諮問第84号の答申 :学校基本調査の変更について

府統委第33号
平成28年2月16日


総務大臣
山本 早苗 殿

統計委員会委員長
にしむら きよひこ


諮問第84号の答申
学校基本調査の変更について

 本委員会は、諮問第84号による学校基本調査の変更について審議した結果、下記のとおり結論を得たので、答申する。

1 本調査計画の変更
(1)承認の適否
平成27年11月25日付け27文科生第524号により文部科学大臣から申請された「基幹統計調査の変更について(申請)」(以下「本申請」という。)について審査した結果、以下のとおり、統計法(平成19年法律第53号)第10条各号の各要件のいずれにも適合しているため、「学校基本調査」(基幹統計調査。以下「本調査」という。)の変更を承認して差し支えない。

(2)理由等
ア 調査対象の範囲の変更
本申請では、学校教育法(昭和22年法律第26号)の改正により、平成28年4月から、9年間一貫した系統的な教育課程を編成・実施する学校種として、「義務教育学校」が創設されることに伴い、調査対象の範囲に「義務教育学校」を追加する計画である。
これについては、学校教育行政に必要な学校に関する基本的事項を明らかにするという本調査の目的に照らし、学校教育法第1条に規定する「学校」の一つに位置付けられる義務教育学校を調査対象に追加するものであることから、適当である。

イ 学校調査票(義務教育学校)及び卒業後の状況調査票(義務教育学校 後期課程)の新設
本申請では、上記アのとおり、調査対象の範囲に義務教育学校を追加することを踏まえ、義務教育学校に係る基本的事項を把握するため、新たな調査票として、学校調査票(義務教育学校)及び卒業後の状況調査票(義務教育学校 後期課程)を新設する計画である。
これらについては、他の学校種に係る調査票と同様、学校教育行政に必要かつ有用な基本的事項を把握するものと認められること、また、調査項目や選択肢についても小学校又は中学校を対象とした調査票とほぼ同様のものとなっていることから、適当である。

ウ 調査事項の変更
(ア)学校施設調査票(高等学校等)における「学校種別」欄の変更
本申請では、平成28年4月から、新たな学校種として、義務教育学校が創設されることに伴い、図1のとおり、「学校種別」の選択肢として「義務教育学校」を追加する計画である。
図1
変更案現行
学校施設調査票(高等学校等)における学校種別の変更案 学校施設調査票(高等学校等)における現行の学校種別
これについては、学校施設調査票において、報告者である当該学校の種別を把握するために設けている調査事項の選択肢に、学校教育法の改正により、新たな学校種となる「義務教育学校」を追加するものであることから、適当である。

(イ)学校調査票(小学校)、学校調査票(中学校)、学校調査票(義務教育学校)、卒業後の状況調査票(中学校)及び卒業後の状況調査票(義務教育学校)における「小中一貫教育の実施形態」欄の追加
本申請では、図2のとおり、学校教育を提供する施設に係る基本的事項として、小学校、中学校及び義務教育学校における小中一貫教育の実施形態(小学校・中学校の施設について、一体型・隣接型・分離型等の別)について把握する調査事項を設ける計画である。
図2
変更案
学校調査票(小学校・中学校)
卒業後の状況調査票(中学校)
学校調査票(小学校・中学校)、卒業後の状況調査票(中学校)における「小中一貫教育の実施形態」欄の追加
学校調査票(義務教育学校)
卒業後の状況調査票(義務教育学校)
学校調査票(義務教育学校)、卒業後の状況調査票(義務教育学校)における「小中一貫教育の実施形態」欄の追加
現行

(新規)

これについては、小中一貫教育の実施形態によって教職員の配置状況、卒業者の進路状況、高等学校等への入学志望者数等に違いが生じているかなど、小中一貫教育の実施状況の全体像を把握し、既存の小学校、中学校との比較等を行う上で有用な情報を得るものと認められることから、適当である。

(ウ)学校調査票(中学校)及び学校調査票(義務教育学校)における「二部授業の学級数・生徒数・教員数(公立)」欄の追加
本申請では、図3のとおり、中学校(公立)及び義務教育学校後期課程(公立)において行われる二部授業(いわゆる夜間中学校)に係る基本的事項として、学級数、生徒数及び教員数を把握する調査事項を設ける計画である。
図3
変更案
学校調査票(中学校)
学校調査票(中学校)における「二部授業の学級数・生徒数・教員数(公立)」欄の追加
学校調査票(義務教育学校)
学校調査票(義務教育学校)における「二部授業の学級数・生徒数・教員数(公立)」欄の追加
現行

(新規)

これについては、夜間中学校における実態を把握するものであり、義務教育未修了者等への就学機会の確保に重要な役割を果たしている夜間学級に対する支援や設置促進に向けた施策の充実に資する情報が得られるものと認められることから、適当である。

(エ)学校調査票(小学校)、学校調査票(中学校)及び学校調査票(中等教育学校)における「理由別長期欠席者数」欄の削除
本申請では、図4のとおり、小学校、中学校及び中等教育学校(前期課程)それぞれにおける児童・生徒のうち、前年度に30日以上長期欠席した児童・生徒について、その欠席理由別の人数を把握する調査事項を削除する計画である。
図4
変更案

(削除)

現行
学校調査票(小学校)
学校調査票(中学校)
学校調査票(小学校)、学校調査票(中学校)における現行の「理由別長期欠席者数」欄

学校調査票(中等教育学校)
学校調査票(中等教育学校)における現行の「理由別長期欠席者数」欄
これは、文部科学省が別途実施している一般統計調査(児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査(注))において、平成28年度から、より詳細に理由別長期欠席者数の実態を把握することとしているため削除するものである。
これについては、調査の効率的実施及び報告者負担の軽減に資するものと認められることから、適当である。
(注) 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査は、都道府県・市区町村教育委員会、国公立の小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校を対象に、毎年実施している全数調査である。

