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  統計委員会

府 統 委 第 50 号
平成23年4月22日


総 務 大 臣
   片 山  善 博 殿

統 計 委 員 会 委 員 長   
樋 口  美 雄


諮問第32号の答申
医療施設調査の変更について


 本委員会は、医療施設調査(以下「本調査」という。)の変更について審議した結果、下記の結論を得たので答申する。



  1.  承認の適否
     統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の要件に適合しているため、変更を承認して差し支えない。
     ただし、以下の「2 理由等」で指摘した事項については、計画の修正が必要である。
     
  2.  理由等
    (1)  調査事項
     調査事項の追加
     厚生労働省は、表1に掲げる調査事項を追加することを計画している。
     これらについては、1(1は丸囲み文字)産科や小児・周産期医療、医療安全、医師の負担軽減といった医療施策を検討するに当たっての基礎資料を得るために追加されるものであり、本調査の目的に沿っていること、及び2(2は丸囲み文字)調査事項の内容は複雑でなく、報告者負担も過重ではないとみられることから、適当である。

    表1:追加する調査事項
    追加する調査事項 対象となる調査票
    項目 細目
    処方の状況等 内服薬処方せんにおける分量の記載方法の規定 病院票
    医師事務作業補助者 病院票
    病院に在籍する保育士 病院票
    専門外来の設置 助産師外来 病院票、一般診療所票
    医療安全体制 院内感染防止対策の専任担当者の状況 病院票
    特殊診療設備 GCU(新生児治療回復室)、陰圧室 病院票
    手術等の実施状況 院内助産所の有無 病院票、一般診療所票
    悪性腫瘍手術(肺がん、肝臓がん) 一般診療所票
    インプラント手術の実施状況 実施件数 歯科診療所票
    歯科設備 デンタルX線装置(アナログ)、デンタルX線装置(デジタル)、パノラマX線装置(アナログ)、パノラマX線装置(デジタル)、ポータブル歯科ユニット 病院票、一般診療所票、歯科診療所票
    新人看護職員研修の状況 病院票
    従事者数 保育士 一般診療所票
     
     調査事項の削除
     厚生労働省は、表2に掲げる調査事項を削除することを計画している。
     これらは、それぞれ、過去の本調査の結果、他の統計調査の結果、行政記録情報等で行政上の需要をほぼ満たすことが可能であることなどから、報告者負担を考慮し削除することとされたものであり、おおむね適当である。
     ただし、下記(ア)から(エ)の削除については、計画の修正が必要である。
     
    (ア)  許可病床数等
     厚生労働省は、「許可病床数等」のうち、「回復期リハビリテーション病棟」、「認知症病棟」及び「介護保険移行準備病棟」について、診療報酬の算定に係る施設基準の届出による情報(以下「届出情報」という。)があることを理由に削除することとしている。
     しかしながら、届出情報の保存形態等の問題から、届出情報と本調査の調査票情報とを同定し、結合することは不可能であり、本調査で「回復期リハビリテーション病棟」等を削除した場合、回復期リハビリテーション病棟等の病床数と医療施設の様々な属性とのクロス集計ができなくなる。
     これは、現在我が国で課題となっている医療施設の機能(急性期医療、回復期医療、慢性期医療)分化の実態や在り方の研究等ができなくなることを意味しており、削除は、本調査の有用性を大きく低下させると考えられる。
     したがって、「回復期リハビリテーション病棟」、「認知症病棟」及び「介護保険移行準備病棟」については、削除せず、従来どおり調査事項とする必要がある。
     なお、「許可病床数等」に関しては、上記3種のほかに、「療養病床(介護保険適用分)」、「老人性認知症疾患療養病棟」及び「経過型介護療養型医療施設」を削除することとしているが、これらについては、必要に応じて、把握を行っている他の統計調査と本調査の調査票情報とを同定・結合することが可能とみられるため、適当である。
     
    (イ)  手術等の実施状況
     厚生労働省は、「手術等の実施状況」のうち、悪性腫瘍手術の実施件数について、行政需要や報告者負担を考慮した場合、本調査の把握対象は、5大がん(肺、胃、肝臓、大腸及び乳)並びに近年行政による対応が求められている前立腺がん及び子宮がんに絞るべきであるとして、病院票において、「食道がん」、「胆嚢がん」、「膵臓がん」及び「腎がん」を対象から削除することとしている。
     しかしながら、食道がん等の手術は、いずれも難易度が高く、手術の実施件数は、医療施設の機能及びその水準を表していることから、本調査において、食道がん等の手術件数を、手術が行われた医療施設の様々な属性と併せて把握することは、地域における医療提供体制の充実度を評価・分析し、その在り方を探る上できわめて重要であり、削除は、本調査の有用性を大きく低下させると考えられる。
     したがって、病院票の「食道がん」、「胆嚢がん」、「膵臓がん」及び「腎がん」については、削除せず、従来どおり調査事項とする必要がある。
     なお、一般診療所票においては、「胆嚢がん」を削除する計画が示されているが、これについては、出現が極めてまれなため、適当である。
     
    (ウ)  薬剤管理指導・処方の状況
     厚生労働省は、行政需要や報告者負担を考慮した場合、「薬剤管理指導・処方の状況」のうち、「入院患者への薬剤管理指導」の回数は、他に比べ把握の必要性が低いとして、同事項を削除することとしている。
     しかしながら、本調査において、薬剤師による入院患者への薬剤管理指導の回数を、薬剤管理指導が行われた医療施設の様々な属性と併せて把握することは、服薬に伴う医療事故の防止策の在り方等を研究する上できわめて重要であり、削除は、本調査の有用性を大きく低下させると考えられる。
     したがって、「入院患者への薬剤管理指導」については、削除せず、従来どおり調査事項とする必要がある。
     
