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第20回独立行政法人評価制度委員会 議事録

日時

平成31年3月4日(月)16時15分から17時まで

場所

中央合同庁舎4号館12階 1208特別会議室

出席者

(委員)野路國夫委員長、樫谷隆夫委員長代理、梶川融委員、金岡克己委員、
栗原美津枝委員、高橋伸子委員、中村豊明委員、浜野京委員、原田久委員

(事務局等)堀江行政管理局長、吉開官房審議官、辻管理官他
 

議事

  1. 平成31年度から中(長)期目標期間が始まる法人の新たな目標案について
  2. 指針の改定状況について(報告)
  3. 法人活性化事例について配布資料 


配布資料

議事録

【野路委員長】 ただいまから第20回独立行政法人評価制度委員会を開催いたします。最初に議題1の「独立行政法人の目標の策定に関する指針及び独立行政法人の評価に関する指針の変更」について、審議を行いたいと思います。まず、事務局より、報告をお願いいたします。

【辻管理官】 それでは、本日の議題1、「独立行政法人の目標の策定に関する指針及び独立行政法人の評価に関する指針の変更」について、御説明いたします。

 まず、今回の指針改定の経緯ですけれども、参考資料1を御覧いただければと思います。昨年1129日に委員会で取りまとめられた意見です。

 参考資料1の1ページの(3)にございますとおり、独立行政法人評価制度委員会では、これまでの調査審議を通じまして、二つ問題意識を提示していただいております。一つ目が法人の現状、法人を取り巻く環境変化等の分析が適切に行われていないために、法人の能力をどのように活用すれば法人の能力が今後の時代が求める方向に最大限発揮されることになるのかについて、目標で適切に示されていないのではないか、二つ目が、目標にこのような課題があるために、評価の意義や使い方が十分に理解されず、評価が主務大臣や法人の長の業務運営、マネジメントに十分に活用されていないのではないか、というものです。

 このような問題意識から、これらの課題を解決するための方策について検討し、昨年11月に、二つの指針を改定する必要性について指摘をした上で、指針に盛り込む内容の方向性を取りまとめていただきました。

 これを受けまして、総務省において両指針の改定案について検討を行ってきたところですが、これにつきまして、資料1のとおり改定案を策定しまして、先週227日付けで、委員会に総務大臣から諮問が行われたところです。

 改定案の内容につきまして、資料に沿いまして、ポイントを御説明させていただきたいと存じます。

 まず、資料11の改定案のポイントという資料です。

 まず、独立行政法人の目標策定に関する指針の変更の内容です。ポイントとしましては、大きく五点ございます。

 まず一点目、目標策定に当たっての社会が求める方向の的確な把握等ですが、主務大臣は目標策定に当たり、独立行政法人の使命の明確化、法人の現状・直面する課題の分析及び法人を取り巻く環境の変化の分析を行った上で、目標の冒頭にその分析内容とともに、目標期間中における当該法人の国の政策体系上の位置付け、役割等を明記することとしています。

 それから、このような分析・検討を踏まえて、政策目的の実現に向けた具体的な道筋を検討した上で目標を定めることとし、それにより、目標期間中の業務運営や資源配分のメリハリ付けを行うこととしています。あわせて、法人の現状や直面する課題を的確に把握するため、主務大臣と法人との意思疎通を図っていただきたいということでございますが、その際、法人の側から現場の「気付き」の提言も必要である旨を、指針に明示することとしています。

 次に、二点目、目標の設定に当たっての視点の見直しです。目標や指標について、定量的であることを過度に考慮することで、法人のミッションとの関係で意味の乏しい数値目標が設定されることを抑制する観点から、現行指針では例外的に扱われている「定性的な目標を定める場合」について、「法人のミッションや事務・事業の特性等との関係から、定量的な目標を定めることが適切でない、又は困難である」場合として、明示をすることとしております。

 また、法人の業務の性格や政策目的等から、最終的な目標の具体的内容、水準、達成時期をあらかじめ明らかにできない場合の目標策定の考え方として、取組過程におけるマネジメントを管理する、いわゆるプロセスマネジメントなどの方法があることを指針の中で提示をしております。

