第169回国会(常会)

総務委員会における総務大臣所信表明

平成20

【はじめに】
 総務委員会の御審議に先立ち、所信の一端を申し上げます。
 総務省は、国民生活に密着した幅広い行政分野を担っており、いずれもこれからの日本にとって極めて重要な分野であると考えています。私は、「地方の元気が日本の力」を基本理念として、地方と都市の格差の拡大を防ぎ、地方に活力を取り戻すため、地方の再生に全力で取り組むとともに、地方への一層の権限移譲や地方税財政の改革に重点的に取り組んでまいります。また、公務員の総人件費削減など行政改革を推進し、行政のスリム化・効率化を一層徹底するとともに、年金記録確認第三者委員会等において、年金記録問題への取組を精力的に進めてまいります。さらに、通信・放送分野の改革を一層、推進してまいります。
 以下、当面の重要課題について申し上げます。

【1 行政改革の推進】
 まず、行政改革の推進についてであります。
 二十年度の国の行政機関の定員については、五年間で五・七パーセント以上、約一万九千人以上の純減目標の達成に向けて、行政機関全体で十九年度の概ね二倍となる四、一二二人の定員純減を行ってまいります。その中で、治安、徴税、安全・安心、総合的な外交力など、政府として重要な施策に重点的に定員を配分することにより、メリハリのある定員配置を実現いたします。また、この純減を円滑に進めるため、国家公務員の配置転換等の取組を着実に実施してまいります。
 独立行政法人については、総務省としても、昨年末に閣議決定した整理合理化計画の着実な推進等により、独立行政法人に対する国民の信頼を確保してまいります。随意契約についても、国における見直しの取組を踏まえ、原則として競争性のある契約に改めてまいります。
 国家公務員の人事行政についても、能力・実績主義の人事管理の基礎となる人事評価制度の構築に向けた試行の実施、官民交流の推進、早期退職慣行の是正、改正国家公務員法の円滑な施行などに引き続き取り組み、公務員制度改革の着実な推進に努力いたします。また、厳正な服務規律の確保と公務の適正な運営にも努めてまいります。
 政策評価については、重要対象分野として、総務省からの意見具申に基づいて経済財政諮問会議から提示された少子化社会対策に関連する施策や若年者雇用対策、農地政策に係る評価の実施を推進するとともに、新たに義務付けられた規制の事前評価の的確な実施を推進してまいります。
 また、現在実施中の「随意契約の適正化」などの行政評価等に積極的に取り組むとともに、国民の安全・安心の確保の観点から、国民の関心が高いテーマなどを新たに取り上げてまいります。
 行政不服審査制度については、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を充実させるため、不服申立ての種類の一元化及び審理の一段階化等を行う改正法案を提出します。また、行政運営における公正の確保を図るため、一定の処分又は行政指導を求める申出の制度等を整備する行政手続法の改正法案を提出します。
 行政文書の管理については、適切な管理の徹底を図るため、昨年十二月に関係省庁申合せを行ったところであり、総務省としても、各府省において一層適切な文書管理が行われるよう必要な取組みを行ってまいります。

【2 年金記録問題】
 年金記録問題については、まじめに保険料を払ってこられた方々が正しく年金を受け取ることができるよう、引き続き年金記録確認第三者委員会における公正かつ迅速な調査審議を支え、年金記録の訂正に結び付けてまいります。現在、更に審議体制の強化に取り組んでおり、本年三月末までに申し立てられた事案については、概ね一年を目途に処理を終えることとしています。
 また、年金記録問題の解決に向けた対策等が着実に実施されるよう、年金業務・社会保険庁監視等委員会において監視を行ってまいります。

【3 地方分権等の推進】
 次に、地方分権、地方行財政改革の推進についてであります。
 地方の自由度を拡大し、地方が責任をもって行政を実施できる「地方が主役の国づくり」を目指していくことが重要です。そのため、地方に対する義務付け・枠付けの大幅な見直し、個別行政分野における国と地方の役割分担の徹底した見直し、地方への権限移譲、国の地方支分部局の抜本的な見直し等を行い、「新分権一括法案」を平成二十一年度中できるだけ速やかに国会に提出するべく、地方分権改革を推進してまいります。
 市町村合併については、本年十一月には市町村数が一、七八五となる予定でありますが、引き続き合併新法の下で市町村合併を推進するとともに、合併後の市町村のまちづくりを支援いたします。
 地方行革については、集中改革プランの着実な実施を促すとともに、地方行革新指針に基づき行政改革を一層推進いたします。
 地方公務員について、能力・実績主義の徹底と退職管理の適正確保を図るため、地方公務員法改正法案を提出しています。
 地方公務員の定員については、引き続き、五年間で国の行政機関の五・七パーセントの定員純減と同程度の定員純減の取組を推進いたします。また、給与につきましても、一層の適正化や、国の給与構造改革を踏まえた取組等を更に徹底してまいります。
 地方財政については、これまでの健全化方針を維持しつつ、地方と都市の「共生」の考え方の下、地方税の偏在是正により生じる財源を活用して、地方の自主的・主体的な地域活性化施策に必要な歳出の特別枠「地方再生対策費」を地方財政計画に計上し、地方交付税の算定を通じて、市町村、特に財政の厳しい地域に重点的に配分いたします。
 また、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税及び一般財源の総額を増額して確保いたします。
 あわせて、地方公共団体の財政の健全化に関する法律の円滑な施行に努めるとともに、経営状態が悪化した第三セクター等の改革を促進いたします。地方の公会計については、必要な情報提供等を行うことにより、より一層透明性を高め、国民に分かりやすい財務書類の整備を支援してまいります。また、地域医療の提供体制を確保できるよう公立病院改革の取組を支援いたします。
 二十年度の地方税制改正については、税制の抜本的改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の措置として、法人事業税の一部を分離し、地方法人特別税及び地方法人特別譲与税を創設するための暫定措置法案を提出するとともに、個人住民税における寄附金控除の拡充、上場株式等の配当等及び譲渡所得等に対する税率の特例措置の見直し、自動車取得税及び軽油引取税の税率の特例措置の適用期限の延長等を行うため、地方税法等の改正法案を提出しています。

