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地域力創造に関する有識者会議(第1回)

日時

平成20年11月4日(火) 10時00分〜12時00分

場所

三田共用会議所第3特別会議室

議事次第

  1. 開会
  2. 総務大臣挨拶
  3. 座長挨拶
  4. 議事
    • 事務局説明
    • 委員間のフリートーキング
    • 今後の進め方 等
  5. 閉会

配布資料

議事録

【市橋地域政策課長】  おはようございます。定刻まで若干時間がございますが、皆様おそろいでございますので、ただいまから第1回目の地域力創造有識者会議を始めさせていただきたいと思います。
 私は地域政策課長の市橋と申します。しばらくの間進行を務めさせていただきます。
 まず初めに、会議の開催に当たりまして、この会議の主催者であります総務大臣よりごあいさつ申し上げるべきところではございますが、公務でおくれておりますので、到着次第ごあいさつを申し上げたいと存じます。
 まずは、この会議の座長であります月尾座長にごあいさついただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【月尾座長】  事務次官がお見えになっているので、一言御願いします。

【瀧野事務次官】  総務省の事務次官の瀧野でございます。皆様、おはようございます。
 私どもは前々から、地域の活力というものをどうやって上げていくかということを省の中の全体の課題として取り組んできておったわけでございますが、麻生政権になりまして、地域の底力というものをさらに上げていくべきだと総理もおっしゃっておりまして、何とか国全体の方向の中で地域の活力というものを押し上げていきたいという問題意識をずっと持っておったわけでございます。

 そういう中で今回月尾先生を座長といたしまして、地域力創造と、あまり耳なれない言葉でありますけれども、そういう命題の中で、ぜひ皆様方にご意見を拝聴したいと考えているところでございます。
 非常にお忙しい中、お集まりいただいたことを、まずもって感謝申し上げますが、どうぞその意のあるところを酌んでいただきまして、後ほど大臣も駆けつけると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【市橋地域政策課長】  それでは月尾座長、お願いいたします。

【月尾座長】  おはようございます。
 私は週末のかなりの日数は全国各地の大都市ではないところへ行っておりますが、公共事業などに過度に依存していた地域には衰退している場所が多いのが実態です。その一方、大変活気のある地域もあります。先週末は鶴岡にある庄内映画村に行ってきましたが、庄内映画村を運営している宇生社長が有能な経営者で、今年は5本ぐらいの映画を地域で撮影しており、地域の雇用効果や経済効果が大きく元気になっております。
 そのような地域の特徴は、アイデアがあるとともに意欲のあるリーダーが存在しているということです。この会議でも、委員の皆様は各地の事例をご存じだと思いますので、それらの事例を参考にしながら、どうしたら地域を活力ある状態にする人が登場するかとか、地域を元気にする資源をいかに発掘できるかというようなことを議論していければいいと思っています。

【市橋地域政策課長】  ありがとうございました。
 それでは私から、地域力創造有識者会議委員の皆様のご紹介をしたいと思います。
 ただいまごあいさついただきました座長をお願いいたしております東京大学名誉教授の月尾様でございます。
 それから、国連大学高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット所長のあん・まくどなるど様でございます。

【まくどなるど委員】  どうも、あん・まくどなるどです。よろしくお願いいたします。

【市橋地域政策課長】  慶應義塾大学総合政策学部准教授の飯盛様でございます。

【飯盛委員】  飯盛でございます。どうぞよろしくお願いします。

【市橋地域政策課長】  特定非営利活動法人東京・多摩リサイクル市民連邦事務局長の江尻様でございます。

【江尻委員】  江尻でございます。よろしくお願いいたします。

【市橋地域政策課長】  明治大学農学部教授の小田切様でございます。

【小田切委員】  明治大学の小田切でございます。よろしくお願いいたします。

【市橋地域政策課長】  特定非営利法人かぞ市民ネット理事長の杉沢様でございます。

【杉沢委員】  杉沢でございます。どうぞよろしくお願いします。

【市橋地域政策課長】  NHK「ご近所の底力」チーフ・プロデューサーの堂垣様でございます。

【堂垣委員】  堂垣です。よろしくお願いします。

【市橋地域政策課長】  法政大学法学部教授の名和田様でございます。

【名和田委員】  名和田です。どうぞよろしくお願いします。

【市橋地域政策課長】  東京大学先端科学技術研究センター教授の西村様でございます。

【西村委員】  西村です。よろしくお願いします。

【市橋地域政策課長】  なお、本日はご欠席でございますが、関西学院大学大学院経済学研究科・人間福祉学部教授の小西様にもご参加いただいているところでございます。
 以上10名の委員の皆様でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 なお、総務省側のメンバーはお手元の座席表のとおりでございまして、瀧野事務次官、椎川地域力創造審議官以下、地域力創造グループの課室長が出席しております。よろしくお願いを申し上げます。
 それでは、ここからの議事につきましては月尾座長にお願い申し上げます。

【月尾座長】  お手元に議事次第がありますが、今日は1回目ということなので、この会議がどのような目的で、またどのような経緯で始まったかということをご説明いただいて、その後、皆様方に自由にご議論いただければと思います。

