総務省トップ > 組織案内 > 審議会・委員会・会議等 > 国地方係争処理委員会 > 会議資料 > 平成21年度第1回国地方係争処理委員会 議事録

平成21年度第1回国地方係争処理委員会 議事録

佐々木行政課長
 それでは、委員会を開催いたします。行政課長の佐々木でございます。本日は、新たに任命されました委員による初めての委員会となりますので、新委員長が選出されますまでの間、私が司会をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 本日は、概ね11時30分頃までの1時間を予定しております。
 まず初めに、委員の皆様方の御紹介をさせて頂きます。五十音順に御紹介させて頂きます。
 磯部力委員でございます。 

磯部委員
 どうぞよろしくお願いいたします。 

佐々木行政課長
 岩崎美紀子委員でございます。 

岩崎委員
 よろしくお願いいたします。 

佐々木行政課長
 大橋洋一委員でございます。 

大橋委員
 よろしくお願いいたします。 

佐々木行政課長
 篠ア由紀子委員でございます。 

篠ア委員
 よろしくお願いいたします。 

佐々木行政課長
 長谷部恭男委員でございます。 

長谷部委員
 よろしくお願いいたします。 

佐々木行政課長
 続きまして、自治行政局の職員を紹介をいたします。
 久元自治行政局長でございます。 

久元自治行政局長
 よろしくお願いいたします。 

佐々木行政課長
 佐村大臣官房審議官でございます。 

佐村大臣官房審議官
 よろしくお願いいたします。 

佐々木行政課長
 以上でございます。何卒よろしくお願い申し上げます。
 次に、当委員会の委員長を選んで頂く必要がございます。地方自治法の規定によりまして、当委員会の委員長の選出は、委員の互選によることとされております。つきましては、委員長の互選につきまして、いかがいたしましょうか。 

大橋委員
 大橋でございますけれども、磯部先生にお願いしたいと思っております。御提案申し上げます。 

佐々木行政課長
 ただいま、大橋委員から、磯部委員を委員長に選出してはどうかとの御提案がございましたが、いかがでございましょうか。

 <「異議なし」の声>

 それでは、御異議がないようですので、磯部委員が委員長に選出されました。
 それでは、ここからの議事は、磯部委員長にお進め頂きたいと存じます。磯部委員長、よろしくお願い申し上げます。 

磯部委員長
 それでは、委員長を仰せつかりましたので、務めさせて頂きます。よろしくお願いいたします。適正な運営に努めてまいりたいと考えておりますので、委員、また事務局の皆様方、ご協力よろしくお願い申し上げます。
 それでは、地方自治法の規定に基づきまして、あらかじめ委員長代理を指名するということになってございますので、私としましては委員長代理を長谷部先生にお願いしたいと存じますが、よろしゅうございますでしょうか。

 <「異議なし」の声>

 なにとぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは本日は、佐々木行政課長から、国地方係争処理委員会の概要等についてまずご説明頂き、引き続き、丸山市町村課長から住基ネット不接続団体に対する是正要求の概要についてご説明を頂き、その後、質疑応答を時間までできましたらと思っております。
 本日の委員会の議事につきましては、審査に係る合議に関する部分というのは予定されておりませんので、平成13年2月5日の委員会決定に基づき、議事要旨と議事録を公表することを予定しております。よろしゅうございますか。
 それでは、行政課長さん、よろしくお願いいたします。 

