平成171227

地方公営企業の経営基盤強化への取組状況

  (平成17年11月1日現在調査)
  • 総務省では、地方公共団体に対し、地方公営企業の経営の総点検、サービス供給のあり方の再検討、民間的経営手法の導入促進、計画性・透明性の高い企業経営の推進等について努めるよう要請しているところです。

  • 今般、平成17年11月1日現在で地方公営企業の経営基盤強化への取組状況について調査し、その結果を取りまとめました。
「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針の策定について」(平成17年3月29日付け総務事務次官通知)・「地方公営企業の経営の総点検について」(平成16年4月13日付け総務省自治財政局公営企業課長通知)をご参照ください。
調査項目

 以下の8項目についての調査を実施
 1) 経営基盤強化のための計画策定及び情報提供の状況
 2) 民営化・民間譲渡の実施状況
 3) 指定管理者制度の導入状況
 4) アウトソーシング(外部委託)の実施状況
 5) PFI(民間資金等活用事業)の導入状況
 6) 地方独立行政法人制度の導入状況
 7) 業績評価手法の導入状況
 8) 新たな会計手法の導入状況


調査結果のポイント

<計画性・透明性の高い企業経営の進展>
  • 経営の目標等の計画を策定している団体の割合
    • 都道府県:16年度78.6%→17年度95.7%
    • 政令指定都市:16年度83.3%→17年度100%

  • 経営の目標や経営内容等を情報提供している団体の割合
    • 都道府県16年度74.3%→17年度95.7%
    • 政令指定都市16年度83.3%→17年度100%

<地方公営企業の民営化の進展>
  • 過去5年間(平成13年4月〜平成17年11月)の民営化事例
    • 90事業(うち16年度30事業、17年(11月まで)30事業)
    •  主な事業は、介護サービス事業(40事業)、ガス事業(18事業)、交通事業、病院事業(各9事業) 等

  • さらに、17年度中に29事業の民営化が実施される見込み。

<指定管理者制度等の導入状況>
  • 地方公営企業における指定管理者制度の導入済・検討中の事業
    • 16年度137事業→17年度757事業
    • 17年度の事業数のうち導入済は77事業
       主な事業は、介護サービス事業(25事業)、観光施設事業・その他事業(22事業) 等

  • PFI事業の導入済の事業、地方独立行政法人の検討中の事業
    • 導入済のPFI事業:16年度11事業→17年度22事業
       導入済の主な事業は、下水道事業(5事業)、病院事業(4事業)、水道事業(3事業) 等

    • 検討中の地方独立行政法人:16年度4事業→17年度88事業
       検討中の主な事業は、水道事業(38事業)、病院事業(32事業)、工業用水道事業(12事業)


(連絡先)
 自治財政局公営企業課
 担当 財政制度調整官
経営管理係長
総務事務官
 山野  謙
 白水 伸英
 高木  響
 電 話 03−5253−5634
 FAX 03−5253−5636
 電子メール h.takagi@soumu.go.jp


地方公営企業の経営基盤強化への取組状況


1 対象、調査時点
 ○ 調査対象事業 地方公営企業決算状況調査の対象となる事業
 ○ 調査時点 平成17年11月1日現在


2 調査結果
 今回の調査結果は、以下のとおりです。(全事業数:都道府県・政令市等480事業、市町村等7,240事業)

(1)経営基盤強化のための計画の策定状況
 地方公営企業のいずれかの事業において、中期的な期間で達成すべき建設投資、財務、業務、目標等の内容を位置づけた経営計画を策定している団体の割合は、都道府県で95.7%、政令指定都市で100%となっています。
 また、地方公営企業法で定める七事業(水道事業(簡易水道事業を除く。)、工業用水道事業、軌道事業、自動車運送事業、鉄道事業、電気事業、ガス事業のこと。以下「法定七事業」という。)において、経営計画を策定している団体は、510団体のうち331団体、64.9%となっています(都道府県・政令市50団体、人口5万人以上の都市281団体)。策定を検討している団体は109団体(都道府県・政令市11団体、人口5万人以上の都市98団体)となっています。

