公共団体に権限を移していく場合に、果して県で十分なのかというところが一番大きな道州制の一つの意義ではないかというぐあいに思うのですね。例えば、公共団体間の調整を行う場合に、今現在、府県という一つの規模の団体があって、それを調整していかなければならないといった場合に、今は広域自治体がそれ以上のものがないので全国で調整をせざるを得ないと。ところが、もしそういう道州のようなさらに広域的なブロック単位の調整をする単位があれば、何も別に全国でやらなくても、それぞれの地域で調整ができればいいじゃないかという、それは特に経済・、産業といったようなところでは、そういうものが多いのじゃないか。
  そのように考えていくと、権限を地方に下ろす、道州制ができたから下ろすということではなくて、下ろしていく過程で道州制が必要なのだというぐあいに考えていくのが今までの一つの流れの中での受け止め方ではないかなというぐあいに私は思っているのですね。ただ、とは言いながら、今の地域の活性化だとかということを考えた場合に、都道府県の単位でやっていたのでは十分な効果が上がらないだろうというようなことで、その場合に、ひょっとすると、今のままでも連携をして地域の活性化に取り組むことは可能かもしれないわけですね。しかしながら、それを進めていったときに、やはり地方支分部局が持っている権限だとか、そういったようなものがその地域に備わっていることによって、もっと総合的な地域の活性化への取り組みができるとか、あるいは、こういう権限があれば、もっと思い切ったことができるのにといったような、そういうことが恐らくもっと一体化して広域化しないと地域の活性化につながらないという話と、それから分化というのは切る分けることは非常に難しいわけですね。
  ですから、そこらはどういう目的なのかということを、やはり基本的には分権、大を小にする、地方に権限を下ろすというところから出発しながら、広域的にやらなきゃならない場合に、今のままで果たしていけるのかどうかというような、ちょっと複雑ですけれども、そういう考え方でいかないと、効率化を図るというようなことでは、そして今の府県の権限だけでもってより広域化すればいいのだというようなことでは、ほとんど私は道州の意味は余りないのじゃないかというようにも思っていますので、目的をきれいに切り分けるというのは非常に難しいなというぐあいに思います。
松本小委員長 ありがとうございました。そのほかの委員の方。
今村委員 今の林委員の意見と一部重なるところがありますが、私も神野委員が提起された基本認識、なぜ道州制なのか、どうして道州制なのか、ここのところはかなり率直な意見交換が必要だと思うのですが、この検討の視点とも関連して、あるいは今、林委員が指摘された現行の府県制度が本当に限界に来ているのかどうかの見極めをきっちり一回しないといけないと思うのです。何となく区域が狭いではないか、狭すぎているのでないか、あるいは制度的に、これから基礎自治体を充実させていくと、先ほども出ていましたように連絡調整というのはかなり純化していくのではないか。残るのは広域だというような話になっていますが、市町村合併の推移などを見ましても、依然として私の認識では、現行都道府県の基礎自治体に対する補完機能というのは、ウエートがどうなるかはともかくとして、やはり重要な機能として残りましょうし、そうしますと現行都道府県制がほんとに限界に来ているのかどうかという、この部分の見極めをどうしてもやらなければならないという点が1点あると思います。
  それから、もう既に同じようなお考えだろうと思うのですが、基本認識では安定的で持続可能な行政体制を構築すると、この認識は私も共有しますけれども、しかしページをめくりますと、2ページには、将来の広域的な政治行政単位の在り方として考えることができるのではないか。ここに「政治」が入ってまいります。この基本的な視点としての、例えば「補完性の原理」とか「近接制の原理」、私の認識では、これはいずれもガバメント、政治の単位を設計する際の基本原則でありまして、政治の問題というのを抜きして行政体制の問題としてだけ考えるわけにはいかないわけであります。あくまでも住民の自治の仕組みとして広域自治体ということを設計するとなれば、政治的な単位であるということをかなり重視していかなければならないというふうに私は思うのです。
  先ほど申し上げました第1点と第2点に絡めて、現行の広域自治体としてある都道府県政そのものの持つ限界がほんとに来ているかどうかの検討を一段階する必要があるのでないか。それ以外で今日ご説明いただいたのは、税財政制度のことを抜きますと、かなり論点整理はいい線いっているのではないかなという認識を持ちます。
  最後に、そういう観点からしますと、2ページ目の2ですが、「圏域に関する現状と課題の観点から」の2番目の「○」なんですけれども、つまり広域連合とか協議会等の活用による広域連携も模索されているが、しかし、抜本的な対応のためには道州制の導入等による区域そのものの拡大が必要ではないか。ここを今の時点で言い切るのは私は時期尚早というふうに認識しているという考えでございます。
松本小委員長 ありがとうございました。そのほかに。今のことに何かありますか、事務局、後の方の話。
久元行政課長 ありません。
松本小委員長 それではどうぞ。
薄井委員 私も資料1の必要性という資料はよく整理されているなと思います。また、いろいろな委員がご意見を今披露されましたが、それぞれに私も同感です。さらにもう一点議論の冒頭から意識しておいた方がいいと思われるのは、結果的に屋上屋になるような制度になってしまったのでは、多分、市民・国民の理解は得られないと思いますので、その点はきちんと踏まえておいた方がいいと私は思っております。
松本小委員長 ありがとうございました。そのほかの委員の方。