【市橋地域政策課長】  それでは資料1に基づきまして、私からこの会議設置の経緯、それから総務省の主な地域力創造関連施策等々につきまして、簡単にご説明を申し上げたいと思います。
 まず、資料の2ページをごらんいただきたいと思います。私どもは今年の7月4日に組織改正を行いまして、地域力創造審議官を新設し、そのもとに地域力創造グループという組織を設けました。ここに書いてございます2課4室から成る組織でございます。
 あわせまして地域力創造に総務省挙げて取り組むということで、右にございますように総務大臣を本部長といたします「地域力創造本部 定住自立圏構想推進のために」という組織を立ち上げまして、省内全局長からなります推進組織をつくったところでございます。
 現在地域力に関連する施策はどのような取り組みを行っているかというのが3ページでございます。地域を取り巻く環境は大きく変わってきてございます。本格的な人口減少社会の到来、国・地方を通じました厳しい財政状況、地域間格差の拡大、あるいは地域コミュニティーの脆弱化等々の変化を踏まえまして、地方自治体・住民・企業等の協働によりまして、地域力を高める取り組みを支援する施策を一体的に展開しようということで、地域力創造グループを設置したところでございます。
 現在展開しております主な施策といたしましては、右側1から5にあるものでございまして、後ほどまた別途の資料でご説明申し上げますが、定住自立圏構想、これは中心市と周辺市町村の協定を締結いたしまして、連携することによりまして生活に必要な機能を確保しようとすることを目的とするものでございますが、この構想を推進しております。また、前向きに地域課題に取り組む地方自治体に対しましては地方交付税等で支援を行います、頑張る地方応援プログラム。さらには、地域の人材を活性化するための取り組み、過疎地等の条件不利地域の振興、地域コミュニティーの再生、地域間交流の促進等々の施策に現在取り組んでいるところでございます。
 このような状況でございますが、今後さらに総務省といたしまして地域力を高めるということにどのように取り組んでいったらいいのかということで、大所高所からご議論いただきたいということで、今回有識者会議の設置をすることとなったところでございます。
 4ページにその資料がございます。ここの検討内容にございますように、「地域力」、「地域力を高めるための施策」とは何なのか、今後の地域力創造施策の方向性あるいは各省連携のあり方等々につきまして、皆様から大所高所からのご議論をいただきたいというものでございまして、スケジュール的には年度内に今回を含めまして3回から4回、できれば3月あたりに一定の方向性みたいなものが出れば、また、21年度、来年度も引き続きお願いしたいと考えているところでございます。
 以上が会議設置、委員をお願いするに至りました経緯でございます。
 5ページ以下で、総務省のこれまでの、あるいは現在の地域力創造関連施策につきまして、簡単にご説明申し上げます。6ページ、7ページ、これは過去に行った施策でございます。
 6ページでございますが、昭和63年から平成元年まで行いました、いわゆる「ふるさと創生1億円事業」というものでございます。概要にございますように、地方が知恵を出し、中央が支援をするという、これまでとは異なった発想に基づきまして、全国の市町村に対して一律交付税で1億円を措置いたしまして、みずから考えた地域づくりを展開してもらおうという施策でございました。
 主に実施された施策といたしましては、下にございますように、健康づくり、スポーツレクリエーション関連施設の整備でございますとか、あるいは快適な環境整備、文化会館の整備等々、それぞれの地域で考えた施策が展開されたところでございます。使い道についてはいろいろこのときも議論があったわけでございますけれども、みずからの地域のあり方を見詰め直すという一つの契機にはなったのではないかと考えているところでございます。
 それと並行いたしまして、7ページでございますが、地域の活性化というものをハードの整備面から積極的に支援していこうということで、昭和63年に「ふるさとづくり特別対策事業」というものを創設したところでございます。これは施設整備の際に地方債を発行いたします。借金でございますが、その返済につきまして手厚く財源手当をするという手法をとっているものでございまして、下の主な事業にございますように、体育館、総合運動施設、文化センター、コンサートホール等々の施設整備が図られたところでございます。
 一方で地方を取り巻く財政環境が厳しくなる中で、「ハコ物」批判というものも起こってきたところでございまして、この制度自体平成13年度までの措置ということで、13年度限りでこの措置は廃止されております。
 8ページでございますが、それを引き継いだ現在も継続している施策といたしましては、地域活性化事業債という、同じような仕組みでございますけれども、概要の最後の丸にございますように、この事業におきましては「ハコ物」は原則として対象外にするという取り扱いになってございまして、現在置かれている重要な政策課題、循環型社会形成、都市再生、少子高齢化対策、情報通信基盤整備、あるいは科学技術振興等々に取り組む地方公共団体の取り組みに対して支援をするという事業を展開しているところでございます。
 9ページでございますが、以下現在の、先ほどもございましたが地域力創造グループの重点的な取り組み施策でございます。まず、定住自立圏構想の推進でございますが、上にございますように今後30年を見渡した場合に、三大都市圏そして地方圏、いずれも大幅な人口減少になるという非常に厳しい状況にあるという中で、中心市と周辺市町村が相互に連携いたしまして、圏域全体で役割を分担しながら生活機能を整備し、圏域全体の活性化を図るという取り組みでございます。中心市は必要な都市機能を集約的に整備する。周辺市町村は、環境、地域コミュニティー、食料生産、歴史・文化等の役割を果たしていただく。中心市と周辺市町村が協定を結びまして、これによりまして相互の連携を図っていく。また、その間には権利・負担関係も明確化していくというものでございまして、例えば中心市に総合病院を整備すると、周辺市町村の一般診療所に対しまして医師の派遣を行う等々で、連携しながら生活に必要な機能を確保していこうという構想でございます。
 この構想につきましては、10ページにございますが今年の5月に学習院大学の佐々木先生を座長といたします研究会で報告書を出したところでございまして、総務省のみならず各府省が連携してこの構想を推進していくんだという位置づけがなされているところでございます。6月の骨太2008、そして8月下旬に決定いたしました緊急総合対策におきましても、政府を挙げて推進するという位置づけがなされているところでございます。
 現在の取り組みといたしましては、先行実施団体を募集いたしまして、10月末に中心市20市(18圏域)などを決定したところでございまして、これはまだ構想の段階で、年度末を目途に制度の骨格を固めまして、総務省としての支援措置あるいは各省の支援措置を取りまとめていく。先行実施団体と一緒になって検討しながら、制度の内容を詰めていくというような状況にあるものでございます。
 11ページが、先行実施団体の状況でございます。
 次に、12ページでございますが、頑張る地方応援プログラム。これは地方独自のプロジェクトをみずから考え前向きに取り組む地方自治体に対しまして、地方交付税等の支援措置を講ずるものでございまして、プロジェクトに対する支援といたしましては、市町村への交付税措置で特別交付税単年度3,000万掛ける3年間ということで、地方団体のプロジェクト例としては、中ほどにございますが具体的な成果目標を掲げて住民に公表していただくということになってございまして、地場産品の発掘・ブランド化、少子化対策、観光振興・交流、環境保全等々の取り組みがなされているところでございます。あわせまして、右にございますが、地方交付税の配分に当たりまして頑張りの成果を反映するということで、全国平均以上に、例えば農業出荷額が向上した団体等々に、その頑張りに着目いたしまして交付税を配分するというような取り組みも行っているところでございます。
 13ページは、地域を支える人材の育成・活性化に対する支援でございます。1つ目は、市町村のニーズに応じまして総務省職員を小規模の市町村にまで派遣するということで、20年度は10名を派遣しているところでございます。それから自治体で活躍している職員、民間専門家の方を地域人材ネットに登録いたしまして、他市町村に紹介を行っております。さらにモデル事業といたしまして、人材ネットに登録された人材を、地域力創造アドバイザーとして派遣する、あるいは市町村から先進市町村への研修派遣、これらの取り組みに対しましてモデル的に国費で支援も行っているところでございます。
 14ページが過疎対策でございます。条件不利地域の対策としてのメーンでございまして、人口減少の著しい過疎地域への対策ということで、この対策は昭和45年以来4次にわたり議員立法として過疎法が制定されておりまして、その期限切れが来年度末だということで、過疎地域にはまだ多くの課題が残されているということから、現在有識者からなります過疎問題懇談会等におきまして、時代に対応した新たな過疎対策について検討を行っているところでございます。
 15ページは交流の関係でございまして、地域間交流の促進の一つといたしまして現在「子ども農山漁村交流プロジェクト」を推進してございます。これは5年後に全国の小学校におきまして、1学年(約120万人)規模の生徒を農村に滞在させる、宿泊体験活動を経験させるというプロジェクトでございまして、このプロジェクトを、農水省、文部科学省、そして総務省が協力しながら、連携しながら、現在推進しているところでございます。総務省の役割といたしましては、市町村、都道府県等におきます体制づくりに対する支援、あるいは情報提供、機運の醸成等々の役割を担っているところでございます。
 16ページが、都市から地方への移住・交流の促進でございまして、例えば空き家活用等によるUターン者の受け入れに対する支援でございますとか、右のほうの真ん中にございます移住・交流促進に関する調査ということで、モニターツアー等を通じました実証実験を行いまして、移住・交流受け入れシステムを構築するための調査も行っているところでございます。さらには、移住・交流推進機構(JOIN)というものがございまして、企業や自治体が中心となりまして全国的な移住・交流の推進組織が設置されておりますが、これとの連携も図りながら移住・交流の促進を図っているところでございます。
 17ページは最後でございますが、「地域づくり総務大臣表彰」ということで、地域づくりに一生懸命取り組んでいる団体、個人の方の表彰を行っておりまして、これは昭和58年度から継続的に実施しているものでございます。
 以上が総務省の取り組みの説明でございます。
 18ページ以下は各省庁・地方公共団体に関連する取り組みでございます。各省庁それぞれ地域の活性化関係の施策を展開しているところでございますが、19ページにございます政府として地域の再生に向けた司令塔としての役割を、内閣官房の地域活性化統合本部が担ってございまして、ここが総合的、一体的な支援を行うという位置づけになっているところでございます。
 20ページに具体的な体制図が書いてございます。今までありました4つの本部を統合いたしまして、19年10月より地域活性化統合本部、それから統合事務局が設けられておりまして、右にございますように内閣官房の統合事務局は108名の体制で、ブロック別の体制をしきながら地域の取り組みを支援する体制になっているところでございます。この中で、今年度より「地域の元気再生事業」、地域主体のさまざま取り組みを立ち上がりから支援するような取り組み、あるいは「環境モデル都市」の選定等々の取り組みが展開されているところでございます。
 21ページ以下は、各省・各自治体の取り組みの中で、最近地域力という言葉を使った取り組みが出てきております。議論のご参考までにそれを紹介したものでございまして、最初は法律レベルで地域力という言葉を用いた初めての例ではないかと思いますが、株式会社地域力再生機構法案というものがございます。これは現在継続審議中の法案となってございます。ここにおきましては地域力というものを地域における総合的な経済力と、経済力の視点からとらえているものでございます。
 22ページは農水省のふるさと農山漁村地域力発掘支援モデル事業でございまして、概要にございますように市町村、地域住民等で構成される協議会が行います、右下の活動例にあるような取り組みに対しまして、毎年200万円5年間という形で支援するものでございまして、ここにおきましては地域力というものを、農山漁村にある有形無形の地域資源と、それを活用して地域づくりを行う人材、これら2つを地域力としてとらえているところでございます。
 23ページは経済産業省の地域力連携拠点事業でございます。これは地域で、商工会、金融機関、NPO、農協等幅広い支援機関を連携いたしまして、きめ細かな中小企業支援を行っていこうというものでございまして、明確に地域力という定義はございませんが、日本の強みである各機関のつながり力というようなことで地域力という言葉が使われているようでございます。
 以下、自治体の取り組みでございます。
 北海道の地域力ステップアップ事業。ここでは地域力の定義を、行政、住民、NPO、企業など地域の多様な主体が協力し合いながら、身近な課題を解決したり、活性化を図るなど、地域の価値を高める力と定義しているところでございます。下に地域再生チャレンジ交付金とございますように、市町村が住民と協働しながら行う地域再生の意欲的な取り組みに対しまして助成事業も展開しているところでございます。
 25ページは京都府の取り組みでございまして、この取り組みにおきましても、地域力を府民がお互いの信頼ときずなをもとにして協働して、自分たちの周囲の地域社会が直面している諸課題の解決に取り組んでいく力と定義してございまして、同じく地域力再生プロジェクト交付金ということで、住民主体の活動に対しましての助成を展開しているところでございます。
 26ページは島根県の例でございます。これは公民館活動としてとらえてございますが、地域力を、地域の課題を掘り下げ、その解決に向けた学習・実践活動に地域住民を結びつけていく力だと。すなわち自治・自立の理念に基づく地域の底力だということで地域力を用いているようでございます。
 最後のページは、私どもの許可しております財団法人地域活性化センターの施策の概要でございます。まちづくり、地域産業おこし等、地域社会の活性化のための諸活動を支援している団体といたしまして地域活性化センターというものもあるということで、ご紹介までにつけているものでございます。
 以上で資料の説明を終わらせていただきます。

【月尾座長】  ありがとうございました。ご説明いただいたように、地域力創造という考え方、この会議がどのような経緯でできたか、実際どのようなことを目指しているかということをご理解いただけたと思います。
 今日は第1回目なので、委員の皆様から、地域力ということについてどのようなお考えがあるかということを5分ずつぐらい自由にお話しいただいて、その後討論したいと思います。ただし、大臣が途中でお見えになる可能性もあり、そのときは恐縮ですが中断していただくかもわかりませんが、ご協力をお願いします。
 それでは、あん・まくどなるど委員からお願いします。