 それから、近年、我が国では、例えば人口減少社会への対応やSociety5.0を実現していくことなど、各府省や各法人が単独で解決することが困難な課題、いわばオールジャパンで取り組むべき課題が増加しています。

 このような中で、国の行政の一部として、政策実施に大きな役割を担う独立行政法人が、このような課題の解決に貢献していくことが重要となっていることから、目標策定上の視点として、新たに二つの視点を明示しております。

 一つ目が、法人の専門性やノウハウ、人材面の強みをいかした関係機関・団体への支援、特に、人口減少社会の到来等により人材の確保やノウハウの継承が困難となっていることが予想される地域における取組を支援すること。それから二点目が、単独の法人では政策目的の実現が困難である等の場合に、専門人材の交流を含む関係機関・団体との協働体制の確立・強化を図ること。特に、府省を越えた取組や、ベンチャー企業等を含む外部活力の活用など、法人の発意のみでは推進が難しい取組については、主務大臣が一定の方針を指示することで取組の推進が期待できるということとしています。

 なお、概要には記載しておりませんが、法人の業務の特性等から、関係機関・団体との分担、協働を目標に明示することが困難な場合には無理に明示する必要はないということも、指針に記載させていただいております。

 次に、三点目の重要度・困難度の設定の考え方の明示ですけれども、目標の重要度等については、冒頭に申し上げた法人の現状や課題・環境変化等の分析に基づき設定するということとしています。なお、現行指針にある「優先度」につきましては、概念的に重なりますので、「重要度」に一本化するという観点から廃止するとともに、「難易度」については、困難さの程度を表すものとして「困難度」と名称を改めることとします。

 それから、四点目ですけれども、専門性など法人自身の強みを維持・向上させ、政策目的の実現に向けた要請に応え得る専門人材を戦略的に確保・育成するため、法人に人材確保・育成方針の策定を求めることを目標に定めることとしています。その際、法人内部での育成に限らず、関係機関・団体との人材交流も視野に入れることなど、留意を求めるべき事項も併せて示すこととしています。

 最後に五点目として、法人の能力を最大限発揮させるため、法人の長のトップマネジメントによる取組を促す目標を定めることとしています。

 目標策定指針については以上です。

 次に、「独立行政法人の評価に関する指針」の変更の内容でございますが、こちらについてはポイントが大きく四点ございます。

 まず一点目ですが、評価の活用方法の明示を通じた活用促進ということで、評価の活用を促進するため、評価の具体的な活用方法、例えば、業績が悪い部門を改善すること、業績が良い部門を更に向上させること、さらに、業績向上努力を評価することを通じて、改善努力を促進すること、このような活用方法を明示することとしています。

 次に、二点目ですけれども、評価の目的・役割に応じたメリハリ付け、重点化ということですが、中長期の期間による目標管理が行われる中期目標管理法人や、国立研究開発法人の評価につきましては、目標期間終了時に行われる、目標期間中の業績全体の評価、いわゆる目標期間評価と、期間中の各年度の業績の評価、いわゆる年度評価、それら二つでは、その目的・役割が異なります。

 このうち、年度評価については、「目標期間中の業務運営は法人の自主性・自律性に委ねる」という独法制度の趣旨に鑑みれば、目標の着実な達成を確保する上で支障となると考えられる課題、このような課題等を的確に抽出できることが重要であります。例えば、目標達成上の支障となる業務運営上の課題や好成績となっているものの抽出、あるいは目標期間終了時に達成されるべき成果や水準をあらかじめ具体化できず、目標期間中に結論を得ることとした事項のモニタリング、更には目標策定時に重要度又は困難度が高いとされた事項の進捗管理、このようなものに重点化できることとします。

 ここでいう「重点化」とは、目標達成上重要なもののみ従来の単位や精度で評価を行うこととする一方、それ以外の項目については、簡素・効率的な評価となるよう工夫を促すことにより、評価にメリハリを付けようとするものでございまして、重点化の対象としない項目については、評価単位の柔軟化を認めることとします。これにより、法人における評価の単位と日常の業務管理の単位を近づけることが期待され、評価を法人自身による業務の改善により活用しやすくなると考えられます。

