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  統計委員会

府 統 委 第 4 号
平成24年1月20日


総 務 大 臣
   川 端  達 夫 殿

統 計 委 員 会 委 員 長   
樋 口  美 雄


諮問第41号の答申
小売物価統計調査の変更及び全国物価統計調査の中止並びに小売物価統計の指定の変更及び全国物価統計の指定の解除について


 本委員会は、小売物価統計調査の変更及び全国物価統計調査の中止並びに小売物価統計の指定の変更及び全国物価統計の指定の解除について審議した結果、下記の結論を得たので答申する。



 全国物価統計調査は、5年周期であるため、近年、消費・流通構造の変化が加速する中で、物価の構造分析に関する要望・ニーズに十分にこたえることができなかったことなどにかんがみ、今回の計画は、全国物価統計調査において5年に1回調査していた地域別価格差、店舗形態別価格及び銘柄別価格を毎年把握するための調査を「構造編」として小売物価統計調査に盛り込み、現行の小売物価統計調査を「動向編」と位置付け、全国物価統計調査を中止する計画である。さらに、これを踏まえ、基幹統計の指定について、小売物価統計の指定(作成目的)を変更し、全国物価統計の指定を解除する計画である。
 創設する「構造編」については、全国物価統計調査と比べると、調査地域や調査品目が少なく、物価の構造統計に関する多くの統計表の作成が不可能になる。しかしながら、今回の計画は、限られた統計リソースの中で、統計利用者のニーズを踏まえ、前記3つの統計の作成周期を5年から1年に短縮させるものであり、全国物価統計調査の結果の利用状況を勘案すると、全体として適当であると考える。

 
  1.  小売物価統計調査の変更及び全国物価統計調査の中止
    (1)  承認の適否
     統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の要件(作成目的に照らした必要性及び十分性、統計技術的な合理性及び妥当性並びに他の基幹統計調査との重複の範囲の合理性)に適合しているため、小売物価統計調査の変更を承認して差し支えない。ただし、以下の「(2) 理由等」で指摘した事項については、計画を修正する必要がある。
     また、限られた統計リソースの中で、小売物価統計調査において「構造編」を創設することとしており、全国物価統計調査の結果の利用状況を勘案すると、全国物価統計調査の中止を承認することはやむを得ない。
     
    (2)  理由等
     地域別価格差把握のための調査
     全国物価統計調査において調査されていた地域別の価格差については、表1のとおり、「動向編」の対象とする全国167市町村のほかに新たに88市において、地域により価格差が見込まれ、かつ、家計消費支出のウエイトが大きい「うるち米」、「ラップ」、「化粧せっけん」等の56品目の価格を、隔月(奇数月)で調査し、「動向編」と併せて集計することで、地域差指数を都道府県別に1年周期で作成・公表する計画である。
     全国物価統計調査と比較し、調査地域については、減少するものの、「動向編」だけでは都道府県庁所在市別の地域差指数に限られていた状況を改め、都道府県別にも地域差指数を作成するために、県によっては2、3割であった人口カバー率をほとんどの県で50%以上とするような措置を取っている。また、調査品目についても、減少するものの、地域差指数の作成においては約530の品目を調査している「動向編」のデータを用いることとしており、今回新たに調査する市において、地域差を適切かつ効率的に把握する観点から、56品目を厳選している。
     以上、全国物価統計調査に比べ、「動向編」に加えて行う調査は取集する価格数が大幅に減少するため、詳細な地域差指数は作成できなくなる。しかし、全国物価統計調査において5年ごとに公表されていた主要な結果である都道府県別地域差指数等が毎年利用可能になるものであることから、適当である。

    表1 地域別価格差把握のための調査と全国物価統計調査の比較
      地域別価格差把握のための調査
    (「動向編」に加えて行う調査)
    全国物価統計調査(平成19年)
    <地域別価格差関連部分>
    周期 隔月(奇数月) 5年
    調査地域 「動向編」の167市町村以外の88市
    • 167市町村と併せて、各都道府県において人口の50%をカバーすることを目標
    • 経済圏のバランスを考慮
    673市町村
    • 人口10万以上の市(東京都区部を含む。):263市全て
    • 人口10万未満の市及び町村:経済圏、人口規模によって層化し、計410市町村を抽出
    調査品目 「動向編」の約530品目のうち56品目
    • 地域により価格差が見られる品目
    • 全国的に同品質の価格が安定的に取集できる品目
    • 消費者物価指数のウエイトが比較的大きい品目
    小売価格、サービスの料金180品目
    • 17年基準の消費者物価指数に占めるウエイトが1万分の10以上の品目
    結果 「動向編」と併せて集計し、年平均を年1回「構造編」として作成・公表
    • 地域差指数(都道府県別、都道府県庁所在市別等)
    調査時点の結果を5年1回作成・公表
    • 地域差指数(都道府県別、品目の中分類、財・サービス分類(耐久消費財等)別、世帯属性別等)