    (エ)  病棟における看護職員の勤務体制
     厚生労働省は、「病棟における看護職員の勤務体制」欄が複雑で報告者等に負担感があることを主な理由として、同欄のうち、「配置している看護師・准看護師」数を削除し、それに併せて、病棟における看護職員の勤務体制欄を従来の病棟種別から病棟種を統合した形に変更することとしている。
     しかしながら、1(1は丸囲み文字)我が国における看護職員の現在の配置基準は、先進諸外国に比べ、低いものであり、我が国の配置基準の在り方を研究する上で、本調査により把握される看護師数及び准看護師数のデータは不可欠であること、及び2(2は丸囲み文字)「配置している看護師・准看護師」の中身は、病棟別、交代制別に配置している看護師数及び准看護師数を計上するのみであり、報告者の実際の負担は過度に重いとは考えられないことから、看護師数及び准看護師数を本調査の把握対象から削除することは適当でない。
     したがって、「配置している看護師・准看護師」については、削除せず、従来どおり調査事項とする必要がある。
     
    表2:削除する調査事項
    削除する調査事項 対象となる調査票
    項目 細目
    許可病床数等 療養病床(介護保険適用分) 病院票、一般診療所票
    回復期リハビリテーション病棟、認知症病棟、介護保険移行準備病棟、老人性認知症疾患療養病棟、経過型介護療養型医療施設 病院票
    承認等の状況 病院票
    診療録管理専任従事者 病院票
    定期的な臨床病理学的症例検討会(CPC)の実施 病院票
    健診・保健指導 病院票、一般診療所票
    禁煙外来等 ニコチン依存症管理料の算定 病院票、一般診療所票
    保育施設・子育て支援の状況 子育て支援の状況 病院票
    医療安全体制 医療安全体制の責任者の専任・兼務の別 病院票、一般診療所票、歯科診療所票
    医療安全体制の責任者の資格(医師、薬剤師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師) 歯科診療所票
    院内感染防止対策のための施設内回診の頻度 一般診療所票
    患者相談担当者の配置の有無 一般診療所票、歯科診療所票
    特殊診療設備 広範囲熱傷特定集中治療室 病院票
    手術等の実施状況 LDRの有無 病院票
    悪性腫瘍手術(食道がん、胆嚢がん、膵臓がん、腎がん) 病院票
    悪性腫瘍手術(胆嚢がん) 一般診療所票
    歯周外科手術及び骨折・顎骨腫瘍手術等 歯科診療所票
    歯科設備 生体モニター、超音波歯石除去器、口腔内画像処理システム 病院票、一般診療所票、歯科診療所票
    薬剤管理指導・処方の状況 入院患者への薬剤管理指導 病院票
    病棟における看護職員の勤務体制 配置している看護師・准看護師 病院票
    歯みがき指導室 歯科診療所票
    従事者数 介輔(沖縄県のみ) 一般診療所票
     
     その他の変更
     厚生労働省は、調査事項について、追加及び削除以外に表3に掲げる変更を行うことを計画している。
     科目別医師数に係る変更は、主に報告者負担の軽減を、また、従事者数に係る変更は、歯科診療報酬制度を検討するに当たっての基礎資料を得ることを目的としており、適当である。
     
    表3:追加及び削除以外の変更を行う調査事項
    変更する調査事項 変更内容 対象となる調査票
    科目別医師数  複数の診療科目で診療している医師について、診療時間に応じて各科目に分割計上する取扱いをやめ、主に診療している科目に一括計上する。 病院票
    従事者数  歯科衛生士及び歯科技工士について、常勤換算のみの把握から、常勤と非常勤(常勤換算)に分けた把握に変更する。 歯科診療所票
     
    (2)  調査方法
     厚生労働省は、本調査の調査票のうち、病院票について、政府統計共同利用システム(以下「共同システム」という。)を用いたオンライン調査を導入することを計画している。
     これについては、本調査に係る前回の統計委員会の答申(平成20年4月14日付け府統委第54号)において、今後の課題とされた事項に対応するものであり、適当である。
     なお、一般診療所票及び歯科診療所票については、従来どおり、紙媒体の調査票の郵送により調査を実施(注)することとしている。
     本調査では、地方公共団体が、審査事務の一環として、提出された調査票と手持ちの台帳との照合を行っているが、現在の共同システムには、この照合作業を円滑に行うための機能までは組み込まれていない。このため、報告者数が病院票(約8,700)に比べてはるかに多い一般診療所票(約10万1200)及び歯科診療所票(約6万9000)も含めて一斉にオンライン調査を導入すると、審査を行う地方公共団体の事務負担が急激に増加するおそれが大きい。
     したがって、病院票以外について、オンライン調査の導入を見送ることはやむを得ない。
    (注) 厚生労働省ホームページから電子調査票をダウンロードし、入力した電子調査票を電磁的記録媒体に保存して、郵送提出する方法については、従来から選択可能である。
     
  3.  今後の課題
     上記2(2)のとおり、今回、一般診療所票及び歯科診療所票について、共同システムを用いたオンライン調査の導入を見送ることは、やむを得ない。
     しかしながら、オンライン調査には、回答時のチェック機能の活用による回答の正確性の確保や経由機関の負担軽減、報告者の利便性の向上といった利点があると考えられることから、積極的に推進すべきである。
     したがって、今後、一般診療所票及び歯科診療所票についても共同システムを用いたオンライン調査を導入することに関して、共同システムの改修状況や病院票におけるオンライン調査の利用実績等を踏まえて検討を進める必要がある。
     
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