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第11回 国地方係争処理委員会 議事録

増井委員長
 それでは、第11回の国地方係争処理委員会を始めます。  本日の議題は、「地方分権改革推進委員会における議論の状況について」及び「第29次地方制度調査会における議論の状況について」です。
 なお、前回と同様、係争案件の審査をするわけではありませんので、本日の委員会の議事においては、平成13年2月5日委員会決定に基づき、議事要旨と議事録を公表することを予定しております。
 それではまず、「地方分権改革推進委員会における議論の状況について」、地方分権改革推進委員会の金澤次長からご報告いただき、これについて質疑応答を行った後に、自治行政局の佐々木行政課長から「第29次地方制度調査会における議論の状況について」ご報告いただき、質疑応答を行いたいと思います。
 では、金澤次長、お願いいたします。

金澤次長
 地方分権計画推進委員会事務局の金澤です。よろしくお願いします。
 第2次勧告についてですが、資料2の概要ペーパーで御説明しながら、必要に応じ本体の資料1を参照したいと思います。
 まず、今回の第2次勧告の内容は大きく2点ございます。一つ目が、1枚目にあります「義務付け・枠付けの見直し」、国の法令で地方公共団体に義務付け・枠付けを行っているものを見直しております。二つ目が2枚目の「国の出先機関の見直し」でございます。
 まず「義務付け・枠付けの見直し」について、言葉の定義は1枚目の左下に書いておりますように、「義務づけ」とは「一定の課題に対処すべく地方自治体に一定種類の活動を義務づけること」、「枠付け」とは「地方自治体の活動について手続き、判断基準等の枠付けを行うこと」です。いずれにおいても国の法令によって決まっており条例で自主的に定める余地を認めていないものについて、見直しを行っております。問題意識は1枚目の左上、「地方政府」を確立するためには自治行政権、自治立法権、自治財政権を有する必要があるということです。このうち自治立法権については、従来の分権の流れの中では必ずしも見直されてこなかったものです。第一次地方分権改革の際に、個別省庁が個々に自治体に関与する、つまり、指示をしたり協議を求めたり許認可権限を行使することについては相当程度見直しを行いましたが、法令そのもので、「自治体はこの仕事をしなければならない」「自治体はこの基準に従わなければならない」といった、ダイレクトに自治体を縛る法令については見直しは行われていませんでした。したがって、法令そのものの縛りについて見直すというのは歴史的な、初めてのことであります。特に、法令の内容を自治体の条例で変更したり上書きをしたりできる、条例で拡充できるようにすることを最終的なターゲットとしておりますので、自治立法権の確立という意味で非常に大きなことだと思っています。
 具体的な見直し方針は、1枚目の左下の2(1)に書いております。ただし、これが自治体を縛っている法令の全てかというとそうではありません。自治事務だけではなく法定受託事務も見直しの対象とすべきものはあるのですが、法定受託事務は根本的には国が行うべき事務を自治体が行っているものであり、一方の自治事務はそもそも自治体の事務であることを踏まえ、今回の作業においては自治事務のみを対象としました。また、今回は法律レベルの見直しに限って作業をしました。例えば、事務自体は法律で「できる」という権能付与の規定になっているものの、政省令で「自治体がこの事務を行う場合にはこの基準に従わなければならない」とされているものもありますが、今回は法律レベルで義務付け・枠付けを行っているものに限りました。今回の見直しの対象となる条項は約1万条項ありましたが、これらについて義務付け・枠付けに合理性があるかどうか、メルクマールを立てて振り分けました。資料の3枚目にメルクマールを書いております。左側の青い欄は、作業を始める時点であらかじめ考えていた「この義務付け・枠付けには合理性があるだろう」という基準であり、右側の赤い欄は、個別条項を見直す作業を行う中で、これらの基準も必要だろうと考え追加的に設置した基準です。いくつか内容を御覧いただきます。左側の欄の(i1)については憲法上の財産権に関する縛りであるから合理性があるだろうという領域、あるいは(iii3)の地方自治の根幹に関する事項は全国一律で統一することはやむを得ないだろうという領域、または(iv4)の例えば(a)広域連合のような協力体制をとるものについて一定の仕組みとしてのルール付けをしているものは、必ずしも自治体の判断を縛るというものではないだろう、等についてメルクマールを立てています。また、(v5)は、例えば建築基準の具体的なルールなどが該当します。また、右側のア、あるいはイについては一定の縛りは認められるのではないか、ということです。ウは対人福祉サービス分野ですが、定量的な基準や個別具体的な方法を含まないものについてはメルクマールを立てることを考えました。また、エは憲法上の規定、教育を受ける権利から直接保障されるものについてもメルクマールを立てております。これらのメルクマールに該当するものは合理性があるものとして存置、該当しないものは何らかの見直しが必要なものとして判別しております。