佐々木行政課長
 それでは、ちょっと座ったままで。 

磯部委員長
 どうぞ、着席のままでお願いします。 

佐々木行政課長
 まず資料1でございますが、こちらは委員の名簿でございますので、説明は省略をさせて頂きます。
 資料2に国地方係争処理委員会につきまして、概要のペーパーを用意してございます。
 国地方係争処理委員会は、平成12年施行の地方分権一括法で措置されまして、地方自治法に規定がございます。国の関与につきまして、不服がある地方公共団体からの申出に基づき審査を行う機関でございます。
 まず1.の設置組織のところでございますが、(1)にありますように、総務省に置くということになってございます。
 委員につきましては、人数が5人、選任は、両議院の同意を得て、総務大臣が任命、任期3年となってございます。
 また、守秘義務、政党役員就任等の制限がございます。
 それから、専門委員、庶務等の規定も併せて置かれておるということでございます。
 2.の会議でございますが、委員会は、委員長が招集をする。また、委員長及び2人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない、となっております。
 議事につきましては、委員会の議事は過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによるということでございます。
 また、権限でございますが、さきほども申し上げましたが、国又は都道府県の関与のうち国の行政機関が行うものに関する審査の申出につき、その権限に属せられた事項を処理するとなってございます。
 4.の審査手続、2頁目でございますけれども、まず、審査の申出ができる場合ですが、3つございます。
 1つは、国の関与のうち是正の要求でありますとか、あるいは許可の拒否その他の公権力の行使に当たるものに不服があるとき。
 2点目として、国が、例えば、許可の申請というものに対して、何もしない、こういう不作為に対して不服があるとき。
 3点目が、法令に基づきます協議の申出を行いまして、その当該協議に係る地方公共団体の義務を果たしたと認めるにも関わらず、その協議が調わないときと。
 この3点の場合に申出ができるということでございます。
 審査申出の期限は、国の関与に対する審査申出の場合は、国の関与があった日から30日以内でございます。
 (3)審査それから勧告でございますが、まず自治事務につきましては、国の関与が違法かどうか、また不当かどうかということにも審査が及ぶということでございまして、こちらの不当かどうかというのは、地方公共団体の自主性自立性を尊重する観点から、不当かどうかということを審査するということになってございます。
 国の関与が違法でなく、かつ、不当でない場合には、その旨を地方公共団体あるいは行政庁に通知をする。
 違法不当である場合には、行政庁に対して、必要な措置を講ずることを勧告をするとなっております。併せて地方公共団体にも通知をする。
 また、法廷受託事務につきましては、違法かどうかということを審査をすると、不作為につきましては、申出に理由があるかどうかということを審査をするということでございます。
 また、協議に対する審査の場合についても、その義務を果たしているかどうかということを審査すると。
 いずれの場合につきましても、理由を付して結果を公表し、審査勧告は、審査の申出があった日から90日以内に行わなければならないとなっている訳でございます。
 3頁でございます。関係行政機関の参加ということで、委員会が申立てあるいは職権で、関係行政機関を審査の手続に参加をさせることができるようになってございます。
 また、証拠調べに関する規定もございまして、これも申立てあるいは職権で証拠調べができるということになっております。
 (6)の国の行政庁の措置ということでございますが、勧告を受けた国の行政庁は、当該勧告に即して必要な措置を講ずるとともに、その旨を委員会に通知をするということになってございます。
 この他、委員会は、調停をするという権限も併せて規定しております。
