第2部 平成17年度及び平成18年度の地方財政

1 平成17年度の地方財政

 平成17年度の地方財政を取り巻く環境及びその運営状況は、次のとおりである。

(1) 平成17年度の経済見通しと国の予算

(ア) 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成17年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成16年12月20日に閣議了解、平成17年1月21日に閣議決定された。

 これによると、平成16年度の我が国の経済は、一部に弱い動きがみられるが、年度全体を通してみると、企業収益が大幅に改善するなど企業部門が引き続き堅調な中、雇用環境が持ち直す動きがみられ、民間需要中心の回復を続けると見込まれた。また、平成16年度の国内総生産の名目成長率は0.8%程度になると見込まれた。

 このような情勢認識に立って、平成17年度の経済財政運営の基本的態度については、平成16年6月4日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(以下「基本方針2004」という。)に基づき、個人や企業の挑戦する意欲と地方の自主性を引き出すため、規制、金融、税制、歳出の四分野に加え、郵政民営化、三位一体、社会保障等の構造改革を引き続きスピード感を持って一体的かつ整合的に推進し、民間需要主導の持続的な経済成長を図ることとされた。また、デフレからの脱却を確実なものとするため、政府は、日本銀行と一体となって政策努力を更に強化し、今後とも、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととされた。

 以上のような経済財政運営の下において、平成17年度の国内総生産は511.5兆円程度、経済成長率は名目で1.3%程度、実質で1.6%程度になるものと見通された。

(イ) 国の予算

 平成16年12月3日、「平成17年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で平成17年度予算については、持続的な財政構造の構築と予算の質の向上を図る必要があることから、歳出改革を一層推進し、一般会計歳出及び一般歳出の水準について、実質的に前年度水準以下に抑制してきた従来の歳出改革路線を堅持・強化することを基本的考え方とすることとされた。また、歳出の見直しと構造改革の推進のため、活力ある社会・経済の実現に向けた4分野(「人間力の向上・発揮―教育・文化、科学技術、IT」、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」、「公平で安心な高齢化社会・少子化対策」、「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」)について、これまでの実績・評価を考慮しつつ、政策効果が顕著なものについて重点的かつ効率的に推進することとされた。また、社会資本整備、社会保障制度及び地方財政の事項についても制度・施策の見直しを行い、さらに、防衛、ODAその他の歳出分野についても「基本方針2004」に即し、歳出の見直しに取り組むこととされた。

 社会資本整備については、上記の活力ある社会・経済の実現に向けた4分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野に施策を集中しつつ更に絞込みを図るため、整備水準、整備の緊急性、国と地方の役割分担等の観点から、きめ細かく重点化を図ることとされた。

 地方財政については、国と地方に関する「三位一体の改革」を推進することにより、地方の権限と責任を大幅に拡大し、歳入・歳出両面での地方の自由度を高めることで、真に住民に必要な行政サービスを地方が自らの責任で自主的、効率的に選択できる幅を拡大するとともに、国・地方を通じた簡素で効率的な行財政システムの構築を図ることとされた。また、三位一体の改革については、「基本方針2004」に基づき、平成18年度までの改革の全体像に係る政府・与党合意(平成16年11月26日)を踏まえ、政府一丸となって取り組み、その成果を平成17年度予算に適切に反映することとされた。

 平成17年度予算は、以上のような方針により編成され、平成16年12月24日に概算の閣議決定が行われた後、平成17年1月21日に第162回国会に提出された。

 これによると、平成17年度の国の一般会計予算の規模は82兆1,829億円で、前年度当初予算と比べると720億円の増加(0.1%増)となり、うち一般歳出の規模は47兆2,829億円で、前年度当初予算と比べると3,491億円の減少(0.7%減)となった。なお、「平成17年度予算編成の基本方針」において、前年度当初予算から3%以上削減することとされた公共投資関係費については、4.0%減の8兆2,720億円となった。また、公債の発行予定額は34兆3,900億円で、前年度当初発行予定額と比べると2兆2,000億円の減少(6.0%減)となり、公債依存度は41.8%となった。