 1枚目に戻っていただいて、見直しの考え方については、具体的な方針を左側の2(2)に書いております。1)から3)の順番で検討いただこうというものです。1)の廃止は、条項自体の廃止というよりは義務付けの性質の廃止という意味です。「しなければならない」という規定を奨励規定とする、というのがその例です。1)が最も望ましいのですが、それが無理であれば2)、3)の順番で、条例委任や条例補正という方向で見直していただきたい、こういうことを勧告したものになります。メルクマール該当・非該当の割合を書いておりますが、半数強がメルクマールに該当し、該当しないもの、つまり何らかの見直しが必要なものが半数弱、ということになりました。具体的な数字は4枚目にございます。
 以上が第2次勧告の内容になります。資料1の冊子の中央辺りを開いていただくと、個別の法律について条項ごとに○×が記されていますが、このように1万条項をすべて判別しております。資料1のP10からp26を御覧ください。ここには、地方自治体から、日々仕事をする中で、不要であり見直して欲しいという意見を受けたものについてそれぞれ比較しております。
 資料2の1枚目にお戻りください。今後の進め方ですが、右下に書いておりますように、地方分権改革推進委員会として具体的に講ずべき措置を打ち出したいと思っています。そのため、特に問題がある事項、4の点線囲いの中の1)から3)については、第3次勧告に向けて各省庁と調整したいと思っています。
 次に、出先機関の見直しについて御説明いたします。資料2の2枚目を御覧ください。左上に「基本的考え方」として5項目上げております。分権の文脈の中で出先機関の見直しを検討するのは初めてですが、分権の文脈だけでなく、国の行政組織を効率化する、国のガバナンスを確立するという趣旨も含んで見直しを行っております。したがいまして、この第2次勧告は、分権の価値観だけで成り立っているわけではないことに留保が必要です。出先機関については2つのステップで見直すことを考えております。一つ目は、事務・権限の見直しです。出先機関の事務・権限を1)重複型、2)分担型、3)関与型、4)国専担型に分類し、この分類を踏まえて矢印の下にあるように仕分けを行いました。廃止や地方への移譲を検討する等です。その他にも、本省に引き上げるというものも考えられます。具体的には、5枚目の別添3を御覧ください。例えば地方厚生局ですと、福祉関係の資格を持った人の養成施設の指定事務は、現在は国のみが行う事務なのですが、栄養士や調理師などの資格を都道府県知事が付与するものもあります。このように知事が付与する資格については、その養成機関も地方へ移譲すべきだろうと考えます。また、都道府県労働局の無料職業紹介、つまりハローワークで行っている事業についても、現在は国のみが公的な職業紹介をやっているという法的位置付けがあり、自治体が行うものは民間と同じ位置付けとなっているところですが、自治体が行う無料職業紹介についても公的な性格を持つものと位置付けまして、国が持つネットワークを自治体も使えるようにするということが第2次勧告に書かれております。また、地方農政局の国営土地改良事業については、現在の国営事業を絞り込み、都道府県へ移すものを増やすということを言っております。地方整備局についても、国道の整備・管理、一級河川の管理、国営公園の管理については自治体へ移管すべきであるということを書いております。また直轄港湾事業についても、国直轄とするものを絞り込み、自治体が行うことができる範囲を拡大していくことを書いております。2枚目にお戻りいただきますと、このような作業を行った上で、右側の真ん中、組織の見直しを勧告したところであります。一定のものについては国の組織がスリム化し、それが統廃合するというものになります。考え方としては、1)ア、イ、ウという3つのパターンの打ち出しをしております。また、地域との連携やガバナンスの確保ということで、協議組織の設置を法律上明確に位置付け、知事や市長会・町村会のメンバーで構成されること、直轄公共事業の整備計画等を付議することを書いております。自治体外見を述べる機会を付与する仕組みを考えております。公共事業については、個別事業の積算や明細の情報開示を求めております。その内容については6枚目、別添4にございます。i1)の6つの出先機関、地域振興、地域産業振興に関わりの深いものをまとめたものでありますが、組織が非常に大きくなりますので、第2次勧告においては「地方振興局(仮称)」と「地方工務局(仮称)」、実施部隊とそれ以外の組織とに分けて、「地方振興委員会(仮称)」がチェックを行うという仕組みにしております。また、ii2)についてはブロック機関に集約してもらうこと、iii3)の中労委地方事務局は廃止、iv4)の6つについてはスリム化して存続するという形になります。
 また、資料1のp35を御覧ください。中央やや上あたりに、こうした改革を行うことによる国の職員のボリューム感について記述があります。「まず人件費改革などでも定められた約7,700人の人員削減を行うとともに」、「約1万人程度を出先機関から地方に移す」、さらに最終的には、「合計3万5,000人程度の削減を目指すべき」とされています。これは最終の委員会で付け加えられた部分です。具体的な事務権限を移すだけで約1万人の削減となりますが、これを超える3万5,000人の削減というのは、事務権限を移すだけでなく、例えばハローワークで、自治体の事業を法律で位置付けし直せば、将来的には無料職業紹介事業は自治体が担うこととなり、国のハローワークの職員はほとんどゼロになるかもしれない、そうなればこの3万5,000人が達成できる、という数字です。
 第2次勧告の概要は以上です。