 また5.の訴訟の提起でございますが、この審査の申出をした地方公共団体が、さらに、下にありますような場合につき、高等裁判所に対して、出訴、訴えを提起することができるということになってございます。委員会の審査の結果又は勧告に不服があるとき、あるいは、勧告を受けた国の行政庁の措置にさらに不服があるとき、それから審査の申出をした日から、90日を経過をしても、委員会が審査又は勧告を行わないとき、また国の行政庁が委員会の勧告に即して必要な措置を講じないとき、こういった場合に高等裁判所への出訴ができる、そしてまたこれに対して上告もできるということになっております。以上でございます。
 それから、資料の3は、今、ご説明をしました基になります、地方自治法及び施行令の条文でございますので、説明は省略をさせて頂きます。
 また資料4でございますが、国地方係争処理委員会の審査の手続に関する規則が定められてございます。審査に関する様々な手続、四条以下でございますが、審査の開始あるいは審査申出の補正、答弁書の提出あるいは反論書の提出、それから2頁目に入っていきまして、審査期日、関係行政機関の参加等々の審査に関する手続の規定が書いてございますが、詳細は説明を省略をさせて頂きたいと思います。
 次に資料の5でございます。国地方係争処理委員会の議事の公表について、ということで、平成13年2月5日の国地方係争処理委員会で決定を頂いたものでございます。
 1の会議自体の公開でございますが、委員会は公開することにより、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあるため、原則として非公開とする。ただし、委員会が必要と認めるときは、公開することができる。こういうことになってございまして、非公開とした場合には、必要に応じて、報道機関に対して、議事の概要を説明することとなってございます。
 それから2番の議事要旨でございますが、議事要旨につきましては、審査に係る合議に関する部分を除いて作成をし、会議終了後速やかに公表をする。議事要旨は、発言した委員の氏名を記載いたしません。
 それから議事録でございますけれども議事録は、審査に関する合議を除いて作成し、会議終了後速やかに公表をすることは同じでございますが、ただし、公表することにより公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがある等相当の理由があると認める場合には、その全部又は一部を公表しないことができるということでございます。また議事録の方は、発言をした委員の氏名を記載いたします。
 4の委員会の資料でございますが、委員会の資料は、会議の終了後又は審査の終了後速やかに公表するものとするとなってございますが、これも相当な理由があると認める場合には、公表しないこととすることができるとなってございます。
 5の公表の方法でございますが、議事要旨、議事録及び委員会の資料は、コンピュータネットワーク、インターネット上に掲載していこうということにいたしてございます。
 本日は新しい委員さんによります第1回目の委員会ということで、現行の取扱いで行っておる訳でございますが、平成13年から、制定後かなり年数が経っているということでございまして、事務局といたしましては、このままの取扱いでよいかどうか、改めて、また他の審議会等々の例を見ながら、次回の委員会に向けて検討をしたいというふうに思っておりますが、また本日皆様方からのご意見があれば、承ることができればと思っているところでございます。
 次に資料の6でございます。この国地方係争処理委員会が創設をされてからですね、審査の案件として、1件だけ、具体的にかかった事例がございます。これは資料にございます、横浜市の「勝馬投票券発売税」に対する総務大臣の不同意に係る審査というものがございまして、この事例につきまして簡単に説明をさせて頂きます。
