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会見発言記事

第197回国会(臨時会)衆議院総務委員会における総務大臣発言(概要)

平成30年11月13日

はじめに

 総務大臣を拝命しました石田真敏でございます。
 総務委員会のご審議に先立ち、ご挨拶を申し上げます。
 いま社会は大変革期にあります。政府では、Society5.0、すなわち狩猟、農耕、工業、情報に続く第5の社会という考え方を打ち出しています。産業、雇用、生活などが大きく変容していく中で、地方も大きく変わることが予想され、これらに対応して、地方の活力維持にも取り組む必要があります。
 また、地方の疲弊も東京一極集中も限界に来ています。地方の疲弊は待ったなしの状態です。さらに、10月、台風第24号が首都圏に接近した際、通過後にもかかわらず、朝のラッシュ時に人が駅に溢れかえり、今後予想される大災害が万一発生したときに、首都東京でどのような混乱が起こるのかと不安を覚えたのは私一人ではなかったと思います。
 社会の変化を見極めながら、地方の疲弊を打ち破り、かつ、安心・安全で快適に暮らせる地域づくりのため、各地方公共団体に寄り添って短期的な課題に取り組むとともに、中期的な視点をもって総力を上げて各種課題に取り組みます。
 こうした認識の下で、特に力を入れて取り組みたい政策の方向性について、以下5点申し述べます。


個性と活力ある地域経済と安定的な地方行財政運営の確保

 第一に、地方の疲弊や、拡大する地方間の財政力格差に対する取組が重要です。タテ割りではなく地方の課題は全て総務省が関わるとの考えに立ち、安定的な地方行財政運営のための財源を確保します。また、地域の自立性を促進するため、地域産業の発展や地域コミュニティの維持に取り組むことで、地域力を強化し、人々が地域で支え合う持続可能な社会を構築します。
 先日、私は奈良県川上村、下北山村及び吉野町を訪問し、地域コミュニティを維持する取組の現場を目の当たりにしました。そこでは、地域おこし協力隊の方々とともに、隊員としての任期を満了後その地に定住された方々が地域の特性を活かしたエコツアーや吉野杉を使った器の製作を行うなど、地域コミュニティを守る担い手として活躍されていました。また、これらの方々から、隊員になったきっかけが、都会での生活環境を変えたいという強い思いであったという声を聞きました。都会にはこのような思いを持つ若者がたくさんおられると思います。このような思いを持つ一人でも多くの若者に地方移住・定住を考えていただくためにも、地域おこし協力隊を知ってもらい、隊員になっていただくことが重要であると強く実感しました。これを踏まえ、地域おこし協力隊の隊員を6年後に8,000名まで増やすとともに、その任期満了後も元隊員が活躍できる環境づくりに努めます。
 また、地域の資源と資金を活用して雇用を創出する「ローカル10,000プロジェクト」や地域と多様に関わる「関係人口」の創出など、地域力の強化につながる取組を積極的に進めます。
 人口減少が深刻化し、高齢者人口が最大となる2040年頃に顕在化する諸課題に地方公共団体が対応するため、従来通りの発想でなく、AIなどの活用を含め、起こり得る課題を将来の姿から逆算し、先を見据え、腰を落ち着けて、議論を進めます。現在、地方制度調査会では、これらの課題に対応するため、圏域における地方公共団体の協力関係、公・共・私のベストミックスなど、必要な地方行政体制のあり方が審議されており、総務省は様々な観点から検討を進めます。
 平成31年度の地方財政においては、「新経済・財政再生計画」を踏まえ、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源総額について、平成30年度地方財政計画の水準を下回らないよう、実質的にこれと同水準を確保します。
 地方税制については、地方税を充実確保しつつ、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系を構築する観点から、平成31年度税制改正において、地方法人課税における税源の偏在を是正する新たな措置を検討し、結論を得ます。また、森林環境税・譲与税の制度化、ふるさと納税の健全な発展に向けた制度の見直しに取り組みます。