増井委員長
 ありがとうございました。
 委員の皆様、ご意見、ご質問がございましたらどうぞ。
 第2次勧告のp35で人員削減について記述がありますが、12月8日の新聞記事を見ますと、出先機関の改革を行うことによる予算の改革に踏み込んでいないのではないか、10兆円くらいの削減ができるのではないか、という議論がありますか。予算に関する議論はなされたのでしょうか。

金澤次長
 資料1の一番最後、「資料編」のp24に、定員と予算に関する表がございます。平成20年度末定員の合計9万5000人の中の3万5000人です。ただ、3万5000人という目標は、いつまでに達成できるか分からないものです。明らかに根拠があるもの、例えば直轄道路や河川については各知事と協議中なので、その協議が終われば具体的な数字を試算できますが、まだ協議中ですので試算はできません。国のハローワークがなくなる日というのは、かなりのステップを積み重ねないと辿り着かないと思います。例えば、ILO条約の中で国が責任を持ってハローワークのようなネットワークを整備すべきだという条項もあり、検討しなければなりません。ただ、個別の事務権限についてはかなりコンクリートしております。資料1の後ろから1/3くらいから、別紙2として個別の事務について短冊で整理しております。これら個別の事務の整理に基づいて計画を作っていく予定です。

長谷部委員長代理
 資料2の3枚目、義務付け・枠付けのメルクマールの資料のうち、青い欄と赤い欄とは性質が違うものなのですか。

金澤次長
 最終的には、青い欄に書かれたメルクマールも赤い欄のメルクマールも、性質は同じです。青い欄に書かれた項目は、この作業を始める段階で、このような事項に該当する義務付け・枠付けは合理性があるだろうということで設定した項目です。赤い欄は、作業を進めていく中で、こういう事項にも合理性があるのではないかと判断した項目です。