 先に2頁の真ん中の少し下の(参考)の事案の概要というところ、少し小さい文字で恐縮でございますが、そちらをご覧を頂きたいと思いますが、事案の概要といたしましては、横浜市が平成12年に、法定外普通税として、勝馬投票券の発売税を新設することを内容とする税条例の改正案を可決をした訳でございます。勝馬投票券の発売税、これは横浜市内の勝馬投票券発売所における勝馬投票券の発売に対しまして、当該投票券の発売を行う者に課されるということで、発売額から払戻金等に市内の発売割合を乗じて得た額を控除した額を課税標準とし、税率100分の5ということでございました。地方税法の法定外普通税の手続に基づきまして、横浜市が平成12年の12月21日に総務大臣に対しまして、勝馬投票券発売税の新設に係る協議の申出を行いました。総務大臣は、平成13年の3月30日に、地方税法の規定に基づきまして、これに対し不同意とした訳でございます。横浜市長はこの不同意に対しまして不服として、同年の4月25日にこの国地方係争処理委員会に総務大臣は同意をすべきである、という旨の勧告を求める審査の申出を行ったということでございます。
 1頁目にお戻り頂きまして、まず結論が先でございますが、委員会の出した勧告の内容でございますが、総務大臣は、横浜市の勝馬投票券発売税新設に係る協議の申出につき、2週間以内に横浜市との協議を再開しなさい、つまり一旦不同意を取り消して、再度、この協議を再開をしなさいという勧告の要点でございました。
 委員会が、そう判断をした要点が、主に3点ほどございます。
 まず(1)は、総務大臣が同意不同意をするに当たっての基準でございます。総務大臣が、この同意の基準というものを定めてございますが、地方自治法で許認可等の基準を明確化するために、基準を定めなさい、こういうことがある訳でございますが、この要請に応えるものではない。この総務大臣が定めた同意の基準が、実は法律の不同意の要件と全く同じであってそれより詳細なものを決めていないという意味で、法律をさらに基準を明確にしたという要請に応えるものではないということでございますが、両者の協議の過程を考慮いたしますと、これによって直ちに本件不同意を取り消す旨の勧告をするほどのものとまでは解されない。協議の中で、基準を明確にしていったということから、こういった判断をしております。
 (2)の中央競馬のシステムは「国の経済施策」に該当するかという点でございますが、地方税法でこの不同意に係る3つの要件の1つに、「経済施策」ということがございます。この「経済施策」に財政施策、租税施策が含まれるかということについて、これは含まれると。ただし、含まれるものはすべてではなくて、「重要なもの」に限ると解すべきだと。これを受けて、畜産振興事業に係るこの中央競馬の制度につききまして、国の畜産振興事業費全体の30%を占めるということ等からすると、「国の経済施策」に該当をすると判断をしております。
 ただ、この(3)の、じゃあ国の経済施策に「照らして適当でない」といえるかどうかという点についてでございますが、この適当でないかどうかという点については、経済施策に「重要な」負の影響を及ぼす場合に限定をして解釈すべきであるということでございます。2ポツ目のところで、量的な面、制度的な面がありますけれども、まず、量的な面で、量的影響を検討すべきであるということで、3つ目のポツで、横浜市だけを見ると重要な負の影響を与えることにはならないけれども、他の市町村において同様の課税が行われた場合の量的影響や、日本中央競馬会が赤字の場合にも課税をすると、こういう仕組みになっていることによる制度的影響について、ちゃんと検討をすべきであるという判断でございます。
 こういった整理をいたしました上で、まとめとして、以上のように、検討すべき重要な問題があるにも関わらず、これらの点について、協議がなされてこなかったことが認められると。従いまして、この委員会が指摘した事項を基にして、総務大臣が、横浜市となお協議を重ねた上で判断をすべき、こういう勧告になった訳でございます。
 実はこの勧告が平成13年の7月24日になされた訳でございますが、その勧告の後、総務大臣が不同意を取り消しまして、横浜市と25回にわたりまして協議を重ねてございます。結果として、平成16年の2月に、横浜市の定例議会で、この勝馬投票券の発売税を作りましたこの改正条例、この条例を廃止をするという条例が最終的に成立をいたしまして、この発売税に関する条例というのは、結果的には廃止をされるという結末である訳でございます。
 以上がかつてありました審査に係る案件についての資料の説明でございます。私の方からは以上でございます。 

