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  統計委員会

府 統 委 第 54 号
平成20年4月14日


総 務 大 臣
   増 田  寛 也 殿

統 計 委 員 会 委 員 長   
竹 内  啓


諮問第5号の答申
平成20年に実施される医療施設調査及び患者調査の計画について


 本委員会は、厚生労働省が平成20年に実施を予定している医療施設調査(指定統計第65号を作成するための調査)及び患者調査(指定統計第66号を作成するための調査)の計画について審議した結果、下記の結論を得たので答申する。



1 承認の適否とその理由等
(1) 適否
   計画を承認して差し支えない。
   なお、計画の実施に際しては、以下の理由等に留意することが必要である。
 
(2) 理由等
ア 医療施設調査
(ア)  今回調査では、診療科目別の医師数を男女別に常勤換算により把握することとしている。
 診療科目別・男女別に医師数を把握することについては、特定の診療科目について医師不足が指摘されていること、また、医師不足の理由の一つとして、女性医師の出産、育児期における離職が挙げられていることを踏まえ、現状の把握を行うものであることから、妥当である。また、男女別の医師数を把握することについては、ジェンダー統計の整備にもつながり、前回統計審議会の答申にも対応するものであることから、妥当である。さらに、医療施設調査における従事者数の把握方法については、「マンパワー」を把握するという観点から、常勤換算により従事者数を把握することが妥当である。
 
(イ)  今回調査では、「退院調整支援担当者の有無」、「健診・保健指導の実施状況」、「禁煙外来の有無」等に関する調査事項を追加することとしている。
 これについては、医療制度改革大綱の推進事項の実施状況等を把握するためのものであることから、妥当である。
 また、今回調査では、看護師の配置状況等をみる「看護の実施状況」、「医療施設の面積」等に関する調査事項を削除することとしている。
 これについては、大幅な経年変化が見られないもの、他調査において類似の情報を把握することが可能なものを廃止するもの、であることから妥当である。
 なお、病棟名等については、平成20年度診療報酬改定を踏まえ、また、診療科目名については、医療法施行令(昭和23年政令第326号)等の改正を踏まえ、今回調査において、所要の修正を行う必要がある。
 
(ウ)  医療施設の経理項目については、既に他の標本調査において詳細な情報が収集されている。
 医療施設調査は、医療施設の分布及び整備の実態並びに医療施設の診療機能を把握するとともに、医療施設を対象とする他の統計調査の母集団情報を整備することを目的としており、現在の調査票でも調査事項が多く、さらに経理項目を追加することは、記入者負担が過大となるおそれがある。
 このため、医療施設の経理項目に関する情報については、医療施設調査に調査事項として追加するよりも、むしろ、他調査とのリンケージを行い、利用することが適当である。
 
イ 患者調査
(ア)  副傷病に関する調査事項については、平成14 年調査で削除されたものである が、国民の傷病の実態をより的確に把握するためには、副傷病の把握の必要性が指摘されている。
 今回調査では、この指摘を踏まえ、生活習慣病及び精神疾患に限って、選択肢により、具体的な副傷病名を把握することとしている。
 具体的な副傷病名を把握する範囲としては、国民の傷病の実態をより的確に把握する上では、患者が有するすべての傷病名を把握することが理想である。
 しかし、副傷病を確定することの困難さ及び記入者負担を考慮すると、医療制度改革大綱の推進事項に対応した生活習慣病及び精神疾患に限って、具体的な副傷病名を把握することが適当である。
 
(イ)  今回調査では、「透析治療の状況」、「がん治療の有無」等に関する調査事項を追加することとしている。
 これについては、医療制度改革大綱に挙げられた事項の実態を把握するものであり、妥当である。
 また、今回調査では、療養病床に入院する患者の自立の程度を把握する「心身の状況」等の調査事項を削除することとしている。
 これについては、他調査から類似データの入手が可能なものを廃止するものであり、妥当である。
 なお、審議の過程で、「前回診療日」に関する調査事項を削除してはどうかとの意見が出されたが、これについては、診療間隔の傾向を把握することが必要であること、また、総患者数の推計に必要な指標であることから、引き続き把握することが適当である。
 
(ウ)  今回調査では、患者の再入院の状況を把握するため、「入院票」において「過去の入院状況」に関する調査事項を追加することとしている。
 これについては、審議の過程で、再入院に関する評価を行う上では、「退院票」においても把握してはどうかとの意見が出されたが、患者数の多い病院では、記入者負担が大きいとの意見があり、「入院票」及び「退院票」の双方で把握することは困難であることから、「退院票」の調査項目が多いことを踏まえると、今回調査では、より多くの患者数の推計が可能である「入院票」において把握することが適当である。
 
2 今後の課題
(1) 医療施設調査
 医療法(昭和23年法律第205号)に基づき、平成19年度から医療機能情報提供制度が導入されており、医療施設は都道府県に診療機能に関する情報を報告することが義務付けられている。当該制度に基づき、都道府県が保有する情報の活用が可能となれば、記入者負担の軽減につながる可能性がある。
 ただし、医療機能情報提供制度については、都道府県ごとに情報を把握する範囲が区々となっていることから、実現までにはいくつかの段階を経る必要がある。
 このため、中長期的な課題として、医療機能情報提供制度を含む業務記録等の活用による、医療施設調査における記入者負担の軽減を検討する必要がある。
 
 医療施設調査において、診療機能として、医療施設の従事者を捕捉する場合には、「マンパワー」の把握の観点から、常勤換算した数値で把握することが妥当である。
 しかし、実労働時間ではなく、勤務時間による換算が行われている点、また、医療施設ごとに定められた勤務時間が異なる点などについては、改善の余地が認められる。改善を検討する場合には、常勤と非常勤の別に実人員及び実労働時間を把握することにより、医療施設の従事者に係る労働の負荷に関する情報も得ることが可能となるよう、工夫できないかとの意見がある。
 従来の方法を変更する場合には、時系列分析及び記入者負担への影響について十分な検証が必要と考えられることから、中長期的な課題として、その可否について、検討を行う必要がある。
 
(2) 患者調査
 患者が納得して治療法を選択できるよう、診断及び治療法について、主治医以外の医師が提示する医療上の意見を求める仕組み、いわゆるセカンドオピニオンの利用が広がっていることから、次回調査において、セカンドオピニオンが利用されている疾患を把握することの可否について、検討を行う必要がある。
 
 入院医療の評価への活用の可能性など、「退院票」の持つ意義を重視し、「退院票」の調査対象施設、調査対象期間等を拡充してはどうかとの意見がある。
 しかし、「退院票」については、調査項目が多い上、抽出した病院又は一般診療所に対し、9月中に退院した患者すべてについて作成を求めることとしており、記入者負担を考慮すると、今回調査では、「退院票」の拡充は困難である。
 このため、次回調査において、患者調査全体として記入者負担の軽減を図りつつ、「退院票」を拡充することの可否について検討を行う必要がある。
 
(3) 両調査共通
 今回調査では、政府統計共同利用システムを利用し、オンライン調査を導入することとしていないが、統計調査等業務の業務・システム最適化計画(2006年(平成18年)3月31日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)の趣旨を踏まえ、次回調査においては、郵送調査に加えて、政府統計共同利用システムを利用し、オンライン調査も可能とする仕組を導入する必要がある。
 


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