大橋委員
 青い欄は、法人制度など、条例の事項的制限と伝統的に言われていた基準ですね。

金澤次長
 その通りです。青い欄は、第一次地方分権改革の際も考えられていた点です。青と赤と、機能的には欄を分ける必要はないのですが、我々の作業の経緯から分けさせていただきました。

岩崎委員
 資料2の1枚目の左下に義務付け・枠付けの定義がありますが、これによると、義務付けは地方自治体が何をやらなければならないのかを定める、枠付けはそのやり方・手続きまで定めるということですね。とすれば、義務付けと枠付けの性質は若干違うと思います。義務付けは、何をすべきかということなのでまさに自治立法権に関する問題ですが、枠付けは、何をすべきか決まっている中でやり方を自由にできるかどうかなので地方自治体の執行権の自由度の問題になります。ここでは並列で書かれていますが、義務付けしている条項はすべて枠付けしているのか、それとも義務付けをしているものであっても枠付けをしていないものもあるのでしょうか。つまり、義務付けの問題は自治立法権、枠付けの問題は自治行政権に関するものなのに、義務付けと枠付けをフラットに取り扱うのは少しおかしいのではないかと思います。この違いを意識していらっしゃるのでしょうか。

金澤次長
 例えば、枠付けのみの例として、社会福祉施設の設置基準があります。社会福祉施設を作るかどうかは「できる」規定なのですが、作るのであれば基準に従え、というものです。義務付けのみのものは、例えば男女共同参画計画の策定などです。計画は作らなければならないとされていますが、その内容は法律上は自由となっています。ただ、運用上も本当に地方自治体の自由かどうかは分からないところですが。

岩崎委員
 では、本体、つまり資料1のp10から地方自治体からの要望意見が列挙されていますが、これは義務付けに反対しているのでしょうか、それとも枠付けに反対しているのでしょうか。つまり、「何かをやらなければならないことはしょうがないが内容は自分たちに任せてほしい」という意味なのか、「やること自体を決められるのが嫌だ」という意味なのでしょうか。

金澤次長
 実は、その点に関して地方自治体の意見はバラバラです。また、資料2の1枚目に「メルクマールに該当しないものをこのように見直せ」という点線で囲んだ部分がありますが、地域的な基準を自治立法で作ることになれば自治立法権の拡大だと思います。ただ、地方議会が「条例を作らなくても執行でやるべきだ」と考えるのであれば、それはそれで構わないと思います。ベースとなる枠が法律に残ったとしても条例で修正ができるのであれば、それは立法権の拡充だと思います。

大橋委員
 上書きの許容とありますが、条例による上書きを学生にどう説明すればよいか、難しいと思っています。法令を作るときに「この部分については条例委任します」とすることの進化形ということでしょうか。例えば、地方自治体が自信を持って「この部分は条例で上書きできる」と言える範囲を増やすということでしょうか。第一次地方分権改革の時は、立法による国の関与は是で、通達等の執行により国が行政関与するのはダメだという整理だったと思いますが、今回は立法の関与についても対象にする、という理解でよいのでしょうか。

金澤次長
 その理解で構いません。

大橋委員
 実情を考えると、実は法律ではなくて、法律を後ろ盾にした政省令が、地方自治体の条例に勝っているという現実があるのだと思います。この第2次勧告は、法律を後ろ盾にした政省令で縛っている事項についても、条例が勝る状況を作っていく、ということですね。

金澤次長
 その通りです。第3次勧告では、具体的措置を書くとともに、特に問題だと思っている3点、つまり1)施設・公物設置管理の基準、2)協議、同意、許可・認可・承認、3)計画等の策定及びその手続き、を中心に調査審議していきます。