 あわせて、法人による評価が法人の業務管理を行う上でも有益なものとなるよう、自己評価の評価単位について、現行指針では可能な限り最小の単位で評価を行うことを求めているところですが、今後は必ずしも最小であることを求めず、「事務・事業の特性に応じた単位」とするということとしています。

 さらに、期間実績評価の効率化を図るため、目標期間の終了前に行う見込み評価の際の実績見込みと最終的な実績との間に大幅な乖離がないような場合には、数値の更新等必要な修正を行った上で、見込み評価を期間実績評価に活用できるということとします。

 また、中期目標管理法人等の年度評価においては、法人による自己評価と主務大臣評価のいずれもが、「B」評定となる場合には、評定理由の記載を簡素化できるということといたします。

 それから、三点目、目標策定指針の改定により、目標策定の視点が追加されることに伴い、これに対応する評価を行うための視点を追加するということです。一つ目が、「あらかじめ最終的な目標の具体的内容、水準、達成時期の明確化が困難な目標」に対する評価について、二つ目が、「関係機関・団体への支援や協働体制への構築・強化に関する目標」に対する評価について、三つ目が「人材の確保・育成に関する目標」に対する評価について、四つ目が「法人の長のトップマネジメントの促進に係る目標」に対する評価についてです。それぞれについて、対応する評価の視点を明示することとしております。

 最後に、評定基準すなわちSABCDというような各評語への当てはめの考え方の見直しです。より難度の高い目標、すなわちよりチャレンジングな目標が設定され、それが達成されることを推進する観点から、評定基準に困難度の視点を導入し、困難度が高い目標が達成されたときには、所期の目標を上回る成果を上げた場合の評定である「S」や「A」の評定となるようにすることといたします。

 また、現行指針では、目標策定の時点で難易度が高いとされていた項目に限り、評定の一段階引き上げを考慮することとされているところですが、実際に評価を行う時点で目標水準の達成の困難度が判明するというような場合もあることから、評価の時点で達成が困難なものであったことが判明した項目についても、評定の一段階引き上げを考慮することとします。一方で、目標において困難度が高いとされた項目であっても、評価の時点で達成が困難なものでなかったことが判明した場合には、評定の一段階引き上げを認めず、困難度が高くない場合と同等の評定とするよう調整することとしています。

 指針改定の内容の説明については以上です。

【野路委員長】 ありがとうございました。それではただいまの事務局の報告について、御意見等ございましたら、どなたからでも結構ですので、お願いします。樫谷委員。

【樫谷委員】 少しお願いも兼ねて発言させていただきたいと思います。

 前回の委員会でも申し上げましたけれども、主務大臣が目標を設定する際に、各法人の使命を明らかにしまして、法人を取り巻く環境変化を分析し、法人が有するリソースや強み、これはSWOT分析等を行っていただいていますが、課題等を分析することは、社会が求める方向に沿った適切な目標を設定するに当たっては不可欠なことだと考えております。今回の改定指針にはこのような観点をはっきり明示していただきましたので、今後、各府省におきましては、この指針に基づきまして、目標策定に当たって、しっかりと分析を行っていただきたいと思います。その上で、個々の目標項目が、それぞれの分析とどのように関連しているのか、一般の国民の方が目標を御覧になったときに、なぜそうした目標がその法人に与えられているかについて、梶川委員が以前おっしゃったように、一般の国民が、「なるほど」と納得できるような説明により、論理的かつ分かりやすく示していただきたいと思っております。

 委員会としても、改定される指針の趣旨等につきまして、関係者の御理解をいただけるように、各府省、法人及び関係団体などの皆様と意見交換を通じまして、積極的にお伝えするように努めたいと思いますが、各府省や、各法人におかれましても、この改定指針に基づく適切な運用がされますように、この委員会の調査審議を通じまして、しっかりと後押しをしていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