     店舗形態別価格把握のための調査
     全国物価統計調査において調査されていた店舗形態別の価格については、表2のとおり、東京都区部を除く道府県庁所在市46市において、スーパー以外でも価格が取集できると考えられる「うるち米」、「ティシュペーパー」等の9品目の価格を、一般小売店等を中心に隔月(偶数月)で調査し、「動向編」と併せて集計することで、品目ごとの店舗形態別価格(年平均)を都道府県庁所在市別に1年周期で作成・公表する計画である。
     全国物価統計調査と比較すると、調査地域については、減少しているものの、店舗形態別価格を効率的に把握する観点から、全都道府県において既に「動向編」で調査対象となっている道府県庁所在市を対象としている。また、調査品目についても、大幅に減少しているものの、限られた統計リソースの中で、店舗間で価格に差が見られる9品目を選定している。さらに、調査店舗については、「動向編」ではスーパーが中心に選定されており、店舗形態別価格の把握が困難であることから、「動向編」で調査していない一般小売店等を中心に選定している。
     以上、全国物価統計調査に比べ、取集する価格数が大幅に減少するため、詳細な店舗形態別価格は作成できなくなる。しかし、品目は限られるものの、全国物価統計調査において5年ごとに公表されていた店舗形態別価格が毎年利用可能になるものであることから、やむを得ない。

    表2 店舗形態別価格把握のための調査と全国物価統計調査の比較
      店舗形態別価格把握のための調査
    (「動向編」に加えて行う調査)
    全国物価統計調査(平成19年)
    <店舗形態別価格関連部分>
    周期 隔月(偶数月) 5年
    調査地域 道府県庁所在市46市
    • 「動向編」の核となる地域
    • 品目の出回りが安定している地域
    • 東京都区部は既に様々な店舗形態のデータが得られていることから除外
    673市町村
    • 人口10万以上の市(東京都区部を含む。):263市全て
    • 人口10万未満の市及び町村:経済圏、人口規模によって層化し、計410市町村を抽出
    調査品目 「動向編」の約530品目のうち9品目
    • スーパー以外(一般小売店及びドラッグストア)で価格取集が可能と考えられる品目
    • 店舗間で価格に差が見られる品目
    小売価格141品目
    • 17年基準の消費者物価指数に占めるウエイトが1万分の10以上の品目
    結果 「動向編」と併せて集計し、年平均を年1回「構造編」として作成・公表
    • 店舗形態別価格(9品目別、都道府県庁所在市別)
    調査時点の結果を5年1回作成・公表
    • 店舗形態別価格(141品目別、都道府県別、人口10万以上市別、特売価格・曜日別価格、価格分布等)

     銘柄別価格把握のための調査
     全国物価統計調査において調査されていた銘柄別の価格については、表3のとおり東京都区部において、今後調査銘柄の候補となり得る銘柄が存在している「携帯型オーディオプレーヤー」やまとめ売りなど販売形態の異なる銘柄が存在している「ヨーグルト」等の9品目の価格を、隔月(偶数月)で調査し、品目ごとの銘柄別価格(年平均)を1年周期で作成・公表する計画である。
     全国物価統計調査と比較すると、調査地域については、大幅に減少しているものの、限られた統計リソースの中で、銘柄別価格を効率的に把握する観点から、東京都区部に限定している。また、調査品目については、全国物価統計調査の結果の利用状況を勘案し、「動向編」の精度向上に資する観点から、9品目を選定している。
     以上、全国物価統計調査に比べ、取集する価格数が大幅に減少するため、詳細な銘柄別価格は作成できなくなる。しかし、品目は限られるものの、全国物価統計調査において5年ごとに公表されていた銘柄別価格が毎年利用可能になるものであり、「動向編」において調査品目の価格代表性の向上に資することから、やむを得ない。

    表3 銘柄別価格把握のための調査と全国物価統計調査の比較
      銘柄別価格把握のための調査 全国物価統計調査(平成19年)
    <銘柄別価格関連部分>
    周期 隔月(偶数月) 5年
    調査地域 東京都区部
    • 消費・流通における変化に最も敏感な地域
    673市町村
    • 人口10万以上の市(東京都区部を含む。):263市全て
    • 人口10万未満の市及び町村:経済圏、人口規模によって層化し、計410市町村を抽出
    調査品目 「動向編」の約530品目のうち9品目
    • 今後調査銘柄の候補となり得る銘柄が存在している品目
    • まとめ売りなどの販売形態の異なる銘柄が存在する品目
    小売価格77品目
    • 17年基準の消費者物価指数に占めるウエイトが1万分の10以上の品目
    結果 年平均を年1回「構造編」として作成・公表
    • 銘柄別価格(9品目別)
    調査時点の結果を5年1回作成・公表
    • 銘柄別価格(77品目別、都道府県別、人口10万以上市別、店舗特性(立地環境等)別、価格分布等)