大橋委員
 メルクマールについてですが、法人制度だから国の義務付け・枠付けに合理性があるとするのは、範囲が広すぎるのではないかと思います。法人について、役員構成や情報開示に関しても細かく法律で定めているものもあり、条例はまったく手を引いています。法律に対する過大な「怯え」のようなものが地方自治体にはあるように感じます。条例を作ることについて地方が萎縮しているのではないでしょうか。

金澤次長
 法人についてですが、確かに根幹部分についてはメルクマールとしておりますが、我々は「この条項は非該当ではないのか?」という目で見てチェックしております。

増井委員長
 大橋委員の言うように、条例制定について地方が萎縮しているのであれば、地方分権は少し難しいのではないでしょうか。

大橋委員
 例えば条例で罰則規定を設けるときに、本当に法令とぶつからないかどうか、地方自治体は心配するのだと思います。ラブホテルなど風営法関係では新しい営業形態などに対してかなりできると思いますが、それ以外の分野には、条例制定はなかなか難しいのではないでしょうか。

金澤次長
 勧告の中で「条例での上書きが可能であれば、それを法律に明示すべき」と書きたいと思っています。

大橋委員
 あらかじめ情報を出しておくということですね。岩崎委員の言うように、確かにやり方まで縛ってしまうのはおかしいと思います。

長谷部委員長代理
 条例で異なる定めを置くことを法律が許容していると解釈しないと、理屈に合わなくなってしまいます。地方分権改革推進委員会として、法律が許容しているということを言っているのでしょうか。

金澤委員
 法律の一義的な解釈権は所管省庁が持っています。

長谷部委員長代理
 ということは、各省庁と個別の協議を行うということですか。

金澤次長
 メルクマール該当・非該当ということは公表しておりますので、非該当部分について「条例で上書き可能であるならその旨を法律で明記すべき」「条例で上書きを認めないのであればその解釈を変更すべき」と主張したいと思います。

増井委員長
 概要の6枚目で地方振興局や地方工務局を作るとありますが、ここについては組織が巨大になりすぎるのではないか、という懸念も聞きます。それについてはどう考えているのですか。

金澤次長
 都道府県から「この事務をやりたい」という申し出があればその事務は都道府県に移すことを考えています。この「地方振興局(仮称)」・「地方工務局(仮称)」が巨大になるかどうかは地方自治体の判断にもよるということを主張したいと思います。また、個々の事業について、企画部門と実施部門を分けるわけですが、縦割りの弊害を解消するメリットはあると思います。

増井委員長
 もし地方自治体が事務を引き受けるということになれば、その事務だけでなく、その処理のための人材も財源も必要だ、ということになりますね。

金澤次長
 そうです。税財政については第3次勧告で提言させていただくつもりです。

大橋委員
 この組織改革は、道州制を意識したものなのでしょうか。

金澤次長
 道州制も視野に入っております。ブロックごとの局は、道州制の基礎となり得ると思います。ただ、道州制に差し障りがあってはいけませんし、地方分権はそのステップの一つだと思っています。あくまで地方分権改革は、道州制よりも前に達成しなければならない問題です。

岩崎委員
 では、地方振興局や地方工務局を作るという発想は、どこから来たのでしょうか。地方自治体の単位は現在は小さすぎるけれど、ある程度大きければ地方で仕事ができるでしょうという話と、この事務は国がやるべきか地方がやるべきかという役割分担の話と、どちらが基礎になっているのでしょうか。道州制になれば地方の事務となるけれど現在は道州制ではないので国に残しておく、という意味なのか、道州制になってもなお国がやるべき事務という意味なのか、どちらなのでしょうか。

金澤次長
 例えば、淀川の管理は複数の府県にまたがる事務ですので、現在は国の事務としております。トラックの運行管理についても、一つの都道府県内に留まりませんから国の事務としております。しかし、この整理と、これらの事務が本質的に国がやるべき国家行政なのかどうかということとはイコールではありません。