貝原委員 必要性についての資料は、よくここまで整理されたなと思っているのですが、神野先生もちょっと言われましたけれども、道州制をほんとにやるのかどうかというのは、「国のかたち」を将来をどう持っていくのかということとも非常に関連するわけです。私の意見では、明治以来、発展途上国型の我が国のかたちで、要するに官が主導をするという仕組みだったわけですね。そういうところから中央集権のシステムができていて、しかし今やそういう時代でなくなってきた。そういった意味では、日本の国全体がある意味では文明史的に転換期に来ているのではないか。そういうことだとすると、そういうバックグラウンドを背景にして議論しないと、国民の皆さんはなかなかわかりにくいのじゃないのかと。
  端的に言いまして、小泉総理は、「民ができることは民で」、「地方ができることは地方で」とおっしゃっていますが、私は地方分権というのは、「官と官」の間の議論ですけれども、そのバックにあるのは「官と民」の関係だろうと思うのです。今までほとんど官がやってきたことが、もう民の力の方が強くなっているのじゃないか。民に任せていいのではないかという部分がいろんな行政分野の中で出てきている。それを民にしていくのであれば、官の方のあり方もどうしたらいいのか。今のような何でも中央政府で議論をして決めるというようなやり方でなくて、もっと地方に任せる方が民の方の実力が出てくるのではないか。そういう大きな時代的な流れの中で議論すべきであって、そういった意味では、今の官の仕事がこうなっている、これをどう変えようかということでなくて、官の仕事自体も変えていくという中で分権の議論をしていかないと、国民にはなかなかメッセージが伝わってこないのではないかと思うのです。
  例えば、私は震災を経験して、震災のこと以外は余り言う立場じゃないのかもしれませんので震災の例を言いますと、実際の実態を分析された方が、自助努力が7割ではないかと、公の役割というのは1割ぐらいしかないのじゃないかということをおっしゃっているんですね、実際の実態を分析された方が。従来、防災ということになると、すぐ総理大臣の権限を強くしてとか国の体制をつくってと、こうおっしゃるけれども、国の体制をいかに強くして、いかにいろんな施設整備をしましても、実際大地震が来たときに命を救ってくれる力というのはどれだけあるのか。やっぱり基本的には国民が自分たちの家をちゃんと耐震性のものにつくるとか、あるいは地域のコミュニティ組織の中で人の命を救うシステムをつくるとか、そういった意味では、防災といったような権力が集中してやらなければいけないような行政でも、民の力の方が圧倒的に強くなってきているので、明治の時代であったらすぐ中央政府ということになるのでしょうけれども、今はむしろ民の力を強くする政策をみんなで考えていくということが圧倒的に人の命を救っていくことになる。そういうシステムをどうつくっていくのかということになると、やっぱり民間主体の仕組みをつくっていく、それに対して行政がどうサポートしていくのか。そうなっていくと、全国一律でどうこうというよりは、やっぱり地方でというような流れの中で物事が決まっていくような自己責任・、自己決定ということが悪く評価される部分もありますけれども、そうでないと世の中がうまくいかなくなってきている。
  そういう認識の中で、私はだらだらしたことを言いましたけれども、要は、官が受け持っていた部分をかなり民が今からは担っていかなければいけない、責任を分担していかなければいけない。民がそういう仕組みをつくっていく上で、官のあり方を国と地方でどうしていくのかということになると、地方の方へより大きな部分を持っていくと、こういう発想というのがないと、今の行政だけを見てどっちがいいのかという議論だけではちょっとわかりにくいのじゃないかという気がいたします。これは経済でも同じ視点を私は持っているんですけれども、従来のように、護送船団方式で国がずっとやるというような経済体制ではなくて、もう既に民間自体がネットワークをつくっていって自分たちでやるという時代になっているわけですから、経済政策自体も今までのような経済政策を考えて、国と地方でどっちがやるかという議論ではちょっと時代遅れになるのじゃないかと、このように思います。
松本小委員長 はい、篠崎先生。
篠崎委員 前回関西の特区の資料を提出させていただきました。そのときに、ちょっと申し上げたかと思うのですが、提言をまとめた研究会には、都道府県も入り経済界とともにやってきた。ところが、今回の提言をまとめたのは経済団体だけであったと。そのあたり、今、貝原さんがおっしゃった経済という視点から見れば企業や産業界が自分たちに自由にやらせて欲しい、そのためには国に対してじゃなくて、地元の行政に働きかけてそれが地方で決められるような、地方が権限をもつ、そんな仕組みにしてほしいという切迫した思いのあらわれであると思っております。そういう意味で「官から民へ」という、あるいは「国から地方へ」という流れの中で、もう既に現実に企業や、あるいは市民もそういうふうに考え行動していると思っております。
  そういった道州制の必要性と絡んでなんですが、もう一つ、今の府県が成り立っていかないのではないかということに関しては、私はもう少し考えるヒントとなる資料をいただきたいなと思っております。と申しますのが、前回の資料でいただきました都道府県の人口に占める特例市、中核市、指定都市の割合という図表がございましたね。6府県いただいたのですが、あの中で府県人口に占める特例市、中核市、指定都市、その人口比なのですが、ばらつきがございました。私はちょっとお願いをいたしまして全国のデータをいただいたのですけれども、その割合が一番低いところで茨城県の10%、一番高いところで神奈川県の80%なわけですね。今、府県と一言で言っておりますけれども、例えば、特例市、中核市、指定都市がそれぞれ処理なさっている事務がある中で、神奈川県のように80%が特例市、中核市、指定都市です。茨城県の場合には、10%しか特例市、中核市というのはないわけですね。そうしますと、残りの90%の市町村に対して県が果たしている役割や事務内容ということになってきますと、同じ府県と言いましても随分違ってくるのではないかという気がいたします。市町村の規模や能力にバラツキのあるそういった実態の中で府県のどの部分が問題で、何が時代に合わなくなっているのかということを少しきめ細かに見ていかなければと思っております。