【野路委員長】 中村委員。

【中村委員】 今回、大きな改革をしていただき、ありがとうございました。特に重点化のところでは、目標について細かい項目がたくさんあり、加重平均すると結果は何をしても変わらないような懸念もあったのですが、今回は重点化をするということで、随分変化が見えたと思います。

 一点質問があるのですが、資料11での冒頭に視点の見直しのところで、オールジャパンで取り組むべき課題が増加していて、これについては、国の行政の一部として政策実施に大きな役割を担う法人がいろいろな課題を解決するには、専門性や人材面の強みを最大限に活用して、というものがあります。その結果で見ていくと、目標策定上の視点として追加した二点であるABを見ますと、法人の専門性をいかに活用するかというのがAにあって、Bはその専門人材の交流を含む交流であったり、体制の確立・強化に向けて法人の発意のみでは推進が難しい取組について目標に入れましょうとなっています。このBについては、府省を越えた取組ですので、従来主務大臣からの指示が、主務省発意では起きにくく、むしろ法人から、他の分野まで行いたい、行うべきだという発意があり、それを受けて主務省との間で、これを追加したら良いのではないか、という議論が出るのではないか、という実務的な順番の考慮が必要かと思います。参考資料1と資料11しか読んでいないのですが、実務的にそのような主務省をまたがるような施策を誰が提案するのかという点が、この文章にはなく、お金のかかるものはなかなか主務大臣側からは出てこないのではないかと思います。そのような具体的な手続きはどのように考えるべきなのか教えてください。

【辻管理官】 御指摘の点、ごもっともなところがございますので、私どももそこを意識しまして、今回概要資料でいいますと、1ページのI(1)のところで申し上げましたとおり、やはり法人の現状や課題を一番知っているのは法人の長ですので、法人の長から気付きを各主務大臣にしっかり提言をしていただきたいとしています。それも含めた意思疎通を行い、何が必要かということを法人のほうから主務省に伝えていただくということもしっかり行っていただきたいということを、指針の中でも明示をさせていただいているところです。

【野路委員長】 よろしいでしょうか。ほかにございませんか。それでは本件について、当委員会として意見なしとさせていただくことで御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【野路委員長】 ありがとうございました。それではそのように取り扱いさせていただきます。

 最後に本日の議論を踏まえまして、私から一言、申し述べたいと思います。

 独立行政法人の目標策定に関する指針及び独立行政法人評価に関する指針の改定に関わる意見等の取りまとめに当たって、委員長から各主務大臣及び各法人の長に対して、今後取り組んでいただきたいことについて、談話として取りまとめたいと考えております。

 この件について、事務局から説明をお願いします。

【辻管理官】 資料2に委員長談話の案ということで、御提示をさせていただいております。読み上げにより、説明に代えさせていただきたいと思います。

 近年、我が国は急速な人口減少や地域の高齢化、エネルギー・環境問題など、様々な課題に直面しています。一方、AIIoT・ロボットなど、技術革新が急速に進展しており、このような第4次産業革命の社会実装により「Society5.0」を実現し、地域社会を含め、持続可能でインクルーシブな経済社会を構築していくことは喫緊の課題となっています。このような中で、国の行政の一部として政策実施を担う独立行政法人が、専門性や人材などの強みをいかし、これらの政策課題の解決に向けて、その求められる役割をしっかり果たしていくことが、ますます重要となっています。

 こうした認識の下、当委員会では、これまでの調査審議を通じて、独立行政法人が、社会が求める方向に沿って、その能力が最大限発揮されるようにしていく観点から、その方策について検討し、昨年11月に、独立行政法人の目標策定・評価に関する「指針」の見直しの必要性等について意見を取りまとめたところです。

 227日付で総務大臣から諮問された両指針の改定案については、これまでの委員会における議論に沿ったものと考えられることから、委員会として了承することといたしました。

 各主務大臣におかれましては、今般の「指針」改定の趣旨を踏まえ、我が国が直面する様々な社会的課題の解決に向けて、独立行政法人の能力が最大限発揮されるよう、法人の長とも十分に意思疎通を図りながら、法人の現状や直面する課題、法人を取り巻く環境変化等を分析した上で、的確な目標を法人に示すとともに、評価が法人の業務運営の改善につながるよう、改定「指針」に基づき、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。また、人材確保・育成方針の策定や、府省を越えた連携体制の確立など、新たな指針で示される事項のうち、目標期間終了を待たずに反映可能なものについては、目標変更の機会等を捉まえて、積極的に目標に盛り込むことを検討していただきたいと思います。