【まくどなるど委員】  多少支離滅裂の5分になるかと思いますが、よろしくお願いいたします。
 私は日本に来て滞在期間は延べで20年ぐらいなんですけど、その中の十三、四年ぐらいは農村で暮らしてきました。農村・漁村研究家として北海道から沖縄まで、各都道府県には最低4回行ったりしていて、また漁村研究プロジェクトで、1998年から北海道から九州までの海岸沿いを8割まで回ってきたんですけど、さまざまな日本の農村・漁村を中心にして回ってきたり、また暮らしてきたんですけど、また離島も行ったりしてきましたが、やっぱり常々感じているのが、マニュアルどおりに生きていこうとしているところほど行き詰まっているような感じで、言うまでもないことであろうが、やっぱり前例のないところで自分たちで前例をつくろうというのがあって、また柔軟性というか、自分たちが行き詰まってきたときにそれを行き詰まったと意識せずにどうやって方向転換していけばいいのかとか、また、自分たちの内側のグループを越えて、国境を越えるというボーダーレス地域というのが、そこで自分たちと同じ仕事をしていなくてもさまざまな力を持っている人たちと何とかしようとしているのが、すごく力を感じたりはしているんですけど、最後にちょっと具体的な例を紹介させていただきたいと思います。
 私は2001年から今年の春までは宮城県の大崎市松山地区、最初2001年に引っ越ししたときは松山町というところだったんですけど、7,000人ぐらいの町で大崎平野に位置している米どころではあるんですけど、そこで一ノ蔵酒造という酒会社が地元にあって、彼らはもっと地元の農業者といろいろなプロジェクトを組んで地産地消を生産者同士でやっていきましょうよということで酒米研究会ができていて、地元の彼らがいろいろやり始めたんですけど、その中のすごくおもしろい活動は、環境保全型農業推進で農林水産省がやっているエコファーマー認証制度というところで、生産者同士が一緒になってそういう地域づくり活動をしていったりするのはすごくおもしろいんじゃないかなと思って。また、一ノ蔵が、その後合併があったからということでもないんですけど、隣に田尻というところがあって、あそこでラムサール条約に登録しているサイトがあって、その周辺で「ふゆみずたんぼ」という活動が年々普及していっている中で、じゃ、そこの「ふゆみずたんぼ」でできる米で限定したお酒をつくっていきましょうということで、その中で生産者同士が新たなものをつくっていくと同時に、これは自然環境持続型農業を目指していきながらきちんとした強い柱のある地域づくりをともにつくっていこうということで、実は先週は韓国で国連のラムサール条約会議があって一緒に出かけたりしていて、それは宮城県、石川県とちょっと今連絡を取り合ったりしていて、県の境を越えて、また国の境を越えて、アジアの諸国と生物多様性を重視する田んぼづくりをともにやっていこう。だから何か自分たちの身内の境をつぶして、そこからじわじわ越えていこうとすればするほど、それは非常に思わぬような変化があったりして、地域開発は国内とか県内だけではなくてグローバルまでつながっていける部分もあるんじゃないかなと日ごろ感じたりしています。
 とりあえずそういう事例で、私の話を終わらせていただきます。

【月尾座長】  どうもありがとうございました。日本中を回っておられるので、大変参考になるお話をいただきました。
 それでは飯盛委員、お願いします。

【飯盛委員】  慶應義塾大学の飯盛と申します。このような「飯盛」という字を書きまして「いさがい」と読みます。佐賀市の地名です。
 私は今、研究、教育、あと地域づくりの実践の相乗効果をもたらすための活動を大学でしております。具体的に言いますと、地域情報化と呼ばれる情報技術を活用したまちづくり活動を実践しながら、それを研究して、またそこで得たいろいろな事例を教材にしながら授業をやっているところです。
 地域力というのは地域の問題を自分たちで発見して解決していける能力と資料の中にも定義がありましたけども、私もそのように考えております。地域力を創造するためには何が必要かというと、私は第一に人づくりが大事ではないかと考えております。どのような人かというと、地域の問題を発見して解決できる人ということになります。そのためには主体性をどうやってはぐくんでいくか、また、いろいろな人との協働が必要ですから、つながる力をどうやってつけていくかということが大事だと思っております。
 そういうことを念頭に置きまして、私が今実際にまちづくりのプロジェクト、あと研究、教育としてやっていることを、2つお話をさせていただきます。
 一つは福岡県東峰村という過疎の地域におきまして、小学生の子供たちに自分たちで村の魅力を考えてもらって、それを映像に撮ってもらうということを、小学校に協力してもらってやっています。その映像の教材を子供たちが英語化しまして、ALTの英語の先生にお世話になって、またうちの博士課程などの学生が支援をして英語化をしまして、それをネットにアップしています。その教材を今海外の大学が日本語の教材とか日本文化を学ぶ教材として使っていまして、小学生たちは大変な誇りに思っています。私どもとしては、東京の小学生よりも先進的なことをやってもらいたいということでやっております。
 そうしましたら、小石原焼きという焼き物の名産があるんですが、そこはどうやって産業活性化を図っていくべきかということを議論しているわけですけれども、さっきまくどなるど委員もおっしゃいましたけれども、海外に対する意識、意欲も少しずつでも芽生えるように努力したいと思います。このような活動を通じて、私は子供たちが地域に対して関心を持ってくれるということが、まず地域づくりには大事な要素かなと思っております。
 もう一つは、私は今大学の教員でありながらNPOの経営もやっております。NPO鳳雛塾という地域の人材育成の塾を経営しております。これで主にやっておりますのは、小学生に対して商売実習をやっています。地域独自の教材をつくりまして、それをもとにビジネススクールのようにディスカッション式の教育を行いまして、子供たちが自分たちで事業計画をつくりまして、地元銀行にほんとうにお金を借りに行くんです。商店街の空き店舗で、小学5年生ですけども子供たちが販売実習をして、売り上げと利益を競うということをやっています。その後利益が上がっていたら、それを学校に寄附しながら、それをきちんと会計の監査をいたしまして、子供たちに地域のことを勉強してもらうとともに自分で考えて行動できる能力を育成するという活動をやっております。
 このようなさっきお話しした東峰村の話と、あと、佐賀市のNPO鳳雛塾の活動をやって気がつきましたことは、こういうことをやりますと、我々大学が中心でやっておりますけれども、あとNPOがやっておりますけれども、その場に自治体の方とか企業の方とか商店街の方が一緒になって一生懸命やってくださるんです。つまり協働が大事だということはこの資料にも至るところに書いてありますけれども、地域協働をやるためにはやはり何らかの装置が必要であって、そういう意味で我々は地域協働の装置という役割を果たしているのではないかなと考えております。
 そう考えていくと、私は大学人ですから、地域における活性化、地域力を創造するための一つのポイントとして、やはり人づくりが大事であって、そういう主体となるプレーヤーとして、私はやはり大学の存在というのは非常に大きいのではないかなと。大学とNPOの存在というのは非常に大きくて、協働を果たす舞台になり得ると私は考えております。これはいろいろな省庁にまたがる話だと思っておりますので、ぜひ、この議論をもとに何かそういうまちづくり、地域力創造に関する総合的な政策につながるようなことがあればなと願っております。
 以上でございます。

【月尾座長】  ありがとうございました。それでは江尻委員、お願いします。

【江尻委員】  江尻でございます。私はこの所属にもありますとおりに、リサイクルの団体、ごみの問題の団体の事務局長をしております。ごみの問題といいますのはどなたでもご存じのとおりに、いろいろなテーマと一緒にできる活動で、今テーマを越えた活動がどのくらいできるかというようなことを試みて、いろいろな活動をつくり上げようとしています。
 東京・多摩リサイクル市民連邦というのは東京都の中の多摩地域を活動エリアとしている団体なんですけれども、多摩地域は最終処分場の問題が10年以上前から非常に大きな課題として全国的にも有名でありまして、いろいろな地域でいろいろな団体ができてきました。ただ、それがいわゆる反対運動で終わってしまったり、処分場ができてしまったらそれで解散してしまったりという団体が非常に多くありまして、結局しつこく活動を続けているのは私たちの団体と、あと少しの幾つかの団体というような状況です。
 多摩地域の中で毎年どこかの自治体で討論会を企画しまして、開催地の行政や市民団体に協力していただいています。それが今年度で16回になりますので、多摩地域の中では、リサイクル市民連邦というのは行政やそれから地元の企業などと一緒に協働しながら前に進んでいく団体なんだというようなことは理解してもらえるようになりました。
 そんな中で今私どものNPOの活動の大きなものの一つが、多摩ニュータウン環境組合という八王子市と町田市と多摩市で構成する一部事務組合があるんですが、ここは多摩清掃工場と焼却場を持っています。その焼却場の脇にリサイクルセンターと称しまして、啓発施設なんですけれども、つくりました。ここの運営の委託を私たちが2002年から受けました。それからずっと続いているんですけれども、先ほど申しましたテーマを越えた活動というのは、ここを現場として今つくっていこうとしています。
 例えば近隣にあります福祉の団体、福祉の施設、子供たち、学校、商店街、もちろん大学も近所にありますので大学などと、行政の枠組みでいくと私どもは環境とかリサイクルという縦枠の中に入ってしまうんですけれども、それを越えまして福祉とか教育とか産業とかいったところで、ごみ問題を切り口とした地域の力をつくっていきましょうよというようなことでお声がけをしながら、いろいろなイベントを組んでいるというようなことがあります。
 私はそれ以外に自分の仕事としましては、ごみ問題で頑張っている各地の人や団体、主に市民団体を取材しまして、それを表に出していくというようなことをずっとやってきております。その中で地方に行きますと、私はほんとうに残念だなと思うことを皆さんおっしゃるのが、自分たちの町や村や都市のよさを全然わかっていない。ある島に行きましたときには、ものすごく海がきれいでいいねなんていうような話をしていましたらば、海がきれいなのは当たり前なんだから今さらきれいと言われることはない、きれいな海を大事にしようという環境の運動を一生懸命やっているのは外から来た人で、私たちとは価値観が違うから一緒にできないというようなことをおっしゃる方がいまして、これはまずはごみでつなげなければ大変なことになるなと思いながら帰ってきたことがあります。
 ですから、まず自分が住んでいるところのよさというものをわかるような仕組みというのがとても必要だと思うのと、それから先ほど、あん・まくどなるど委員が最初におっしゃいましたけれども、柔軟性を持って飛び越えていこうというような力がないと、それからその気持ちがないと、なかなか地域の中ではネットワークが組んでいけない。あの人はああなんだ、この人はこうなんだというところで、どうしても先に進まない。テーマが同じだと、いっそうあの人がこの人がというところでストップしてしまうというような状況があります。そこは行政と一緒に仕掛けをしながら、少しテーマを越えて、それからメンバーをかえて、新しいネットワークというんでしょうか、連携の仕方というものを考えていくことが力になっていくと思います。
 もう一つは、地域力というのは、ご説明をずっと聞いていたり、それから今までの政府がとってきたいろいろな施策などを考えておりますと、地方のことばっかりなんですね。私はずっと東京で生まれ東京で育ってきたんですが、実は東京にも地域力というのはもっと必要であると思います。東京も、表現はあまりよくないかもしれませんが非常に田舎っぽいところというのはありまして、都会ならではの田舎っぽいよさ、人と人とが顔を合わせながら住んでいるよさというものを、ぜひとも東京の地域力にしていけるような方向に行ったらいいなと思っております。
 以上です。

