海外ニュース(2018年8月1日号)

■AI

[1]米国・カナダ、緊急事態対応への人工知能(AI)活用を共同研究≪米国・カナダ≫

 7月6日、米国とカナダは緊急事態への対応に人工知能(AI)をいかに活用できるかを共同研究する新たなプロジェクトを開始しました。同プロジェクトは米国国土安全保障省(DHS)の科学技術局とカナダ国防省の防衛研究開発研究所安全保障科学センター(DRDC CSS)が主導するもので、米国とカナダの次世代ファーストレスポンダー[1]が緊急事態発生時の連携や安全性を高め、周囲の状況を認識できるようにすることを目標としています。
 DHS科学技術局において次世代レスポンダー先端プログラムのディレクターを務めるジョン・メリル氏は、アメリカとカナダのレスポンダーが非常に類似した義務を課されていることを指摘した上で、「研究開発の優先事項を両国間で共同決定することにより、努力の重複防止や資金調達の最適化を実現し、目標をより迅速かつ効率的に達成することができる」と期待を寄せています。
 プロジェクトは今後2年間の実施を計画しており、共同で研究開発をすすめるほか、実地テストやワークショップも共同開催します。2019年初めには、カナダのオンタリオ州でNASAのジェット推進研究所(JPL)が開発した最先端人型推論システムである「Assistant for Understanding Data through Reasoning, Extraction and Synthesis(AUDREY)」の実地テストを行うことが既に決まっており、AUDREYを救急医療現場における意思決定の支援や改善、質の高い患者ケアの提供に用いる予定です。
 オンタリオ州ヘイスティングス郡のダグ・ソチャ救急医療局長は「画期的な研究に参加することができ、とても興奮している。患者ケアを改善するツールの開発を支援することは、我々の継続的な任務の一部だと考えている」とAUDREYを用いた実地テストに歓迎の意を表しています。また、DRDC CSS治安維持・法執行部門の資産管理担当者であるジェリー・ドゥセット氏は「救急救命士は患者を診断、治療、運搬する方法について何百もの重要な決定を下さなければならない。AUDREYを用いることでAIと先端的データ分析がどのように意思決定を強化し、患者の転帰や医療システムを改善させ得るかについて調査したい」と述べています。
 
[1]事故や自然災害、テロ事件といった緊急事態が発生した際に最初に現場に到着して支援を提供するための専門的なトレーニングを受けた者をファーストレスポンダーといいます。一般的に、救急隊員や警察官、消防士等が該当します。

■データ活用

[2]運輸省、セーフティ・データ・イニシアティブのパイロット・プロジェクトを公表≪米国≫

 米国の運輸省では、複数のデータを統合して解析し、車の衝突リスクや理解や削減につなげようとする「セーフティ・データ・イニシアティブ」に取り組んでいます。運輸省では、民間企業や大学で利用されている予測データ分析ツールの成果を用いて、大きな衝突事故を引き起こすシステム要因を特定できるようになることを目指しています。同イニシアティブは、以下の三つの要素で構成されています。

・データの視覚化:政策立案者にデータ分析の知見をわかりやすくする。
・データの統合:既存の運輸省のデータベースに、新たな民間部門のデータを統合する。
・予測的な知見:先進的な分析技術を用いてリスク・パターンを特定し、知見を得る。

 7月9日、運輸省は、同イニシアティブのもとで取り組むパイロット・プロジェクトの取り組みを公表しました。

・Wazeパイロット:ユーザー間で交通渋滞情報などを共有できるカーナビ・アプリ「Waze(ウェイズ)」から得た匿名化されたデータを、メリーランド州警察が収集した事故データと突き合わせることで、交通安全の強化に役立てる。具体的には、Wazeユーザーが事故目撃時に押す「Crash」ボタンがどの程度信頼できるかを分析する。その上で、これらのデータを行政機関が収集する従来の事故報告と比較し、交通事故のリスクを予想するモデルを構築する。

・地方スピードパイロット:地方の高速道路における衝突の頻度や被害の度合いと、速度の概況や速度制限、平均移動速度との関連性を理解するために進められている研究プロジェクト。連邦道路管理局(FHWA)は、GPS対応デバイスの匿名化データを使用して、速度が衝突に与える影響を研究する。

・歩行者死亡事故パイロット:運送システムと歩行者死亡事故との間の関係性について究明するプロジェクトであり、政府機関のデータ分析により、都市部では、自動車専用道路以外幹線道路での歩行者の死亡リスクが有意に増加することが明らかとなった。さらに、小売セクターの雇用密度は、都市部と地方における歩行者死亡リスクの増加と強く関連していた。

・死亡率分析報告システムのデータ視覚化:運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、全国の自動車衝突事故についての死亡率分析報告システムデータ(FARS)を試験的に公開しており、そのデータ視覚化にも取り組む。視覚化によって、政策立案者や一般の人々が活用しやすいデータ提供を目指す。