丸山市町村課長
 それでは続きまして、資料7について、ご説明申し上げます。市町村課長の丸山でございます。内容は、住基ネットの活用状況と、住基ネットに接続をしておりません団体に対する是正要求についてということでございます。
 資料の1頁をご覧頂きたいと思います。住基ネットによる本人確認情報の利用状況ということでございます。住基ネット、正式には、住民基本台帳ネットワークと言われますけれども、これは市町村の管理しております住基台帳を専用の回線でネットワーク化しまして、それによりまして、全国的に本人確認を可能とするシステムでございます。現在の電子政府、電子自治体の基盤をなすシステムとなっているものでございます。
 現在の利用状況をまとめた資料でございますけれども、住基法の定めによりまして、国の行政機関等、地方公共団体の事務の処理に関しまして、本人確認情報を提供しているものでございます。提供目的、提供先は多岐にわたりますけれども、左上の四角に書いてありますとおり、身近なパスポートの発給申請、あるいは、各種年金等の事務に活用されている訳でございます。右の四角にありますとおり、現在の活用状況は、国の行政機関等に対しまして、年間約1億件の情報提供がなされております。また、地方公共団体におきましても、年間約420万件の情報提供がなされている訳でございますけれども、この結果、年間約3000万人分の現況届等が省略されております。また、年間約450万件の住民票の写しの添付が省略できるということでございます。
 さらに、市町村間の情報のやりとりについてもオンライン化が行われておりまして、これによりまして、年間約410万件の転入通知がオンライン化されている。転出入の場合に、住基カードを併せて利用いたしますと、転入手続が、新しい住所、転入地において、1回ですむワンストップ化を可能ならしめているのがこの仕組みということでございます。
 これ以外にも、平成23年度になりますと、年金の被保険者等に対する住所変更についての届出を原則廃止するといった活用も予定されているところでございます。
 こうした住基ネットによる効果は、住民と行政の双方に発生している訳でございますが、それを試算してみますと、年間約400億円を超える効果があるものと見込んでいるところでもございます。
 2頁をご覧頂きたいと思います。この住基ネット活用の、最近の1つの事例ということでございますが、年金未統合記録の問題、いわゆる消えた年金問題につきまして、社会保険庁の作業で、解明されない記録、これに対しまして、住基ネットを活用いたしまして、記録の突合作業ということを行いました。1,837万件につきまして、突合作業をした結果、表で右の方に書いてございますけれども、社保庁の記録では住所が不明であったものについて、分かっている情報を手掛かりにして、情報の突合を行った結果、住所が判明したという、こういった事態がございまして、約314万件の記録について、不明であった住所情報等が判明したと。今、これを基にして社保庁でさらなる作業を進めている訳ですけれども、こんな形で、住基ネットを活用することによって、正しい年金給付のために一定の役割を果たしているということでございます。
 3頁をご覧いただきたいと思います。住基ネットに接続しないことに伴う不利益ということでございます。最初の四角で、住基ネットによる行政効率化のメリットというものを記載させていただきました。最初1頁目でお話した内容でございます。
 逆に、接続しませんと、具体的にどのような問題があるのかということでございます。黒の色を塗っている四角、真ん中の部分でございますが、住基ネット不接続の団体の住民が便益を享受できていない例、例えば、年金の現況届に係る届出書を提出することが必要。ネットに接続していれば、この事が、住基情報としてネット上で確認できるものですから、提出が必要ありませんけれども、接続していなければこれが必要になると。同様に、パスポート申請等の際に住民票の添付が必要になると。さらに、国税の電子申告、e-Tax、これが、住基ネットに接続し、住基カードを活用すれば、そこに本人確認の鍵があるものですから、パソコン上から行うことができますけれども、こういったこともできない。できないものですから、それに伴って行われている税額控除の機会も奪われているということでございます。年金未統合記録についてもネット不接続団体の住民はネット活用ということももちろんできません。
 さらに加えて、一番最後の四角に書いてございますけれども、行政効率化の阻害の問題は、ネットに接続していない団体にのみ発生する不都合ではございませんで、この事が全国においてネットワーク化された本人確認のシステムであることから、住基ネット不接続の団体に係る転入通知については、他の市町村にまたがる移動があった場合に、その他の市町村においても別途書類による対応が必要となる、全国的な問題も伴っているということでございます。
