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委員会の報告・意見等

東日本大震災への対応についての統計委員会委員長談話記者会見要旨

(平成23年4月8日(金)16時00分〜16時15分 於:中央省庁合同庁舎第4号館642会見室)

1.発言要旨

 統計委員会委員長の樋口でございます。本日は、国の実施する統計調査に関しまして東日本大震災への対応、委員長として談話を発表しましたので報告させていただきます。

 東日本大震災が3月11日に発生しましてから1か月近くが経過しているところでありますが、被災され、また、現在も避難生活を余儀なくされている方々に心からお見舞い申し上げるとともに、お亡くなりになりました方々に哀悼の意を表させていただきます。
 我々、国の統計行政にたずさわる統計の専門家という立場から、今後とも被災地を含む我が国のおかれた状況をできる限り的確に把握し適切な政策を実施できるように、国民の皆様に統計データとして継続的に提供していくことが責務であるというふうに考えております。
 国が毎月実施している統計調査につきましては、4月以降、大震災後の調査結果を含む3月分以降の集計・公表が各所管府省から実施されるという予定でございます。どのような形で公表することが、国民の皆様にとってより分かりやすく、また、利用しやすいものとなるのかについては、実態に照らし合わせて、関係府省間で検討を進めているところでございますが、被災地によっては、調査を実施することが極めて困難になっている地域があるとの報告も受けております。そのような現実も踏まえた対応をする必要があると考えております。

 この点、少し補足させていただきます。被災地によっては、統計調査員の安否についての確認が十分にできない地域もあるようでございますが、そのような非常に厳しい環境の中でも、可能な限り調査を実施しようと、統計調査員の方々が日々奮闘しているとの報告を受けております。
 また、現地の統計所管課の職員の皆様が、統計調査の業務を実施しつつ、被災された方々の安否確認や避難所への誘導などを不眠不休で支援しているとの報告も受けております。
 国の統計調査は、このような現地の統計所管課の職員及び統計調査員の方々の非常に献身的な仕事ぶりに支えられているわけでございまして、現地の方々のご尽力に対し心より感謝申し上げたいというふうに思っております。

 各府省が行う3月分以降の統計調査結果の公表に資するよう、大震災後の集計・公表を行う上で必要と思われるような事項を以下に掲げる形で明らかにさせていただきました。これらの事項に沿って、各府省の実施する統計調査結果の集計・公表が、国民の皆様に分かりやすい形で適切に行われることを期待しております。
 なお、統計調査結果は今後の復興のために重要な基礎資料ともなるものですので、国民の皆様におかれても、統計調査へのご協力を引き続きよろしくお願いいたします。

 それでは、それぞれの項目について説明いたします。まず「1」としまして、情報の開示を徹底してほしいということでございます。東日本大震災により、調査対象、調査方法、調査時期、集計事項及び集計方法等に特別の取扱いを行っている場合は、その内容を結果の公表に併せて明示することをそれぞれ(の府省)にお願いしたいと思います。また、公表期日を変更せざるを得ない場合につきましては、事前にその旨を公表することにしていただきたいと思います。
 被災地の中には、住民が全員退避するなどして調査の実施が極めて困難な地域もございます。また、調査を実施しても交通網の遮断等により調査票が回収できないというケースも起こっております。そのような地域につきましては、全国集計の対象から除外したり、他の地域のデータや過去のデータを用いた推計値で代替することがあり得るかと思います。このような特別な取扱を行う場合につきましては、その内容を国民に明示するということが是非とも必要であると考えております。
 「2」番目、 被災地データの取扱等でございますが、上記事項の公表に当たりましては、以下の点につきまして特に留意してほしいと思います。ここでは、まず、公表に当たっての留意点を整理しております。
 1点目は、被災地を調査対象地域から除外したり、調査票の回収ができなかった地域がある場合には、当該地域のデータの集計上の取扱い(全国値に復元する方法等を含む。)につきまして、可能な限り具体的に明示していただきたいというふうに思います。調査対象地域から除外された地域、調査票の回収できなかった地域につきまして、集計する際にどのように取り扱ったのかについて、可能な限り具体的に各府省に明示していただきたいと考えております。例えば、推計値についての説明であれば、推計の過程で用いた計算方法及びその具体的なデータ、ベースとなるような情報について、できるだけ具体的に明示するということをお願いしたいと考えております。
 2点目は、上記集計上の取扱いが集計値に及ぼす影響の定量的な目安等について可能な範囲で明示していただきたいというふうに考えております。特別の取扱いが集計値に与える影響につきまして、定量的な目安等を可能な範囲で明示してほしいということです。例えば、調査対象地域を除外した場合の影響について、震災前の月のデータを用いて計算したのか、あるいは乖離の程度の目安はどの程度なのかということについて情報を提示することが考えられます。
 3点目は、暫定的な集計結果を公表する場合、どうしても間に合わなかったという場合、暫定的な集計結果を公表することになった場合につきましては、それが暫定的な集計結果である旨を明記していただき、また今後確定値、確報値を発表するスケジュール、公表するスケジュールについて、またどのようにして「暫定」から「確報値」に持っていくのかということについて明示していただきたいと考えております。ここは、暫定値と確定値等の取扱いです。例えば3月の調査結果が4月時点では一部しか回収できなかったという場合に、5月に残りの調査結果が回収できるような目途があるということであれば、暫定的な集計結果を4月に公表するような場合が想定されます。あるいは、この場合、4月に暫定値を公表するとともに、確定値を5月に公表することを事前にスケジュールとして公表していただきたいと考えております。
 「3」番目です。 記録の保存について是非お願いしたいと思います。東日本大震災への対応状況につきましては可能な限り記録を保持していただきたいと思います。そのことは後々復元を研究者や実施部局がやろうとするときに、(データが)完全でなかったときに復元しようとする事態がもし起こったとすれば、それは可能な限り記録を残すことによってできるのではないかと考えているからでございます。大震災の経験は貴重な情報としまして、統計に携わる関係者の間で共有すべきものであり、後世の人たちへの貴重な教訓にもなるものだと思います。厳しい業務環境の中で大変なこととは思いますが、可能な限り大震災への対応状況を記録しておくことが必要であると考えます。
 以上が、私が、東日本大震災後の統計調査結果の集計・公表を行う上で必要と思っている事項でございます。これらの事項に沿いまして、各府省の実施する統計調査結果の集計・公表が、国民の皆様に分かりやすい形で適切に行われることを期待しております。以上でございます。

