府統委第24号
平成26年3月24日
総務大臣
新藤 義孝 殿
統計委員会委員長
諮問第63号の答申
患者調査の変更について
本委員会は、諮問第63号による患者調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。
記
1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
総務大臣から諮問のあった平成25年12月13日付け総政企第225号の別紙に付す平成25年11月27日付け厚生労働省発統1127第2号により申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」(以下「本申請」という。)について審議した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の要件のいずれにも適合しているため、「患者調査」(基幹統計調査)(以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。
(2)理由等
ア 調査事項の主な変更
<病院入院(奇数)票、病院外来(奇数)票、一般診療所票、病院退院票及び一般診療所退院票に共通する調査事項>
(ア)変更事項1
(ア)変更事項1
○ 受療の状況−副傷病名
受療の状況を把握する調査事項について、本申請では、表1のとおり、副傷病名に係る選択肢中の「高脂血症(脂質異常症)」を「脂質異常症(高コレステロール血症等)」へ変更する計画である。
これについては、本調査事項で把握する一部の副傷病名は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」(日本動脈硬化学会作成)に掲げられた傷病名が用いられており、同ガイドラインで従前使用されていた「高脂血症(脂質異常症)」が医療機関において一般的に使用されている傷病名や諸外国における傷病名との整合性の確保の観点から「脂質異常症」へ変更されたことを踏まえ、本調査事項で把握する副傷病名中の「高脂血症(脂質異常症)」を「脂質異常症(高コレステロール血症等)」に変更するものである。
これにより、調査結果の正確性や国際比較可能性の向上が図られることから、当該変更は適当である。
調査内容 | (5)受療の状況−(2)副傷病名 | |||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
変更前 | (2) 副傷病名(該当するものすべてに○印をつけてください。)
| |||||||||||||||||||
変更後 | (2) 副傷病名(該当するものすべてに○印をつけてください。)
| |||||||||||||||||||
変更理由 | 副傷病のより一層正確な把握等のため。 |
これについては、本調査事項で把握する一部の副傷病名は「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版」(日本動脈硬化学会作成)に掲げられた傷病名が用いられており、同ガイドラインで従前使用されていた「高脂血症(脂質異常症)」が医療機関において一般的に使用されている傷病名や諸外国における傷病名との整合性の確保の観点から「脂質異常症」へ変更されたことを踏まえ、本調査事項で把握する副傷病名中の「高脂血症(脂質異常症)」を「脂質異常症(高コレステロール血症等)」に変更するものである。
これにより、調査結果の正確性や国際比較可能性の向上が図られることから、当該変更は適当である。
<歯科診療所票に関する調査事項>
(イ)変更事項2
(イ)変更事項2
○ 傷病名
傷病名に係る調査事項について、本申請では、表2のとおり、傷病名に係る選択肢中の「歯の補てつ(冠、ブリッジ、有床義歯、インプラント)」を、「歯の補てつ(冠)」及び「歯の欠損補てつ(ブリッジ、有床義歯、インプラント)」に分割する計画である。
これについては、「歯科口腔保健の推進に関する法律」(平成23年法律第95号)第12条第1項の規定(注)に基づき策定された「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」(平成24年厚生労働省告示第438号)において「口腔の健康の保持・増進に関する健康格差の縮小に関する目標」の一つとして高齢期における歯の喪失防止が掲げられたことから、歯の喪失状況の実態を把握するため、歯が残存している場合に係る「歯の補てつ(冠)」と歯を喪失した場合に係る「歯の欠損補てつ(ブリッジ、有床義歯、インプラント)」を分割するものである。
