第164回国会(常会)

総務委員会における総務大臣所信表明
 
 
平成18

【はじめに】
 総務委員会の御審議に先立ち、所信の一端を申し上げます。
 昨年の台風や年末来の大雪など、自然災害が多発し、多くの方々が犠牲になられました。被害に遭われた方々に対して、心よりお見舞い申し上げます。
 さて、私は、小泉内閣の進める構造改革を断行し、小さくて効率的な政府を実現するため、改革に取り組んでいます。「改革なくして成長なし」、「民間にできることは民間に」、「地方にできることは地方に」との方針の下、改革の進展が国民に実感できるものとなるよう、各般の施策の推進に取り組みます。
 また、総務省は、ユビキタスネット社会の実現、国民の安心・安全の確保といった国民生活に密着した幅広い行政分野を所管する役所でもあり、その推進に全力で取り組んでまいります。以下、当面の重要課題について申し上げます。

【1 行政改革の推進】
 まず、行政改革の推進についてであります。昨年12月に閣議決定した「行政改革の重要方針」における「総人件費改革の実行計画」を踏まえ、「小さくて効率的な政府」の実現に取り組みます。
 18年度の国の機構については、膨張を抑制しつつ、郵政民営化委員会事務局、「市場化テスト」を推進するための官民競争入札等監理委員会及び同事務局の体制整備などを認めました。
 定員については、定員合理化計画を着実に実施するとともに、メリハリをつけつつも増員を厳しく限定することにより、5年間で5パーセント以上の純減目標のうち1.5パーセント以上、5,000人以上の純減に取り組みます。その初年度である18年度においては、治安、徴税、安全・安心など、政府として重要な施策に重点的に定員を配分した上で、1,455人の純減を行います。
 また、政策金融機関類似の融資業務等を行う法人を含め、特殊法人等から移行した独立行政法人等について、業務を極力整理縮小する方向で見直します。
 国家公務員の人事行政については、「行政改革の重要方針」に基づき、給与構造改革等の推進、人事評価の試行などの改革を着実に進めます。
 また、国家公務員が留学後早期に離職した場合に、留学費用を償還させること等を定める法案、公務員災害補償制度の改正法案を提出します。このほか、官民交流を推進するための法整備について、現在、鋭意検討しています。
 政策評価については、内閣の重要政策に関する評価の徹底、政策評価と予算・決算との連携強化、国民への説明責任の徹底など、新たな基本方針に基づく取組を推進します。
 また、現在実施中の「PFI事業」、「労働安全・基準」といった政策評価や行政評価・監視に積極的に取り組むとともに、政府として総合的な対応を要する政策や国民の関心が高いテーマを新たに取り上げていきます。行政相談についても、国民に身近な場所における総合的な相談窓口を拡充するなど、利便の向上を進めます。

【2 地方分権の推進】
 地方分権については、引き続き積極的に推進します。また、地方公共団体の自主性・自律性を拡大するため、地方自治法の改正法案を提出します。
 地方行革については、本年度中における集中改革プランの公表をはじめ、各地方公共団体が不断に行政改革に取り組むよう、積極的に推進します。
 地方公務員の定員については、「行政改革の重要方針」における「総人件費改革の実行計画」を踏まえ、4.6パーセント以上の純減の上積みを促進します。
 また、給与については、国の給与構造の改革を踏まえた速やかな見直しを推進するとともに、給与制度・運用等における適正化を更に徹底してまいります。
 市町村合併については、本年3月末には団体数が1,821となる予定であり、合併後の市町村をしっかり支援していきます。合併新法の下でも、引き続き市町村合併を推進してまいります。
 住民基本台帳の閲覧制度については、何人でも閲覧を請求できる制度を廃止し、個人情報保護に十分留意した制度として再構築するための改正法案を提出します。
 地方議会議員年金制度については、市町村合併の進展等による年金の財政状況の悪化を踏まえ、給付水準の引下げ等を行うための改正法案を提出します。
 「三位一体の改革」については、18年度までの改革として、4.7兆円の補助金改革、3兆円の税源移譲、5.1兆円の地方交付税改革、という成果を得ることができました。この国庫補助負担金改革を踏まえ、所得税から個人住民税へ3兆円の本格的な税源移譲を恒久措置として行います。その際、個々の納税者の負担が増えないように配慮するとともに、応益性や偏在度の縮小といった観点を重視し、個人住民税の所得割の10パーセント比例税率化を行います。
 地方交付税については、臨時財政対策債を含め、3年間で5.1兆円の抑制等の改革を行う一方、18年度については地方自治体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保しました。このため、地方交付税法等の改正法案を提出しています。
 先般、「地方分権21世紀ビジョン懇談会」を設置し、あるべき地方分権の姿を見据えつつ、地方行財政制度について幅広く議論を進めていきます。
 18年度の地方税制改正については、3兆円の税源移譲のほか、個人住民税の定率減税の廃止、土地に係る固定資産税の負担調整措置の見直し等を行うため、地方税法等の改正法案を提出しています。

