会議資料・開催案内等


行政手続法検討会(第5回)議事要旨



1. 日時 平成16年7月16日(金)12時00分〜15時30分

2. 場所 麹町会館3階・エメラルド

3.  出席者
(委 員)塩野宏座長、宇賀克也座長代理、青山佳世、岩渕正紀、大森政輔、小野邦久、菊池信男、木村裕士、近藤純五郎、堤富男、常岡孝好、平岡久、水谷克己(敬称略)
(東 京大学法学部)伊藤洋一教授
(経 済産業省)石黒憲彦大臣官房総務課長、高科淳大臣官房政策評価広報課課長補佐、武山松次原子力安全・保安院電力安全課課長補佐
(国 土交通省)加藤利男大臣官房総務課長、小林靖同課企画専門官、馬場崎靖同課企画専門官
(総 務省(事務局))藤井昭夫政策統括官、白岩俊行政管理局行政手続室長

4.  議題
(1)   フランスにおける行政立法に係る不服申立て
  伊藤洋一 東京大学法学部教授
(2)   各府省等ヒアリング
i1   経済産業省
ii2   国土交通省
(3)   行政立法手続の論点(枠組みに係る基本的なもの)
(4)   今後の日程等

5. 会議概要
 
(1)   伊藤洋一東京大学法学部教授から、フランスにおける行政立法に係る不服申立てについての説明が行われた。引き続き、質疑応答が行われ、主な内容は、以下のとおり。
 
  フランスでは、行政立法の制定手続については詳細な規律がない印象を受けたがどうか。
  一般法はないが、社会保険、診療報酬等の少なからぬ分野では、特別法により関係者や利用者等が参加した諮問機関が設けられていることに注意すべきである。これらの審議を経ないと行政立法は違法として、行政訴訟で取り消される可能性がある。
  不服申立て機関はどうなっているのか。
  通常の不服申立ては一般の省庁が受理。社会保険や国税等、毎年大量の不服申立てがなされる省庁では、特別な部署を設けて処理を行っている。
  説明を聞く限り、不服申立て前置とされている印象だが、実際はどうなのか。
  原則は自由選択主義であるが、判例や個別法の特則規定によって不服申立て前置とされている分野も少なくないようだ。
  不服申立てをできる者が誰でもいいということであると、行政立法に対する不服申立てがなされたとして、これが棄却されると、対世効がないのであるから、人を代えてとめどなく不服申立てが提起され、出訴期間を限らない場合にはいつまでも紛争が解決しないのではないか。
  不服申立てはどんな理由であっても提起でき、行政庁が対応できることについてなら何でも良いと説明されており、申立ての利益、申立て適格等についての議論はほとんどない。しかし、不服申立ての後に予想される取消訴訟段階では、自己の利益に対する侵害要件を満たす必要があり、また、それらの不服申立人のうちの一部の者が提起した取消訴訟の帰趨により、早晩決着がつくのが通常と思われるので、御指摘のような危惧は杞憂といってよいように思われる。
  理由付記法について、行政立法にも理由付記が必要なのか。
  理由付記が必要なのは不利益「処分」に限られ、行政立法は理由付記法の適用対象外である。
  行政立法制定前に関係団体等から意見募集する手続は存在するのか。
  行政立法全部に一般的に事前聴聞手続を定めたものはないが、個別法に定めている例が少なくないようである。
  取消訴訟における原告適格についてはあまり議論されていないのか。
  フランスの取消訴訟もいわゆる「民衆訴訟」ではないとされているので、もちろん議論はされているが、原告適格が日本と比べるとはるかに広く認められているため、日本で議論されているような事例のほとんどの場合には、訴えの提起が認められる。
  レジュメでは、行政立法に対する不服申立類型の中に、行政立法の制定要求が位置づけられているが、このような整理なのか。
  行政立法制定前に不服申立てという整理に違和感があるのは理解できるが、フランスでは、行政立法制定権者の不作為についても不服申立ての可能性が排除されないため、言及しておくこととした。