経営計画の策定状況


(2)情報提供の実施状況
 地方公営企業のいずれかの事業において、経営目標や経営内容等を住民が容易に理解しうる情報提供を行っている団体の割合は、都道府県で95.7%、政令指定都市で100%となっています。
 また、法定七事業における実施状況は、510団体のうち237団体、46.5%となっています(都道府県・政令市51団体、人口5万人以上の都市186団体)。情報提供を検討している団体は163団体(都道府県・政令市10団体、人口5万人以上の都市153団体)となっています。

情報提供の実施状況


(3)民営化・民間譲渡の実施状況
 地方公営企業における過去5年間(平成13年4月1日〜平成1711月1日)の民営化・民間譲渡の実施事業数は90事業(都道府県・政令市等14事業、市町村等76事業)であり、そのうち平成16年度以降は60事業(都道府県・政令市等9事業、市町村等51事業)と、それ以前に比べ大幅に増加しています。
 譲渡された主な事業は、介護サービス事業(40事業)、ガス事業(18事業)、交通事業、病院事業(各9事業)となっています。
平成13年度以降の民営化、民間譲渡の状況


 民営化・民間譲渡を実施した主な事例は、以下のとおりです。
団体名 事業名 譲渡の規模 譲渡時期 譲渡価格 譲渡に伴う財政節減効果
福島県 電気事業 事業の全部を譲渡 平成17年3月 約29.5億円 約5億円
長野県 ガス事業 事業の全部を譲渡 平成17年4月 約121億円 約44億円
仙台市 交通事業
(バス)
競合路線の一部(5路線20系統)を譲渡 平成14年10月
平成16年3月
無償(競合路線の譲渡) 約3億円
岡山県
岡山市
病院事業 事業の一部を譲渡 平成17年4月 約1.4億円 約9,300万円
愛知県
春日町
介護サービス事業 事業の全部を譲渡 平成16年4月 無償 約1,100万円
(注)譲渡に伴う財政節減効果は、費用を平年度化した場合の単年度平均概算額

 なお、このほかに今年度中に民営化・民間譲渡を実施する見込みの事業は29事業(都道府県・政令市等7事業、市町村等22事業)、将来的な民営化・民間譲渡を検討している事業は146事業(都道府県・政令市等20事業、市町村等126事業)となっています。

(4)指定管理者制度の導入状況
 地方公営企業における公の施設の指定管理者制度の導入事業数は77事業(都道府県・政令市等9事業、市町村等68事業)、導入を検討している事業数は680事業(都道府県・政令市等106事業、市町村等574事業)であり、昨年度の導入済23事業(都道府県・政令市等1事業、市町村等22事業)、検討中114事業(都道府県・政令市等17事業、市町村等97事業)から大幅な伸びを示しています。
指定管理者制度の導入状況


 導入された主な事業は、介護サービス事業(25事業)、観光施設事業・その他事業(22事業)、駐車場事業(14事業)となっています。

指定管理者制度の導入済事業


 指定管理者制度を導入した主な事例は、以下のとおりです。
団体名 事業名 導入時期 代行制、利用料金制の別 指定管理者の性格 指定期間 導入に伴う財政節減効果
福岡県 病院事業 平成17年4月 代行制 民間事業者 10年 約2億円
川崎市 下水道事業 平成17年4月 代行制 民間事業者 3年 約1,500万円
神戸市 駐車場事業 平成17年4月 代行制 公社・第三セクター2社、
民間事業者3社
4年 約8,400万円
千葉県
佐原市
介護サービス事業 平成17年4月 利用料金制 民間事業者 3年 約7,000万円
山梨県
山梨市
観光施設事業 平成16年4月 利用料金制 NPO法人 3年 約1,500万円
(注)導入に伴う財政節減効果は、費用を平年度化した場合の単年度平均概算額


(5)アウトソーシング(外部委託)の実施状況
 都道府県・政令市等におけるアウトソーシング(外部委託)の実施率(何らかのアウトソーシングを実施している団体数の割合)は、以下の各事業ともほぼ100%に近く、市町村等においても高い割合を示しています。

