諮問第79号の答申 :経済産業省生産動態統計調査の変更について

府統委第58号
平成27年6月25日


総務大臣
山本 早苗 殿

統計委員会委員長   
にしむら きよひこ


諮問第79号の答申
経済産業省生産動態統計調査の変更について

 本委員会は、諮問第79号による経済産業省生産動態統計調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。

1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
 平成27年5月15日付け20150430統第1号により経済産業大臣から申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」(以下「本申請」という。)について審査した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の各要件のいずれにも適合しているため、「経済産業省生産動態統計調査」(基幹統計調査。以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。

(2)理由等
ア 調査対象の範囲
(ア)変更事項1
 本申請では、紙おむつを生産する全ての事業所を対象とした調査票「紙おむつ月報」を新設する計画である。
 これについては、近年、急速な高齢化を背景とした大人用紙おむつの需要やアジアを中心とした新興国における日本製の乳幼児用紙おむつの需要が高まる中、その年間出荷額が経常的に2000億円程度であることや、行政ニーズのみならず紙おむつを製造する業界団体からも統計整備の要望があるなど、「経済産業省生産動態統計調査における統一基準」(平成25年6月経済産業省大臣官房調査統計グループ。以下「統一基準」という。)で定めた「年間出荷額が1000億円以上の商品のうち、現在、生産動態統計調査で調査されていない商品であって調査が可能なものは品目として採用する。」に該当し、調査品目として採用するものであることから適当である。
 なお、今回の調査品目の採用に際しては、調査を円滑に実施する観点から、既存の調査票に追加することは効率的ではなく、新しい調査票を新設することが適当である。

(イ)変更事項2
 本申請では、調査票「有機薬品及び写真感光材料月報」の調査品目のうち、無水酢酸、トリクロルエチレン及びメラミンを削除する計画である。
 現在、当該3品目の年間出荷額はそれぞれ100億円前後を推移しているものの、これらを生産する事業所が3事業所未満のため、調査結果について秘匿措置が数年間採られており、これは、統一基準の「年間出荷額が100億円以上の商品であっても秘匿処理が必要な商品については、類似商品と統合が可能なものは品目として統合し、それ以外は品目からの削除を検討する。」に該当している。また、当該3品目の統計情報は、加工統計などにおいても利活用されていないことや、その品目の特性から、他の調査品目と統合して調査したとしても統計情報としての価値が著しく低く、報告者負担の軽減にも資することから、調査品目から削除することが適当である。

イ 集計事項
 本申請では、集計事項について、調査計画に集計表様式の全てを個別に付す形式から、集計事項の一覧表を付す形式に変更する計画である。
 本調査は、約190種類に及ぶ膨大な集計表様式があるが、調査計画に集計表様式を全て付す従前の形式では、集計内容の一覧性がなかった。
 今回の変更により、本調査における集計事項について、横断的な把握が容易になることから適当である。

ウ その他
 本申請では、経済産業省直轄調査分の調査票提出部数について、調査票「機械器具月報」のみ二部としていたものを、一部に変更する計画である。
 これについては、報告者負担の軽減に資することから適当である。

2 統計委員会諮問第51号の答申における「今後の課題」への対応状況
 本調査については、統計委員会諮問第51号の答申時において、以下の指摘がされている。
(1)現在、経済産業省生産動態統計調査で行われている「裾切り」について、次回以降の対象範囲の見直しに当たっては、その項目に占める割合の大きい事業所を調査対象として漏らさないようにするため、例えば従業員数だけでなく、生産額や出荷額、母集団の大きさ等、重要と考えられる項目についても考慮する仕組みの導入を検討する必要がある。
 なお、検討に当たっては、鉱工業指数、産業連関表及び国民経済計算で使われていることを踏まえ、小規模対象事業所の分析を担保できるようにするために、例えば対象事業所数が少ない品目については、裾切り対象にしない、あるいは下限を設定することなどについて、利用者側である加工統計作成者の意見も聴いた上で、検討する必要がある。
(2)「調査品目・項目が詳細・多岐にわたっているもの」を基幹統計調査から一般統計調査へ移行するに当たっては、既存の移行状況等を踏まえ、慎重に検討するとともに、そのまま形式的に移行するのではなく、報告者の負担軽減に十分配慮する必要がある。
 このうち、(1)について、経済産業省は、統一基準における「2.対象範囲」を以下の通り変更することで対応するとしている。
【変更前】【変更後】
 調査対象が多く、調査効率が低下している調査については、記入者負担の軽減や業種の代表性等を考慮し対象範囲の見直しを行うこととする。 調査対象の範囲を検討する際には、記入者負担の軽減や業種内における代表性等を考慮するものとする。また、生産量の大部分が一部の事業所・企業によって占められている業種など、調査効率化の観点で、現行の調査対象の範囲に改善の必要性が生じた業種については、調査対象の範囲を見直すこととする。
 なお、業種内における代表性を検討する際には、当該業種全体の生産動向を適切に捉えることを前提に、生産量、金額、従事者数等について総合的に勘案するものとする。

 これについては、統一基準への明記により、裾切り基準の設定に係る検討内容がより明確になることから、本検討課題への対応として適当である。
 また、(2)について、経済産業省は、検討課題で指摘されているような基幹統計調査から一般統計調査への移行は当面想定されないとしており、また、仮にそのような事例が発生したときには、総務省と十分協議するとしていることから、本課題への対応として適当である。

3 オンライン調査の推進
 オンライン調査については、報告者負担の軽減や利便性の向上、正確な統計作成など多くのメリットがあることや、第2(2はローマ数字)期基本計画において、統計調査の実施計画を企画する際、オンライン調査を導入している調査はオンラインによる回収率の向上方策について事前に検討することが指摘されていることを踏まえ、オンライン調査の推進にこれまで以上に取り組むことが求められているものと考える。
 本調査については、オンライン利用率が50%から漸増傾向にあり、比較的高い状況にある。しかしながら、調査業種ごとのオンライン調査の利用率をみると、10%前後〜90%前後まで業種間でばらつきがみられる。
 本調査は、月次調査であり、報告者に対し反復継続的に実施されていることを考慮すれば、オンライン利用率の向上を図る余地はあるものと認められる。
 このようなことを踏まえ、経済産業省は、オンライン調査の周知やオンラインによる報告の働きかけ等、従前から実施している取組に加え、オンライン利用率のばらつきも勘案した積極的な働きかけを行うこととしている。
 これらの取組は、本調査のオンライン利用率の更なる向上に資するものと考えられることから、適当である。