【月尾座長】  ありがとうございました。いろいろと参考になるご指摘をいただきました。それでは小田切委員、お願いします。

【小田切委員】  明治大学の小田切でございます。私も、あん委員と同様に全国の農山村を歩いているフィールドワーカーでございます。それと同時に、先ほどご説明の最後にございました地域活性化センターの地域リーダー養成塾の主任講師を務めさせていただいております。その先輩が西村先生で、そして実は総代、銀時計でございますが、それが杉沢さんだということで、今日はご一緒させていただいて大変うれしく思っております。実は今日も2泊3日で高知県の山村に集落レベルで、リーダー塾の塾生と一緒に研修に行くような予定でおります。
 まず、地域力ということで3点ほど申し上げてみたいんですが、一つは入り口論になりますが、地域力という形で議論する意義がどこにあるのかということだと思うんですが、もちろん政策の取り組み、方向性として、地域力アップという方向性を論じやすいということがあるんですが、もう一つ私は政策評価、あまねく地域振興政策が果たして地域力をつけたのかどうかという政策評価のために使う道具として、十分使えるのではないかと思っております。
 それからもう一つは、今日他省庁のさまざまな事業もご紹介いただきましたが、地域力ということで他省庁も含めたさまざまな取り組みを、いわばバインドするといいましょうか、そういう言葉として使えるという意義があるんだろうと思います。その点で、今日他省庁の方が少なくともテーブルに座っていないというのは私にとって大変残念でございまして、地域力創造ということで一つの大きなうねりをほかの省庁とともにつくっていただきたいなと強く思っております。もちろん内閣府に活性化があって、月尾先生と一緒に私どもは戦略チームに入らせていただいているんですが、地域活性化というワードで果たして統合ができているのか。かつての国土庁の地方振興局のような力強さが、私は何らかの形で今後必要ではないかと思っております。
 さて、それでは地域力ということで2番目に申し上げたいんですが、先ほど飯盛先生が、自分たちで発見して自分たちで解決していく力だとおっしゃって、まさにそのとおりだろうと思います。ただ、これは質的な概念であるということを忘れてはならないと思います。先ほど申し上げましたように、政策評価に使うなどということになると、どうしても量的な評価にたちどころに還元してしまうということがあるんですが、そうではなく、これはあくまでも質的な力なんだと考えてみたいと思います。
 その点で、かつて地域経済論者の安東誠一さんが「発展なき成長」ということを言って非常に印象的だったんですが、発展と成長を分ける。発展、ディベロプメントはいわば質的な概念であって、成長、グロースは量的な概念である。その点で成長というのは自分の体が大きくなるという量的なことで、それに対して発展というのは自分で自分の体を大きくしていくこと、したがって地域発展の中には発展なき成長ということがあり得るんだ、単に量的に大きくなるということだってあり得るんだ、質的な改善が伴わないという意味ですが、そういう意味で質的な評価ができるような概念につくり上げていくことが大変重要ではないかと思っております。
 それから3つ目で、それでは地域力というのは具体的に何なのかということなんですが、少なくとも私自身は農山村を中心に歩いているということですので、その周辺のことに限定してお話をさせていただきますと、おそらく地域力が高い地域は場と主体と条件という3つの要素を大変大切にされているんだろうと思っております。
 場については、参加の場をつくるという強い方向性が見られるということです。特に農山村では今新しいコミュニティーをつくって、そこで参加を実感できる、あるいはそのコミュニティーを通じて文化環境を発展させるという力強い動きが徐々に見え始めております。そういう意味で参加の場をつくるということが重要になっていると思います。
 それから2番目は主体ですが、これは私は暮らしの物差しづくりと呼びかえております。と申しますのは、かつて存在していた地域のさまざまな物差しが徐々になくなっていく、これが地域の衰退の過程であったと思っております。別の言葉で言うと、やや強い言葉ですが、誇りの空洞化という言葉を使っているわけですが、これは物差しが一つずつなくなっていくと理解するほうがあるいはわかりやすいかもしれません。そういう意味で、そういった物差しを、これは例えば人情の物差しであったり、あるいは田舎料理の物差しであったり、景観の物差しであったり、そういうものを一つ一つ取り戻していく、あるいはつくり上げていく、そういう主体を大切にしている、これが地域力が高い第2番目の条件だろうと思います。
 そして条件ということでございますが、これは何といっても産業をつくり上げていくということが重要になっていくと思います。別の言葉で言うと金と循環をつくるということだろうと思います。残念ながら産業論なき地域振興策が時として言われております。そうではなく、やはり産業というものを地域振興の中に条件づくりとしてきちんと位置づけていくということが重要ではないかと思っております。
 この点について、実は飯田市の牧野市長もほぼ同じようなとらえ方をしております。これは単なる偶然でございますが、飯田市では人材サイクルということを言って、場については、住みたいと感じるような地域づくり、主体については、帰ってきたいと考える人材づくり、これは東京に行っても、地元に帰ってくるんだという強い志を持ったようなそういうふうな人材づくり、そして先ほどの条件、金と循環づくりについては、帰ってこられる産業づくり。これをつくり上げることによって、一たん高校、大学で出ていっても戻ってくるという人材のサイクルが必要なんだということをおっしゃっておりますが、これは私が申し上げた3つの条件、要件と全く同じ、重なるところがあるんだろうと思っております。
 以上でございます。

【月尾座長】  ありがとうございました。それでは杉沢委員、お願いします。

【杉沢委員】  かぞ市民ネットの杉沢と申します。本日この場にお招きいただいたのは、私のどんな面を求めてかなということを思うぐらい自分自身にいろいろな面を持っているということを今考えながら、何を話したらいいのかということを集約している段階です。
 まず、地域力ということは何かということをお尋ねなので、私なりに考えて、人を育てるとか人材育成だとか、それから人によって地域が発展していくとかということではなくて、人を動かす力が地域力なのではないかということを、ここ数年の活動を通して思っています。
 では、どうして人は動かないのか、抵抗勢力になっているのが何かということを逆説で考えたときに、じゃ、どうしたら人が動くかということの結論が出ていくと思うので、なぜ動かないかということを考えてみましょう。まず動機づけがないこと。何のために動くのか、動いたら何かいいことがあるのかというようなことがないと人は動かない。市民の立場、市民団体の立場で申し上げると、ここのところ市と市民、行政と民間の協働というような言葉が大変使われていて、私たちは協働だということで市民団体が一生懸命に仕事をするという設定がなされてきて数年たった。ところが何年かして、動いているうちに、協働といいながら行政のレールに乗せられて市民はただ働きをさせられているだけなんじゃないかというようなことが見えてきたときに、だんだん市民が動かなくなってきた。現在そんな状況じゃないかと考えます。何のために動くのか動機づけがない。
 それからなぜ動かないかの2番目は、やはりお金が動かないということであります。私の住んでいる加須市は農業が大変盛んな地域で、温暖な気候にも恵まれている、しかも土地もたくさんあるといいながら、なかなか農業をやる人がいない。そこで動機づけの一つとして、1,000万円の収入が得られる農業をしようというようなことからスタートして今頑張っている人たちがいますが、大変人数が少ない。収入が伴わないと人は動かない。
 それから、企画に参加できないということが動かない原因の3つ目。命令によって仕事をしているうちは楽しくない。自分が何をやりたいのか、何を目的にこれに参加しているのかということが、参画という立場になったときにはっきりわかってきて、自分の意見がそこで発言できるという立場になったときに人が動くんだと。
 この3つの動かない理由を考えたときに、逆説でそれを取り除いていく、抵抗勢力を取り除いていくというのが、地域力を高めていくもとになるんじゃないかというのが杉沢私案であります。
 私自身自分に振り返って考えたときに、自分がどうして動いたのか。今日も大変楽しくて、朝早く起きて一番にこの会場に来てしまいましたけども、新しい人の輪ができるという楽しみがありました。何か新鮮な人と会えるんじゃないか。それから2番目に、何か新しいものが得られるんじゃないか。知識がえられるんじゃないか、みんなから情報が得られるんじゃないかということもありました。人の輪をつくること、そして情報が得られる楽しみ。それからもう一つは、やっぱり自分の中に怒りというものがあります。どうしてこんなにみんな頑張っているのにうまくいかないの、ちゃんと税金を納めているのにどうしてきちっと使ってもらえないのという怒りがあります。その怒りを何らか解消したいという思い。その3つが、私を今日朝早く起こして、一番にこの会場に来させた力じゃないかな、私を動かしていた力ではないかなと思いまして、私個人を動かしたものが何か地域を動かす力のもとになるんじゃないかと思いました。
 実際にこれから解決のための議論に進むと思うんですが、まず一歩目として、プラス思考でいきましょうということをご提案したいと思います。再生というようなことを言われると、地域は死にかかっているから何とか生かしてやろうと思うのかな、あるいは活性化なんて言われると、元気がないから何とか頑張れと言われるのかというような、最初からそういうマイナス思考のような面が見られて、今も元気だけどもパワーアップするための議論なのだとか、あるいは元気で頑張っているところをより応援していくための議論なのだというようなプラス思考でいきたいということが、1つ目の提案であります。
 それから2番目は、情報のネットワーク化というのを進めるということをご提案したいと思います。もちろん情報を集約していくということも大事ですが、それをどんどん広げていく、今皆さんの委員の方からお話を伺っただけでも、私は地元に帰って、またそれを広げていくということが、たくさん今日は知恵をいただきました。そうやって結びながら開いていくという情報のネットワーク化ということをより進めていく会議になっていけば、価値が高まるんじゃないかなと思いました。
 以上、今日の段階で自分の考えていることを申し上げました。