ICTの積極的な導入によるSociety5.0の実現

 第二に、Society5.0の実現に向けて、IoT、AIなどの社会的実装に積極的に取り組みます。このため、本年8月に公表した「未来をつかむTECH戦略」などに基づき、具体的な取組を進めます。
 まず、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、Society5.0に不可欠なインフラであり、また都市と地方との情報格差を解消する鍵となる第5世代移動通信システム、いわゆる5Gや光ファイバなどを地域に展開させるとともに、訪日外国人、そしてこれを迎える日本人が言語の壁なく交流できるよう、多言語音声翻訳システムを高度化させます。また、社会構造の変化に対応した電波利用の将来像を見据え、電波制度改革を推進します。さらに、高度な映像配信や本年十二月から始まる「新4K8K衛星放送」など、世界最高水準のICT環境を整備します。
 次に、あらゆる産業分野におけるIoT、AIの活用を強力に進め、産業競争力を向上させるため、最先端の情報通信技術の研究開発・標準化を進めます。その他、社会を大きく変える力となるブロックチェーン技術、情報信託機能、キャッシュレスなどの導入を積極的に進めます。
 加えて、我々の生活により広く、深くICTが浸透するにつれて、これまで以上に安心・安全にこれらを利用できる環境整備に取り組む必要があります。サイバー攻撃の脅威が増大する中、「IoTセキュリティ総合対策」を着実に推進します。あわせて消費者保護や社会的な課題への対応を進めます。
 一方で、Society5.0を支える人材育成も必要です。児童生徒をはじめ、様々な人々がプログラミングなどを学ぶ「地域ICTクラブ」の整備やオープンデータを推進するための地方公共団体の人材育成など、多面的に取り組みます。
 さらに、これからの世界的な変革の中で日本が成長していくには、海外との連携が不可欠です。来年6月にG20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合を開催し、日本や世界が抱える社会的な課題をICTを通じて解決するため、AIの開発と利活用及びその信頼の醸成に向けた取組、情報の自由な流通の促進など、国際的な政策連携を進めます。
 その他、海外の成長市場獲得のため、通信・放送・郵便インフラや電波システムに加え、統計や消防、行政相談制度も含め、日本の強みを活かしたインフラ・システムの海外展開を強化します。また、放送コンテンツの海外展開により、被災地を含めた地方への外国人観光客の増加や地域産品の販路拡大を通じ、地域活性化に貢献します。


暮らしやすく働きやすいデジタル社会の実現

 第三に、生産年齢人口が減少する中で、ICTを最大限活用して、国民一人一人が、都市であるとか、地方であるとかに囚われず、それぞれに合った働き方、暮らし方ができる社会を実現します。
 まず、働きたいと望む人にとって柔軟な働き方ができ、東京一極集中是正にもつながるよう、全国規模でテレワークを普及させる「テレワーク・デイズ」に取り組むほか、サテライト・オフィスやモバイル勤務など、自らが住みたい地域に住みながら、自らが選ぶ時間や空間で仕事ができる環境を整備します。
 次に、Society5.0の恩恵は、障害の有無や年齢、そして地域にかかわらず、あらゆる人々にもたらされるべきものです。このため、字幕・解説・手話放送の充実を含め、ICT利活用の支援に取り組み、誰もが豊かな人生を享受できるデジタル共生社会を実現します。また、人口減少や少子高齢化に伴う諸課題に真っ先に直面する地方に対し、スマートシティやIoT、AI、ロボティクスの活用など、先進的な優良事例の実装を進めます。特に、暮らしを支える医療、介護、健康分野には、積極的にこれらの導入を進めます。
 また、マイナンバー制度は、デジタル社会にとって不可欠な基盤となる制度です。国民や企業の方々にこの趣旨をご理解いただくよう、しっかりと制度の普及促進に努め、国民生活の利便性を向上させるとともに、行政運営の効率化を実現することが私の役割です。この考えに立ち、情報提供ネットワークシステムを用いた情報連携を円滑に運用するとともに、マイナンバーカードの利便性を高めて一層普及させるため、スマートフォンにおける活用など、官民で利活用を進めます。
 デジタル社会においても国民生活の基盤となる通信、放送、そして郵政の各サービスについて、国民・利用者の目線で取組を進めます。国民から強い要望のある携帯電話の料金低廉化やサービス多様化に向けた競争促進をはじめ、電気通信事業分野の包括的検証に利用者目線で取り組みます。
 NHKの在り方については、受信料制度やガバナンスに関する国民・視聴者の声も伺いつつ、民放との二元体制を踏まえ、引き続き検討します。
 郵政事業については、ユニバーサルサービスを確保するため、郵便局ネットワークを維持する支援制度の準備を進めます。郵便局を「国民生活の安心・安全の拠点」として活用するため、利用者の目線に立ち、新たな事業展開を進め、郵便局の利便性を向上させます。