2.質疑応答

(問)実際この談話にあるような取扱いを特に行わなければならなくなる統計はありますか、それとも全般的ですか。
(答)これは全般的な話ではないかと思います。特に月次でやっているものについてすぐにでも。当該月から1ヶ月、2ヶ月後に公表というのが通常時の取扱いですので、そういったもの全般についてあてはまるのではないか。それぞれの統計によって統計の調査方法も違いますし、また、それぞれの調査フィールドの状況も違っていると思いますので、一律にこういったことを実施して下さいということは、なかなか現場においては実施ができないかもしれません。でありますので、ここではその目処となるような共通点として留意していただきたい点について明示したということです。これはあくまでも統計委員会委員長という個人の立場からお願いしているわけでございまして、実際の各府省のとりまとめ、調整役は総務省の政策統括官室(統計基準担当)ですので、そことも連携しながら、私ども統計の専門家としての立場からこういうようなメッセージを出させていただいたということでございます。
(問)情報の開示のところで、特別な取扱いを行っているというのは具体的にはどういったことが考えられるのですか。
(答)例えば、実際に東北3県について調査ができないというようなものもあるかと思います。あるいは、沿岸部だけはできないとか、県全体ができないとか、色んな通常時とは違ったようなことをせざるを得ないというようなことがあるかと思います。その点、どのような状況だったのか、そして何に基づいてこの統計が公表されたのかというようなそのプロセスについて情報開示をお願いしたい、ということでございます。
(問)このような委員長談話というのは過去に例があるのですか。
(答)何度かあります。私ども年に一回、総務省の政策統括官室から報告される各府省の基本計画への取組などについて、審査、評価を行っています。その時に統計委員会の委員長として談話を出したこともございます。
(問)今回のように災害に対応して、統計について何か談話を出されたというのはありますか。
(答)今回が初めて。
(問)基本的なスタンスのところなのですが、そうするとこれは、要は調査票が集まらないので統計そのものをもう公表するのをやめるという選択肢も一つとしてあるかと思うのですが、特別なところを除外するというのが前提になっていて、やはり統計はできる限り公表していった方がいい、ということでしょうか。
(答)これはケースバイケースで、生産統計でありますとか、世帯調査でありますとか、また、たまたま地域をランダムに選んで調査をする訳ですね、それが被災地にたくさん集まっているとか、そういったケースによって大分違うかと思います。
 可能であれば、暫定値をまず出してそして確定値を、となると思いますが、それがかなわないというケースも統計によってはあると思います。ただ、その場合につきましても、総務省政策統括官室とよくご相談の上、対応していただきたいというのが、私個人としてのお願いであります。
(問)「当該地域データの集計上の取扱い(全国値に復元する方法等)」となっていて、「全国値に復元する」というのは、そこの地域のデータはとれないけれど、何らかの方法で推計するということになるのですか。
(答)それも一つの方法だと思いますし、関連した、例えば、各省庁がもっている行政記録を参考に使うという手法など色々あるかと思いますので、そこはご検討していただきたいということです。
(問)これは各省庁の統計に加えて、日銀短観のような日銀の出している色々な統計にもお願いする、ということですか
(答)日銀の統計も公的統計ですので、日銀の統計に対しても同様の扱いをしていただきたいということです。

(以上)