【月尾座長】  ありがとうございました。最後に具体的に実行すするべきことも指摘いただきました。それでは堂垣委員、お願いします。

【堂垣委員】  NHKの堂垣と申します。私は書いてあるとおり「ご近所の底力」という番組のプロデューサーをやっております。この番組のことを簡単に説明いたしますと、2003年から始まった番組なんですけれども、地域でご近所さんというつながりが最近弱まっているんじゃないかということで、そのご近所さんのつながりというのを少しでも強めて、小さなコミュニティーが持っている具体的な問題を解決していくという番組です。
 私は今年の夏からこの番組のプロデューサーになったんですが、非常にやっていることは小さくて、大所高所からだという議論にどこまでどうこたえられるかはちょっと疑問なところもあるんですけれども、番組のコピーとして一時期語られていたことは、大人が本気になれば大抵のことはできるというコピーを番組のキャッチフレーズとして使っていて、今もその精神は生きているんですけれども、番組は丸5年、6年目に入っていますが、番組をやった実感としてこれは思っております。
 地域力ということについてなんですが、まさにこのことだと思っていて、つながる力というものが強いところが地域力が強いのではないかと実感として感じております。大体今、地方もそうなんですけれども、さまざまな問題を抱えていて、一人一人その問題を突きつけられたときに、自分だけだと何となく無理だなというか、何とか自分が生きている間だけしのげればいいかみたいな気分になってしまったりするんですけど、そこでほんとうにそれじゃ解決できない問題かということを真剣に考えて、一人、また一人と横につながっていくと、結構解決できることはあるんじゃないかなというのをほんとうに思っていて、このつながる力の強さというのをどうつけていくかということが地域力というのを高めていくことにつながっていくんじゃないかなと考えております。
 あと、この会議でも先ほどちょっと話が出ましたけれども、今地域力というか、地方の地域力をつけようということを本気で考えるのだったら、やっぱり第一次産業のことというのは絶対抜かせないと思うんです。ですから、この場にやっぱり総務省の方だけではなくて、できれば横断的な、第一次産業をどう強めたらいいのかということを実際に動けるような方というのは、ぜひほんとうは巻き込んでいってほしいなというのは正直思います。実際、特に農業なんかに関しては、今のさまざまな危機の中で、もしかしたら農業を立て直すチャンスかもしれない。先日ちょっとNHKでも番組をやりましたけれども、休耕田で全部お米をつくって米粉にすれば海外からの小麦粉を一切輸入しなくても済むとかいう状況に今実は来ているわけです。ですから、これはほんとうに総務省だけで考えても全然話は前に進まないと思うんですけれども、日本という国を考えるのであれば、そういうことをほんとうに前向きにやるような動きというのを何かつくれていったらいいのではないかなと考えております。
 すいません、今のところ考えているのはそんなところです。

【月尾座長】  ありがとうございました。それでは名和田委員、お願いします。

【名和田委員】  名和田と申します。実は私の名前も非常に読みにくい名前でありまして、「なわた」と濁らず、下の名前は「よしひこ」と読みます。非常に正しく読んでいただける確率の少ない名前で、極めて単純なんですけれども。
 私はコミュニティーを研究していると一応自称しておりますけれども、分野としては法学の分野です。現在勤めているのは政治学科ですけれども、もともと法学分野で、法社会学というような分野といったらよろしいかと思います。
 フィールドといたしましてはずっと横浜を中心にしておりまして、私は九州で育ちまして、はまっ子ではないんですけれども、横浜に非常に愛着を持っております。最近は地方に行くことも増えましたし、東京での仕事も増えましたけれども、横浜というのは高度成長期に爆発的に人口膨張したところで、その負の遺産はいまだに尾を引いております。地方に行っても、東京に行っても、何と恵まれているんだろうといつも悔しい思いをしながら実はフィールドワークをしております。
 横浜でもいろいろな仕事をしておりますけれども、一市民として、自分が住んでいるところではありませんが港南区という高齢化と人口減少の問題を抱える南西部郊外にある区の中で、市民活動団体のまちづくりフォーラム港南というのをやっております。
 それから、よく我々は外国研究をやっているのが普通でありますけれども、私の場合はドイツと比較研究をしておりまして、ヨーロッパには何でコミュニティーみたいな話がないのかというと、そこはちゃんと制度化されているからなんです。市町村そのものであったり、あるいは合併をしてもそこに何らかの地域自治区のような仕組みを残す、きちんと制度化をする。日本の場合は合併を重ねてきて、かつ制度的な空洞が生じたのに対してあまりきちんとした対応をしなかった。その制度的な空洞のところで、コミュニティーが政策的なテーマとなったと見ております。そのことは特に90年代以降はかなり重要なテーマとなってきていて、新しい政策的傾向が見られると考えております。具体的にはそのうち会議の論議の中で述べる文脈が出てこようかと思います。
 それから、最近関心を持っていることを2つだけ述べさせていただいて、私の最初の発言とさせていただきたいんですけれども、まず一つ、ここ数カ月ずっと考えているのは、いわゆる自治会、町内会の加入率が低下しているのはどうしてだろうか。ある意味ちょっと意義がわかりにくいテーマかもわからないんですけれども、どうもいろいろな自治体の数字を集めておりますと、今世紀に入ってがくっと低下しているようなんです。そうでない自治体もあるようですけれども。これが意味するものは何なのかということをずっと考えておりまして、最近『地方自治』という雑誌に寄稿いたしましたので、詳しくはそちらに譲りますけれども、どうも今まで地域社会、コミュニティー、地域力を取りまとめてきた組織形態が歴史的な限界に突き当たっているんじゃないかと思っておりまして、これは地域力そのものはあるわけですから、それを取りまとめる組織的な装置がおかしくなっているので、地域力そのものはあると思っていますので、どうやったら地域力が引き出せるような新たな制度的装置とか、あるいは人々が活性化する筋道を考えていくかということを考えていかなければならないと。既に今日各委員からいろいろなそのためのお知恵が出てきたかなと思っております。
 2番目は、先ほど私は横浜市港南区でまちづくりフォーラム港南と、言うと偉そうですけども実際にはほんの数人しかいない極めて軟弱な市民活動団体なんですが、それが関係して、港南台タウンカフェというコミュニティーカフェのようなものをやっております。これはある意味ちんけな取り組みではあるかもしれないんですけども、一応補助金が切れた後も全然倒れないで自分の足で立っているコミュニティービジネスの珍しい成功例ではないかとひそかに自負をしておりまして、もちろんリスクをしょってやっているのは私ではありませんで、私の友人でありますけれども、タウンカフェというカフェなんですけども交流の場です。この交流の場で、かつ顔が見えるだけじゃなくて、顔が見えない人も来るわけです。いわゆる公共の場であります。いろいろな人がそこを訪れて、単にコーヒーを飲むだけ、あるいは棚ショップを見るだけという人もいますけれども、ともかくそういう人が行き合う中で、ちょっとしたきっかけからいろいろな動きにつながっていく。やっぱりつながりができるということはすばらしいな、逆に言うと、今まで地域のつながりというのはかなり寸断されていたんじゃないかということを、非常に強く思っております。これも私の仲間が、3周年の歩みとかいろいろな報告書をつくっておりますので、そちらゆだねたいと思いますけれども、ほんとうにつながりが新たに再編されなければならなくて、そのためには先ほどの自治会、町内会のようなかっちりした組織も必要ですけれども、全然組織化されていない公共のだれでも寄れる場というものがなければならないなとつくづく思っているところです。
 最初の発言としては、そんなところです。