都道府県・政令市等

市町村等


(6)PFI(民間資金等活用事業)の導入状況
 地方公営企業におけるPFI事業(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律に基づいた公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う事業)の導入状況は22事業(都道府県・政令市等14事業、市町村等8事業)で、前年度の11事業(都道府県・政令市等6事業、市町村等5事業)と比べて増加しています。

PFIの導入状況

 導入された主な事業は、下水道事業(5事業)、病院事業(4事業)、水道事業(3事業)となっています。
PFI事業の導入済事業


(7)地方独立行政法人制度の導入状況
 地方独立行政法人法に基づいて設立された公営企業型の地方独立行政法人は、市町村等で1事業あります。なお、導入を検討している事業は88事業(都道府県・政令市等24事業、市町村等64事業)で、前年度の4事業(都道府県・政令市等1事業、市町村等3事業)に比べて大幅に増加しています。
地方独立行政法人の検討状況

 検討している主な事業は、水道事業(38事業)、病院事業(32事業)、工業用水道事業(12事業)となっています。

地方独立行政法人化を検討している事業


(8)業績評価手法の導入状況
  地方公営企業における行政経営評価手法(ベンチマーク、顧客満足度(CS)調査、バランス・スコアカード等)を導入している事業は540事業(都道府県・政令市等182事業、市町村等358事業)で、導入を検討している事業は256事業(都道府県・政令市等62事業、市町村等194事業)となっています。


(9)新たな会計手法の導入状況
  地方公営企業法令上作成が義務付けられている財務諸表以外の会計手法のうち、環境会計を導入している事業は56事業(都道府県・政令市等50事業、市町村等6事業)です。また、キャッシュ・フロー計算書を導入している事業は77事業(都道府県・政令市等32事業、市町村等45事業)で、前年度の63事業(都道府県・政令市等21事業、市町村等42事業)に比べて増加しています。

都道府県・政令市等におけるキャッシュ・フロー計算書の導入状況


※団体区分の解説
都道府県等:都道府県及び都道府県が加入する企業団・一部事務組合のこと
政令市等:政令指定都市及び政令指定都市が加入する企業団・一部事務組合のこと
市町村等:市区町村(政令市を除く。以下同じ)及び市区町村が加入する企業団・一部事務組合のこと
なお、都道府県及び政令指定都市が加入する企業団・一部事務組合については、都道府県等に含めている

※用語の解説
民営化:政府部門の出資により設立された法人に事務・事業を引き継がせ、政府部門の出資分を民間に譲渡すること
民間譲渡:事務・事業を民間事業者に譲渡すること
ベンチマーク:特定の目標を設定し、目標値と実績値を比較することにより、その目標を達成するための手段及び達成度について評価する手法
顧客満足度調査:顧客の満足度を調査し、その満足度が向上するような施策を実施しようとする手法
バランス・スコアカード:主に、1)顧客の視点、2)財務の視点、3)内部プロセスの視点、4)学習と成長の視点の4つの視点から、目標・指標の設定及び評価を行う手法
環境会計:企業等の環境保全への取組みを定量的に評価する手法
キャッシュ・フロー計算書:損益計算書や貸借対照表では表されない資金の流れを把握することができる財務諸表



<参考>


(1)経営基盤強化のための計画の策定状況
 中期的な期間で達成すべき建設投資、財務、業務等の内容を位置づけた経営計画の策定状況について、都道府県、政令市、人口5万人以上の都市の三区分における状況は以下のとおりです。

経営計画の策定状況(都道府県) 経営計画の策定状況(政令市)
経営計画の策定状況(人口5万人以上の都市)  


(2)情報提供の実施状況
 経営目標や経営内容等を住民が容易に理解しうる情報提供の状況について、都道府県、政令市、人口5万人以上の都市の三区分における状況は以下のとおりです。

情報提供の実施状況(都道府県) 情報提供の実施状況(政令市)
情報提供の実施状況(人口5万人以上の都市)  


