海外ニュース(2018年6月1日号)

■AI

[1]ホワイトハウス、テクノロジー企業幹部等を招く人工知能(AI)サミットを開催≪米国≫

 トランプ政権は5月10日に、米国大手企業幹部等を招いて、人工知能(AI)に関するサミットを開催しました。サミットには、政府高官、学術機関の専門家、企業の研究所の所長、米国企業幹部など合計100名以上が参加しました。
サミットでは、農業や医療、輸送などの分野でのAI活用を促進できる規則・規制について専門家の意見を求め、機械学習などの最新研究に対する政府の資金援助について協議されました。
 なお、ホワイトハウス科学技術政策室(OSTP)のデータによると、米国政府は2017会計年度にAI技術の非機密研究開発プログラムに20億米ドル以上を投じており、これ以外にも、国防総省や情報機関がAI技術の研究開発を進めています。こうしたなか、政府にとっては、AI技術の進化がもたらす効用と、雇用や生命への脅威といったリスクのバランスをどこに見出すかが大きな課題となっています。
 サミットでは、トランプ大統領のテクノロジー・アドバイザーを務めるマイケル・クラツィオス氏は、連邦資金の増額などによってAI研究開発を推進することがトランプ政権の優先課題の一つだと語りました。同氏は、AI研究を支援するために、国立研究所のネットワークや政府の保有する広範なデータへの、プライバシーやセキュリティを脅かさない方法でのアクセスを拡大する可能性も示唆しました。
 また、AIの効用だけでなく、今後の課題についても意見が交換されました。クラツィオス氏は、雇用状況のある程度の変化は不可避とした上で、市場が問題を解決してくれることを期待して事態を傍観していることはできないとも語りました。一方、一部の企業幹部からは、AI技術に関する具体的な国家戦略がないことで他国に遅れをとることに懸念する意見も出されました。

■5G

[2]中国通信事業者、5Gの商用化に向けた取組みを着実に推進≪中国≫

 工業・情報化部(部は省に相当)傘下の賽迪グループ(CCID)コンサルティング部門である賽迪顧問は5月15日、「2018年中国5G産業と利用発展白書」を発表しました。中国における2019〜2026年の5G産業の市場規模は1兆1,500億元に達し、4G産業の1.5倍になると予測しました。
 主要通信事業者各社による5Gの商用化に向けた取り組みも活発化しつつあります。
 5月16日、中国移動が主導する浙江省5G産業連盟の設立式及び「杭州5Gの城」の除幕式が浙江省杭州市で行われました。中国移動浙江支社(浙江移動)の鄭傑総経理は、「杭州5Gの城」の建設計画について「我々は、5Gの大規模試験を積極的に実施し、「杭州5Gの城」を整備し、「個・十・百・千・万」プロジェクトを実施する」と述べました。
 
*「個」は、「五つ(個)の「最」」(ネットワーク規模が最大、試験進捗が最速、産業貢献が最も充実、革新的な利用が最も広範、体験ユーザーが最多)。
*「十」は、10億元を投資し、浙江大学や西湖観光地、2022年アジア競技大会会場などの10種類の利用シーンを網羅。
*「百」は、5G試験区のカバーエリアが100平方kmを超え、100以上の基地局を設置。
*「千」は、浙江移動とパートナーの推進チームが1,000人以上。
*「万」は、持続的な技術進化と能力構築を通じて20,000Mbpsの高速ユーザー体験を実現。
 
 また、浙江省5G産業連盟は、浙江移動が主導する形で、26機関(浙江大学、阿里巴巴(アリババ)、華為技術(Huawei)など)と共同設立し、政府の指導を受け、浙江省で「中国製造2025」、「互聯網+(インターネットプラス)」戦略の実行を支援します。
 一方、中国電信上海支社(上海電信)及び中国国内最大規模のコングロマリットの上海文広集団(SMG)は5月17日、5G試験ネットワークに基づく中国初の8K動画利用プラットフォーム「5G+8K試験ネットワーク」を発足しました。双方は、5G試験ネットワークにおいて試験を行い、アプリケーションの実行効果の最適化及びビジネスモデルの模索を進めます。 