松本小委員長 ありがとうございました。そのほかの委員の方。
小幡委員 道州制をとると言うとしても、どの程度本気で進めるのか、そういう話もございますけれども、やはり先ほどどなたかもおっしゃいましたが、国民から見て道州制、要するに改革ですので新しいことには間違いないわけですけれども、一体どういうメリットがあるかということは具体的に目に見えるような形で提示した上で、道州制がよいのだということを提示する必要があると思います。もちろん、その裏側では今の都道府県ではたちいかないということについての検証も同時に出さなければいけませんが、メリットはもちろんたくさんございますね。例えば各県でそれぞれ持っているものの中で要らないような重複のものについてはブロックにすればよいものもありますし、それからもう一つ非常に大きい事柄として、今日資料を配付していただきましたけれども、国の地方支分部局のブロックで国の方、いわゆる整備局とかでやっているものの中で、道州制になれば地方ができるのではないかという形でのメリットが当然見えてきて、この整理は、今日、資料3−2で地方公共団体の事務と関連する事務という形で出していただいたのがそれに当たると思いますけれども、これは目に見える形で出てき得るものかなと思います。
  ただ、印象論として思うのですけれども、ここの場におりますと、いかにもずっと明治以来からの都道府県制度、そろそろ変えてもよいのではないかという雰囲気になってくるのですが、国民レベルでは果たしてどうかということはあると思います。実はかなり前から頭出しだけされているのですが、先ほど申し上げたように今度は本気なのかどうかもわからないというのが国民レベルでも率直な印象なのではないかと。ですから、ここの地制調で、なるべく国民向けに発信していくといいますか、どういうふうな形がいいのかはまた考える必要があると思いますけれども、今度は本気で考えていくと、21世紀にもなったしというふうな形で世論はどうかという発信をしていく方がよいのではないかという感じがしております。
  それから、ただ、道州だけ決めるとしても、あとは長の公選をどうするかというような問題が憲法上の地方公共団体にするかどうか云々、なかなか難しい問題が後に控えているというのはございまして、もしも長の公選制でないということにして、いわゆる憲法上の地方公共団体でないというふうにした場合の、例えば徴税権の問題とか、いろいろそんなことを考えなければいけないとも思います。
  それからあともう一点だけ申し上げたいのは、割り振りのところで、警察が基礎的自治体たる市町村といわゆる道州ですね。先ほどの資料では広域警察が道州制だと書かれていましたが、その広域警察の意味ですが、今、都道府県警察でされておりますし、それについてはどう考えるかというのも1つ。警察というのは、住民にとっては身近は身近なのですが、そこら辺はちょっと資料になかったところですが、考えるべきかなと思いました。
松本小委員長 ありがとうございました。そのほかの委員の方いらっしゃいますか。警察の話ですね、もし答えることがあったら資料2以下については後でまとめてお願いします。どうぞ。
浜田委員 このテーマは今後ますますそうなんじゃないかなと思って頭を抱えているのですけれども、総論レベルですね。この基本認識のところでは、全くそのとおりだ、同感だという気持ちで目を通すのですけれども、一度具体的にといって入ってくると、その中身を見ますと、ほんとにウーンと考え込んじゃっているところなのです。だから指名されたから何か言わなきゃいけないのかもしれませんけれども。
  それで、こういうステップになるのかなと私なりに考え込んでいたのは、「官から民へ」、「中央から地方へ」、総論的には全く同感、賛成ですからそれを一歩でも進めたいと。進めるに当たって、絶対に中央から地方へは移しちゃいけない事務というのがここにずらっとありますね。これは常識的に当然なものが結構あるわけですね。国として一本化してなきゃならない。それでもかなり地方へ自由度を付加して移すのが、あとこんなのがあるよという中で、現在の都道府県単位という地方行政団体では、無理だこれはと、だめだできるわけがない、あるいはこんな弊害がありそうだ、無理だというのは何なのか、どれなのか。
  それから、できるだろうけども、広域の方がよりベターだなというのも結構あるだろうし、そういうのを詰めてみて、私はこれを一つの会社で組織変更と考えたときに、会社とスケールが全然違いますけれども、問題は、改革変更というのは大変な冒険であり、コストがかかり混乱を伴うものですね。それにかけるコスト、混乱と上がる成果、これから得られる成果というのが本当にバランスをとれるのかなこれはというところで、どうしても考え込んじゃうのですよね。だから、これは「中央から地方へ」という大変重要な、例えば教育問題一つとってもそれを全面的に移していく。もう地方の責任で云々というときに、今の都道府県単位ではそれは移せない、できないという重要テーマというのは何なのかというのを明確にしていって、それが広域事業体、九州なら九州という単位なら間違いなくやれそうだと言ったら、コストがかかろうが、混乱を乗り切ってでも変えていかなきゃいけないのだろうけどというあたりで行ったり来たりして、それから余計なことかもしれませんけれども、総論のところで「重点化」とか「純化」という言葉、私、ちょっと「えっ」と思って見たのですよ。「純化」の反対は何かな、「不純化」かなと思うと、不純なものは地方へというふうに私は読んじゃうので、「重点化」とか「特化」とかというところまではすんなり目が行きますけど、純化というのは、こういうところで使うのかな。余計なことかもしれませんけれども、ちょっと今日は前向きの意見というのをとても述べられないような状況で申し訳ありません。考え込んでおります。
松本小委員長 純化というのは、それは今のところで事務局答えてください。
香山総務事務官 特化でも。
松本小委員長 特化でもよろしいそうですから。ちょっと違うようにも思われますが・・・。それでは、紺谷先生ありません?