 各法人の長におかれましては、法人発の現場からの「気づき」を主務大臣に迅速かつ積極的に提言するなど、主務大臣と十分に意思疎通を図った上で、目標が意味するところや目標を踏まえて策定する計画を組織内の各階層に適切に伝えていただきたいと思います。また、改定「指針」において評価の実施方法等が見直され、評価が法人自身による業務の改善により活用しやすくなりますので、その趣旨を踏まえて、積極的に業務の改善に取り組んでいただきたいと思います。その上で、従来の「常識」にとらわれることなく、ご自身の自由な発想の下、リーダーシップを遺憾なく発揮し、新しい価値の創造を目指していただきたいと思います。

 今後、委員会としては、改定「指針」の趣旨等について、関係者の理解が進むよう、各府省、法人等との意見交換などを通じ、積極的に周知等を行うとともに、法人の取組の好事例を把握し、法人運営等の参考として提供するのみならず、広く国民の皆さまに情報を発信していきたいと考えております。

 その上で、委員会の調査審議を通じて、各府省・各法人において、改定「指針」に基づく適切な運用がなされるよう、しっかりと後押しをしていきたいと思います。

 引き続き関係各位のご理解とご協力をお願いいたします。

 以上です。

【野路委員長】 ありがとうございました。

 それでは本件について御質問・御意見等ございませんでしょうか。

 よろしいでしょうか。それでは本件について、案のとおり委員長談話案として公表させていただきたいと思います。

【辻管理官】 かしこまりました。

 本日御審議いただきました独立行政法人の目標策定指針及び評価指針の改定案ですけれども、これにつきましては、本日の結果を受けまして、今後、総務大臣決定の手続を進めさせていただきたいと存じます。

 よろしくお願いいたします。

【野路委員長】 それでは、次の議題に移りまして、議題2の法人と地域・企業等との連携や支援事例について、事務局から報告をお願いいたします。

【辻管理官】 それでは、先ほど取りまとめていただきました委員長談話にもございましたが、当委員会では、各法人において組織運営を活性化し、法人の職員が元気を出して業務を行っていくため、取組の好事例を把握し広く発信していく活動を、引き続き積極的に取り組んでいくこととしております。

 このような取組の一環として、事務局でも継続的に調査を行っておりまして、本日は独立行政法人と地域や企業等との連携や支援の好事例につきまして、五つの事例を紹介させていただきたいと存じます。

 資料3を御覧いただければと思います。

 まず一つ目は、防災科学技術研究所の事例です。これは民間企業との連携により、外部のリソースを活用して研究の成果を高めたという事例です。

 防災科学技術研究所は、本日は天野委員が本日御欠席ですけれども、事前に御説明させていただいた際には、防災科研と民間との連携ということでは、日本防災産業会議という防災意識が非常に高い民間の企業と関係団体が参加している会議体というのがございまして、防災科研もそこのメンバーとして、そのような場において様々な連携に取り組んでいるというような話もございました。本日は、そうした広い連携の場というよりは個別の企業との連携の事例ということで、御紹介をさせていただきたいと存じます。

 防災科研では、気象災害の早期予測技術の社会実装ということで取り組んでおりまして、今回は積雪、雪に関する観測・予測精度の高度化の研究ということです。そのような研究を進めていくためには、大量の気象に関するデータが必要であるところですけれども、実は首都圏には、気象庁のアメダスの観測地点が18カ所しかないということで、より幅広いデータをどのように収集するかということが課題になっていたということです。