【月尾座長】  ありがとうございました。それでは西村委員、お願いします。

【西村委員】  だんだん言うことがなくなってきているんですが、私は都市計画をやっておりまして、まちづくりということで、全国各地の歴史とか文化を生かしたまちづくりを応援する応援団のようなことをやっております。
 3つほど申し上げたいんですけど、一つは地域力。私がどういうふうにこの言葉を聞いて感じるかということなんですけども、先ほどから堂垣委員もおっしゃっていましたけど、何か問題があったときにきちんとそれに対応する地域レベルの対応の力というものじゃないかなと思うんです。それはつながる力と先ほどおっしゃいましたけど、例えば一番大きいのは、典型的なのは、地震があったときにどういう形で復興していくかというときに、例えば阪神・淡路でも、淡路地域の復興というのはやっぱりそれなりに早かったというようなところにあらわれてくるような地域力。問題というのは、例えば商店街が低迷しているときに、リーダーが出てきて商店街で新しい試みをやるみたいなことが全国で起こってきておりますし、何かマンションが建つというときに突然反対運動を起こす力。国立にしても、鎌倉にしても、そういうところで起こっているわけですけど、こういうところの市民は普通はあまり仲よくないんです。でも、そういうときには団結して何かやるということが結構起きてきている。だから、ある種ある問題が起きたときに、それに対してきちんと対応するようなことがボトムアップでどうできるかというところが一つあるかなと思うんです。
 それからもう一つは、継続して何か頑張る。例えば祭りをやったり、伝統芸能をやったり、神楽をやったりとかいうのを、若い人たちにおはやしを伝えたりということをずっとやっていかないと、生きていけないんです。そういう次の世代をちゃんと、小さいころから笛や太鼓に親しんでもらうような仕組みというのを持っていて、それがあることが次の力になっている。そういう継続するような力というのも一方でもう一つあるかなと感じるんです。そういうものだと私自身は感じるんですけども、こういうのというのは、ある種行政があまりお金という意味で力を差し伸べると、依存体質が生まれたりとか、逆に変になってしまうことが多いんです。ですから非常に対応が難しい問題ではないかと思うんです。それが1点です。
 2点目は、じゃ、どうしたらいいかということなんですけれども、今日の最初の事務局のご説明を伺っていて思ったのは、確かにさまざまなことをやられていてそれはすばらしいですけど、これは言ってみればある種地域力をアップするための行政力をアップすることだと。それにあたるだろうと思うんです。でも、それが必ずしも今私が言ったような意味での地域力とは、やや距離感があるなという感じがするんです。つまりこういう施策をやればやるほど、ある種行政依存が強まってしまうようなところがあるだろう。じゃ、自立を高めながら応援するというのはどういうことか。これは難しいんですけど、先ほど杉沢委員もおっしゃったようなもっと違う応援の仕方。それはネットワークを促進するとか、頑張っている組織を制度的に位置づけてあげるとか、マッチングギフトみたいなことをやるとか、いろいろな助成の仕組みが行政をバイパスして直接NPOみたいなところに行くような仕組み、まちづくりファンドみたいなものが最近少しずつできてきています。それとか、まちづくりのリーダーは大半はよそ者であることが多いわけで、そういうよそ者をうまく発掘するような仕組みだとか、何か財政的な優遇措置をうまくつくっていくというのではない仕組みという一連がありそうなので、そこのところも必要だろうと。こういうのも必要じゃないかなと思うんです。
 例えば愛媛で町並み博というのが数年前にありました。博覧会といいながら、地方の小さな町のそれぞれが頑張るというような博覧会の仕組みをつくったんですけど、つい最近愛媛に行ったときに感じたのは、そのときにできたまちづくりグループが、結構今でも活動しているんです。これなんかは、ある種の動きがその後の仕組みにつながっていくということにつながるので、普通の博覧会だったら多分終わった後全部終わりになるので、違う仕組みというのが動いているんじゃないかなと思ったんです。それが2点目です。
 3点目は、とはいえボトムアップだけではなくて、先ほどから出ている農業だとかさまざまな産業が今非常に弱体化しているのを、何か力をつけないといけないというのも事実なわけです。第一次産業も含めてある種の総合的な地域産業の支援施策みたいなのが非常に重要になってくるだろう。先ほどの説明の中に、地域力再生機構の法律の案の改善を今検討されていると。それを聞いていてふと思ったんですが、今産業再生機構というのがありますよね。実は数年前に随分つき合いがあって、それは何かというとすごく相談を受けまして、地域の地銀が非常に大変で、地銀が大変だというのは不良債権でいろいろなところに貸し付けているのがほとんど難しい。例えば温泉街の温泉も、それぞれに貸し付けているのがどうしようもなくなってきている。そこを何とかしたいんだけれども地域の施策が見えない。個々の営業の施策じゃなくて地域全体をもう少し新しい方向に変えていくような施策が必要じゃないか。地銀も多少の債権放棄はするけれども、それがモラルハザードにならないようなうまい仕組みというのは、ある種地域がある方向に向かって努力する。それがまさに地域再生です。地域再生に向けていろいろな形で寄与するということが見えるのであれば、その分に関してはいろいろな形での債権放棄というのはあり得るのではないかということをおっしゃられて、そのためにこの地域はどういう方向があり得るのかを診断してほしいと。ちょっと行ったぐらいで診断できないんですけども、銀行屋さんだけではなかなか発想ができないような部分を相談に乗ってほしいということだったんです。
 何かそういう意味での再生というのもあるかもしれない。ですから今活動されている地域力再生機構は、どちらかとまた新たな応援の仕組みをつくりますよというんだけど、今かなり問題があるわけで、その問題をうまく解決したり軽減するような、それが先ほどから言っているような地元側からの発意である方向を決めていく、それを私なりの地域力というならば、そちらに貢献するような形での再生のための仕組みというのはあり得るんじゃないかなというのをちょっと思ったので、これは印象の段階ですけども、以上です。

【月尾座長】  ありがとうございました。
 最後に私のほうからお話しさせていただきますが、大きく2点申し上げます。一つは常識を破るということが大事だということで、委員がいろいろな形で言われました。これがなかなか難しいのでどうするかということを考えないといけないのです。「いろどり」とか「ごっくん馬路村」は大変有名ですが、それぞれ農協の課長さんが常識を破ったことをやられたことが成功の原因です。
 先ほどもご紹介した庄内映画村は非常に成功しているのですが、その理由は地域が発展していなかったからです。時代劇は電柱とか人工の施設がないところで撮影するのですが、そういう場所が庄内平野には幾らでもあるということなのです。そこの宇生社長が、あまり紹介しないでほしいと言われたおもしろい話があります。賞を幾つかもらっている「おくりびと」という話題の映画があります。来年2月のアカデミー賞にもノミネートされるのではないかと言われている作品ですが、これは酒田という町を舞台にして撮影しています。庄内映画村は鶴岡にあるので、当初はそこで撮影する予定でしたが、脚本家が両方の町を見て酒田のほうがいいと言ったのです。このような寂れた場所はなかなかなくて、すばらしい舞台になると言われたのです。一般に町は元気になりたいとか、にぎやかになりたいと考えているわけですが、常識を破れば、寂れたところにも価値が出るかもわからないというようなことです。
 それでは常識を破るのにはどうしたらいいかというと、個人的経験では、それぞれの地域の奇人、変人という人を尊重するような仕組みをつくることではないかと思います。僕は全国21カ所で個人的に塾を開いていますが、その塾を任せる人は、地域の理事長とか協会長ではなく、その地域で疎んじられている人です。そういう人が力を発揮する。それから日本では外部の人が力を発揮するように、地域の常識を持たない人が活躍しています。このような人を地域が発掘し、重用していく仕組みを考えるということだと思います。
 2番目は役所の問題に関係しますが、ここでの議論を制度としてどうするかということです。ご説明にもありましたが、昭和63年に始まったふるさと創生事業は、おそらく地域が初めてみずから考えみずから行うという政策、つまり予算を丸投げして地域に何でも自由にやりなさいという制度です。初めての試みだったため、○○総研という組織が大もうけをして、結果としては温泉を掘ったところが全体の1割弱になってしまったという問題もありましたが、それでも初めて自分で考えるということができて、地域が自分で考える契機になったと思います。
 最近で言えば、地方の元気再生事業とか環境モデル都市というようにコンペ方式で、地域が考えた良い計画に補助金を出すという政策が増えています。この会議の成果として、今後どのような制度ができるかわかりませんが、考えなければいけないのは、きっかけは官庁が作ることは必要ですが、地方が依存しない、逆に言うと国が手とり足とり関与しない方向で、仕組みをつくっていくことが重要だと思います。
 全国で財政破綻に直面している上位の市町村のうち80%以上が北海道に集中しています。これは産炭地だったという市町村レベルでは抗し切れない大きな構造変化があったということも影響していますが、やはり日本のエネルギー基地とか食糧基地として国が手厚く面倒を見て依存させてきたことも影響していると思います。
 今後、この会議で地域力を創造するための議論がなされ、場合によっては何らかの制度とか何らかの補助金のようなものができる可能性はあると思いますが、それに頼ればいいとか国にお願いすればいいという形にならないようにして、地域の人々が自由に進めていくという方向にする方法を、ぜひ議論いただければと思います。
 これから自由にご議論いただいきますが、その前に事務局にお伺いしたいのは、2人か3人の委員から、農業の問題などを考えると役所横断的な仕組みが重要ではないかという意見がありましたが、それについてお考えなり方法なりはありますか。

【市橋地域政策課長】  私どもがこの場で皆さんからご議論いただきたい問題意識の一つとして、おっしゃられるように地域の力を高めるという取り組みは総務省だけでできるような施策ではございませんので、各省と、総務省としてどう連携していったらいいのか、あるいは束ねる組織として内閣官房の活性化統合事務局がございますので、そことの連携というものをどうやって図っていけばいいのかというようなこともご議論いただきたい問題意識の一つとして考えてございますので、そのためにどういう形のものを素材にご議論いただければいいのかというのはまた今後考えたいと思いますけれども、ぜひその辺も視野に入れてご議論いただければと思います。

【月尾座長】  地域力は総務省だけで囲ってやるという構想でもないので、自由に意見をいただいて、それを反映して積極的に取り組んでいただいたらいいと思います。
 それでは、委員から委員へのご質問でも結構ですし、事務局へのご質問でもいいし、さらに追加の意見でも自由にお願いします、ただし先ほども申し上げましたが、大臣が来られましたら中断させていただきますのでご了解ください。

【杉沢委員】  お願いします。

【月尾座長】  杉沢委員、どうぞ。

【杉沢委員】  一番最初にあん・まくどなるど委員がお話しになった農業を活性化していく、農業に携わっている人たちに元気になってもらうというお話を、もう少し伺いたいなと思いまして、どんなふうにきっかけを与えているとか、動機づけをなさっているのかというあたりを、ぜひお聞かせください。

【まくどなるど委員】  1994年に農林水産省と農協がパートナーシップを組んで、それを中心にして、特に農村地帯を、全国を歩いているんですけど、どういう活動かというと環境保全型農業推進です。食料生産は自然環境にどのような負荷を与えていくのかを今後もっと考えなくてはいけないということで、環境保全型農業推進は農業者のみでやっていくのではなくて、これは地域づくりを視野に入れながら、農業をはじめ第一次産業のちゃんとした継続的にしっかりとした循環型という形で、サステイナブル・アグリカルチャーという形でやっていくのには、生産現場から消費者までの全国的なネットワークづくりをやっていきましょうということでやってきたんです。
 現在まで続けているんですけど、そういう農法を考えるガイドラインづくりからエコファーマー認証制度まで会議がやって、実は2週間前に東京で年に1回のフォーラムがあったんですけど、今17万人の登録しているエコファーマーが全国にいて、大きな夢としては、兼業農家であろうが専業農家であろうがエコファーマーという農業者が全国的になれるように頑張っているんですけど、もう一つの活動は、今年の春から石川県に移って、これは国連大学高等研究所が中心になって全国でやっているんですが、里山里海生態系評価をやったりしていて、石川県だけで言えば非常におもしろい活動を今やっていて、それは何かというと、里山利用保全ビジョンづくりを県庁でそういう委員会をつくったところなんですけど、これを横断で、里山でいうと農業、林業だけではなくてさまざまな地域づくりまで入ったりしているので、環境課だけではなくて、農林部だけではなくて、地域振興課、いろいろな課が、部が、かかわっていて、また研究者とのネットワークで、例えば金沢大学の中村浩二先生と研究と地域住民と政策づくりを一緒に議論して、討論して、新たなパラダイムシフトといったらちょっと誤解を招きやすいかもしれないんですけど、循環型社会づくりを第一次産業を重視しながらやっていきましょうという動きは石川県で今やろうとしているんです。
 私は農業だけではなくて、やっぱり国土の六十七、八%ぐらいは林業ですから、第一次産業のネットワークづくりをもうちょっと考えなければいけないと思うんです。山から海までの連携をもっときちんとやっていけば、力のある地域づくりにたどりつけるんじゃないかなと思います。
 ちょっとあちこち飛んでいて、答えになっていないと思うんですけど。