■サイバーセキュリティ

[3]BTと欧州刑事警察機構(ユーロポール)、主要なサイバー脅威・攻撃に関する知識共有を目的に覚書を締結≪英国≫

 英国の大手通信事業者BTと欧州刑事警察機構(ユーロポール)は5月15日、主要なサイバー脅威や攻撃に関する知識共有を目的に、ユーロポールの本部があるオランダのハーグで覚書を締結しました。
 今後BTとユーロポールは、この覚書に基づき、サイバー脅威に関する情報・データ、サイバーセキュリティの動向、技術的専門知識、業界におけるベストプラクティス等を共有・情報交換することになります。
 BTは、世界180か国において情報通信サービスを提供しており、2018年初めには無料のオンライン・ポータルサイト「マルウェア情報共有プラットフォーム(MISP)」を設立し、悪意のあるソフトウェアやウェブサイトに関する情報を他のISPと大規模に共有する取組みを開始しました。これまでに同社の2,500人以上のサイバーセキュリティ専門家は、20万以上の悪意のあるドメインの詳細を特定し、情報提供してきました。
 一方ユーロポールは、1994年にマーストリヒト条約に基づいて設立された欧州連合(EU)の法執行機関で、テロやサイバー犯罪等に対応するための支援、情報交換・分析、専門技術の提供や訓練等を実施しています。2013年には、サイバー犯罪対策専門組織である欧州サイバー犯罪センター(EC3)を設立しました。
 今回の覚書締結は、市民、企業、政府に対して安全サイバー空間を構築するという両組織の取組みを強化するものです。BTは「クロスボーダーなコラボレーションが世界中のサイバー犯罪の流行を阻止する上で重要である」としており、一方のユーロポールは「BTの高度な専門知識が欧州全体の調査に大きなメリットをもたらす」と述べています。このような産業界と法執行機関の連携は、欧州市民や企業のサイバースペースの安全性を確保する上で効果的な官民提携として注目されています。

■モバイル決済

[4]シンガポールの通信最大手シングテル、ゲーム用デバイスメーカーRazerと提携し、東南アジア全域でモバイル決済ネットワークを構築へ≪シンガポール≫

 シンガポールの通信事業者最大手シングテルは5月2日、ゲーム用デバイスメーカー米国Razerとの間で、東南アジア全域でのモバイル決済ネットワークを構築するための戦略的提携について合意しました。
 スマートフォンの普及率が増加するにつれて、東南アジアでのモバイル決済額は2013年から10倍に増加しており、2021年には約320億米ドルに達すると予測されています。また、パソコンやモバイルを通じたオンラインゲームのプレイヤーも増加しており、2017年の3億人から2021年には4億人に達すると予測されています。
 シングテルは傘下の通信事業者も含め、東南アジア全域で6億8,000万以上のモバイル加入者を有しています。また、シングテルは3月に傘下の通信事業者が個別に提供しているモバイル決済の相互接続プラットフォームを構築し、東南アジア全域に存在する5,000万以上のモバイル決済加入者、100万以上の販売拠点を一つに結ぶことを計画しています。
 一方、Razerは4月に、100万以上のオフライン販売拠点を有し、総額11億米ドルを取引する、東南アジアを代表する電子決済事業者MOL Globalを買収する計画を発表しました。シングテルとRazerは両社の電子決済システムの相互運用性を実現し、シームレスに統合された地域決済ネットワークを構築する意向です。

■インターネット上の偽情報対策

[5]欧州委員会、インターネットで流通する偽情報対策を提案≪EU≫

 4月26日、欧州委員会はインターネットで流通する偽情報対策として、欧州共通の行動規範(Code of Practice)を含む各種の提案を行いました。提案の概要は次のとおりです。
 