防災・減災/復旧・復興

 第四に、防災・減災、復旧・復興に向けた取組です。
 まず、「閣僚全員が復興大臣」との強い思いの下、東日本大震災からの復旧・復興に全力で取り組みます。
 また、本年は、大阪北部地震、7月豪雨、台風第21号、北海道胆振東部地震など、大規模な災害が相次いでいます。私は、大臣に就任後初めての出張で、7月豪雨で大きな被害を受けた広島市及び呉市を訪問しました。先日は、北海道胆振東部地震で大きな被害を受けた厚真町及び札幌市を訪問しました。猛威を振るった自然災害の爪あとを確認するとともに、昼夜を問わず災害対応に当たられ、大変なご苦労をされた知事や地元市・町長、消防職員、消防団の方々から実情をお伺いしました。その中で、財政支援、職員派遣をはじめとする人的支援、そして災害対応のノウハウの横展開や住民の円滑な避難誘導など、ソフト面での支援について要望を受けました。
 被災地の実情を伺いながら、まず財政支援として、復旧・復興に向け、地方交付税や地方債による地方財政措置を講じ、被災地方公共団体の財政運営に支障が生じないよう、適切に対応します。
 次に、人的支援としては、本年3月に創設した大規模災害発生時の全国一元的な応援職員派遣の仕組みである「被災市区町村応援職員確保システム」を円滑に運用します。あわせて中・長期の職員派遣による人材確保に取り組みます。
 そして、ソフト面での支援として、住民の円滑な避難を促進する方策を検討します。
 また、緊急消防援助隊や地域防災力の中核となる消防団及び自主防災組織の充実強化、災害対応拠点となる庁舎の耐震化、非常用電源の整備などを推進し、消防力を強化します。
 さらに、相次ぐ消防防災ヘリコプターの墜落事故を踏まえ、運航の安全性の向上を目指します。
 加えて、G20大阪サミットや2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けた安心・安全対策に取り組むとともに、救急安心センター事業「♯7119」の全国展開や多様な防災情報伝達手段の整備などを進めます。


国民生活の利便性を高めるための効率的で質の高い行政基盤の確立

 第五に、行政が幅広く多様な課題に取り組み、国民生活の利便性を高めるには、課題の背景にある実態や動向を的確に把握し、それに迅速に対応することが重要です。それには、行政自身がその運営を効率化し、質の向上を不断に進め、より高度な取組が行えるようにすることが不可欠です。このため、ICTを活用し、国及び地方の業務改革を進めます。その際、そもそもその手続が真に必要なのか詳細に確認し、業務プロセス全体の見直しを徹底します。
 また、行政運営の改善に向け、人口減少下での地域における持続可能な住民サービスの提供や災害に対する安心・安全の確保といった重要課題に各府省の政策がしっかり対応しているか調査を行うほか、バスの横転事故など大事故を契機とした調査も機動的に行う中で、引き続き行政の評価・監視を的確に実施します。
 あわせて国民の行政に関する苦情や意見に耳を傾け、それを端緒に行政の制度や運用を改善することも重要な取組です。このため、行政相談委員や市町村との連携・協働を進め、大規模災害などの緊急時には、被災者に役立つ情報を迅速に提供するなど、住民目線できめ細やかな対応に努めます。
 さらに、行政が限られた資源を有効に活用し、直面する課題に適切に対応して、国民から信頼され続けるには、その政策立案がエビデンスに裏付けられたものである必要があります。総務省は、政策評価を通じて、証拠に基づく政策立案、いわゆるEBPMを実践し、これらに関する各府省の取組を推進します。
 また、このEBPMを支えるのは公的統計です。統計法改正により機能強化された統計委員会の下で統計改革を進め、経済構造実態調査の創設を含むGDP統計の基となる経済統計の改善などに取り組みます。
 あわせて国や地域の実情を捉える労働力調査や住宅・土地統計調査といった重要な統計の整備を有機的に進め、統計情報を幅広く提供するとともに、本年4月に開設した統計データ利活用センターなどを通じ、先進的な統計の利活用を進めます。
 その他、若者への主権者教育の推進や投票しにくい状況下にある有権者の投票環境の整備に引き続き努めます。


むすび

 以上、所管行政の当面の課題と政策の方向性について申し上げました。
 最後に、総務省としても障害者雇用に関する今回の問題を重く受け止めています。再発防止を期するとともに、障害者が働く環境の整備を進めることを通じて、法定雇用率の達成に向け努力します。
 副大臣、大臣政務官、職員とともに、叡智を集めて、総力戦で課題に取り組んでまいりますので、江田委員長をはじめ、理事、委員の先生方のご指導とご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。


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