【月尾座長】  ありがとうございました。
 杉沢委員のご質問で気がついたとのですが、地域で元気に進めている計画とか努力している人をまとめた資料というのはありますか。普通に言うデータベースは地域活性化センターがつくっているか、総務省にそういうものがあるか、もしなければ、そういうものをつくっていただくのもいいと思いますが、どうですか。

【市橋地域政策課長】  私どもで地域力創造アドバイザーという形で実際に頑張ってらっしゃる方を登録いたしまして、この人のお話を聞いてみたいとか、支援を受けてみたいということに地方が対応できるようなものがございますので、そういうものですとか、もちろん活性化センターのほうにも実際に頑張ってらっしゃる方々のリストというものはあろうかと思います。

【椎川地域力創造審議官】  補足をさせてもらいますと、私もそういうことが何かできないかなと実は思っておりまして、今月尾先生が言いかけられたことですけど、それぞれのプロジェクトに応じてリストをつくるものですから、例えば我々の地域力創造アドバイザーというのは1年間地域に入り込める人をリストアップしているわけです。それからふるさと財団というところで地域再生マネジャーというのをやっていますけども、これは非常に長くて3年間ぐらい同じ地域に行って地域おこしをやれるような人。それから内閣官房のほうでは例の地域活性化伝道師という、これは私も名簿を見ましたけど、ほんとうにこの人たちが活動しているかなと思うような人までリストアップしてしまっているわけです。ですから非常に、逆に数が多いけれども散漫になっているということがありまして、どういう目的を持ってリストアップをするかというのは大変難しいんですけども、どういう活動ができるかということを類型化してもっと統合的なデータベースがあると、地域にとっては、こういうことをやってほしいときにはこのジャンルの人に検索をかけて、その中から人を選んでいくみたいな。我々地域活性化センターでも、先ほど小田切先生からお話が出ました地域リーダー塾とその卒業生もたくさんいるわけです。そういう人たちも、例えば年に何回かはほかの地域に出かけていってアドバイスするなんていうことは十分できる人材も育ってきているので、一度そういうことを役所としてはやるべきではないかなと。いろいろなところがいろいろいい情報を持っているものが、農水省も持っています、経済産業省も持っています、それが何かもう少し統合的にならないかなということは問題意識として私自身も思っているところで、ちょっと研究をさせていただきたいと思います。

【月尾座長】  人と事例です。僕も全国各地に行くと、成功例を見学に来ている人に合うことが多いのです。先日も「かごしま未来環境館」という、環境問題を子供に理解させるための小さな博物館に東京都の区議会議員が見学に来ておられました。そのような意味でも、データベースの需要はあるので、地域活性化センターでも総務省でも結構ですが、ご検討いただけたらと思います。

【まくどなるど委員】  質問ですけど、外れた質問なのかもしれないので大変恐縮ですけど、今後の地域力をつくっていくに当たって、これは日本国民のみが対象なのか、それともグローバル時代の中で生きていると言われている中で、在日外国人とか、あるいはまだ日本には住んでないんですけどそういう人たちまで輪を広げることを考えているかどうかという質問です。
 なぜそれを聞いているかというと、農業、林業、漁業も含めてご存じのように担い手不足状態がかなり深刻になってきているんです。研修制度と名乗って海外から、主にはアジアから、中国人とかを中心にしてフィリピンとかインドネシアから第一次産業の現場に入って、労働者として、研修生としてやってはいるんですけど、ほんとうに地域再生を考えていくときには、これは国土の維持は日本の国籍を持っている人たちを対象にして21世紀の日本のあれでつくっていこうという考えと、もう一つのシナリオは、いや、もうちょっと国境をつぶしてグローバルな日本の地域社会づくりを目指すかどうか。それによってまた描く映像とかシナリオがいろいろ違ってくるような気がしていて、外からもうちょっといろいろな人たちを入れていくのであれば、アメリカをはじめ私のふるさとカナダも含めて西ヨーロッパが失敗したような、そういう外の人間を入れていくときにはそうしないように、また考えていく必要があるんじゃないかなと思います。
 最後は余談な意見で終わってしまったんですけど、ちょっと質問です。

【月尾座長】  大臣が到着されたようなので、答えはその後にしていただきますが。外国人を入れることについては鳩山前法務大臣もご意見があると思いますので伺ってみたいと思います。

【鳩山総務大臣】  どうも遅くなりました。

【月尾座長】  これまで各委員のから地域力について自由にご意見をいただいて一巡しましたので、大臣からご挨拶を御願いします。

【鳩山総務大臣】  第1回地域創造に関する有識者会議の開催に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。
 まず初めに、会議の座長をお願いいたしました東京大学名誉教授の月尾嘉男先生、その他の委員の先生方には、大変お忙しい中、地域力創造に関する有識者会議にご参画いただいて、心から厚く御礼を申し上げます。
 私が麻生総理から総務大臣に任命された際に、地域を元気にすることに全力を挙げてほしいという指示があったわけでございまして、私はそのためには地方自治体、住民、企業等の協働により地域力を高める取り組みを推進すべきであると考えております。
 ただ一口で地域力と申し上げましても正確な定義があるわけではありませんで、むしろそれぞれの置かれている立場、よって立つ基盤、地域の特性などによって、さまざまな考え方やとらえ方があってしかるべしと思っております。
 私は以前から、政策というよりも政治理念あるいは哲学として、自然との共生とか環境革命という言葉をずっと言い続けてまいりました。例えば自然との共生、つまり環境力というようなものが、地域の元気回復、ひいては我が国の発展のための一つの大きなキーワードになるのではないかと考えております。
 私は10年ほど前から、やはり未来世代から幸せを奪ってはいけない、奪われし未来みたいな言い方ですが、そういう観点から唯一最大の課題は何であるかと言えば、それは地球環境問題であると。温暖化温暖化と言いますが、私は温暖化の問題が取り上げられ過ぎることにはむしろ多少疑問がございまして、基本的には人類の生きざまの問題がある、エントロピーの問題がある、あるいは生態系を破壊する行為が一番根底にある。あるいは環境ホルモンの内分泌攪乱物質のような今後も予測が非常に難しい危険物質等もあるという中で、さまざまな勉強会を設けてまいりまして、その中で私が最も尊敬する環境についての議論をしていただいている方が月尾嘉男名誉教授であられますので、私のラジオ番組にもたしか出ていただいた、「鳩山邦夫のエコ・トーク」という番組を半年やったときにも来ていただくというようなことで、月尾先生ならば自然というものを生かした地域力の再生、向上、創造ということに、見事おまとめいただけるだろうと考えております。
 そもそも地域の活性化を図るために求められる地域力とは何か、総務省として今後力を入れるべき地域力創造政策とは何か、あるいは関係府省に協力をお願いする施策にはどんなものがあるかなどについて、先生方にはぜひとも大胆に大所高所からのご議論を幅広くお願いしたい、そしてご提言をいただきたいと願っております。
 会議では地方公共団体の首長さんへのアンケートを実施したり、ゲストスピーカーや先進地域からの意見を聞いたりしながら、月尾座長、委員の先生方に、それぞれの豊かなご経験あるいは識見を生かされて活発なご議論を行うなど、さまざまな観点から地域力についてご議論していただくようにお願い申し上げます。
 最後に、この会議の議論が地方が元気になる大きな契機となることを確信させていただいて、私のあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

【月尾座長】  ありがとうございました。大臣はしばらくご在席です。
 まくどなるど委員から、地域力を高める仕事を日本人だけでやるのかというような質問があり、これは移民をどうするかということに関係しますが、大臣が率直に言われると物議を醸すといけませんので、まず役所のほうからご説明いただいて、その後、前法務大臣としてお考えがあれば御願いします。

【椎川地域力創造審議官】  座長先生のほうから触れていただいたとおりでございまして、この場だけではなくて政府全体として、あるいは政権与党としていろいろ議論されていることもありますけれども、大臣からも今お話がありましたように、まずは大所高所からいろいろなご議論をしていただくということは必要なことだろうと思っておりますが、これをどういうふうにこの場の報告なり意見としてまとめていくかということについては、また座長先生ともよく相談させていただきながらやらせていただきたいと思っておりますけども、最初から枠を小さくして議論するということでなくても結構だと私は思っております。

【月尾座長】  まくどなるどさんも好例ですが、外国から来た人がかなり勝手なことを言って地域が随分変わっている例は多いので、日本人だけで行うという必要はないと思いますが、日本の法務省の見解になるか政府全体の見解かわかりませんが、移民については完全に自由という方向ではないので、そのあたりもご議論いただきたいと思います。
 ほかにご意見、ご質問はございますか。大臣がお見えですから、大臣へのご質問でも結構です。