岩崎委員
 広域連合を作ったときですが、一部事務組合があるのになぜ広域連合が必要なのか、という議論がありました。広域連合は、都道府県境を越える広域行政課題に、国ではなく、地方自治体が対応できるように、関係都道府県で特定目的の広域行政機構を作れるようにした制度です。県を跨ぐから国の事務だという整理は、広域連合制度創設を答申した地方制度調査会の議論を無視することになりませんか。

金澤次長
 御指摘の通りだと思います。本質的に国家の事務かどうかという話と、1つの県に収まらないから国の事務とする整理とは、異なると思っております。

岩崎委員
 地方分権を推し進める観点から言えば、国に「この事務は県を跨ぐから国の事務と整理する」といった主張をし得る余地を残すのは、あまり作戦として上手ではないと思います。

増井委員長
 その他、何かご意見等がございますでしょうか。
 特に御意見がないようであれば、引き続きまして、「第29次地方制度調査会における議論の状況について」、佐々木行政課長から説明をお願いします。

佐々木行政課長
 それでは、第29次地方制度調査会の議論の状況について御説明いたします。
 まず、資料3を御覧ください。第29次地方制度調査会のメンバーでございます。この委員の方々に、2年をかけて審議していただいております。
 資料4を御覧ください。第29次地方制度調査会の審議事項は大きく分けて2点ございます。
 1つ目が市町村合併の効果の検証と基礎自治体、つまり市町村のあり方についてでございます。2つ目が、市町村合併も行われ地方分権が進みますと、地方自治体の中でのチェック機能の充実が重要だという観点から、監査機能と議会制度についてでございます。
 p2に調査審議の状況を書いております。これまで、主に監査機能と議会制度について審議を行い、12月15日に総会を開き報告したところです。
 p3にスケジュールがございますが、今後は基礎自治体のあり方について検討し、来年7月に答申を行う予定です。
 p4以降は、12月15日に総会を開いて報告した小委員会の検討結果です。まず、p5,監査委員の選任方法について。現行は、議会の同意を経て長が専任しますが、監査される人が監査する人を選ぶという仕組みですので、独立性の問題があるのではないか。また、委員構成ですが、現行では議員のうちから2名以内となっておりますが、これは議会の選挙で選出されること、また監査委員は専門的な知識が必要であることを考えると、議員は監査委員に選任できないこととしてはどうか。つまり、監査委員は専門的にチェックを行い、議会は議会で住民の代表という立場からチェックするというように機能を分けるということです。p6には監査委員の権限・責任、事務体制について書いております。p7は外部監査についてです。外部監査とは地方自治体が依頼をして、外部監査人がテーマを選んで監査するもので、中核市以上に義務付けされている制度ですが、一般市にまで義務付けするかどうか。これについては、まずは監査委員について見直しを行い、一般市に義務付けするかどうかは引き続き検討してはどうか。また、外部監査をやると決めたら毎年予算を組まなければなりませんが、これを柔軟にすることで外部監査の導入を促進したい。また、個別外部監査制度という個別案件ごとの監査制度があります。これは条例により導入することとされていますが、導入を促進するため、条例がなくても導入できることとするかどうか。p10は議会についてですが、まず議決事件について。契約や財産の取得・処分については「政令で定める基準に従い条例で定めるもの」が議決事件とされていますが、この部分について裁量を合理的な範囲で拡大する。また、法定受託事務についても、議決事件の追加を条例でできるようにする。p11は議会の監視権能として、実地検査権を付与してはどうか。p12は、議会に経営状況を報告する法人の範囲を拡大することを検討しております。また、住民訴訟が継続している場合には、損害賠償請求権の放棄を行うことを制限してはどうか。p13は議会における議論の活性化について、p14は議員定数について法定上限の撤廃、p15は会期について、現在は定例会と臨時会に限られていますが弾力的にしてはどうか。ただし、執行側の負担も増えてしまうのでそれに対する対応も必要。また、現行では長に議会の招集権がありますが、それを議長にも認めてはどうか。この他、p16からp17にかけて、幅広い人材が議員となれるような仕組みを考えております。以上でございます。