これにより得られるデータは、今後の歯科疾患予防措置等を講ずるための施策の検討に資するものと認められることから、当該変更は適当である。
調査内容 | (5)傷病名 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
変更前 | 傷病名(下記の傷病名から、該当するもの1つに○印をつけてください。)
| |||||
変更後 | 傷病名(下記の傷病名から、該当するもの1つに○印をつけてください。)
| |||||
変更理由 | 歯の欠損補てつの実態をより詳細に把握するため。 |
これについては、「歯科口腔保健の推進に関する法律」(平成23年法律第95号)第12条第1項の規定(注)に基づき策定された「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」(平成24年厚生労働省告示第438号)において「口腔の健康の保持・増進に関する健康格差の縮小に関する目標」の一つとして高齢期における歯の喪失防止が掲げられたことから、歯の喪失状況の実態を把握するため、歯が残存している場合に係る「歯の補てつ(冠)」と歯を喪失した場合に係る「歯の欠損補てつ(ブリッジ、有床義歯、インプラント)」を分割するものである。
これにより得られるデータは、今後の歯科疾患予防措置等を講ずるための施策の検討に資するものと認められることから、当該変更は適当である。
(注)歯科口腔保健の推進に関する法律(平成23年法律第95号)(抄)
(歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の策定等)
(歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の策定等)
第12条 厚生労働大臣は、第7条から前条までの規定により講ぜられる施策につき、それらの総合的な実施のための方針、目標、計画その他の基本的事項を定めるものとする。
イ 集計事項の変更
今回、厚生労働省は、病院入院(奇数票)等の受療の状況における副傷病名の変更や歯科診療所票の傷病名における選択肢の分割に伴い、関連する集計事項を変更する計画である。
これらについては、患者の傷病実態のより的確な分析や歯の喪失状況の実態把握を可能とするものであり、今後の医療行政上の各種施策の検討・推進に資するものと認められることから、当該変更は適当である。
これらについては、患者の傷病実態のより的確な分析や歯の喪失状況の実態把握を可能とするものであり、今後の医療行政上の各種施策の検討・推進に資するものと認められることから、当該変更は適当である。
ウ 調査方法の変更
○ オンライン調査の導入及びDPC調査等の情報の利用
今回、厚生労働省は、病院、一般診療所及び歯科診療所を対象とした7種類の調査票のうち、病院を対象とする4種類の調査票(病院入院(奇数)票、病院外来(奇数)票、病院(偶数)票及び病院退院票。対象病院数約6,600施設、4調査票合計の対象患者数約300万人)による調査において、従前からの紙媒体又はCD-R等電磁的記録媒体の電子調査票を用いた郵送調査に加え、インターネットを用いた回答方式による調査(以下「オンライン調査」という。)を導入することを計画している。
また、CD-R等電磁的記録媒体の電子調査票及び今回導入するオンライン調査に用いる電子調査票には、DPC調査(注)及び電子化された診療録(以下「電子カルテ」という。)等の情報を読み込む機能を付加することとしている。
これらについては、以下の理由から適当である。
また、CD-R等電磁的記録媒体の電子調査票及び今回導入するオンライン調査に用いる電子調査票には、DPC調査(注)及び電子化された診療録(以下「電子カルテ」という。)等の情報を読み込む機能を付加することとしている。
これらについては、以下の理由から適当である。
(注)「DPC調査」とは、「DPC導入の影響評価に係る調査」であり、診療群分類点数表(病気の種類と治療・処置等との組合せによって病気を分類し、その分類ごとに定められた一日当たりの定額報酬点数表)の導入による診療内容への影響等の評価のための基礎資料を作成することを目的とした調査のことである。当該調査は、統計法に基づく統計調査ではない。当該調査に参加した病院は、厚生労働省に対し、定期的に患者や診療行為等に関する詳細なデータを提出することになる。
1(1は丸の中に数字) オンライン調査の導入については、報告者の負担軽減や利便性の向上、正確な統計の作成等の面で大きなメリットがあること。また、電子調査票へのDPC調査等の情報の読み込み機能の付加については、当該機能の活用により、一部の調査事項への記入を省力化し、報告者負担の軽減を図ることができること。