 アメダスのセンサーですけれども、設置・維持のコストが非常に高額でございまして、なかなか大量に設置することは難しいという中で、防災科研ではそのかわりに、ある程度の精度を持つ低価格のセンサーを開発しました。聞くところによると、アメダスが数百万円とすれば、防災科研が開発した新しいセンサーは数十万程度ということで、桁が一つ違うほどのものだそうです。そのような新しいセンサーを開発したわけですが、設置する場所をどうやって確保するかというのが課題であったところ、セブンイレブン・ジャパンと連携することにより、首都圏を中心に、セブンイレブンの店舗に雪のセンサーを設置し、法人が持つ観測点というのを、もともと18地点しかなかったものを、34地点に増やして観測網を強化することができたということです。

 1ページの地図を御覧いただきますと、従来の観測地点が赤い色の円の18カ所ということでしたが、この首都圏の中央部を中心に、青色の円の箇所に新しいセンサーが設置をされたところです。

 この取組は、防災科研にとっては、雪のセンサーを設置するための電源設備や通信設備といったインフラが既に整っているコンビニの店舗を利用するということで、実証実験の実施までのスピードを速めることができます。一方、セブンイレブン・ジャパンにとっては、もともと独自に災害時情報共有システム、セブンVIEWと言うそうですが、そのようなシステムを持っているなど災害対応意識が非常に高い企業でございまして、高い精度のデータを防災科研から入手することができると、それによって物流ルートの確保が可能となり、防災科研、セブンイレブン、両者にとってメリットのある連携となっています。

 なお、観測地を追加する効果ですけれども、次の2ページの地図を御覧ください。これは先月、29日に首都圏で雪が降った際に、場所によって積雪の量にかなり差があったということでございまして、千葉県の内陸部などで相当の積雪があったとのことですが、地図の左側、アメダスのセンサーだけで積雪の分布の推計を行うと、実は千葉県の内陸部とか埼玉県西部の積雪が適切に捉えられません。一方、新しく追加したセンサーを合わせて推計した場合には、地図の右側の水色の部分に積雪があったということが正確に把握できるということです。

 このように、本事例は法人単独ではデータ集めに限界があったところを、民間企業とうまく連携してそのリソースを活用することで成果を高めることができた事例です。

 続きまして、二つ目、資料3ページですけれども、国立公文書館の事例です。これは法人のリソースを活用して、被災した地方を積極的に支援している事例です。

 国立公文書館では、東日本大震災の際に、震災により被災した公文書、これは津波の被害などによって水没してぼろぼろになった公文書ですけれども、その修復を早急に進める環境整備のために、平成23年から24年にかけて、公文書の修復の専門家を岩手県・宮城県など延べ11の市町村に派遣して、現地で公文書の修復に当たる人材の育成のための実地研修等の支援を行ったということです。その際には※印の2に書かせていただいておりますけれども、法人から主体的に、プッシュ型の支援を行っていたということです。

 まず、法人において公文書の被災状況について事前の現地調査を行い、修復の対象とする公文書の選択、それから取組の実施計画の策定を行った上で、法人から自治体に提案するというような、プッシュ型の支援を行っていたということです。

 このような取組を東日本大震災のときに行い、資料4ページにありますように、国立公文書館は、この東日本大震災の教訓を踏まえまして、被災公文書等の修復に係る技術的手法の共有等のために、平成253月にマニュアルを作成し、公表しています。更に平成27年には、法人の中に被災公文書等救援チームを設置しまして、支援を迅速に行う体制を整備したということです。

 これにより、平成27年度以降ですけれども、茨城県常総市の水害や、新潟県上越市の火災、大分県津久見市の水害、愛媛県の水害、このように次々に起こっている災害で被災した自治体に対し、順次、法人が積極的に支援を行っており、本事例につきましては、独立行政法人がその専門性や人材、ノウハウを活用して、人材やノウハウが不足している地方の自治体を積極的に支援している事例です。

 次に、資料5ページ、三つ目は、土木研究所の事例です。

 この事例は、法人が、他の機関と連携しながら技術開発を行い、開発した技術の社会実装を一層進める観点から、更に別の法人と連携したという事例です。

 これも雪に関する事例ですけれども、現在、凍結防止剤として広く用いられている物質は塩化ナトリウムですが、これが金属の腐食など塩害を引き起こすということで、金属を腐食させない新しい凍結防止剤を開発する取組が進められているところです。