【3 情報通信政策】
 次に、情報通信政策について申し上げます。
 国民生活にとって必要不可欠な通信と放送については、近年の急速な技術の進歩を反映して、そのサービスがより便利により使いやすくなることを、国民は期待しています。このため、「通信・放送の在り方に関する懇談会」を開催し、通信と放送に関し、国民の視点から見た改革を進めます。
 また、本年は、政府の新しいICT戦略を開始します。我が国が最先端のICT国家として世界を先導し、2010年にはユビキタスネット社会を実現することを目指し、政府の新ICT戦略と一体となって「u‐Japan政策」を推進します。
 インフラ面では、ネットワーク構造の変化等に対応した競争政策を推進するとともに、電波の有効利用を促進します。また、ブロードバンド基盤の全国整備に向けて電気通信基盤充実臨時措置法を延長する法案を提出するとともに、地域情報化やデジタル・ディバイドの是正を推進します。
 さらに、地上デジタル放送の2011年の完全移行に向けた普及・ 展開を加速するなど、全放送メディアのデジタル化を推進します。
 利活用・利用環境面では、医療・教育分野等におけるICT利活用の推進、ソフトパワーを喚起するコンテンツ流通環境の整備、ICT人材の育成に取り組むとともに、サイバー攻撃対策の強化等により安心・安全を確保し、インターネット上の違法・有害情報対策等の消費者行政を充実します。
 技術・国際戦略面では、新世代ネットワーク技術等の研究開発・標準化を進めるほか、独立行政法人情報通信研究機構の職員を非公務員化する法案を提出しています。また、電気通信機器の認証について、米国等諸外国との間の国際的な相互承認を推進します。
 電子政府・電子自治体については、2010年度までに官公庁に対する申請・届出などのオンライン手続の利用率を50パーセント以上とすることを目標に、利用者視点に立った改善を行うとともに、行政内部の業務・システムの最適化を進めます。このほか、公的個人認証サービスを更に普及させるために、公的個人認証法の改正法案を提出しています。

【4 郵政行政】
 郵政事業については、郵政民営化法等にのっとり、1910月の民営化に向け、新会社への円滑な移行のための諸準備を着実に実施するとともに、日本郵政公社の経営基盤の一層の強化を図り、国民の皆様に、より質の高いサービスが提供されるよう努めてまいります。
 また、「郵便におけるリザーブドエリアと競争政策に関する研究会」を開催し、郵便における競争を促進する施策の在り方について、幅広く検討します。

【5 消防行政】
 次に、消防行政について申し上げます。
 昨年から寒波・大雪による被害が相次ぎ、また、首都直下地震等の大規模地震の発生も懸念されている中、国民の安心・安全を確保することは政府の基本的な責務であります。このため、市町村の消防の広域化を推進するための改正法案、独立行政法人消防研究所の機能を国に移管するための法案を提出するとともに、緊急消防援助隊の増強や救助資機材の整備を行うことにより、消防防災体制を強化します。

【6 統計行政】
 統計については、統計業務の民間開放に向けた取組を進めるとともに、産業構造の変化に対応した統計の体系的整備や、統計法制度の抜本的見直しに取り組みます。

【むすび】
 以上、所信の一端を申し上げました。
 委員長を始め、理事、委員各位の格別の御協力によりまして、各般の施策の推進に全力で取り組んでまいりますので、一層の御指導と御鞭撻をお願い申し上げます。

  
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