(2)   石黒憲彦大臣官房総務課長から、経済産業省の意見提出手続の実施状況等についての説明が行われた。引き続き、質疑応答が行われ、主な内容は、以下のとおり。
 
  電気事業法施行規則の一部を改正する省令(案)の意見募集要領の様式に、氏名、連絡先、職業の記載欄があるが、これらの情報は公開しているか。
  公開していない。ただし、審議会報告に関して、審議会自体が公開されているため、パブコメ実施結果に関する情報を審議会に提出した結果、氏名及び職業については、自動的に公開されたことがある。
  電気事業法施行規則一部改正省令を受け、告示で更に細部事項を定める場合、規則段階でのパブコメに加え、告示段階でもパブコメを実施したか。
  今回は実施していない。告示事項は、省令で定めた規制の要件の枠を出るものではなく、従前の要求事項を示すものであったからである。このことは省令段階でのパブコメの回答でも触れている。結局は、告示の内容次第であり、ケース・バイ・ケースで判断する。
  閣議決定と異なり、パブコメ実施の目的について、政策形成過程の透明化を図ることにあるという考え方を打ち出した背景を知りたい。
  当省では、政策形成のプロセスへの国民参加の実現のためのパブコメ制度の整備を図るべく、政府の取組に先行してこの問題に取り組んできたという事情がある。一方で政府の取組も進められていたことから、最終的に、これとの調整の観点から「パブリックコメント制度の運用について」の「(5)その他」において、閣議決定について触れることとした。
  「パブリックコメント制度の運用について」と題する書面の形式は何か。
  庶務課長会議申し合わせという内規に該当する。
  広い意味での政策について国民から意見募集するにあたり、国民の理解を容易にするための工夫はあるか。
  大規模な政策についての審議会等報告書をパブコメにかけるに当たり、関係資料をホームページ(以下「HP」という。)で公開するとともに、広報担当部署を通じ窓口配布するなどしている。
  HPへアクセスする者の数には限界があると思うが、これに対処する効果的な方法はあるか。
  パブコメ実施前に広く周知活動をしたり、利害関係を有する業界団体などについては、ピンポイントで紙媒体による周知を行ったりしている。
  資料6ページの「(3)利用する媒体」として、あわせて周知を図るとあるが、その手段は何か。
  当省のパブコメ対象事項には業界団体の関心が高いものが多いため、日常的に業界団体との接触の場を利用して、パブコメの実施について紹介し、周知徹底を図るなどしている。
  審議会手続と行政機関によるパブコメとの関係をどう整理したらよいか。
  特に考えを整理しているわけではないが、審議会手続の場合、比較的目に見えている利害関係者や学識経験者を対象とするという一般的性格がある一方で、行政機関によるパブコメは、潜在的な利害関係者の意見の収集を図り、これを審議会にかけて再度検討するとともに、これら潜在的利害関係者に対して説明責任を果たすという意義があると思われる。
  パブコメには手間暇がかかるが、十分対応可能ということか。
  例えば、緊急性を要する事案では、意見提出期間の長短で調整したり、募集意見が膨大な数にのぼる場合には、適宜グルーピングしたりするなどして、工夫すれば対応も可能かと思われる。