 4頁をご覧いただきたいと思います。住基ネットにつきましては、これまで様々な形で訴訟等が提起されてきたところでございます。ただ、この事につきましては、昨年、最高裁で重要な判断が2つ示されてございます。
 それを示しておりますけれども、1つは3月6日の最高裁の判決でございます。行政側全面勝訴の内容でございました。プライバシーの侵害等を理由として、住民票コードの削除等の請求が行われた、それについての最高裁の判決でございました。住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり、そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は公表される具体的な危険が生じているということはできない。こういった趣旨でございまして、行政側の主張が認められた内容になってございます。
 もう1件、7月8日の杉並事件最高裁決定というものでございます。いわゆる選択制の可否についてでございます。ここで選択制と言っておりますのは通称でございますけれども、住民の方の本人確認情報を市町村が送付する義務がある、こうなっているものにつきまして、希望者についてだけ、住民の方の希望を受けて選択的に送付することができるのではないか、要するに選択的に送付した情報を受け取る義務があるのではないか、といった立場で訴えを起こされたものでございます。それについての判断が示されております。市町村長は、都道府県知事に対し、漏れなく住民に係る本人確認情報を送信する義務があり、これを怠った市町村長の行為は違法である。これは高裁の判決の維持という形でこういう決定が示されているというものでございます。こうした重要な最高裁の判断が2つなされまして、法律的には、住基ネットの適用についての判断はほぼ確定したものと我々は受け止めておるところでございます。
 こういった中で、現在、住基ネットに接続していない団体が全国に2つございます。1つが東京都国立市、もう1つが福島県矢祭町ということでございます。そこにこれまでの経緯として簡単に示してございますけれども、国立市につきましては、これまで2回にわたりまして、東京都知事から是正の勧告がなされました。また、市議会におきましてもネット接続を求める旨の決議を採択されております。その上で、総務大臣から東京都知事に地方自治法の規定に基づきまして、是正の要求の指示を行い、東京都知事から国立市長に対して是正の要求を行ったということでございます。まだ接続はなされておりません。
 福島県矢祭町の件でございますけれど、これにつきましても、福島県知事から2回にわたりまして、是正の勧告がなされ、まだ接続は行われておりません。なお、下に記載させていただきましたが、東京都杉並区につきましては、先ほど御紹介いたしました、平成20年7月8日の杉並事件最高裁決定の原告になっておりまして、こうした最高裁の判断が示されたことを受けまして、接続を表明され、今年1月からネットに接続をされたということでございます。
 5頁をご覧いただきたいと思います。ネット不接続に係る是正の要求についてでございます。国立市についての状況を説明しているものでございます。国立市につきましては、申し上げましたとおり、住基ネットに接続しておりませんで、本人確認情報を都道府県知事へ通知する旨の住基法の規定等に反している、住基法違反の状態にありますので、これを受けまして、総務大臣といたしましては、平成20年2月13日、国立市に対して是正の要求を行うよう、東京都知事に対し指示を行いました。それを受けて、東京都知事は、国立市に是正の要求を行ったところでございます。自治法の規定によりますと、是正の要求を受けた国立市には、住基法の違反の是正を図るための必要な措置を講じる法的義務があることが明らかな訳でございます。国立市といたしましては、是正の要求に不服がある場合には、是正の要求があった日から30日以内に、総務大臣に自治紛争処理委員の審査に付することを求める旨の申出をすることができますし、また、その勧告に不服があるときは、高等裁判所に提訴することができるとされております。この期間を経過した後におきましては、当該是正の要求について不服を申し立てることはできない。裁判上争うこともできないということでございます。こういった中で、国立市は未だ住基ネットに接続しておりません。また、自らの事務処理の適法性や是正の要求の違法性を自治紛争処理委員の審査の申立てという手段により主張することなく、審査申立期間を経過しているという状況にあります。
 率直に言いまして、現行の制度では、想定していない事態ということだと思います。違法状態が確定し、かつ、こうした状態を放置することが、著しく公益を損なうという場合、こういった場合にも対応いたしまして、これを解消するためにいかなる法的手立てが考えられるのか、こういったことを検討する必要に、今、直面しているというふうに受け止めているところでございます。説明は以上でございます。 