2(2は丸の中に数字) オンライン調査の導入及び電子調査票へのDPC調査等の情報の読み込み機能の付加については、平成23年に実施された前回の本調査(以下「前回調査」という。)に係る本委員会の答申(諮問第33号の答申「患者調査の変更及び患者調査の指定の変更について」(平成23年4月22日府統委第51号)。以下「前回答申」という。)において指摘された今後の課題に関する検討結果によるものであり、十分な検討を重ねた上で計画されたものであること(後述2参照)。
2 諮問第33号の答申「患者調査の変更及び患者調査の指定の変更について」(平成23年4月22日府統委第51号)における今後の課題への対応状況について
本調査については、前回答申において、今後の課題として、以下の2事項に関する検討の必要性が指摘されている。
1(1は丸の中に数字) DPC調査やレセプトの情報の利用に向けた検討
2(2は丸の中に数字) 政府統計共同利用システム(以下「共同利用システム」という。)を用いたオンライン調査の導入の検討
これらの指摘事項に関する厚生労働省の検討結果の概要は、表3のとおりである。
以上の厚生労働省の検討結果については、次の点が認められることから、前回答申の指摘事項に関する対応として評価する。
前回答申の指摘事項 | 指摘事項に関する厚生労働省の検討結果の概要 |
---|---|
1(1は丸の中に数字) 今後、DPC調査やレセプトの情報の患者調査における利用に向け、検討を進める必要がある。
なお、利用の形態としては、基本的に、i(iはローマ数字の1)医療施設が、患者調査の調査票を作成する際に、保管しているDPC調査やレセプトのデータを、患者調査の電子調査票に転送する方法及びii(iiはローマ数字の2)厚生労働省が、患者調査の集計を行う際に、患者調査の調査票情報と保管しているDPC調査の情報とを同定、結合する方法の2種類が想定できる。 ついては、上記の検討に当たっては、2種類の方法それぞれに関して、技術的可能性や患者調査結果の有用性に与える影響等を検証し、利用の可否を判断することが求められる。 |
1(1は丸の中に数字) 本調査におけるDPC調査及びレセプトの情報の利用の可否や利用方法等について、外部有識者の研究(厚生労働科学研究補助金における研究報告「患者調査、医療施設等から得られる地域の患者動態や医療機能に関する情報を地域保健医療計画の策定と評価へ活用する手法に関する研究」平成25年3月)を踏まえて、当該情報の利用に関する検討を行った。その結果は、以下のとおりである。
i(iはローマ数字の1) DPC調査の情報については、その中に、患者の基本情報(性別、出生年月日、住所)、入院・退院年月日など患者調査の病院退院票の調査事項と重複するものが含まれている。
一方、レセプトの情報については、患者の1か月単位の情報であり、患者調査の調査日現在の情報を特定することができないことから、患者調査へ利用することは難しいが、患者の基本情報等が含まれている電子カルテを本調査に利用することが可能と考えられる。
ii(iiはローマ数字の2) DPC調査の情報については、DPC調査参加病院から厚生労働省へ報告されているデータは、現在、診療群分類点数表導入の影響等評価以外の目的で第三者へ提供することが許されていない。また、電子カルテの情報については、厚生労働省は当該情報自体を保有していない。こうしたことから、DPC調査及び電子カルテの情報を本調査に利用する方法としては、医療施設が調査票を作成する際、保管している当該情報を電子調査票に転送する方法を採らざるを得ない。
iii(iiiはローマ数字の3) 上記i(iはローマ数字の1)及びii(iiはローマ数字の2)を踏まえ、平成26年調査においては、報告者負担の軽減の観点から、CD-R等電磁的記録媒体の電子調査票及び今回導入するオンライン調査に用いる電子調査票には、DPC調査及び電子カルテの情報等を読み込む機能を付加することにより、当該情報を活用することが適当との結論に至った。
|
2(2は丸の中に数字) 今後、患者調査における共同利用システムを用いたオンライン調査の導入について、共同利用システムの改修状況等を踏まえて検討を進める必要がある。 |
2(2は丸の中に数字) 本調査へのオンライン調査の導入について、共同利用システムの改修状況等を踏まえて検討を行った。その結果は、以下のとおりである。
i(iはローマ数字の1) 本調査については、共同利用システムに関し、改善を要する多数の事項が想定されるが、その一部は、技術的又は予算上の理由から、現時点で対処するための有効な方策は見いだし難いと考えられる。
