第162回国会(常会)
衆議院総務委員会における総務大臣所信表明(概要)

平成17年2月17日


はじめに)

    総務委員会の御審議に先立ち、所信の一端を申し上げます。
  昨年は、豪雨や台風、新潟県中越地震等数多くの災害が発生し、多くの方が犠牲となられました。また、スマトラ島沖大地震及びインド洋津波により、多くの国が未曾有の災害に見舞われました。被害に遭われた方々に対して、心からお見舞い申し上げます。
  さて、今年は戦後60年の節目に当たります。日本は今、政治、経済、社会のあらゆる面において、大きな構造変革の時代に入っております。
  総務省が取り組んでいる市町村合併、三位一体の改革は、日本の社会構造を中央集権から地域主権へと大きく変えようとしています。さらに、ICTの普及拡大によって「いつでも どこでも 何でも 誰でも」つながるユビキタスネット社会の実現は、私たちの日々の生活習慣までも変えつつあるのです。このような国民生活に密着した施策を推進し、諸課題に積極的に取り組んでまいります。

1 行政改革の推進)

    まず、行政改革の推進についてであります。
  昨年12月に閣議決定した「今後の行政改革の方針」に基づき、行政組織のスリム化・効率化を始めとする改革に取り組んでまいります。
  平成17年度の国の機構については、膨張を抑制しつつ、環境省地方環境事務所の設置などを認めました。定員については、5年間で10パーセント以上の削減を目指すとともに、政府全体を通じて再配置を強力に推進することとしました。17年度は、5,445人、率にして1.66パーセントという過去最高の削減を行う一方で、治安など真に必要な部門には思い切った増員を行い、メリハリのある定員の再配置を行いました。
  また、今年も、24の独立行政法人について、政策評価・独立行政法人評価委員会の指摘を踏まえて、組織・業務全般を極力整理縮小する方向で見直します。
  国家公務員の人事行政については、「今後の行政改革の方針」に基づき、早期退職慣行の是正、人事評価の試行、公務部門の人材の確保・人材の活性化などの改革を着実に進めてまいります。
  政策評価については、評価結果を政策や予算へ的確に反映することや、達成目標を明示することなどによって評価の質を向上させることが重要であり、各府省と連携しつつ引き続き取り組みます。また、行政機関政策評価法の施行状況に検討を加え、必要な措置を講じてまいります。
  さらに、現在実施中の「大気環境の保全」といった政策評価や行政評価・監視に鋭意取り組むとともに、政府として総合的な対応を要する政策や国民の関心が高いテーマを新たに取り上げてまいります。行政相談についても、引き続き国民のニーズに沿った、きめ細かな活動を行います。
  また、行政手続法改正案を提出し、政省令等を定める際に広く国民から意見を求める、意見公募手続を法制化します。
  情報公開については、法律の施行状況等について検討を行い、3月を目途に結論を得て、必要な措置を講じてまいります。
  電子政府・電子自治体については、24時間365日受け付けるノンストップサービス化とワンストップサービス化など、オンライン手続の利便性向上に取り組みます。さらに、利用者が電子署名を行ったことを確認することができる者の範囲を拡大するために、法律を改正します。

2 地方分権の推進)

    次に地方分権の推進についてであります。
  地方分権は、国、地方を通じる構造改革を進める上で、極めて重要な課題であり、引き続き積極的に推進します。
  平成16年度末までに、新たな地方行革指針を策定し、地方公共団体の行政改革を一層推進してまいります。
  地方公務員の人事制度については、「今後の行政改革の方針」も踏まえ、客観的な評価に基づく能力・実績主義の確立を目指すとともに、部分休業制度や任期付短時間勤務職員制度の導入など職員の任用・勤務形態の多様化を推進します。また、地域の民間給与の状況を反映するなど幅広い観点から、給与の在り方の検討を進めるほか、不適正な諸手当などについては、適正化を強力に推進します。
  市町村合併については、私の大臣就任時に3,181あった市町村数が、2月15日現在、総務大臣への事前協議を経たものを含めると901減少し、2,280以下となることが確定しています。引き続き、市町村合併を推進してまいります。
  「三位一体の改革」については、昨年夏、地方団体にお願いし、国庫補助負担金改革の具体案を提出いただきました。政府においては、これを真摯に受け止め、11月末に18年度までの「全体像」を決定しました。
  17年度においては、この「全体像」に沿って、税源移譲に結びつく1.1兆円の国庫補助負担金の改革と、所得譲与税による税源移譲等を行います。また、地方財政計画の歳出を見直しつつ、地方公共団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税などの一般財源の総額を確保しております。引き続き、3兆円規模の税源移譲を目指して、残された課題に精力的に取り組んでまいります。
  17年度の地方税制改正については、所得譲与税による税源移譲のほか、個人住民税の定率減税の縮減、法人事業税の分割基準の見直し等を行います。