磯部委員長
 はい、ありがとうございました。それでは、最初に申し上げましたように30分ぐらいを目途に、ただいまのご説明につきまして、ご自由にご意見ご質問等伺いたいと思います。今の資料の7の話は後回しにしまして、まずは資料1から6のこの委員会の役割とか、この会議録の取扱いとか、この辺に関しましては何かございますでしょうか。
 横浜のケースに関してもいかがでしょうか。これは協議を何回やったのですか。 

佐々木行政課長
 審査でございますか。協議。 

磯部委員長
 もう一回協議しろと勧告をしてからの話です。 

佐々木行政課長
 はい。さきほどちょっと申し上げましたが、平成13年7月24日に勧告が出まして、その後総務大臣が不同意を取り消して、その後協議を25回重ねたということでございます。 

磯部委員長
 はい。こういう歴史があったということですね。よろしいですか。
 それでは、もう全体にわたりまして、資料7を含めてどんな事でも結構ですから、いかがでしょうか。
 この資料7の1頁目で、ちょっと数の多さに驚いたのですけれど、国の行政機関等に対し年間約1億件の情報提供がされているというのは、かなり多い気がしますが、これは専ら年金関係ですか。 

丸山市町村課長
 大きなものは年金でございます。 

磯部委員長
 そういうことはあまり知られてない情報なのではないかという気がしますね。 

丸山市町村課長
 具体的なものとしては、この年金の現況届が省略されたというのが個々人にとっては身近なことなんだと思いますけれども、こういった仕組みは活用されて平常化してしまいますと、それがベースになるもんですから、なかなか利用されているという実感が湧きにくいという面はあるかと思います。 

磯部委員長
 逆に、心配されていたマイナス面というか、情報が漏れるとか、トラブルがあったとかというようなことは、この制度施行後、特にないのでしょうか。 

丸山市町村課長
 住基ネットから情報が漏洩するといったケースは一件もございません。参考までに申しますと、ネットワークから漏れたのではなくて、ネットワーク外の情報として、担当の職員の自宅パソコンがウイルスに感染して、漏れてしまうといった事案は少数ではありますが、ございました。ただ、それは専用回線の外の問題でございまして、一般的な情報の管理の問題と受け止めまして、その管理は徹底するように努めております。ネットワーク自体に起因する問題はございません。 

磯部委員長
 その職員の使っているパソコンからアクセスできるようなものではなくて、ネットワークに接続するには特定の端末機があると、そういうことですね。 

丸山市町村課長
 はい。 

磯部委員長
 いかがでしょうか。
 この例えばe-Taxの便利なのを使いたいのに接続しないと使えないというような住民の不満等は現実にあるのでしょうか。 

丸山市町村課長
 杉並区が、今年の1月からネット接続に参加されました。そのときのマスコミの報道を見ますと、これでe-Taxに参加できるということで、区役所に相当数の利用する方の来訪があったとお聞きしております。 

磯部委員長
 篠ア先生、何かございますか。 

篠ア委員
 今、この件に関連して、新しい法律をということで検討されているというのを新聞で読んだ事がございますが。そのあたりはいかがでしょうか。 

佐々木行政課長
 先ほど丸山市町村課長からも少し申し上げましたですが、5頁のところで、一番下にございますが、是正の要求までは行った訳でございますが、その後、これは委員会ではなくて自治紛争処理委員の方でございますが、そこに行けるところが、国立の方から審査の申立てという手段がなされないということになりますと、違法状態が継続をしているということでございます。現在の法制度の中では、じゃあさらにこの状態を解消するために、何らか、例えば国からの何らかの取るべき手段があるかというようなことについては、現行法制では縁が何もない状態でございます。従いまして、私共の認識といたしましては、こういった違法状態の継続というものを解消するための何らかの手立てというものをですね、検討すべき必要性があるのではないかと、こういう認識を持っておるところでございます。 

大橋委員
 この問題は、知事と市の関係なので、紛争処理委員の方の議題として上がって、ここの委員会にかかって来るという問題じゃないわけですね。 

佐々木行政課長
 はい、その通りでございます。国地方係争処理委員会は国の関与に関するものでございますので、今回のような。はい。 

大橋委員
 国による関与がないと、この委員会より下のところに重点が移って。紛争処理委員の制度というのは整備されてるんですか。 

佐々木行政課長
 はい。このですね、住基ネットの方の資料の一番最後の7頁にございますけれども、自治紛争処理委員の制度につきましても、地方自治法の中に整備がされておりますけれども、7の右側の下半分にございますが、自治紛争処理委員は、それぞれ事件ごとに任命をすると、それぞれの都道府県の関与があった際に、事件ごとに任命をするという形で、制度としては整備しておりますが、任命は事件ごととなってございます。 

大橋委員
 最後に、国としては、一応違法状態ということは制度的にも、期間が過ぎて確定している訳ですよね。違法状態ということは明らかなので、だから、何かしないとおかしいけど、向こうから争って来ないので、示唆しかできないっていうのが理屈なんですね。本当にブレーキングしてていいんでしょうか。1つは、制度改正の方につなげて行くってことがあるんですけど、制度改正しなくても、宣言をするとか、勧告するとか、もうちょっと大臣とか上のレベルでもう少しフォーマルにやるというのはいかがですか。 