 他方、財政投融資計画については、「特殊法人等整理合理化計画(平成13年12月19日閣議決定)」等を適切に反映しつつ、真に必要な資金需要には的確に対応するとともに、民業補完の原則の下、総額の抑制及び対象事業の重点化・効率化に努めることとされ、計画規模は17兆1,518億円、前年度計画額と比べると3兆3,376億円の減少(16.3%減)となった。

(2) 地方財政計画

 平成17年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(以下「基本方針2003」という。)等に沿って、歳出全般にわたり見直しを行うことにより歳出総額の計画的な抑制を図る一方、当面の重要課題である人間力の向上・発揮(教育・文化、科学技術、IT)、個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、少子・高齢化対策、循環型社会の構築・地球環境問題への対応等に財源の重点的配分を図ることとし、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

(1) 地方税については、現下の経済・財政状況等を踏まえつつ、持続的な経済社会の活性化を実現するための「あるべき税制」の構築に向け、定率減税の縮減(個人住民税所得割について平成18年6月徴収分より実施)、所得譲与税による税源移譲、法人事業税の分割基準の見直しその他の所要の措置を講じることとする。

(2) 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

1) 「通常収支に係る財源不足」の見込額7兆5,129億円については、次の措置を講じる。

ア 平成16年度に講じた平成18年度までの間の制度改正に基づき、財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等を除いた残余については国と地方が折半して補てんすることとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補てん措置を講じる。

 また、投資的経費に係る地方単独事業費と一般行政経費に係る地方単独事業費の一体的かい離是正分の一般財源に相当する地方財源不足分については、基本的には国と地方が折半して負担することとするが、平成17年度は全額地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により措置することとし、国負担となるべき分については後年度に調整することとする。

 臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

 なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等2,736億円については法律の定めるところにより、平成18年度以降の地方交付税の総額に加算することとする。

イ これに基づき、平成17年度の通常収支に係る財源不足見込額7兆5,129億円については、次により完全に補てんする。

(ア) 地方交付税については、国の一般会計加算により2兆5,298億円(うち、地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額1,683億円、同条第4項の加算額11億円、同条第8項の加算額1,963億円、臨時財政対策特例加算額2兆1,641億円)増額する。

(イ) 地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を3兆2,231億円発行する。

(ウ) 建設地方債(財源対策債)を1兆7,600億円増発する。

2) 平成11年から実施されている恒久的な減税については、平成17年度税制改正により、平成18年分以後の所得税及び平成18年度分以後の個人住民税から定率減税を2分の1に縮減することとされており、平成17年度の地方財政への影響額には大きな変動はないものと見込まれる。このため、恒久的な減税に伴う地方財政への影響額3兆4,720億円については、次の措置を講じる。

ア 恒久的な減税の実施による地方税の減収1兆9,198億円について、その4分の3相当額を国と地方のたばこ税の税率変更による地方たばこ税の増収措置(1,135億円)、法人税の地方交付税率の引上げによる増収措置(4,375億円)及び地方特例交付金(8,888億円)により、その4分の1相当額を地方財政法第5条の特例となる地方債(減税補てん債、4,800億円)により完全に補てんする。

イ 恒久的な減税の実施による地方交付税への影響額1兆5,522億円のうち、平成17年度に新たに発生する地方交付税の減収1兆4,295億円については、交付税特別会計借入金により措置し、その償還は国と地方が折半して負担することにより完全に補てんする。なお、所得税の定率減税の縮減により、地方交付税原資が増加した分に相当する借入金の縮減(592億円)が見込まれる。また、平成11年度以降地方交付税への影響額の補てん対策として措置した交付税特別会計借入金に係る利子相当額のうち国負担分601億円は一般会計からの繰入れにより、地方負担分626億円は交付税特別会計借入金により措置する。

3) 平成15年度税制改正に伴う平成17年度の地方税及び地方交付税の減収額1,772億円については、次の措置を講じる。

ア 地方税の減収783億円については、減税補てん債の発行により完全に補てんする。

イ 地方交付税の減収989億円については、交付税特別会計借入金により完全に補てんする。

4) 上記の結果、平成17年度の地方交付税については、16兆8,979億円(前年度に比し0.1%増)を確保する。

(3) 三位一体の改革の一環として、次のとおり国庫補助負担金の改革と、これに対応した税源移譲等の措置を講じることとする。

1) 国民健康保険国庫負担、養護老人ホーム等保護費負担金、公営住宅家賃対策等補助のうち公営住宅家賃収入補助分など、税源移譲に結びつく改革に係るもののうち、暫定措置とされた義務教育費国庫負担金の減額分を除いた国庫補助負担金については、平成17年度から一般財源化することとし、所要額を税源移譲する。