紺谷委員 先ほど「官から民へ」、「中央から地方へ」というのが逆らいがたい流れであるというお話がありましたけれども、少なくとも現状では「官から民へ」、「中央から地方へ」渡されているのは負担だけです。権限は一切行っていないような気がするのですね。特に現政権下では、経済に関する介入というのはものすごく、例えば金融であれ何であれ、かつてないほどの介入を行っているという現状があります。ちょっと余談になるのでございますけれども、私は地方分権はまず国庫補助負担金の削減ではなくて、負担金は100 %にするところから始まるとずっと主張させていただきました。本来、国が地方に義務づけておきながら、費用を全額負担しない、それをさらに削減せよというのは一体どういう話なのだ、それを地方が希望するというのは一体どういうことなのだと始めから議論についていけないような感じを受けていたわけでございます。
  削減してほしいのは、中央から地方への介入、官から民への介入ではないですか。それがどうして国庫補助負担金の削減という文言になるのか、ここにものすごい大きなスタートラインのゆがみというのを感じるわけでございます。削減してほしいのは補助負担金ではなくて、介入行政のはずではないですか。だとしたらば、それに伴う介入行政を削減せよとはっきり書くべきではないですか。それなのに補助金だけでなく負担金の削減まで改革とされ、地方の皆さんまで三位一体の改革とお呼びになるということ自体が私にはとうてい理解を越える不思議な事態でございます。そうすれば、地方に使うべき税源を国の業務の下請けに使わされているわけでございますから、国の仕事の経費負担がなくなったら地方財政は随分緩やかになって独自の地方行政だってできるのではないかというふうに思うわけです。
  それから、こういうご議論が、例えば補助負担金の削減が3兆2,000 億だとか何とかいうお話が出ているのですけれども、機関委任、現在では法定受託事務ですか、そういうものが一体幾らかかるのか。それをきちんと実行したら幾らかかるのかというご議論も一切なしに、シミュレーションもなしに、削減、削減、削減と一体どういうことなのでしょうか。初めから何を議論なさっているのか私には理解できないのですね。だから、そういう意味では、道州制の議論というのも、単に箱が変わっただけで中身は何も変わらないというような懸念を感じるわけです。まずは、中央の権限を縮小してご覧になったらいかがなのですか。負担金を全額お支払いになったらいかがなのですか。それで地方が非常に困っているということを世に問うて、それで中央の介入行政をどんどん減らしてみるということが必要なんじゃないですか。
  都道府県もそういうことを主張なさるのだったらば、皆さん方が市町村になさっている介入をまず隗より始めておやめになるべきではないですか。そうやってそれぞれ現場に任せた方がいいものは任せて、様々な試行錯誤があるとは思いますけれども、そういう形の中で現行ではどこがいけないのかと。現在の仕組みでは限界があると。そこで初めて入れ物であるところの町村合併とか道州制だとかの議論になるわけですよ。そうじゃなくでただ単に箱だけを議論したって中身が変わらなかったら同じです。下手したら道州制ができて、余った支分部局の中央官庁の皆さんがそのままどっと道に繰り込んできて何も変わらないということになったりはしないのでしょう。そういう懸念がゼロという保証をどこから私たちは得たらよろしいのでしょうか。
  それから、先ほど何回か「政治の介入」がというようなニュアンスのご発言があったと思うのですね。逆にこうした審議会の存在自体を私は疑問に思っております。選挙で選ばれた国会議員がおいでなわけですよ。国会議員の方たちが企画立案すべきなんじゃないですか。資料2の8ページに企画立案を国と地方のどちらが役割分担すべきかという問題提起があります。これが行政機関の話なのか、政治の話なのか、この文章を読んだだけではわかりませんが、企画立案はいずれにしろ政治の仕事です。国なら国の立法機関である国会の仕事ではありませんか。地方なら地方の議会の仕事ではありませんか。企画立案を、選挙で選ばれもしない、結果責任を何も負わない官僚の皆さんや我々のような一般人が担うということはあってはならないことなのです。「政治の介入」とおっしゃいますが、政治は国民の代表でございます。
  それから、9ページです。「法定受託事務とは」というのがあります。「事務の性質上、その実施が国の義務に属し国の行政機関が直接執行すべきではあるが、国民の利便性又は事務処理の効率性の観点から、法律又はこれに基づく政令の規定により地方公共団体が受託して行うこととされる事務」と。「国民の利便性」とここにあるのですよ。でも法定受託事務を規制する法律が国民の利便性を損なっているのじゃないですか。その前提で皆さん話していらっしゃるのじゃないですか。しかも、その実施が国の義務に属し、直接執行すべきと、それなのに、なぜ地方がその財源を負担しなければならないのですか。素人の理解を越えることです。
  今、経済的にも国際的にも大変な局面に日本は直面しておりますのに、町村合併だとか道州制だとかよくわかりませんけれども、銀行にしろ何にしろ、ともかく合併、合併、合併ですよ。それで前向きに今危機に直面してなさねばならないことに気持ちも時間もお金も割けないのです。合併なんていつやったっていいようなことじゃないですか。それなのに地方も中央も民間も、あれやれ、これやれといつやってもいいようなことをやらされて、郵政民営化なんてその最たるものですよ。それで本当にやるべきことが何もできない。地球は災害のサイクルに入っているにもかかわらず、防災上の観点から何をやったらいいのかとか、そういうことはほとんど何も議論されていないじゃないですか。