 土木研究所の中にあります寒地土木研究所が北海道にございます。ここは凍結防止剤の散布に関する知見や、テストを行うための試験道路、測定機器などを持っているところです。一方、富山県立大学ですけれども、塩害を起こさない非塩化物薬品、プロナトと言うそうですが、そのような物質に対する知見を持っていたとのことです。この二つの機関が連携し、寒地土木研究所が持つテスト道路を使って実証実験を行うことにより、新しい凍結防止剤を共同で研究開発をしたということです。

 さらに、NEXCO中日本と連携をすることで、実際の公道を使った実証実験・試行導入を行うことで社会実装にもつなげた取組になっているものです。

 資料の6ページを御覧いただきますと、この新しく開発されました凍結防止剤、プロナトは、従来のものと引けを取らないレベルの凍結防止効果は持っているのですが、一方でコスト面が非常に課題です。コストが塩化ナトリウムの10倍するということです。実際には、従来の塩化ナトリウムと混合物を使用するということになりますが、塩化ナトリウムと9対1の割合の混合物、すなわちプロナトを1割混ぜるだけで、金属腐食度合いは半減するということで、それだけでも相当の効果が出るということが実証実験により分かっているところです。

 このように、本事例は、独立行政法人の土木研究所が、自身が持つ知見やリソースと、他の機関、この場合は富山県立大学が持っている知見を結びつけることで、まず研究開発の成果を高め、更に、NEXCO中日本と連携することで、開発した技術の社会実装につなげている事例となっています。

 次に7ページですけれども、四つ目は森林研究・整備機構の事例です。これは法人が国の政策課題の解決のために府省の枠を越えて他の法人等と連携を行うことで、成果を上げている事例です。国内の森林資源を有効活用していくという観点から、国産のスギやヒノキを利用したCLTという合板、これは板材を十字に貼り合わせることで製造するパネルでございまして、建物の壁や床に使える建材ですけれども、このCLTの普及を進めていく動きがございます。

 このCLT導入を進めていくためには、まず製造技術の開発、そしてその性能を評価する技術の開発、それからそれを認証する仕組み、すなわちJASの制定、さらには、このCLTを建築資材として使えるようにしていくために、建築基準法関連の告示の制定、耐火構造に係る国土交通大臣の認定というように、農林水産省、国土交通省の両省にまたがる様々な取組が必要となっております。

 このようなCLTの普及に向けて、森林研究・整備機構は、木材産業界から、CLTの製品の規格化に取り組みたいとの相談・意向が示されたことを受けまして、日本CLT協会、建築研究所、あるいは地方自治体が設置した森林研究所や民間の製造会社等、様々な組織・機関と連携、分担をしながら、効率的な製造技術と性能を確保するための評価・予測技術を開発して、このような取組の実現を果たしているということです。

 次の8ページにCLTを使用した建築物の実績ということで、グラフを掲載させていただいております。まだまだ総数としては少ないですが、JASの制定以降、毎年、倍々で実績が積み重ねられているところです。

 このように、本事例は独立行政法人が府省の枠を越えて、また、他の独法や地方機関・民間企業など幅広い機関と連携をして政策課題の解決に向けて成果を上げているといった事例です。

 最後、9ページです。国立長寿医療研究センターの事例ですけれども、これは法人が外部のリソースを活用して成果を高めた事例ということです。この長寿医療研究センターは、認知症の予防をはじめとしまして、高齢者の健康寿命を延ばすために、様々な研究開発を行い、その成果の社会実装を図っています。今回はその中の三つの取組について御紹介させていただきたいと思います。

 一つ目、SOMPOホールディングスとの連携事例です。認知症の患者などの情報を大量に集めるというのはなかなか難しいわけですが、この事例ではSOMPOホールディングスと連携しまして、企業が保険事業や介護事業を通して得た顧客の情報、例えば自動車事故等の数千のデータを活用できるようになりまして、これによって、自動車事故と認知機能との関連性の研究や効果的な介護予防プログラムの効果検証など、研究成果を高めるということが可能になっております。