■自動運転

[3]百度(Baidu)日本法人、SBドライブ等と連携し、早ければ2018年度中に日本で無人運転電気自動車の実証実験を実施へ≪中国・日本≫

 7月3日、中国検索エンジン最大手百度(Baidu:バイドゥ)の日本法人であるバイドゥ株式会社は、中国国内バス製造最大手金龍(キンリュウ)自動車傘下の金龍バス、及びソフトバンクグループのSBドライブと戦略的協力に関するMOU(了解覚書)を締結しました。3社は、2019年初めまでに、無人運転電気自動車「阿波龍(Apolong:アポロン)」を日本市場向けに供給するよう取り組みます。阿波龍は、百度の提供する自動運転ソフトウェア・プラットフォーム「Apollo(アポロ)」を搭載しており、ハンドル、アクセル、ブレーキペダルもついておりません。今後、3社は日本における阿波龍をコア製品とする無人運転運営プラットフォームの構築を模索していきます。
 今回の協力において、(1)金龍バスは、阿波龍の開発・製造、日本におけるアフターサービスパートナーのトレーニングと技術サポート、(2)SBドライブは、車両管理システムの開発、日本での阿波龍の運営に関する政府機関等との交流・議論、(3)バイドゥ株式会社は、自動運転システムの開発・保守をそれぞれ担当します。
 阿波龍の量産は当初の計画より1年早い2018年7月から開始されました。北京市や、未来型都市の雄安(ユウアン)新区、広東省深セン市、福建省平潭(ヘイタン)県、湖北省武漢(ブカン)市等に計100台出荷され、各地の観光やコニュニティでの老人送迎等に利用されることになっています。
百度はこれまで、自動運転事業を推進する目的で、100億元規模の「Apolloファンド」を設立し、3年間で100以上の関連プロジェクトに投資するとしています。また、米オンライン教育企業であるUdacity(ユダシティ)と共同で、世界に向けたApollo自動運転オンライン課程を提供しています。

■サイバーセキュリティ

[4]法務省、詐欺やサイバー犯罪を対象とする世界レベルの裁判所をロンドンに新設すると発表≪英国≫

 7月4日、英国の法務省は詐欺やサイバー犯罪を対象とする世界レベルの旗艦的な裁判所を、新たにロンドンの世界的金融街シティの中心部フリーバンクハウス(Fleetbank House)に設立すると発表しました。
 同裁判所は、金融街シティを中心とした自治体「シティ・オブ・ロンドン」および司法分野との協力により設立が実現したもので、18のモダンな様式の法廷を備えた世界的な法律センターとして機能することとなり、グローバルな法律ハブとしての英国の立場を増強する存在となることが期待されています。英国政府は10億ポンド(約1,459億円)を投資し、2025年の完成を目指しています。
 同裁判所では、オンラインシステムが完備されていることからペーパーレスとなり、デジタルフォーマットで準備された審理資料は法廷でもアクセスが可能であることから審理に要する約6,800万ページを印刷する必要がなくなるとのことです。
 英国政府によると、現在、グローバル企業による裁判の40%において英国法が利用されており、英国には200以上の外国資本の法律事務所がオフィスを構えています。英国の法務ビジネスは2016年に315億ポンド(約4兆5,949億円)の売上を計上、2016年度において英国の法律事務所のトップ100社は合計で220億ポンド(約3兆2,091億円)の売上を計上しました。
 英国政府は、英国法の影響はグローバルに拡大し続けており、ロンドンはビジネスや法務において最適の場所であり、同裁判所の設立により、英国がビジネスだけでなく、サイバー犯罪に代表される21世紀型犯罪に対応できる法務の世界的な中心地であることを示したいとしています。
 シティ・オブ・ロンドンのマクギネス会長は、同裁判所が詐欺、経済関連犯罪、サイバー犯罪といった将来的に対応が増々重要になる問題に焦点を置いていることを歓迎すると述べています。

■スマートシティ

[5]世宗(セジョン)市と釜山(プサン)市にスマートシティ国家試験都市整備へ≪韓国≫

 7月16日、大統領直属の第4次産業革命委員会と国土交通部(部は省に相当)は、国家事業としてスマートシティ試験都市2か所を整備する基本構想を発表しました。AI、IoT、ビッグデータ等の最新技術を幅広い分野で積極的に活用する第4次産業革命推進を旗印に掲げる文在寅(ムン・ジェイン)政権では、関連の目玉事業として世宗市と釜山市で世界最先端のスマートシティを整備します。新規造成される試験都市エリアでは新産業育成のため、規制サンドボックス等の様々な特例措置が適用される方針です。
 省庁が集まる行政都市の世宗市では、モビリティ、ヘルスケア、教育、エネルギー・環境等の分野で革新的サービスを提供します。例えば、カーシェアリングを基盤とした環境にやさしい都市づくりを目指します。一般所有の自動車はすべて住居エリア入り口に駐車し、住居エリア内では自律走行車とカーシェアリング、自転車を利用します。また、5GとAIを活用した交通管理システムも導入する計画です。
 水運の拠点でもある釜山市では、エコデルタシティとして革新的スタートアップ拠点とグローバル革新成長都市を目指します。(1)スタートアップが参加しやすい環境のスマート・テック・シティ、(2)新技術活用水資源管理や水辺空間を積極活用するスマート・ウォーター・シティ、(3)VR/AR活用と3Dマップ基盤の仮想都市を構築するスマート・デジタル・シティといった三つの戦略も掲げています。
 政府はスマートシティ構築に向けて規制緩和、予算措置支援、ベンチャー・スタートアップ参加支援、海外進出を見据えた国際協力を進める計画です。試験都市で革新的サービスを提供するための特例措置等を盛り込んだスマート都市法改正案が5月に国会常任委員会を通過したところであり、年内の国会通過を目指しています。

問い合わせ先

連絡先:情報流通行政局
情報通信政策課情報通信経済室
電話:03-5253-5720
FAX:03-5253-6041
Mail:mict-now★soumu.go.jp
(★をアットマークに変換の上、お問い合わせください)

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