 税源移譲については、平成18年度税制改正において、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実現することとし、平成17年度においては、暫定措置として、平成16年度措置分を含め、所得譲与税により税源移譲する。この平成17年度所得譲与税は、国庫補助負担金の改革内容等を踏まえ、都道府県へ総額の5分の3、市町村(一部事務組合等を除く。)へ総額の5分の2を譲与することとし、譲与基準は、平成16年度と同様、人口とする。

2) 義務教育費国庫負担金の暫定的な減額相当分については、平成16年度から措置されている退職手当及び児童手当の暫定的な一般財源化分に加えて、税源移譲予定特例交付金により財源措置する。

 この税源移譲予定特例交付金のうち、退職手当及び児童手当に係るものについては、平成16年度と同様、人口を基準として、平成17年度の義務教育費国庫負担金の暫定的な減額相当分については、教職員給与費を基本として都道府県に交付する。

(4) 地方債については、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、極めて厳しい地方財政の状況の下で、その健全性の確保に留意しつつ、地方公共団体が個性豊かで活力に満ちた地域社会の構築を目指して、地域再生の推進、それぞれの地域の特性を活かした魅力あふれる地域づくり、ICT(情報通信技術)を活用した住民サービスの向上と地域経済の活性化、災害等に強く安心安全な地域づくり等の当面する政策課題に重点的・効率的に対応しうるよう所要額を確保する。この結果、地方債計画の規模は15兆5,366億円(普通会計分12兆2,619億円、公営企業会計等分3兆2,747億円)とする。

(5) 社会経済情勢の推移等に即応して使用料・手数料等の適正化を図る。

(6) 地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

1) 投資的経費に係る地方単独事業費については、「基本方針2003」を踏まえた事業規模の計画的抑制と併せ、かい離是正を行ったところである。その結果、平成17年度においては、前年度に比し8.2%減額することとしているが、かい離是正分を除いた場合は3.0%減額であり、地域活性化事業、地域再生事業及び防災対策事業などにより、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

2) 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、人間力の向上・発揮(教育・文化、科学技術、IT)、個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、少子・高齢化対策、循環型社会の構築・地球環境問題への対応等の分野に係る施策に財源の重点的配分を図るとともに、かい離是正を行い、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

3) 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

4) 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(7) 地方公共団体の公債費負担の軽減を図るため、普通会計における高金利の公的資金に係る地方債に対する特別交付税措置を拡充するとともに、一定の公営企業金融公庫資金に係る公営企業債についての借換え措置を拡大する。

(8) 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(9) 地方行財政運営の合理化を図ることとし、一般職の定員削減を行う等定員管理の合理化を図るとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成17年度の地方財政計画の規模は、83兆7,687億円で、前年度と比べると8,982億円減少(1.1%減)となった。

 歳入についてみると、地方税は33兆3,189億円で、前年度と比べると9,958億円増加(3.1%増)(道府県税4.3%増、市町村税2.2%増)、地方譲与税は1兆8,419億円で、前年度と比べると6,967億円増加(60.8%増)、地方特例交付金は1兆5,180億円で、前年度と比べると4,132億円増加(37.4%増)、地方交付税は16兆8,979億円で、前年度と比べると117億円増加(0.1%増)、国庫支出金は11兆1,967億円で、前年度と比べると9,271億円減少(7.6%減)、地方債(普通会計分)は12兆2,619億円で、前年度と比べると1兆8,829億円減少(13.3%減)となった。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は22兆7,240億円で、前年度と比べると2,750億円減少(1.2%減)となった。なお、地方財政計画全体の職員数については、一般職員(義務教育教職員、警察官、消防職員、非義務制学校の教員を除く職員)について、国家公務員の定員削減の方針に準じ、10,369人を縮減するとともに、消防防災関係職員の増員、施設増に伴う所要の増員等を行い、これに義務教育教職員、警察官、消防職員、非義務制学校の教員の増減員を加えた地方財政計画全体の職員数は、12,411人の減員を見込んだ。一般行政経費は23兆1,307億円で、前年度と比べると1兆2,474億円増加(5.7%増)となり、一般行政経費に係る地方単独事業費は11兆9,737億円で、前年度と比べると3,087億円増加(2.6%増)(投資的経費に係る地方単独事業費との一体的かい離是正分(3,500億円の増額計上)を除いた場合は11兆6,237億円で、前年度と比べると413億円減少(0.4%減))となった。公債費は13兆3,803億円で、前年度と比べると2,976億円減少(2.2%減)、投資的経費は19兆6,761億円で、前年度と比べると1兆6,522億円減少(7.7%減)となり、投資的経費のうち、公共事業費中の普通建設事業費は6兆1,153億円で、前年度と比べると5,266億円減少(7.9%減)となった。