  せっかく委員に選んでいただいて、いつもいつも同じことを申し上げるのは恐縮なのですけれども、私は審議会制度は全廃すべきであると思っています。国会の中に委員会をこしらえて、我々メンバーはそこに付属する単なる知恵袋的な((知恵があればですけれども))役割を担う、あるいは現場の方をたくさんお呼びして公聴会を開くと、公開の場でそれを行うというのが本来の有り様でありまして、選挙で選ばれもしない、結果責任を一切負わない官僚の皆さん、我々のようないい加減な人種が決めていいこととは全然思っておりません。
松本小委員長 それでは、室谷委員いかがですか。
室谷委員 先ほどから基本認識のところの問題が出ておりまして、この中に地方分権の流れの中で、地方にいろんな独自性を持たせて行政を遂行していくという流れはわかるのですけれども、それだけではなくて、やっぱり地方の文化とか、歴史とか、その中にある個性というものを発揮していける、そういう社会になるのだよという前向きの考え方が出てこないと住民の方たちは、上から権限移譲してきたなというふうなことにしかならないなという、そういう感じを受けますので、やっぱり地域の中で、これは基礎自治体の問題と広域自治体、さらには道州制の関係ということもありますけれども、地域の中で生活する国民が生活しやすい流れになっていくのですよという考え方をぜひ前向きに出していただきたいというのが1つ。
  先ほど紺谷先生がおっしゃっていらしたように、地方の独自性を今度は出そうとする場合に、道州制の議論にすぐ話が行きますけれども、今までも規制緩和をしていけば地方の独自性が出せた、しかも広域連合でも出せたという、そういう事例があるわけですね。ですから、本当に今回道州制を実施していくというのであれば、国の各省庁が本当に分権という考え方のもとに事業をきちんと、移譲していくという決意が必要です。道州になった場合の道州、さらには先ほど話が出ました地方自治体はきちんと基礎自治体の方に移譲していくという、そういう流れの確保、これが基本になければ、こういうのは絵に描いた餅になってしまうということで、国の中でもきちんとこの考え方を踏襲していただきたいという希望でございます。
松本小委員長 ありがとうございました。どうぞ。
篠崎委員 2つ申し上げたいことがありまして、1つは基本認識の道州制の意義と必要性についてですけれども、まさに「官から民へ」、「国から地方へ」なんですが、国の役割というものを考えましたときに、これだけグローバル化している社会の中で、これからどんどん国の役割が大きくなってくる側面がございます。特に外交ですとか、防衛ですとか、安全保障ですとか、あるいは知識社会の中で学術文化など、これは逆に国の役割がこれまで以上に大きくなってくる。そういう大きな役割を担っていただくためにも、地方にできることは任せてくださいと、そして身軽になって国にこれから、もっともっとやっていただかなきゃいけないことがございますという観点もあるのではないかと思っております。
  それからもう一点は、論点の中でもう既にブロックの人口というふうな話が出ております。それをちょっと見せていただきましたら、12ページですか、道州の区域についてということなのですけど、この文言の中には、やはりできるだけ人口規模や面積で格差がないような均衡ということを少し意識しておられるのかなと思ってしまうわけです。私は人口や面積の格差というものがあってはならないという発想でない方がいいのではないかと思っております。現に先ほどおっしゃったように、地域の文化や歴史、伝統という個性から考えていきますと、規模というのはそれほど問題ではないのではないかと。その個性を生かしていく方向にあればいいわけですから、最低規模というのはあるのかもしれないですけれども、それぞれのブロックの区割りに伴い結果として人口格差があっても、それぞれがそれを個性と受け止めて自立していけるのであれば、それはいいと思っております。
  最近の府県を見ておりますと、元気のいい府県というのは、じゃ、人口規模が大きいところが元気かというとき、そうでもないななんて思っております。現行の市町村、あるいは府県の規模も随分格差がございますが、その中でも、それを個性として生き生きと経営していらっしゃるということを考えましたら、道州というのも最初から余り規模とか格差とか均衡という発想からスタートしない方がいいのではないかなと思っております。
松本小委員長 ありがとうございました。浜田委員。
浜田委員 今後議論を進めるに当たっての希望を申し上げたいのですけれども、この行政課題ですね、絶対国に残さなきゃいかんものはこういうものがありますねと。地方へ今までは中央集権で進めてきたけれども、思い切って地方へ移したいものはこれこれですというのを前にもちょっと資料で拝見した記憶があるのですけれども、これを全部網羅するというのはここでも議論できないし、数限りなくあると思いますけれども、単なるあとは・・・例示ですというものの中間ぐらいというのかな、大体主なものは網羅していますというようなものを出していただいて、それを地方でどーんと受けるとなった場合、どう想像がいくのかなという方をぜひ次回か次々回かその次ぐらいには議論をしたらどうかなというふうに思います。