(オ)学校調査票(大学)学部学生内訳票及び学校調査票(短期大学)本科学生内訳票における「高等学校等専攻科からの編入学者数」欄の変更等
本申請では、図5のとおり、学校調査票(大学)学部学生内訳票の「短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)からの編入学者数」の選択肢として「高等学校(専攻科)」「中等教育学校(専攻科)」「特別支援学校(専攻科)」を追加し、また、図6のとおり、学校調査票(短期大学)本科学生内訳票に「高等学校等専攻科からの編入学者数」欄を追加する計画である。
図5
学校調査票(大学)学部学生内訳票変更案
学校調査票(大学)学部学生内訳票の変更案
現行
現行の学校調査票(大学)学部学生内訳票
図6
学校調査票(短期大学)本科学生内訳票変更案
学校調査票(短期大学)本科学生内訳票の変更案
現行

(新規)

これらについては、学校教育法の改正により、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校の専攻科を修了した者が大学・短期大学に編入学できる制度が創設されたことに伴い、これらの専攻科からの編入学者数を把握する欄を追加するものである。
これらにより得られるデータは、大学への編入学者数の実態等を把握する上で有用なものと認められることから、適当である。

エ 集計事項の変更
本申請では、学校調査票(義務教育学校)及び卒業後の状況調査票(義務教育学校 後期課程)の新設並びに既存の調査票における調査事項の追加・変更等に伴い、関連する集計事項を変更する計画である。
これについては、政策課題を検討するために有用な情報を提供するとともに、広く統計利用者のニーズにも応えるものと認められることから、適当である。

オ 調査結果の公表の方法の変更
本申請では、調査結果の公表の方法について、調査結果の速報及び確報の公表時における調査結果報告書等の名称を「学校基本調査速報」から「学校基本統計速報(学校基本調査の結果速報)」に、また、「学校基本調査報告書」を「学校基本統計(学校基本調査報告書)」にそれぞれ変更するとともに、速報及び確報の公表に当たり、インターネット公表における具体的な公表媒体(文部科学省ホームページ及びe-Stat)を明示するよう変更を行う計画である。
これについては、統計法では「統計」とその作成手段である「統計調査」とを概念上区分していることを踏まえ、統計と統計調査との間に紛れが生じないようにするため、1(1は丸の中に数字)調査結果である公表物の名称について、基幹統計である学校基本統計と、これを作成するために実施する統計調査である学校基本調査の両者を区別した名称となるよう、調査結果報告書等の名称を変更するものであること、2(2は丸の中に数字)インターネット公表する際の具体的な公表媒体が明確になるよう、調査計画上の記載を変更するものであることから、適当である。

カ 調査票情報の保存期間及び保存責任者の変更
本申請では、調査計画上、調査票情報の保存期間及び保存責任者について、これまで永年保存の対象としていた調査票情報のうち「結果原表」を削除する計画である。
これは、調査結果の集計作業の途中段階で作成したデータ(中間作成物である集計表)を出力し、文部科学省が従来使用していた情報システムにより作成していたものを削除するものである。
集計作業途中のデータについては上記情報システムにより作成される別途の電子ファイルで代替可能であるため、平成27年1月に新システムに移行した際に「結果原表」の作成機能が削除されたことを踏まえ、保存の対象とする調査票情報の範囲から結果原表を削除するものであり、また、これによる問題も特にないことから、適当である。

キ 東日本大震災の影響に伴う調査計画の変更に係る規定の削除
本申請では、平成23年度調査の実施に当たり、東日本大震災の影響による被害が甚大であった岩手県、宮城県及び福島県(以下「東北3県」という。)の初等中等教育機関に対する調査日程の延期並びに調査結果の公表の方法及び期日を変更することとした調査計画上の規定を削除する計画である。
これについては、既に東北3県における本調査への東日本大震災の影響は解消されていることを踏まえ、上記の対応に係る調査計画上の規定を削除するものであることから、適当である。

2 今後の課題
統計利用者の利便性の向上に資する観点から、インターネットにおける情報提供について、更なる工夫・改善へ向けて取り組む必要がある。具体的には、調査結果はもとより、調査方法・調査設計といった情報につき分かりやすい情報提供に努めるとともに、利用者が求める情報を容易に入手できるよう、ホームページの構成の工夫に努める必要がある。

また、統計委員会諮問第66号の答申(平成26年7月14日付け府統委第63号)における「今後の課題」においては、以下のような課題が掲げられている。
(1)こども園票の「職員数」における非常勤職員の把握について【遅くとも平成30年度調査を目途に実施】
(2)「休職等教員数」における休職等理由区分等の見直しについて【遅くとも平成30年度調査を目途に実施】
(3)「年齢別入学者数」の年齢階級区分の細分化等について【遅くとも平成29年度調査を目途に実施】
(4)中学校卒業生の就職者の正規・非正規別の把握について【遅くとも平成29年度調査を目途に実施】
(5)新幼保こども園を対象とする他の統計調査との関係について【遅くとも平成32年度調査を目途に実施】

これらの課題について調査実施者より、現時点までの対応状況とともに今後とも検討を進めるとの説明があった。説明を踏まえた審議の中では、(4)中学校卒業生の就職者の正規・非正規別の把握につき、把握の必要性は理解するものの、実際に調査することは困難ではないか、との意見もあった。
いずれの課題も検討の期限が到来していないものであり、答申及び今般の審議を踏まえ、引き続き検討を進める必要がある。