こうした状況下で、本調査にオンライン調査を導入した場合、経由機関である都道府県、保健所を設置する市、特別区及び保健所(以下「都道府県等」という。)における調査関係業務の負担が急激に増加し、円滑な調査実施に支障をきたすおそれがある。 ii(iiはローマ数字の2) しかしながら、本調査において作成する必要がある調査票の枚数は、1施設1枚ではなく、患者に係る調査票となることから、1施設当たりの調査票作成枚数が、病院では平均472.1枚、一般診療所では平均51.0枚、歯科診療所では平均21.2枚となっており(平成23年調査)、1施設当たり多数の調査票を作成する必要がある病院の場合、従来の紙の調査票を利用していた病院において、オンライン調査を導入することにより報告者負担の軽減が可能となる。
iii(iiiはローマ数字の3) 上記i(iはローマ数字の1)及びii(iiはローマ数字の2)を踏まえ、以下の結論に至った。 ・ 経由機関における調査関係業務の急激な増加を避けるため、平成26年調査においては、オンライン調査は、その導入効果が大きい病院を対象とする調査のみで実施することとする。 ・ 一般診療所及び歯科診療所を対象とする調査での実施については、病院を対象とする調査におけるオンライン調査を実施する中で、オンライン調査の導入に伴う経由機関の調査関係業務の負担等の実態を把握した上で、引き続き検討することとする。 |
以上の厚生労働省の検討結果については、次の点が認められることから、前回答申の指摘事項に関する対応として評価する。
1(1は丸の中に数字) DPC調査やレセプトの情報の利用に向けた検討について
平成23年度及び24年度に、本調査におけるDPC調査やレセプトの情報の利用の可否や利用方法等について、外部有識者の研究を踏まえて検討を行った結果、平成26年調査において、CD-R等電磁的記録媒体の電子調査票及び病院を対象とした調査でのオンライン調査に用いる電子調査票に、DPC調査及び電子カルテの情報等を読み込む機能を付加することを計画していること。
2(2は丸の中に数字) 共同利用システムを用いたオンライン調査の導入の検討について
共同利用システムを用いたオンライン調査の導入の可否や導入範囲等について、共同利用システムの現状、経由機関である都道府県等における調査関係業務の負担、調査対象施設の属性別のオンライン調査の導入効果など多面的に検討した結果、平成26年調査において、病院を対象とする調査にオンライン調査を導入することを計画していること。
なお、平成26年調査において、一般診療所及び歯科診療所(以下「診療所」という。)を対象とした調査は、従来どおり、紙媒体等の調査票を郵送することにより実施することとしているが、これは、診療所を対象とした調査にオンライン調査を導入するに当たり、経由機関である都道府県等の調査関係業務の負担等の実態を把握する必要があること等によるものであり、現時点ではやむを得ないものと考えられる。
なお、平成26年調査において、一般診療所及び歯科診療所(以下「診療所」という。)を対象とした調査は、従来どおり、紙媒体等の調査票を郵送することにより実施することとしているが、これは、診療所を対象とした調査にオンライン調査を導入するに当たり、経由機関である都道府県等の調査関係業務の負担等の実態を把握する必要があること等によるものであり、現時点ではやむを得ないものと考えられる。
3 今後の課題
本調査については、今回の平成26年調査から、病院を対象とした調査において新たに共同利用システムを利用したオンライン調査を実施することとしている一方、診療所を対象とした調査は、従来どおり、紙媒体等の調査票を郵送することにより実施することとしている(前述2参照)。
このため、厚生労働省は、平成26年調査における病院を対象とする調査でのオンライン調査の実施結果の分析や経由機関及び医療機関を対象としたアンケート調査の実施等を通じて、経由機関における調査関係業務の負担の状況、オンライン調査を実施する上での課題や問題点、効果等について十分な実態把握を行うとともに、その対策を十分に検討し、この結果を踏まえ、次回の平成29年調査に向けて、診療所を対象とする調査へオンライン調査を導入することを検討する必要がある。
このため、厚生労働省は、平成26年調査における病院を対象とする調査でのオンライン調査の実施結果の分析や経由機関及び医療機関を対象としたアンケート調査の実施等を通じて、経由機関における調査関係業務の負担の状況、オンライン調査を実施する上での課題や問題点、効果等について十分な実態把握を行うとともに、その対策を十分に検討し、この結果を踏まえ、次回の平成29年調査に向けて、診療所を対象とする調査へオンライン調査を導入することを検討する必要がある。