  そのときに、現在の都道府県単位ではやっぱりどうなのか。中間、広域をまとめればうまくいくのかというのを私は期待と心配と両方ありまして、県民意識というのは結構あるのですよ。だから、一つの地域としてまとまって産業振興であれ教育であれ何かやろうというのは、まとまっても、それじゃ東北6県、九州7県がまとまったら、州民意識というのがないですからね。県の次は国という形でずっと八十何年来ているわけですから、その州民意識というのを新たにつくりながら、そこで思い切って、我々州民として責任を持って中国地区に負けるなというふうに急になるのかならぬのか、その辺まで考えますと、やっぱり地方へ移管する重要行政事務はこれなのだというのを具体的に見ながら議論に参加させていただきたいなと思っております。希望です。
松本小委員長 今の資料ですけどね、事務局どうですか。いわゆる役割分担のあるべき方向ですね。あるべき役割分担の考え方をもう少しブレークダウンした資料が示せますかということなのだけれども。
久元行政課長 そういう資料ができないかどうか少し考えさせていただき、できるだけその方向で考えたいと思います。
松本小委員長 ということでございますが。
浜田委員 はい。
松本小委員長 林委員。
林委員 今のリクエストは非常に難しいと思うのですね。というのは、今現在国がやるべき仕事はもうこれだけに限定しようじゃないかというところから出発をしていて、だから、それ以外は地方がやりましょうと。それが州でできるか、あるいは現行の県でもいいのかというのはまた次の段階だと思いますし、もし仮に州というのができたときに、それぞれの県単位のニーズのようなものをどのように吸い上げるのかというのは、またこれは州内の特性とか、これは合併のときにもそういう議論が出てきたように、当然そういう仕組みはつくっていかなきゃならないし、それのためには都道府県を残すのか、あるいは廃止しても、それに代わるようなものをつくっていくのかというのも、ちょっと次の議論だというぐあいに思うのですね。
  それと、今村委員がおっしゃった今の県で限界なのかという徹底検証をやらなきゃいけないということなのですが、私もそのとおりだと思いますが、実は前提をどう考えるかなんですね。つまり、今の県の国と地方の分担の中で県が限界なのかという話と、今後この道州制の議論には、恐らく国からの権限をもっと地方に下ろしましょうということを前提にした上での限界なのかどうかということを検討しなきゃいけないので、そこはちょっとまた次の議論なのかというようには思います。
  ちょっとそのあたりが少し私自身は、やはり規制緩和、そして補完性の原理で住民に近いところからやっていく、あるいは住民が個人でできるところは個人でやればいいという発想の中で、こういう道州制というのができているのだというぐあいに私自身は個人的には理解をしております。このレポートを読ませていただいて。ですから、例えば民に任せる場合も、国が一律に民に任せなさい、あるいは公でやりなさいというのじゃなくて、地域によって民に任せられるところもあれば、そうじゃないところもあるので、そういうものは、それぞれ民でやれるところは地域で考えればいいじゃないですかということができるような仕組みをつくりたいということなのではないかというぐあいに理解をしていますので、ちょっとそのステップの議論と、今、道州制の議論をするときの、そこらを切り分けなきゃならないのじゃないかという気がちょっとしております。
松本小委員長 今、林委員のおっしゃいましたことについては、小早川副会長お願いします。
小早川副会長 今、伺っていて、最初資料の話から始まったと思うんですけれども、あるべき役割分担でかくあるべしというのを事務局から出せるかというと、これはなかなか難しいと思います。ただ、具体的に議論する必要があるわけなので、例えば、今、国がやっている事務で地方自治法の1条の2に照らしてみた場合に、これはちょっとおかしいのじゃないかというような気のするようなものを、しかしそれを国がやる場合、それから県に移譲する場合、それから道州というものを考えて、そこにやらせたらどうかというようなことを何か議論の材料になるようなものをちょこっちょこっと出していただいて、それもここで何も一つ一つの事務について決着つける必要もない。結局は大きな箱を議論する、その手立てですけれども、そんなような形では議論は一歩進むのじゃないかというふうに思います。
松本小委員長 今、小早川副会長が前段については大体おっしゃいましたが、一つだけ。現在の都道府県の単位を行政区画として一応前提に、地方団体じゃないとしても何らかの土地区画を前提にして、その範囲で道州になっても対応していけるものと、やっぱりそれは無理だというものと、そこは区分けして、意識的に分けて整理できれば、もっといいとは思うのですね。
  それから後の話は、今村先生ちょっと意見がございますか、林委員がおっしゃったことで、さっきの。
今村委員 いや、ごもっともだと思います。
松本小委員長 要するに国からの権限が下りることを前提にして、今の都道府県でやっていけるのか、やっていけないのかというところまで考えないといけないのではないかということですね。
今村委員 そのとおりです。先ほど来、私、地方支分部局の今日の資料を見ながら、国土交通省の部分のこれは州への新設される道とか州への権限、あるいは仕事の移管にとどまらず、公共事業関係はかなり基礎自治体の方まで下りていくものが入っちゃったというふうに考えていますと、これは国と広域自治体との関係だけじゃなくて、基礎自治体の方にもこれは入ってくるわけです。それをどういうふうに振り分けたらいいだろうかと。おっしゃるように、今のままをそのまま現行を維持するという意味で言っているわけではございません。