増井委員長
 ありがとうございました。
 前提を教えていただきたいのですが、チェック機能充実という話で監査機能について検討したとのことですが、その前提にはどのような理由があるのでしょうか。

佐々木行政課長
 監査機能の充実の背景は、これから地方分権を進めていき地方自治体の責任・判断がより重要になってくれば、国の監督はありませんから、地方自治体の中でチェックが必要になるということです。

増井委員長
 わかりました。もう一つ、監査の実情、特に、外部監査制度は平成9年頃に導入されたと思いますが、実情はどのようなものなのでしょうか。

佐々木行政課長
 実は、外部監査制度についてはいろいろな意見がございます。都道府県と政令指定都市、中核市は外部監査が義務付けられておりますが、どうしても「外部監査を頼む」という制度なので、頼まれた相手に対してきちんとチェックできるのか、という意見があります。また、予算もかなりかかりますので、必ずしも全ての自治体に導入すれば良い、というものではないという意見もあります。外部監査のテーマについてはそれぞれの自治体で異なっております。

岩崎委員
 p14で議員定数について書いてありますが、これは法定上限を撤廃するということですか。

佐々木行政課長
 そのとおりです。

岩崎委員
 市町村合併の際に、合併により議員数が増えすぎたため住民から「おかしい」という指摘が上がりましたが、そういう懸念はないのでしょうか。

佐々木行政課長
 議員数が多ければ良い、又は少なければ良い、という問題というよりは、議会の自由度を拡大するという趣旨です。実は第28次地方制度調査会からの宿題事項でもあります。法律で一律に議員定数の上限を決めるべきなのかどうか、もっと柔軟にすべきではないか、という問題意識です。

岩崎委員
 この点について、私はむしろ逆の意見を持っています。これくらいの人口であればこれくらいの議員数という定数の下限を法定し、それ以上はそれぞれの自治体が判断するとすれば、議会と住民との間に緊張関係と応答性が確保できるのだと思います。また、事務局の体制は非常に重要です。地方分権が進み条例が重要だということになるとすれば、現在の議会事務局にそういう専門知識や技術が十分備わっているのかどうか、若干疑問に思います。事務局の中身を実際にどのように充実させていくか、という検討が必要だと思います。

久元行政局長
 議員定数についてですが、諸外国の例を見ると、最低限の人数を決めているところもあるようです。ただ、議員定数については法律事項ですし、法改正をするとなれば政治的にどうするか、という話が当然出てくると思います。

大橋委員
 監査についてですが、あれだけ膨大な量の財務監査、行政監査を行うのは難しいと思います。むしろ、情報公開審査会の方が現実にはチェック機能を果たしているのではないでしょうか。問題になるのは病院関係や学校関係が多いです。行政不服審査法が改正され審査会ができれば、そこでもチェック機能は働くと思います。こういう審査会等と連携していかなければ、監査だけでチェックするのは難しいのではないでしょうか。

佐々木行政課長
 確かに、監査は外部からチェックするだけですし、日常の業務チェック、内部統制みたいな総合チェック機能の仕組みを全体でやっていこう、という議論も出ています。

大橋委員
 監査委員事務局の話ですが、例えば、人事異動で監査委員事務局になったとしても、何年かすればまた原課に戻るため、なかなか厳しいことは言えない、というのはあり得ると思います。外部の弁護士等、第三者が入り、外部者に指摘されるとチェックせざるを得ない状況が生じます。

増井委員長
 その他、何かご意見等がございますでしょうか。
 特にご意見等がないようであれば、以上で予定の議題をすべて終了いたしましたので、本日の委員会はこれをもちまして閉会とさせていただきます。
 本日の委員会の議事においては、審査に係る合議に関する部分はございませんでしたので、会議資料とともに公表したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

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