*偽情報に関する行動規範:2018年7月までに公表される予定の偽情報に関する欧州共通の行動規範にオンライン・プラットフォームは準拠する。行動規範には、スポンサー付のコンテンツや政治広告に関する透明性の確保、アルゴリズム機能の明確化、多様なニュースソースへのユーザーのアクセス促進、偽アカウントの特定方法や閉鎖方法の導入、自動ボット問題への対応などの規定が盛り込まれる。
*独立したファクト・チェッカーの欧州ネットワーク:共通の作業方法の確立、ベストプラクティスの交換、誤った情報の修正が欧州全域で可能となる広範なカバレッジを獲得する。
*ファクト・チェッカーや大学研究者による偽情報に関するデータ収集や分析を支援する安全性の高い欧州オンライン・プラットフォームを確立する。
*メディア・リテラシーの向上:欧州委員会はファクト・チェッカーや市民団体に、学校や教育者向けに教育素材を提供することを奨励する。
*オンライン上の偽情報やサイバー攻撃などの複雑化するサイバー脅威を背景に、選挙活動におけるレジリエンス強化のために各国を支援する。
*情報提供者のトレーサビリティを改善し、オンライン上のやりとりや情報、情報源の信頼性向上を目的に、任意利用可能なオンライン特定システムを推進する。
*質の高い多様な情報の支援:欧州委員会は、多元かつ多様で持続可能なメディア環境を保障する質の高いジャーナリズムを支援するよう加盟国に呼び掛ける。
*偽情報に関する現行および将来のイニシアティブを盛り込んだ協調的な政策を策定し、欧州域内・域外における偽情報対策に取り組む。
 
 今後、欧州委員会は効率的な協調体制の枠組みを提供するため、オンライン・プラットフォーム事業者や広告業界を含むマルチステークホルダーによるフォーラムを開催し、フォーラムの最初の成果として、2018年7月に欧州共通の行動規範を発表する計画を示しています。そして同年12月には一連の活動の進捗状況を評価し報告する見通しを示しています。

■有料放送

[6]IPTV加入者数がついにケーブル放送を逆転≪韓国≫

 ICTと科学技術分野の担当省庁である科学技術情報通信部(部は省に相当)が5月10日に公表した2017年下半期有料放送加入状況によると、2017年11月以降、IPTV加入者数が初めてケーブル放送を上回りました。2017年下半期6か月間平均のケーブル放送、衛星放送、IPTVの有料放送加入者数合計は前期より91万人増の3,137万人でした。メディア別の加入者シェアは、ケーブル44.92%、衛星10.33%、IPTV 44.75%でした。
 有料放送の加入状況は国により大きな違いがあります。韓国ではテレビ加入世帯の9割以上がこれらの有料放送サービスに加入しています。有料放送サービス加入者の大部分をケーブル放送が占めるという時代が長らく続いていましたが、通信・放送融合の新サービス促進のため、政府がIPTVサービス導入に力を入れた経緯があります。IPTVとは、ブロードバンド網状の閉域IPネットワークを通じ、セットトップボックスに接続するタイプの映像配信サービスで韓国では通信事業者3社が2008年以降にサービスを提供しています。IPTVは、携帯電話とのセット商品を武器にケーブル加入者を吸収しながら成長を続け、単月ベースでついにIPTVとケーブルの加入者数が逆転しました。

ケーブルとIPTV加入者数推移(単位:万)
/main_content/000555289.png
出所:科学技術情報通信部
※グラフはリンク先をご参照ください。

 また、韓国では有料放送市場の独占を防ぐため、1社あたりの有料放送加入者数シェア合計を33.33%以内に抑える、合算規制と呼ばれるルールがあります。総合通信最大手KTは、IPTVと系列会社の衛星放送の加入者数の合計で判断されるため、今回のシェアは30.54%で、枠内には収まるもののギリギリの状態です。今回の有料放送加入状況調査は合算規制の判断材料としても活用されます。なお、合算規制は今年6月までの時限措置とされています。規制緩和を進める現政権下では、このルールを期限とともに廃止する見通しで、そのための議論の行方が現在注目されています。

問い合わせ先

連絡先:情報流通行政局
情報通信政策課情報通信経済室
電話:03-5253-5720
FAX:03-5253-6041
Mail:mict-now★soumu.go.jp
(★をアットマークに変換の上、お問い合わせください)

ページトップへ戻る