松本小委員長 わかりました。それでは、資料1を中心に基本的なところを議論していただいたのですが、その議論の中で既に論点の話とかさっきから出ておりますが、この資料の中で、もう少し具体的なレベルの議論になってくるわけですけれども、全体について何かご質問なりご意見なりございましたら委員の先生方からお願いしたいと思います。それから、それらについて、事務局から、さっきの都道府県警察の話も含めて、全体的なことについて、どういうふうに考えるのかということなどをおっしゃっていましたけれども、そういうこともまた後で答えてください。貝原委員。
貝原委員 さっきも一部議論が出ていた、道州制の場合の選挙制度ですけれども、私個人的には、地方分権が進められなければいけなくなってきた一つの端緒になったのは、国会議員の小選挙区制の導入だと思うのですね。これで二大政党制を目指していくのだと。こういうことで国会は国政について責任を持っていろいろ議論していくような体制をとっていこうと。中選挙区の場合は地域密着型のいろんな利権とかなんとかに結びつくからよくないと。だから背番号制にしてもいいぐらいの国会議員をつくっていこうみたいな話で始まったのですね。そういう国会だとすると、それでは地方のことは誰が議論するのですかと。国会というのは、国政についての議論をするのだったら、関西地方については、あるいは北海道については誰が責任持って議論するのですかということになると、これは分権していって地方の人たちが自分たちで意思決定をしなければ、そして責任を持つような選挙制度にしないとおかしいのではないかと。そういうことが一つの大きなきっかけだったと思うのですけれども、逆に諸外国の制度を見ていると、単純に国会というのは国政だけの議論ではなくて、特にヨーロッパなんかは、二院制をとっている二院制の性格の中で、特定の議会の中で地方の意見を入れるような仕組みというのができているわけですね。そういう意味では、道州制の議論をどんどんこうやって、道州の選挙制度をどうしていくのかという議論をすると、国の選挙制度のあり方まで議論していって、地方の意見が今の国政の中に反映されるような仕組みをつくっていくということを前提とすると、またかなり違った形の制度設計ができてくると。確かに単純に国の仕事なのか、地方の仕事なのかと分けてしまうというのは、今の義務教育の国庫負担について議論されているのを見てもわかりますように、なかなか難しいと思うのですね。だからこそ融合的なシステムというのはかなり日本の場合あったわけですけれども、そこら辺について一体道州制の議論のときにどういう整理をしていくのか。今、地方六団体が三位一体改革では政府に対して協議機関を設けるべきだと。協議機関の中で地方の意見を政府に、その回答がないと云々というようなやりとりがありますけれども、私の知事在職中から、そのことを盛んに申し上げていました。立法政府について国会と地方の役割分担というところまで踏み込んでいかないと最終的にはこの問題はなかなか決着がつかないというような感じがするのですけどね。そこら辺はどうなのでしょうか。私は、選挙制度調査会と地方制度調査会でここのところはどういうふうに役割分担するのですかという質問を前回の調査会のときに質問したこともあったのですけれども。まとまった意見でなくて恐縮ですが。
松本小委員長 質問ですか、意見でよろしいですか。
貝原委員 今すぐ回答をできないでしょうから結構ですけど、そういう点も留意して議論していく必要があるのじゃないかと、このように思います。
松本小委員長 はい、わかりました。
室谷委員 ちょっと質問なのですけれども、この役割分担のイメージの表の道州制と市町村という分け方を基礎自治体と広域自治体という分け方をしておりますけれども、基礎自治体の中で指定都市、中核市、そういうものはみんな基礎自治体の中に含めて論議をするということでよろしいのでしょうか。
松本小委員長 それはこれからの論議の立て方になってくると思います。資料は一応基礎自治体ということで書いておりますけれども、先ほどもおっしゃっていましたが、特別な大都市等については論議を区分していくことも当然必要になってくると思います。そのほかございますか。
林委員 先ほどの要するに国と地方の役割分担で考えたときに、やはり地方がどう考えているのかという視点が要るのじゃないかという気がするわけですね。つまり、これは今の地方支分部局でもやれる。自由にやっているのか、あるいは、それは地方に権限なければ十分な政策ができないと考えているのかという、つまり、これは州でしょうとか、これは府県でしょうと言っていくことが果してどうなのだろう。つまり、そこにある程度地方がどのようにとらえているのかというような視点も何か加味しないと、そのあたりはどうなのかなというのが、だからこそ、そういうのは地方に下ろすにしても、今後はそれが州なのか、府県なのか、市町村なのかというのは、地方の目で見てそれをどう考えるのかというような視点もやっぱり要るのじゃないという気がしますので、そこは少し時間が必要なのかなというような思いをしております。
松本小委員長 今の点は、既に地方側からいろんなご提言の中で出ているものもありますし、出ていないものもあります。いずれにしても、六団体にそういうことについての意見を聴く機会を設けることも検討していかなければならないのではないかと思っています。もう少し議論が固まってまいりましたときにですね。そういう感じでしょうか。
林委員 はい。