(3)   加藤利男大臣官房総務課長から、国土交通省の意見提出手続の実施状況等についての説明が行われた。引き続き、質疑応答が行われ、主な内容は、以下のとおり。
 
  大津市を古都保存法における古都と指定することは政令において定められているが、この政令はパブコメにかけられたのか。
  パブコメは実施した。
  資料の中に、平成15年1月から3月までに公示された告示の内訳についての資料があるが、それを見ると、告示の中には多様なものがあることがわかる。このうち、パブコメを実施したものとしていないものがあるが、実施するかしないかの判断基準はあるのか。
  閣議決定の対象となっているものは当然実施する。それ以外のものについては、社会的関心が高いもの等はパブコメを行うが、その判断は、案件ごとに担当部局によってなされる。
  15年度のパブコメを実施した案件は78件であり、一方告示は1,540件もある。法制化した場合の対象範囲が閣議決定どおりだとすると、78件は必須となると思われるが、それ以外は必ずしも実施しなくてもいいこととなろう。しかし、対象範囲を広げて、1,540件の告示にも手をつけていくと、事務的に対応できるのか。
  現行どおりの対象であれば問題ないが、これを広げて、全ての告示を対象とするなどとなると、大変だと考える。
  告示の内訳の資料における「38 建築設備士の要件」は、パブコメ対象の規制そのものと思えるが、これは何故パブコメを行っていないのか。
  この案件は、上位法令の改正に伴う形式的な改正であったため、パブコメを実施しなかったものである。
  行政立法手続として定めた場合に、現在パブコメを実施した案件だけを行えばよいというわけにはいかない。都市計画における地域指定のようなものは、土地利用の規制ということを考えれば、規制という概念に入るとも考えられるが、このような案件についてはどのように考えるか。
  都市計画法における都市計画区域の指定については、都市計画法の中に、審議会への諮問等の手続が規定されている。今回のパブコメとの関係でどのように整理するかは今後の問題だが、都市計画手続の中で、意見を聞く手続は定められている。
  審議会手続を経ているから、パブコメをしなくてもよい、というわけではない。現に総務省などでは、審議会手続とパブコメ手続を並行して行っている。また、現行の閣議決定は、規制を対象としているが、行政立法手続の場合は、規制に限らない。
  地方自治体や、企業に直接交付する補助金があるが、その際、補助要綱が作られる。補助要綱については、関心を持っている者が多いと思われるが、このようなものをパブコメすることについてはどのように考えるか。
  現在は、閣議決定の対象外ということで、パブコメは行っていない。補助要綱等の場合は、全体の予算や、地方との関係もあり、仮にパブコメを行ったとしても、提出された意見をどのように扱えるのか悩ましい問題となろう。
  閣議決定の対象案件ではあるが、種々の事情によりパブコメを実施していない案件はどの程度あるのか。
  対象となる案件は全てパブコメを実施している。
  行政立法にあたる告示は数多くあると思われるが、そのような性格を持つ告示全てをパブコメ対象とした場合、事務的に耐えられるか。耐えられない場合、どのような基準により、どのような範囲のものとしてもらいたいと考えているか、後ほど聞かせてもらいたい。
  国土交通省では、パブコメとは別に、パブリック・インボルブメントという仕組みを導入しているが、両者の住み分けはどのようになっているのか。
  例えば、実態に係る資料11「建築物の省エネルギー基準」に関するものは、パブコメを行う前に、関係者から意見を聞いた。このような意味でのパブリック・インボルブメントは実施している。

(4)   行政立法手続等の論点(枠組みに係る基本的なもの)について議論が行われ、主な内容は、以下のとおり。
  これからの行政の在り方を議論すべきではないか。パブコメの法制化の検討ではそこまで切り込めない。また、スケジュール的にも厳しいので、どのような課題についてどのようなスケジュールで行うか、具体的に示してほしい。
  パブコメの法制化の重要性は認識しているが、その法的効果は何か。専門的に整理してはどうか。
  行政手続法制定の際の宿題として、行政立法手続等があり、政府がそれをやると言っているならば、協力したい。閣議決定の内容を中心に、タイムリミットを設けて検討すべき。できることからやるべきであり、長く考えてもできないこともある。スケジュールがタイトならば、専門的な小回りのきくところで案を作成するなどの対応をし、(検討会の結論を)11月までにすべき。
  行政手続法の積み残しについて検討すべき。また、法制化すると「must」(しなければならない)ことになるので、閣議決定で各省が自由にやっている部分をがんじがらめにならないように、議論することが必要。
  税務の取扱いについて詰めておくべき。
  パブコメの法効果については裁判所の判断する事項ではないか。
  資料4について、メリット・デメリットについての専門的な検討を行ってはどうか。次回の検討会は9月22日なので、それまでに行政学法者4人と法曹関係者2人でワーキンググループを作って、専門的な検討をしてはどうか。

(5)   行政立法手続に関する意見募集について事務局から説明が行われた。引き続き、質疑応答が行われ、主な内容は、以下のとおり。
  ユーザーに対して何か意見がないかと単純に聴いて、検討会で試案等をまとめるのであれば、再度パブコメをすべきではないか。
  今回のパブコメは事務局が行い、後日、本検討会がパブコメを行った方がよいと言うのであれば、時期の問題はあるが、その際行う方法もあるのか。
  パブコメ法制化のためのパブコメなので、モデルとなるようなパブコメを実施してほしい。また、実施に当たっては、色々団体に働きかけてほしい。各委員のネットワーク等も活用してはどうか。

(6)   第6回検討会は、9月22日(水)午前。
 
以上
   
    なお、以上の内容は、総務省行政管理局行政手続室の責任において作成した速報版であり、事後修正の可能性がある。

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