 なお、投資的経費に係る地方単独事業費は12兆3,700億円で、前年度と比べると1兆1,000億円減少(8.2%減)(一般行政経費に係る地方単独事業費との一体的かい離是正分(7,000億円の減額計上)を除いた場合は13兆700億円で、前年度と比べると4,000億円減少(3.0%減))となった。

(3) 財政運営の経過

(ア) 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005

 平成17年6月21日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(以下「基本方針2005」という。)が閣議決定された。

 「基本方針2005」においては、我が国の経済について、「バブル後」と呼ばれた時期を確実に抜け出し、「攻めの改革」に踏み出すときを迎えているとしたうえで、平成18年度までの2年間について、(1)「小さくて効率的な政府」の実現、(2)少子高齢化とグローバル化を乗り切るための基盤整備、(3)デフレの克服及び民需主導の経済成長の実現の3つの課題に取り組む「重点強化期間」として位置づけている。

 具体的には、「『小さくて効率的な政府』の実現」については、政策金融改革や政府の資産・債務管理の強化等を通じて資金の流れを「官から民へ」と変えるとともに、三位一体の改革の確実な実現や市場化テストの本格的導入等を通じて仕事の流れを変え、国・地方を通じた徹底的な行政改革や公務員の総人件費改革等を通じて人と組織を変えることとしている。「少子高齢化とグローバル化を乗り切るための基盤整備」については、2010年代初頭における国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指しつつ、歳出・歳入一体改革を進めるとともに、国民の安全・安心を確保するための取組、持続的な社会保障制度の構築、少子化対策及び教育改革の推進、人間力の強化に向けた取組、「新産業創造戦略2005」の推進や「科学技術創造立国」の実現等を通じたグローバル化への総合的かつ戦略的な取組等を実施していくこととしている。「デフレの克服及び民需主導の経済成長の実現」については、民間需要・雇用の拡大に力点を置いて規制改革、金融システム改革、税制改革、歳出改革の4分野における構造改革への取組をより本格的に推進するとともに、デフレからの脱却を確実なものとするよう、政府は日本銀行と一体となって政策努力の更なる強化・拡充を図り、今後とも経済情勢によっては大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととしている。

(イ) 平成17年度補正予算(第1号)

 平成17年度補正予算(第1号)は、平成17年12月20日に閣議決定され、平成18年1月20日に第164回国会に提出され、2月3日に成立した。

 この補正予算においては、歳出面では、災害対策費5,733億円、義務的経費3,774億円、地方交付税交付金1兆3,516億円、改革推進公共投資事業償還時補助等7,610億円、アスベスト対策関連経費1,805億円、市町村合併推進体制整備補助金463億円、新型インフルエンザ対策等関連経費372億円等を追加計上したほか、既定経費の節減1兆3,197億円、予備費の減額500億円の修正減少額を計上した。また、歳入面では、最近までの収入実績等を勘案し、租税及印紙収入3兆350億円の増収を見込むとともに、公債金1兆5,820億円、前年度剰余金受入1兆6,294億円を計上したほか、その他収入8,825億円の増収を見込んだ。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成17年度当初予算に対し4兆5,219億円増加し、86兆7,048億円となった。