3 情報通信政策)

    次に、情報通信政策について申し上げます。
  本年は世界最先端のIT国家となる目標の最終年として総仕上げに取り組むとともに、昨年12月に取りまとめた「u-Japan政策」を推進し、ユビキタスネット社会の実現を目指します。
  ネットワークの社会資本整備については、世界一安くて速いブロードバンド環境が実現するなど着実な成果が表れております。引き続き、通信のIP化・ブロードバンド化の進展に対応した競争政策の推進や、次世代ネットワーク環境の整備に取り組み、電気通信市場の更なる活性化を図ります。また、地域公共ネットワークの整備を推進するとともに、デジタルディバイドの是正に取り組みます。さらに、改正法案の提出を予定している迷惑メール対策を始めとする、消費者行政の充実に努めます。
  地上デジタル放送は、開始後1年で既に13都府県、約1,800万世帯で視聴可能となり、順調に進んでいます。今後、普及を一層加速させるため、防災、教育等公共分野における利活用の推進等に取り組み、全放送メディアのデジタル化を推進します。
  また、大幅に増加することが予想される周波数の需要に応えるため、周波数の再配分・利用制度の整備など「電波開放戦略」を推進しています。その一環として、電波利用料制度の見直しのための電波法改正法案を提出したところです。
  さらに、世界情報社会サミットに貢献するため、「ユビキタスネット社会」をテーマとした世界会合を5月に東京で開催します。
  ICTの利活用については、コンテンツ流通の促進、人材の育成、情報バリアフリーの推進、情報セキュリティ対策等に取り組みます。
  また、電子タグ技術やセンサー技術の研究開発や実証実験に、一層力を注ぎます。独立行政法人情報通信研究機構の業務を一層効率的かつ効果的にするため、同機構の職員を非公務員化する法案を提出します。

4 郵政行政)

    郵政事業については、日本郵政公社の健全な経営が確保されるとともに、国民の皆様に、より質の高いサービスが提供されるよう努めます。また、信書便事業の参入を促進します。
  今後の郵政事業の在り方については、昨年9月に「郵政民営化の基本方針」を閣議決定しました。今後とも、利用者の利便性が向上し、職員がより意欲を持って職務に取り組むことができ、国全体の観点からプラスとなることが必要と考えております。

5 消防行政)

    昨年相次いだ大規模災害については、いち早く緊急消防援助隊を被災地へ派遣し、消防庁の調整の下、全国の多くの消防職員や消防団員が地域住民の避難誘導・救助活動に活躍したところです。インド洋大津波に際しては、国際消防救助隊を派遣し、住民救出・救援物資輸送等を実施しました。
  また、国民保護法制の制定に伴い、基幹的事務を担うこととなりました。17年度には、国と地方が一体となった図上訓練や実動訓練を行います。これに合わせ、消防庁に国民保護・防災部(仮称)を創設することとしています。
  今後も、消防団や自主防災組織を活用した、きめ細かな安心・安全な地域づくりを推進します。

6 その他)

    統計行政については、GDP統計の精度向上など社会経済の変化に対応した統計の整備を推進するとともに、各府省共同利用型のデータベースの導入など、全政府的に統計を抜本的に見直します。また、本年10月に控えた国勢調査の準備に万全を期してまいります。
  恩給行政については、受給者の高齢化の状況等を踏まえ、その申請負担を軽減するため、事務手続の簡素化等を行う恩給法改正法案の御審議をお願いしております。
  最後に、スポーツの拠点づくりの推進について申し上げます。例えば野球の甲子園やラグビーの花園のように、全国規模のスポーツ大会が毎年開催されている場所は、青少年のあこがれや目標となっております。こうした取組を、全国に広げていこうとするものであります。多くの市町村とスポーツ団体から御提案を頂き、先般、富良野市における全国高等学校選抜スキー大会を始め、28の市町村で実施される青少年のスポーツ大会を選定しました。
  全国各地にスポーツごとの拠点が形成され、地域の再生につながるよう支援してまいります。

むすび)

    総務省は、以上の重要課題以外にも、幅広い行政分野を所管しております。私は、国民生活を豊かにするという立場に立って、所管行政の推進に全力で取り組んでまいります。
  以上、所信の一端を申し上げました。
  委員長を始め、理事、委員各位の格別の御協力によりまして、その実を挙げることができますよう、一層の御指導と御鞭撻をお願い申し上げます。


  
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