久元自治行政局長
 法律に基づく是正の要求の指示というのはこの制度ができてから初めてである訳ですね。ですから法律に基づく是正の要求の指示というものを行って、それは相当、法的義務を伴う非常に強い措置でありまして、そういうものを発動した後に、言わばその法律に基づかないような、大臣の勧告だとか、あるいは談話だとかっていうのを出してみてもですね、さほど意味が無いのではないかなというふうに受け止めております。 

磯部委員長
 非常に重要なところで、すぐには無理かもしれませんけれども、何らかの法改正を考えて行った方がいいですよね。 

大橋委員
 これ、黙ってこのまま裁判所に出て行くと、行政間相互の紛争だとかっていう形で、法律上の争訟じゃないっていうふうに裁判所で受けてもらえない形になる。やっぱり法律で書いて、義務が履行されないってことを、国の側からも確認するっていう手立てを書いて、確認を裁判を通じてもう1回してもらう。そういうやり方をとらないと、行政的には、大臣の所まで行って法律に基づいて宣言してるので、屋上屋を重ねるような仕組みしか考えにくい。10年前の分権のときの制度設計の話に戻り、見直しが必要です。もともと行政ができることで、自力執行できるんだから、裁判所を煩わせる必要はない、訴える必要はないという、こういう理屈があったと思うんですね。今日議論しているような場合は、もうこれ以上は何も国に手立てがないまま、違法状態が残るっていうのは、やっぱり、考え直す素材が出てるのかな、という気がします。 

磯部委員長
 都道府県と市町村の間の紛争については、自治紛争処理委員の制度に乗っかるというしくみは、たしかに地域性のあるローカルな処理が可能な問題については、その方がいいだろうっていうことだろうと思うのですけれど、もし理論的には全く同じ性質の事案が全国の複数の都道府県と市町村の間に生じて、それぞれの手続が進んでいったとしたら、自治紛争処理委員に任される訳ですよね。法的性質は同一なのだけれど、当事者となる自治体が違うというケースについて、出て来た結論が場合によっては、ばらばらになる可能性もあるということですよね、制度上は。 

佐々木行政課長
 制度上は、そういう形になります。 

磯部委員長
 それについては、法的な理屈が全国画一的に同じ問題なんだからと言って、それをこの全国的な委員会で処理するというような仕組みにはなっていないのですよね。 

佐々木行政課長
 それはございません。 

磯部委員長
 法的な結論がばらばらになった時に、なんかすこしおかしさが残るような気もするのですが、それはそれが分権だと言うことなのですかね。そういう処理の方が分権的であろうという。議論はあまりしなかった記憶があるんですが。 

佐々木行政課長
 そのあたりは委員の任命のところでどういうふうにしていくのか、ということなんだと思いますけれども、一方で事件、似ていたとしても、個別の事案によって違うところがございますので、なかなか一概に申し上げにくいですけど。 

大橋委員
 紛争処理委員のところに行って議論が分かれても、その後裁判に行って、裁判所の方で判断が統一される、そういう仮定をしているのですか。もっとも、あまり件数がありませんが。 

磯部委員長
 そういう想定をして制度を作ったというあまり記憶が無いもんですから。 

長谷部委員長代理
 これ事実上、同じ方が2つの自治紛争処理委員会を構成するということはあり得るんですか。同じメンバーが同じような案件を2つやると、それぞれメンバーは同じということで。 

佐々木行政課長
 それは、特段制限はございません。 

磯部委員長
 それは本当に地域性のあるやり方なんですかね。 

長谷部委員長代理
 この事例でいくと全国共通のものとなって。 

磯部委員長
 全国共通の自治紛争処理委員を任命するというのは、ちょっと制度の趣旨が違ってくることになりますよね。
 よろしゅうございますか。だいたい、お約束の時間に近づいておりますので、特にご発言なければ、以上で、予定の議題をすべて終了したということで、終わりたいと思います。事務局の方何かございますか。それでは、議事録を公表の手続に移しますので、よろしくお願いいたします。それでは、本日はどうもありがとうございました。 

(以上)

ページトップへ戻る

国地方係争処理委員会
サイドナビここから
サイドナビここまで