【4 魅力ある地域づくり】
 地域社会を再生し、住民に安心を供給することが喫緊の課題であることから、中心的な都市とその周辺地域がともに支え合い、医療・福祉、教育、雇用、情報・文化、娯楽など国民の暮らしに必要な機能をしっかり確保することによって、人口の流出を食い止める自立的な圏域のあり方について検討してまいります。
 魅力ある地方の創出を一層促進するため、「頑張る地方応援プログラム」において、地方交付税等の財政支援に加えて、新たに、地域活性化に取り組む市町村に対して、総務省職員の派遣、先進市町村や民間の人材の紹介・派遣、研修等を実施し、地域の人材の育成・活性化を支援してまいります。
 都市から地方への移住・交流の促進を図るとともに、時代に対応した新たな過疎対策を検討してまいります。
 個性的で魅力ある地域づくりには、地域コミュニティの役割も重要であり、その活性化に努めてまいります。

【5 情報通信政策】
 続いて情報通信政策についてであります。
 人口減少社会に突入した我が国が、安全で安心して暮らせる社会を構築しつつ、今後更なる成長力の強化と地域の発展を実現するためには、ICTの構造改革力の発揮が不可欠です。そのため、遠隔医療やテレワークなどICT利活用の促進を政府一体となって進め、それぞれの地域で安心して生活できる基盤の充実を図る一方、二〇一一年の完全デジタル元年に向け、デジタル放送への円滑な移行を着実に進めるとともに、ブロードバンド・ゼロ地域及び携帯電話不感地帯の解消をはじめとするデジタル・ディバイド対策に努めてまいります。
 また、我が国経済を新たな成長軌道に乗せるため、「ユビキタス特区」における国際展開可能な事業モデルの確立や、新世代ネットワーク技術等の研究開発・国際標準化活動の推進など、ICT産業の国際競争力強化を進めてまいります。さらに、ICTによる生産性向上を図り、あらゆる産業・組織の競争力強化を通じて経済成長に貢献いたします。
 通信・放送改革については、国民視聴者の信頼回復に向けたNHK改革を引き続き推進するとともに、「新競争促進プログラム二〇一〇」を踏まえた公正競争ルールの整備や、通信・放送の融合・連携に対応した総合的な法体系の検討、ブロードバンド・インターネットや携帯電話による映像配信を含めた放送コンテンツの競争力強化を進めてまいります。さらに、誰でも安心してICTを利用できるよう、インターネット上の違法・有害情報対策を進めるとともに、迷惑メール対策を強化するための特定電子メール法改正法案を提出します。また、電波の有効利用のため、電波利用料制度を見直すとともに、携帯電話の屋内基地局等の運用を柔軟化する電波法改正法案を提出しています。
 これらの施策を通じ、ICTの恩恵を誰もが享受できるユビキタスネット社会の実現に努めてまいります。
 電子政府・電子自治体については、利用者の視点に立った手続の見直し・改善等を進め、申請・届出等手続のオンライン利用を促進してまいります。また、業務処理の効率性の向上、情報システム経費の削減を図るため、業務・システムの最適化を着実に推進するとともに、情報システムに係る調達指針の的確な運用に努めてまいります。

【6 郵政行政】
 郵政事業については、昨年十月一日に郵政民営化がスタートしましたが、今後とも各承継会社において、過疎地を含む郵便局のネットワーク水準やサービス水準の維持、コンプライアンスの徹底、経営の健全性の確保が確実になされ、国民の皆様に喜んでいただける民営化となるよう、努めてまいります。
 また、本年七月開催予定の第二十四回万国郵便大会議においては、世界郵便戦略の策定や条約改正が予定されておりますが、これに積極的に貢献してまいります。

【7 消防行政】
 国民の安心・安全の確保は政府の基本的な責務ですが、近年、自然災害や事故等が多発し、また、首都直下地震等の大規模地震やテロ災害の発生も懸念されており、消防防災体制の強化は急務です。
 このため、市町村の消防の広域化や消防団の充実強化、救急救命体制の充実・高度化、火災予防対策や高度な救助資機材の整備を推進するとともに、危険物事故防止対策の充実強化や緊急消防援助隊の機動力の強化等を図るため、消防法と消防組織法を改正する法案を提出します。

【8 統計行政】
 統計については、新統計法の成立を踏まえ、基本計画案の策定など統計制度の抜本的改革を着実に推進してまいります。また、経済センサスなど産業構造の変化等に対応した統計の体系的整備を進めるとともに、ICTの活用等により統計業務の合理化・効率化に取り組んでまいります。さらに、独立行政法人統計センターの職員を非公務員化する法案を提出します。

【むすび】
 以上、所信の一端を申し上げました。
 委員長を始め、理事、委員各位の格別の御協力によりまして、各般の施策の推進に全力で取り組んでまいりますので、一層の御指導と御鞭撻をお願い申し上げます。



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