 一方、SOMPOホールディングスは、研究成果の提供を受けて保険商品の開発等に活用できるということで、双方にメリットのある連携となっています。

 それから二つ目が、長寿医療研究センターが認知症予防のために開発しましたコグニサイズというもので、これは頭を使いながら行う運動です。例えば、左右にステップしながら3の倍数のときに拍手をするというような、頭を使いながら運動をするというものですけれども、これが認知症の予防に非常に効果があるということで、このような取組を普及させていくための実証実験を、法人の所在地の地元自治体である愛知県大府市や東海市と連携しながら実施して順次社会実装を進めているという取組です。

 それから三つ目が、民間の自動車学校と連携して実施した実証実験の結果ですけれども、一般に75歳を超えますと認知能力が大きく低下すると言われておりまして、そのために運転免許の条件というのが非常に厳しくなるわけですけれども、実証実験した結果、3カ月に10回のトレーニングを行うことで、安全運転の技能というのは向上するということで、75歳以上であっても、トレーニングによる安全運転技能の向上により自動車事故が防止できるということを提言しております。

 この実験の中で、実は運転を続けたほうが認知症や要介護になりにくいというようなデータもあるようです。

 このように本事例については、独立行政法人が外部のリソースをうまく活用しながら成果を上げている事例ということです。

 以上、駆け足でございましたが、事務局において調べさせていただきました活用事例です。

【野路委員長】 ありがとうございました。

 それではただいまの説明について、御質問等ございませんか。中村委員。

【中村委員】 本日の事例は、POCまでになっていて、やはりこれから目的はPOVに進み、そのあと商用化にいくと、国全体にこのような事例が活用されるようになるのではないかと思います。そういったときに、ネックになるのがマインドセットです。国の税金を使ったのに営利事業を行うのかであったり、逆に今度は民業を圧迫という問題を気にして展開が進まないといった事が起きまねません。ある程度のコスト回収はするのだろうとは思うのですが、POVに進んだ事例やコマーシャル化されたような政策効果を高めた事例というのはないのでしょうか。

【辻管理官】 委員会のほうからも問題意識をいただいておりまして、社会実装をどのように進めていくのかということで、そのような事例を積極的にこれから探していきたいと思っておりますので、引き続きその辺りも調査してまいりたいと思っております。

【野路委員長】今の事例を聞くと、やはり法人に対して、目標をどう与えるかというところがポイントだと思います。そのため、小さい規模で、例えばアメダスの話や、雪害の話もそうですが、アメダスの気象情報のデータの精度を上げるということだけを行っていると、結局そこで止まってしまうということです。そうではなくて、社会的な課題というのは、雪が一部にどんと降ったときにここで交通のトラブルが起きたり渋滞が起きたりして、国民生活あるいは物流に大きな影響を与えており、そこを何とか解決しようというところまでの目標を、この防災科学技術研究所に与えることにすれば、そのまま社会実装につながるわけです。そのときは誰と行えば良いかというのは、当然、いろいろなところからデータを取るときは、物流会社等、広範囲にその拠点を持っている会社だというようにつながっていくわけで、おそらくこの目標の与え方自体が、やはりもう少し社会的な課題を解決するという大きなところに置いておけば、自然と法人もできる範囲の中で、いろいろな人たちと連携するということにつながっていくのだろうと思います。そこが小さい目標だと、そこで閉じこもってしまって、例えばCLTもそうですが、CLTJASの規格をつくればいいということにしてしまうと、そこで終わってしまう。そうではなくてCLTを普及させて、日本の山の間伐材をうまく活用し、日本の山がきれいになり、間伐材が放り出されて二次災害が起きることもないというところまでの目標策定をしておけば、そのような方向に法人の長がリーダーシップを発揮して進んでいくのではないかと、この事例から感じました。

 それでは、この件についてはこれで終わります。

 最後に事務局から、次回の日程について説明をお願いたいと思います。

【辻管理官】 次回の日程につきましては、別途御連絡させていただきたいと思います。

【野路委員長】それでは以上をもちまして、第20回独立行政法人評価制度委員会を閉会いたします。本日はお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。

 

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