諮問第67号の答申 :港湾調査の変更について

府統委第64号
平成26年7月14日


総務大臣
新藤 義孝  殿

統計委員会委員長   
にしむら きよひこ


諮問第67号の答申
港湾調査の変更について


 本委員会は、諮問第67号による港湾調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。



1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
 平成26年4月16日付け国総情政第12号により国土交通大臣から申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」(以下「本申請」という。)について審査した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の各要件のいずれにも適合しているため、「港湾調査」(基幹統計調査)(以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。

(2)理由等
ア 報告を求める者の変更
 本調査の報告を求める者について、本申請では、甲種港湾調査票による調査(月次調査。以下「甲種港湾調査」という。)は「160港」から「161港」に、乙種港湾調査票による調査(年次調査。以下「乙種港湾調査」という。)は「557港」から「533港」にそれぞれ変更する計画である。
 これについては、前回答申(平成21年8月24日付け府統委第64号)の「今後の課題」において、我が国港湾の利用実態を適切に捉える観点から5年程度の周期で定期的に調査対象港湾の見直しを行うことが求められており、国土交通省が港湾調査対象港湾基準(平成17年国土交通省交通調査統計課作成)に基づいて、近年の入港船舶隻数、取扱貨物量等を踏まえ、調査対象港湾の見直しを行うものである(下表参照)。

調査対象港湾数及び調査対象外港湾数の推移
区分甲種港湾乙種港湾調査対象外港湾合計
平成17年1月分〜1726422671,081
平成22年1月分〜160557280997
平成27年1月分〜
   (予定)
161533239933
(注)複数の港湾が統合され、港湾数が減少したこと等により、調査対象港湾の見直しでは、統合後の港湾が調査対象港湾となることから、結果的に全体の港湾数が減少している。


 上記見直しによって、入港実績や貨物取扱実績がほとんどない港湾は調査対象外となるが、引き続き一定の実績を有する港湾全てを調査対象としているため、我が国港湾全体の実態を適切に捉える面での継続性が確保され、調査結果の利活用上の支障は生じないこと、また、報告者負担の軽減や調査事務の効率化にも資するものであることから、適当である。

イ 集計事項の変更
 本調査の集計事項について、本申請では、甲種港湾調査票の集計事項について、従来からのTEU(注1)単位換算のコンテナの取扱個数に加え、新たにTEU単位換算前のコンテナ長さ別の取扱個数及びコンテナ種別の取扱個数を追加する計画である。

(注1)TEU(twenty-foot equivalent units)とは、コンテナの長さ20フィートを1TEUとして表したコンテナの取扱個数の単位である。例えば、コンテナの長さが9フィート以上11フィート未満の場合は、10フィート区分としTEU換算で0.5個、11フィート以上20フィート未満の場合は、12フィート区分としTEU換算で0.6個、20フィート以上24フィート未満の場合は、20フィート区分としTEU換算で1.0個といった形でコンテナの取扱個数を集計している。なお、1フィートは0.3048メートルである。

 これについては、既存の調査事項から得られる情報を活用してより詳細な集計を行うものであり、報告者に新たな負担を課すことなく集計事項の充実化を図るために変更するものである。
 これにより、港湾ごとのコンテナ長さ別の取扱個数の状況が明らかになり、通常よりも大型の45フィートコンテナを運ぶための港湾周辺の臨港道路等の港湾施設の整備に資する情報が得られるとともに、ドライコンテナ(注2)やリーファーコンテナ(注2)などコンテナ種別の取扱個数の状況が明らかになり、港湾施設の電源装置整備や電力量の供給規模決定に資する情報が得られ、これらの情報は港湾行政に係る施策の推進に寄与するものと考えられることから、適当である。

(注2)ドライコンテナとは、常温で輸送されるコンテナのことで、工業製品や日用品などを積み込む一般的なコンテナである。また、リーファーコンテナとは、生鮮食品など冷蔵・冷凍の低温輸送を行うために冷却装置を内蔵したコンテナである。

ウ 調査方法の変更
 本調査の調査方法について、本申請では、従来の調査員調査に加え、調査員(注3)と報告者の間において、パスワードを付与する等のセキュリティ対策を講じた上で電子メールによるオンライン調査を新たに導入する計画である。

(注3)調査内容の専門性等から、調査員の大半は港湾管理者である地方公共団体の職員である。

 これについては、公的統計の整備に関する基本的な計画(平成26年3月25日閣議決定)において、オンライン調査の推進を図ることとされていることを踏まえ変更するものである。
 これにより、報告者の負担軽減や利便性の向上を図ることが可能となり、調査員の集計事務の効率化等にも資するものであることから、おおむね適当である。
 ただし、今後、本調査におけるオンライン調査の推進・定着を図っていくため、以下の取組を行うことが必要である。
1(1は丸の中に数字) 本調査は従来から1枚の調査票について調査員が複数の異なる報告者からの回答を得て当該調査票を作成し集計を行うといったケースが見られる等の特殊性を有しており、実査を担う機関等だけでなく、報告者からもオンライン調査に対する理解を得ることが必要であることから、国土交通省は、都道府県等の経由機関、調査員及び報告者に対し、オンライン調査に係る協力依頼とともに周知・広報に積極的に取り組むこと。
2(2は丸の中に数字) 調査員が所属する港湾管理者は、本調査における船舶と報告者との間の関連情報を長年蓄積しており、当該情報を利活用した効果的かつ効率的なオンライン調査の実施が可能であると考えられることから、国土交通省は、これらの情報について各港湾管理者の実態を踏まえたデータベース化による管理を図り、船舶入港時の船名等の情報から報告者を抽出・選定し、電子メールによる調査票情報のオンライン報告を求めるといった一連の調査業務の定型化(ルーチン化)に積極的に取り組むこと。