松本小委員長 一つ非常に基本的なことで。これは私も目を通していながら、そのとき言うのを忘れてしまったのですけれども、これは全く法的な話で、むしろ小早川先生なんかにお聞きしたいのですが、「道州制は現行憲法上の地方公共団体として位置づけるべきではないか」と書いてある。「べきではないか」というのは憲法上の地方団体と位置づけようが、位置づけまいが立法政策で、あるいは、いわゆる政策判断で勝手にできるというお考えですか。そこの考え方によって、事項1、事項2のところの考え方が大分違ってくる。「位置づける」ということは、立法政策で決められる、憲法上、現行憲法を前提として解釈上出てくるのではなくて、法律で位置づけられる。このことは論点1と論点2、事項1、事項2について論議するときに基本的に違ってくるので、それは事務局はどう考えているのですか。「位置づけられるものか」とするのと、「位置づけるべきか」というのは大分違ってくる。
久元行政課長 文言については、もう一度整理させていただきますが、最低憲法での地方公共団体としての要件を満たすようなものとして制度設計をしていくのかどうかというような観点から書かせていただいております。
松本小委員長 そこはどうですかね、小早川先生。
小早川副会長 もちろん憲法解釈としてどうかという場合に、最高裁は道州について判決してくれていないから、地方制度調査会として今の憲法をどう解釈するかという話は一つあると思いますが、今ご答弁なさった、どういう制度設計していくかということであれば、それは最低限地方自治法なり法律レベルの立法政策論の議論をすればいいわけで、その議論した結果を憲法に結びつけて権威づけるかどうかというのは、その後の形式的な話、法律家が憲法を形式だと言ってはよくないですけれども、そういうふうに思います。
松本小委員長 これは小幡先生がさっき言われた税の徴収権と絡んでくるのですよね。要するに憲法上の地方自治体と位置づけ・・・・・・。憲法解釈としてです。憲法解釈上位置づけられないならば、法律でもって租税徴収権というものを書かなければ租税法律主義に反することになる。我々が位置づけたとか、法律的に位置づけたからといって、それが出てくるものではないわけで、だから、その辺は専門的な話だからよく意識しておかないと。小幡先生はどっちに考えられます?憲法の解釈上の問題として出てくる話であって、政策意図とか立法意図で憲法上位置づけるとか、位置づけられないというようなことにはならない。
小幡委員 という気が私もしますが、ただ今の憲法上の文言に合っていないと無理ということは明らかですけれども、合っていた場合の問題ですかね、それを憲法上の地方公共団体でないと言ってみてもしょうがない話なので、決まってくると考えていいのじゃないですかね。
松本小委員長 ちょっと気になったので、そこだけ。資料を見ておきながら言わなかったから、申し訳なかったのですが。事務局、何かあります?
久元行政課長 さっきの広域警察のところなのですけれども、これは非常にラフなイメージでかいておるわけですが、少なくとも道州を設計するときに、今の都道府県の仕事の中で、義務教育と警察が人の面でもお金の面でも非常に大きい分野を占めておりますから、この義務教育のところ、警察のところをどういうふうに考えるのかということは一つの論点かなというふうに考えております。その際、警察は今全部都道府県がやっておるわけですけれども、少なくとも道州になったとき、圏域的に全体に及ぶようなものは、これは道州に移行するということは自明であろうと思われますので、「広域警察」という表現をさせていただいたわけです。いずれにしても、警察、義務教育の部分は大きな論点であろうという問題意識でこの「広域警察」という表現を使わせていただきました。
松本小委員長 よろしいですか。そのほかの委員の先生方ご意見ございますか。
  ございませんか。それでは、本日はいろいろなご意見をいただきましてありがとうございました。次回の専門小委員会では、「地方の自主性・自律性の拡大のあり方」について意見交換を行いたいと考えております。道州制のあり方は今日かなり資料が出たのですが、浜田先生はじめ皆さんから出ておりました、さらに役割分担を具体化したなものを、ブレークダウンしたものを資料として出せるかどうかという話は、検討してみますという話でしたから、浜田先生、すみませんが、もう少し時間をいただいて、次の道州制を議論するときに対処させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  では、次回の専門小委員会では、「地方の自主性・自律性の拡大のあり方」について意見交換を行いたいと考えております。
  最後に今後の日程について、事務局より説明願います。
石川自治政策課長 今後の予定について説明いたします。
  次回の第9回専門小委員会でございますけれども、10月14日金曜日午後3時から全国都市会館第2会議室でお願いしたいと考えております。また、今後の予定でございます。10月25日月曜日午後3時から。そしてそれ以降は、11月2日火曜日、11月8日月曜日、12月3日金曜日、12月17日金曜日でございます。なお、11月2日以降の時間等につきましては、事務局から後日連絡をさせていただきたいと考えております。また、地方における意見交換会でございますけれども、11月5日金曜日に岩手県盛岡市で開催いたします。
  以上でございます。
松本小委員長 それでは事務局の説明のとおり、第9回専門小委員会を10月14日木曜日午後3時から全国都市会館第2会議室で開催することといたします。
  以上をもちまして、本日の専門小委員会を閉会とします。どうもありがとうございました。
  閉会
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