     「構造編」の公表時期
     今回、「構造編」として創設された上記3調査については、平成25年及び26年の2年分の結果を基に、比較しながら推計方法の検討を行うために、25年結果の公表時期(通常、26年6月)を1年延期し、27年6月までに、26年結果と併せて公表する計画である。
     これについては、基幹統計の重要性を勘案し、正確性の確保に配慮した措置であると思われるが、過去の蓄積データを活用して推計方法を検討することも十分可能であることから、延期期間を短縮し、26年度中に公表する必要がある。

    (3)  今後の課題
     調査地域及び調査品目の見直し
     調査地域及び調査品目については、表1、表2及び表3のとおり、平成19年全国物価統計調査と比べ、大幅に減少している。
     今後、調査結果の利活用及び結果精度の観点から、統計ニーズや市場の状況等を踏まえつつ、調査地域及び調査品目を2、3年ごとに見直す必要がある。特に、調査品目の減少に対応する措置として、調査品目を年単位で交替させるローテーションについて検討し、次回の消費者物価指数の基準改定時(平成26年12月ごろ)までに結論を得る必要がある。
     
     「動向編」と「構造編」の連携
     今回の変更により、1つの統計調査(小売物価統計調査)の下に「動向編」と「構造編」が含まれることになるため、物価動向と物価構造の統計の相互連携をより一層推進していくべきであり、次回の消費者物価指数の基準改定時(平成26年12月ごろ)までにその具体的な方策について結論を得る必要がある。
     例えば、「構造編」において店舗形態別価格が毎年利用可能になることから、「動向編」の店舗選定の妥当性について2、3年ごとに検証を行う必要がある。また、統計ニーズを踏まえ、他の統計(経済構造統計、商業統計等)とマッチングすることで、店舗特性別の新たな統計表を作成するなど、「構造編」の充実を検討する必要がある。
     
     特売価格、通信販売価格及び割引・特典サービスの実施状況の把握
     全国物価統計調査で把握していた特売価格、通信販売価格及び割引・特典サービスの実施状況については、今回把握しない計画であるが、把握の要望の動向を踏まえ、販売形態の多様化の実態を見つつ、その把握の必要性及び技術的可能性について検討し、次回の消費者物価指数の基準改定時(平成26年12月ごろ)までに結論を得る必要がある。
     
     諮問第27号の答申「小売物価統計調査の変更について」(平成22年10月22日)における今後の課題
    (ア)  現行の小売物価統計調査における調査品目の選定基準
     現行の小売物価統計調査における調査品目の選定基準(家計の消費支出総額の1万分の1以上等)については、諮問第27号の答申において、次回の消費者物価指数の基準改定時(平成26年12月ごろ)までに検証する必要があるとされており、着実に行うことが求められる。
     
    (イ)  小売物価統計と消費者物価指数との関係
     消費者物価指数を単独で基幹統計とするか否かについても、諮問第27号の答申において、速やかに検討する必要があるとされており、これについても、次回の公的統計の整備に関する基本的な計画の策定までに検討する必要がある。

  2.  小売物価統計の指定の変更及び全国物価統計の指定の解除
    (1)  変更及び解除の適否
     小売物価統計の作成目的の変更に伴い指定を変更し、全国物価統計の指定を解除して、差し支えない。
     
    (2)  理由
     前記1の小売物価統計調査の変更及び全国物価統計調査の中止を受け、基幹統計の指定については、小売物価統計の作成目的に動向と構造の両面を持たせるように変更し、全国物価統計の指定を解除する計画である。
     これについては、小売物価統計の作成目的を、商品の小売価格及びサービスの料金について、その毎月の動向を明らかにすることから、その毎月の動向と毎年の地域別、事業所の形態別等の構造を明らかにすることに変更するため、小売物価統計の指定を変更するものであり、また、全国物価統計調査を中止することから、全国物価統計の基幹統計としての指定を解除するものであり、適当である。
     なお、小売物価統計の名称については、今回の変更は作成目的が一部追加されるものであり、小売物価統計の位置付けを大きく変えるものではないことから、従前のままとするものであり、適当である。
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