2 諮問第19号の答申「港湾調査の指定の変更及び港湾調査の変更について」(平成21年8月24日付け府統委第64号)における今後の課題への対応について
(1)調査対象港湾の定期的な見直し
 前回答申において、調査対象港湾については、我が国港湾の利用実態をより適切に捉える観点から、今後、5年程度の周期で定期的に見直しを行う必要があるとの指摘がなされている。
 これについては、前述1(2)アに記載のとおり、適当である。

(2)行政記録情報等の一層の活用
 前回答申において、関税法(昭和29年法律第61号)に基づく輸出入申告に係る情報(以下「輸出入申告情報」という。)の活用について、港湾関連手続の電子化の更なる進展状況等を踏まえ、その活用港湾の拡大を図るなど、行政記録情報等の一層の活用について検討を行う必要があるとの指摘がなされている。
 本調査の集計等に当たって、報告者(船舶運航事業者等)の輸出入申告情報をNACCS(注4)から取得するには、電子情報処理組織による輸出入等関連業務の処理等に関する法律(昭和52年法律第54号)第18条(秘密保持義務)の規定に基づき報告者から事前に同意書を取得する必要がある中で、前回諮問時、同情報が活用されている5港湾(東京港、横浜港、名古屋港、大阪港及び神戸港)において、同意書を取得している事業者数は88事業者にとどまっていた。

(注4)NACCS(Nippon Automated Cargo And Port Consolidated System:輸出入・港湾関連情報処理システム)とは、入出港する船舶・航空機及び輸出入される貨物について、税関その他の関係行政機関に対する手続及び関連する民間業務をオンラインで処理するシステムのことで、具体的には、国際貿易における、通関及び輸入の際の関税の納付などを効率的に処理することを目的に構築された、税関官署、運輸業者、通関業者、倉庫業者、航空会社、船会社、船舶代理店、金融機関等の相互をつなぐ電子的情報通信システムである。

 このため、国土交通省は、全ての港湾管理者を対象として開催している「基幹統計調査『港湾調査』に関する打合せ会議」等の場を通じて、輸出入申告情報の活用の働きかけを積極的に行うとともに、輸出入申告情報の活用港湾で構成されている「港湾調査電子化システム促進協議会」にも参画し、利用促進に向けた改善方策の検討や協力依頼を行った。
 この結果、同意書を取得している事業者は前回答申時の88事業者から100事業者に増加しており、輸出入申告情報の活用の促進が図られるとともに、報告者負担の軽減及び調査事務の効率化等にも寄与したものと考えられることから、おおむね適当である。
 ただし、今後、同意書を取得する事業者数の更なる増加を図る観点から、NACCSに参加する船舶運航事業者等から輸出入申告情報を港湾調査に使用することに同意を得る仕組みについて、同意書を個別に取得する現行の方法から、NACCSに参加する船舶運航事業者等の全てから効率的かつ効果的に同意が得られる方法に変更するなど、輸出入申告情報のより一層の活用に向けた取組を検討することが必要である。
 なお、港湾管理者の中には、都道府県の条例に基づき報告された紙ベースの入出港等に係る許可申請内容を電子データによるデータベース化を行い、本調査ではデータベース化していない調査項目のみを報告者から報告してもらうところがみられ、このような取組は行政記録情報等の活用を図るものとして評価できる。

3 今後の課題
 本調査については、前回答申において我が国港湾の利用実態をより適切に捉える観点から、今後、5年程度の周期で定期的に調査対象港湾の見直しを行うこととされたことに合わせ、国土交通省は、以下の課題に対応することが必要である。
(1)オンライン調査推進に向けた調査業務の定型化(ルーチン化)について
 調査員が所属する港湾管理者は、本調査における船舶と報告者との間の関連情報を長年蓄積しており、これらの情報を活用することによって、調査業務の効率化とともに、オンライン調査の推進を図る余地があるものと認められる。
 このため、国土交通省は、これらの情報について各港湾管理者の実態を踏まえたデータベース化による管理を図り、船舶入港時の船名等の情報から報告者を抽出・選定し、電子メールによる調査票情報のオンライン報告を求めるといった一連の調査業務の定型化(ルーチン化)に積極的に取り組む必要がある。

(2)関税法に基づく輸出入申告に係る情報のより一層の活用について
 輸出入申告情報について、NACCSにより申請している全ての船舶運航事業者等から同意書を取得できていないため、これを拡大する余地があるものと認められる。
 このため、国土交通省は、今後、同意書を取得する事業者数の更なる増加を図る観点から、NACCS に参加する船舶運航事業者等から輸出入申告情報を港湾調査に使用することに同意を得る仕組みについて、同意書を個別に取得する現行の方法から、NACCS に参加する船舶運航事業者等の全てから効率的かつ効果的に同意が得られる方法に変更するなど、関税法に基づく輸出入申告に係る情報のより一層の活用に向けた取組を検討する必要がある。

(3)港湾法に基づく入出港届に係る情報のより一層の活用について
 港湾法(昭和25年法律第218号)に基づく入出港届に係る情報(以下「入出港届情報」という。)について、調査対象船舶の確認、調査票の入港船舶欄への活用、調査票の内容確認等に活用が可能であることから、今般、その利用状況を確認したところ、調査対象港湾全体で約40%(甲種港湾:約60%、乙種港湾:約35%)にとどまっている状況がみられ、これを拡大する余地があるものと認められる。
 このため、国土交通省は、今後、全ての港湾管理者を対象とした「基幹統計調査『港湾調査』に関する打合せ会議」等の場を通じて、入出港届情報のより一層の活用について、港湾管理者に働きかけていくとともに、各港湾における活用状況を詳細に把握・分析し、同情報の利用拡大に向けた方策を検討する必要がある。