(3)指定管理者制度の導入状況
 指定管理者制度を導入した事業のうち、代行制(料金を地方公営企業が収入として収受するもの)のものは38事業(都道府県・政令市等7事業、市町村等31事業)、利用料金制(料金を指定管理者が収入として収受するもの)のものは39事業(都道府県・政令市等2事業、市町村等37事業)となっています。

導入された指定管理者制度の類型


 また、導入された事業のうち、指定管理者が自治体出資のない民間事業者である事業は65事業(都道府県・政令市等8事業、市町村等57事業)となっております。
指定管理者の性格
※1つの事業中で自治体出資のない民間事業者及び自治体出資のある民間事業者等の両方を指定管理者としている事例があるため、内訳の計と合計が合わない。


(4)アウトソーシングの実施状況

 事業ごとのアウトソーシング実施状況は、以下のとおりです。(以下では、実施率=(当該業務をアウトソーシングしている団体数)/(当該業務を実施している団体数)とするほか、「都道府県等」には政令市等を含みます。)


○水道事業(用水供給)
グラフ:水道事業(用水供給)

 多くの業務について、実施率が80%を超えています。配水管の漏水防止調査業務については、都道府県・政令市等で60%程度、市町村等で20%程度に留まっていますが、これは日常的な漏水防止調査が限定されており、業務負担が小さく委託化がなじみにくいものであることによるものと考えられます。


○水道事業(末端供給)
グラフ:水道事業(末端供給)

 多くの業務について、実施率が都道府県等で80%、市町村等で60%を超えています。給水業務の設計審査等については、他業務と比べて委託化が進んでいませんが、設計ミスによる長期的な給水停止等の影響にかんがみ、給水の安全性を担保する観点から直営で実施する例が多いものと考えられます。


○簡易水道事業
グラフ:簡易水道事業

 都道府県等では多くの業務について実施率が80%超えています。市町村等では実施率が40%を下回っている業務が目立ちますが、簡易水道事業は小規模な事業体が多いために業務の負担が小さく、委託を実施しても財政節減効果が現れにくい場合が多いことが要因と考えられます。


○工業用水道事業
グラフ:工業用水道事業

 多くの業務について、実施率が都道府県等で80%、市町村等で60%を超えています。検針業務については、都道府県等、市町村等ともに実施率が30%程度ですが、これは工業用水道の供給先が比較的少数であり検針にかかる労力が小さいため、委託を実施しても財政節減効果が現れにくい場合が多いことが要因と考えられます。


○交通事業(地下鉄)
グラフ:交通事業(地下鉄)

 ほとんどの業務について、実施率が100%となっています。


○交通事業(バス)
グラフ:交通事業(バス)

 運転業務、運行管理業務については、実施率が都道府県等、市町村等ともに50%を下回っています。都道府県等では委託ではなく嘱託職員(非常勤職員)の活用によりコスト削減に取り組んでいること、市町村等では適当な委託先事業者が存在しない等が理由と考えられます。


○電気事業(水力)
グラフ:電気事業(水力)

 ダム運転管理業務、発電所運転管理業務、発電所巡視点検業務については、実施率が50%を下回っています。これは、当該業務が技術力の低下が許されない中枢業務であることや、直営で実施した方が効率的であること等の理由によるものと考えられます。


○ガス事業
グラフ:ガス事業

 多くの業務について、実施率が80%を超えています。供給施設運転管理業務の実施率が40%程度に留まっていますが、これは、当該業務が技術力の低下が許されない中枢業務であるため、委託化がなじまないと認識している事業が多い要因と考えられます。


○病院事業
グラフ:病院事業

 ほとんどの業務について、実施率が80%超となっています。看護助手業務(クラーク業務)については市町村等の実施率が60%弱と、他業務に比べ低くなっていますが、これは当該業務を看護補助者等の常勤職員で対応している例が多いことが理由と考えられます。


○下水道事業
グラフ:下水道事業

 ほとんどの業務について、実施率が80%超となっています。