(ウ) 平成17年度補正予算(第1号)に係る地方財政補正措置

 平成17年度補正予算(第1号)の編成により、国税の増収見込み等に伴い地方交付税の増加が見込まれたとともに、災害復旧事業の追加等に伴う地方負担の増加(4,416億円程度)が生じた結果、以下の地方財政補正措置が講じられた。

a 地方交付税の追加等

 国の補正予算により増加する平成17年度分の地方交付税の額1兆3,516億円(平成16年度精算分4,322億円、平成17年度国税五税の自然増に伴うもの9,194億円)については、平成17年度において普通交付税の調整額の復活に要する額609億円を交付することとしたうえで、残余の額1兆2,908億円について平成18年度分として交付すべき地方交付税の総額に加算して交付する措置を講ずることとする。

b 追加の財政需要等に対する財政措置

(i) 国の補正予算により平成17年度に追加されることとなる災害復旧事業、アスベスト対策関連事業等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分3,138億円)については、原則として、地方債(充当率100%)を充当することとし、後年度においてその元利償還金の全額を基準財政需要額に算入することとする。その際、元利償還金の50%(義務教育施設改築事業等当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては、原則として当初の算入率)については、公債費方式により各地方公共団体の地方債発行額に応じて基準財政需要額に算入することとし、残余については単位費用により措置することとする。また、出資金、貸付金等については、資金手当のための地方債を措置することとしている。

(ii) 生活保護費、老人医療給付費、都道府県調整交付金等地方債の対象とならない経費(1,278億円)については、給与関係経費の不用額(190億円)の充当及び追加財政需要額(5,100億円)の取崩しにより対応することとする。

(4) 地方公共団体の予算

 平成17年度の地方公共団体の普通会計予算(9月補正後)の状況は、第45表のとおりであり、普通会計予算の総額(都道府県及び市町村の単純合計)は、前年度と比べると、歳入が0.4%減、歳出が0.3%減となった。

 主な内訳をみると、歳入では、地方税が前年度と比べると3.3%増、地方譲与税64.9%増、国庫支出金4.0%減、地方債10.6%減となった。一方、歳出では、人件費が前年度と比べると2.2%減、普通建設事業費が6.4%減となった。

 なお、第45表の数値は、前年度からの繰越事業に係るものを含んでいる。

(5) 個別団体における財政健全化

 近年の地方財政は、行政改革努力により人件費などが減少傾向にある一方で、扶助費が増加するとともに、公債費についても依然として高い水準にある。また、経常収支比率や起債制限比率についても高い水準となっており、財政の硬直化が進行し、厳しい財政運営を余儀なくされている状況にある。平成16年度決算における経常収支比率については、前年度よりも2.5%ポイント上昇の91.5%、起債制限比率についても、0.1%ポイント上昇の11.7%となっている。

 各地方公共団体においては、このような厳しい財政状況を踏まえて、一層の事務事業の見直し、組織・機構の簡素効率化、外郭団体の統廃合等、定員管理・給与の適正化、民間委託等の推進など、自主的な行財政改革に積極的に取り組むとともに、独自課税の検討、地方税の徴収確保、使用料・手数料の適正化等を通じて歳入の確保を図るなど、財政運営の健全化に努めている。

 同時に、近年、公債費負担の増大等により、地域の重要政策課題に十分に対応できない地方公共団体が増加することが懸念されていることから、昭和62年度以降、自主的に財政構造の健全化を図るための公債費負担適正化計画を策定した市町村に対しては、計画的に公債費負担の適正化を推進しつつ、必要な事業費を確保することができるよう、財政上の支援措置が講じられている。

 この措置については、平成11年度以降は、起債制限比率(過去3か年平均)が14%以上、又は今後2年度以内に14%以上となる見込みの市町村(一部事務組合等を除く。)で公債費負担適正化計画を策定した団体が対象とされている。平成17年度までに計画の策定を行った団体数は572団体、このうち292団体は既に計画を完了しているところである。

 さらに、平成17年度においては、平成15年度の起債制限比率(過去3か年平均)が全国平均以上、平成15年度の経常収支比率が全国平均以上又は平成15年度の財政力指数(過去3か年平均)が全国平均以下の団体の普通会計の公的資金に係る利率7%以上の地方債について、当該地方債の利子の利率4%を超える部分について特別交付税措置が講じられた。