【飯盛委員】  先ほど私は事例の中で、子供たちに対して地域のよさを発見してもらうようなカリキュラムというのはとても大事な要素だと申し上げました。私どもがやってきて非常に感じるのは、子供たちは、例えば地域においては高校がない、その地域に高校がない子供たちは小学校、中学校でそこから出ていってしまって、働く場所もなかったらもう地域に戻ってこないという人がたくさんいらっしゃいます。そういう中で、小学校とか中学校のころに自分の地域のことをよく知るということをカリキュラムの中に導入をするというのは、これは総務省さんの管轄ではないかもしれませんけれども、非常に大切なことだと私は思っています。私どもはそう思って実践をしております。
 ただ、小田切先生がおっしゃったように、それが評価として地域力向上に何となくいいかもしれない、例えばほんとうに働く場所もなかったら地域に戻っておいでと言われても、地域のことが好きだとか地域のことをよく知っているという人でない限りは働く場所がなかったらなかなか帰ってこないというのは現実仕方がないことだと思っています。だから一方では委員の皆様がおっしゃったように産業力ということをきちんと考えていかないといけないということと同時に、ソフトウエアとして地域のことをよく知るということの両面でいかないと、多分いけないんじゃないかなと、これが多分相乗効果をもたらすのかなと思っています。
 ただ、小田切先生がおっしゃったように、例えば地域のことをよく知るようなカリキュラムとなった場合に、これは非常に質的な形でありまして、何か量的にすぐ評価が出るものとか、これは下手すれば相当年限がかかってくる話だと思いますが、私としてはこういうことはやっていく意味はあるのではないかと思っていますが、さっきもお話しが出たように、あまり量的にはかるのが難しいとか、非常に長期にわたる活動が必要だとか、何となく地域力向上にはそっちのほうが大事なような気がするんですが、このへんの量的にすぐ1年とかで成果が出ないものに対する政策の扱いというものは、どのように今お考えなのでしょうか。

【月尾座長】  難しい質問ですが、審議官から御願いします。

【椎川地域力創造審議官】  先ほど私どもが現在取り組んでいる施策の中で「子ども農山漁村交流プロジェクト」、これも大変時間のかかるプロジェクトだと思いますけど、これこそやっていかなければならないし、続けていけば成果が出ることだと私自身思っていまして、飯盛先生のおっしゃったとおり、すぐに効果が出るとか量的にはかれるとかということだけではなくて、やっぱり今まで取り組めなかったことについても地道に積み上げていくというような施策展開というのも当然必要だろうと思っておりまして、逆に言うと、役所という組織はポストが3年置きに変わるとかということで、なかなかそういうことが今までできにくかった面もあろうかと思いますが、まさに本部もつくり、有識者会議というものもつくってご協力いただいているということは、そういうことではないかなと思っております。

【飯盛委員】  はい。

【月尾座長】  大臣のお話にもありましたが、我々の生活は未来から資源を奪って生活をしている面も強く、この視点で考えていくことも大事だと思います。私は世界各地の先住民族を訪ねてテレビ番組をつくっていますが、アメリカインディアンは7代先まで考えて物事を決めるという基本的な哲学があります。つまり現在のことだけを考えるのではなく、7代先の子孫の生活まで考えて行動するということです。例えば土地を売ればどうなるか、ダムをつくればどうなるかということを未来からの視点で考えたらいいと思います。それから地域の方々の不満は、子供を大学まで育てるのは地域の負担だということです。例えば、地方の人が都会へ子供を4年制大学に通わせると、大体1000万負担しているということのようです。ところが卒業した子供は都会にとられてしまって地域に貢献してくれないという不満が強いのです。そういうことも地域力の中で考えていく必要があると思います。

【小田切委員】  2つのことを申し上げて、あるいは場合によってはこれは調査をしていただきたいと思うんですが、一つは先ほどから地域力というのは自分たちで発見して自分たちで問題を解決する力。これは私の言葉で言わせれば当事者意識だと思うんです。地域の当事者意識がすべて出発点だろうと思っています。その点で、この当事者意識を身につけていくためにワークショップという手法が大変効果を持っているという、これはいろいろなところで実証されているんだろうと思います。
 日本語では地元力と言われたり、集落点検活動と言われたり、あるいは過疎対策室では地区力点検なんて言っていただいているわけなんですが、さまざまな自治体がこういうワークショップをするために支援をしたり、国レベルでもそういう動きが出ているわけなんですが、果たしてこういうワークショップがどのぐらいの広がりを持っているのか。ワークショップが実施されている割合が低いのか高いのか、高いにもかかわらず動きがないのかということは、スタートラインをチェックする意味で考えてよいことだろうと思っています。その点で、西村先生はワークショップの専門家でもございますが、このあたりの量的な調査が、つまりどのぐらいの面的なカバーをしているのか、それができればしていただければありがたいと思っております。
 それから2つ目が、今のこととも関連するんですが、今般の過疎対策室が出しました集落支援員の制度を特別交付税で対応するという、これは私は画期的だろうと思っております。人材に対して金をつける、人材が動くことに対して金をつけるという、これはもちろん大変重要なことだと認識されていながらなかなかできない。人件費支援というのは恒常的支援になりやすいんだということで財政当局が一番嫌がるといいましょうか、なかなか突破できなかったわけですが、今般突破していただいて、いささか大げさに表現すれば、革命的な力を持っている、あるいは効果も高いものだろうと期待しているわけなんですが、このような人材に対して派遣する際にお金を投入するといいましょうか、総務省でもおやりになっているわけなんですが、これがほかの省庁あるいは自治体にどのくらいの広がりを持っているのか。先ほど申し上げたワークショップと同様に、不十分なのか、あるいは十分行われていながらワークしていないのか、その辺のチェックもしていただきたいと思います。

【月尾座長】  ありがとうございました。

 時間の関係で、もう一人だけ、ご発言いただけると思います。江尻委員、お願いします。

【江尻委員】  私はごみの問題をずっとやりながら、地域の人たちや全国の方たちといろいろな話をしているんですけれども、その中で、先ほど名和田先生がおっしゃった自治会、町内会の加入率の話というのは、実はごみ問題を地域の中に定着させていくときに地元のそういった組織がないのでなかなか広がらないということと、それから都会でよく言われるのが、新しいマンションが建つとそのマンションが全然自治会の中に入ってくれないので地元が活性化しないというような話をよく聞きます。
 一方でNPOのいろいろな仲間たちと話をする中で、自治会の組織と新しいNPOの考え方というものがどこかで一緒にならないと、町というものはつくられていかないねというような話をよくするんですけれども、じゃ、なぜ自治会がだめになったのかということを考えたときに、おそらく豊かになり過ぎてしまったのではないかなというのが、今私たちの持っている一つの結論なんです。
 そこで、豊かではなくすること、いわゆる少しハングリーな精神というものをどこかで見つけていくこと。例えば私たちの町の中で、ここが足りないとか、ここの部分を補完するともっと力になるとかいう何か見えるようなものがないと、自治会組織はこのまま多分なくなっていってしまうのではないかなと。みんなお金さえ出せば困っていることはそこで解決がつくというような状況になってきてしまって、これをよいとすべきかどうかというところは議論されなくてはいけないのではないかなということを、よく仲間たちと話しています。
 ですから、地域の中でその地域の人たちが、もちろん外からこういった大きな会議が入っていって、そして仕組みを提案していくのは大変大事なことだと思うんですけれども、それと同時に、そこの地域、現場の人たちが、何を考え何を不足としているのかというところをよく見ながら施策をつくっていかないと、結局は補助金がなくなってしまったらばそれで終わりになってしまったという、今までも幾つもそういう事例はあると思うんですけれども、そんな状況になってしまうのではないかなと思います。
 意見として申し上げました。

【月尾座長】  ありがとうございました。
 それではこの程度にさせていただきますが、いろいろな意見をくみ上げながら政策にしていきたいと思います。一つは大臣がご指摘されたように未来から考えるということですが、最近バックキャスティングという言葉が流行気味です。普通はフォアキャスティングで現在から未来を考えるのですが、未来がどうあればいいかというよう視点から現在をどうすればいいかということを考えるという方法です。これは環境問題について言われ始めたことですが、地域についても同じような考え方が必要だと思います。目先の問題が大変で、財政破綻とか、人口減少への対策を考えがちですが、7代先かまでかはわかりませんが、どういう社会を我々はつくればいいかということを考えて、現在はどうすればいいかを、政策にできればというのが一点です。
 具体的な課題としては、地域を元気にしている人や事例のデータベースを省庁横断的に検討いただくことです。また、外国の人材をどう使っていくかというようなことについても、国の制度として移民の問題まで含めて検討していただくことも必要だと思います。人口が減っていく社会の中では重要な問題だと思いますので、お考えいただければと思います。それ以外にも多くのご意見をいただきましたが、それらを反映させていきたいと思います。
 今後の予定について、事務局からお願いします。

【市橋地域政策課長】  それでは今後の日程につきまして、ご説明申し上げます。
 お手元の資料に、首長アンケートの概要があると思いますが、現在このアンケートを実施しているところでございます。今後取りまとめまして、この会議でのご議論の参考にさせていただければと思っております。
 また、次回につきましてはゲストスピーカーをお招きし、意見もお聞きしたいと考えてございます。人選ですとか、あるいは今日出たご意見を踏まえまして、どういう次回の持ち方をするかにつきまして、座長と改めてご相談させていただきたいと考えております。
 次回の日程でございますが、12月15日月曜日13時から、この同じ場所で行いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。

【月尾座長】  大臣、最後に一言御願いします。

【鳩山総務大臣】  ご議論を承っておりまして、大変幅広い、この幅広さがこの会議の特徴なんだろうと。最後まで幅広く議論をしていただいて、おまとめをいただければありがたいと思うことと、月尾先生からバックキャスティングの話がありましたけれども、要するに先生がつくられた地球カレンダーを見ますと、46億年の歴史を1年間に置きかえてみれば、恐竜の時代というのは12月の10日から25日あたりです。これが1億年以上にわたるわけですが、だから現生人類があらわれたのは12月31日の午後、夕方近くだと思いますが、恐竜のほうが人間よりも頭がよかったのかなというぐらいの自然破壊の状況ですから、ぜひともバックキャスティングでお願いしたいと思います。

【月尾座長】  ありがとうございました。
 それでは第1回目を終わらせていただきます。ご参加ありがとうございました。


速記担当:株式会社大和速記情報センター

加藤 波

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