(6) 地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

 地方公営企業については、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の着実な整備を推進するとともに、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開を支援し、併せて地方公営企業の経営健全化等を推進するなど経営基盤の一層の強化を図る必要がある。

 このため、平成17年度においては、次のような措置を講じた。

 企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆8,659億円(前年度3兆797億円)を計上した。

 また、地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分3兆2,747億円(前年度3兆3,395億円)を計上するとともに、既往債の利子を軽減する観点から、公営企業借換債について、資本費負担が著しく高い一定の公営企業を対象とした従来分について利率要件を緩和するほか、平成17年度の臨時特例分として、別途高金利の一定の公営企業債について借換債を措置することとし、貸付枠を総額2,000億円(前年度1,100億円)に大幅増額した。

 さらに、各事業における財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

(ア) 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入することとした。

(イ) 水道事業については、上水道安全対策事業のうち、単独事業として行われる災害対策の一般会計出資比率を引き上げるとともに、補助事業として行われる災害対策について新たに一般会計出資の対象とすることとし、併せて応急給水槽の整備について出資の対象に加えるなど、所要の地方財政措置を講じることとした。また、災害発生時において、飲料水、医療用水、生活用水等を迅速かつ的確に供給できるよう、応急給水・応急復旧計画を策定するための経費について、所要の地方債措置を講じることとした。

(ウ) 交通事業については、公営地下鉄事業における都市高速鉄道事業債の元金償還期間と減価償却期間との差により構造的に生じる資金不足を補うため、所要の地方債措置を講じることとした。

(エ) 病院事業については、地域における医療ニーズの変化に的確に対応し、医療資源の効率的活用に資するため、自治体病院が、相互の連携・機能分担及び病床の合理化を一層推進し、その再編等医療提供体制を抜本的に見直す取組に対して、所要の地方財政措置を講じることとした。

(オ) 下水道事業については、維持管理費に対する一般会計繰出金について、実績を踏まえた措置に見直すとともに、経費が割高となる事業に対する高資本費対策について、使用料の適正化及び未だ整備が概成していない事業等への措置の重点化を図る観点から、使用料、資本費及び供用開始後年数に係る要件の見直しを図った。また、資本費平準化債について、地方債計画額を増額することとした。

イ 国民健康保険事業

 国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、平成13年度に決定された医療制度改革大綱や、平成14年度の健康保険法の改正、政府・与党合意等を踏まえ、国民健康保険に対して、財政基盤の強化や広域化等のために必要な措置を次のとおり講じることとした。

(ア) 給付費に係る国庫負担と保険料負担を均等にするとの基本的考え方を維持しつつ、国から都道府県に対して、当該都道府県内の市町村の国民健康保険に関する財政調整権限の一部を移譲し、保険基盤安定制度(保険料軽減分)等による財政安定化の効果も勘案しつつ、これらの制度と一体的に財政調整を行うこととするため、都道府県財政調整交付金制度(3,532億円)を創設することとし、その所要額について、税源移譲を行うとともに地方交付税措置を講じることとした。なお、都道府県財政調整交付金は、各都道府県ごとに給付費等の7%(平成17年度は5%)とすることとしており、その市町村への配分方法については、地方三団体(全国知事会、全国市長会及び全国町村会)及び総務・厚生労働両省による検討の場を設け、地方の意見を尊重しつつ、ガイドラインを作成し、厚生労働省保険局長名で各都道府県に通知がなされた。

 また、国民健康保険被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、国及び都道府県の負担金を受け入れつつ、一般会計から国民健康保険特別会計へ繰り入れる保険基盤安定制度(保険料軽減分)(3,834億円)については、従前の国庫負担分(1/2)について、都道府県へ税源移譲のうえ一般財源化する(都道府県3/4、市町村1/4)とともに、その所要額について地方交付税措置を講じることとした。

(イ) 以下の制度については、平成13年12月18日の総務・財務・厚生労働3大臣合意に沿って、平成17年度までの暫定的な措置として、引き続き、所要額について地方交付税措置を講じることとした。

a 保険基盤安定制度(保険者支援分)(824億円(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4))

b 高額医療費共同事業(1,932億円(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2))

c 国保財政安定化支援事業(1,000億円(地方交付税措置))