第3部 最近の地方財政の動向と課題

1 三位一体の改革

(1) 改革の背景

 現在の地方財政の構造は、地方公共団体が行政サービスの提供主体として大きな役割を果たしている反面、地方税収入の構成比については、平成18年度地方財政計画においては4割程度にとどまっている。今後、地方分権の更なる推進を図るためには、地方公共団体の安定的な財政運営に必要な一般財源を中心とした歳入体系を構築するとともに、地方歳出に対する法令基準や国庫補助負担制度を通じた国の関与の廃止・縮減を進め、歳入・歳出の両面において、地方の自由度を高め、地方の自立に向けた構造改革の実現に取り組む必要がある。

 このうち歳入面については、地方における歳出規模と地方税収入とのかい離をできるだけ縮小するという観点に立って、自主財源である地方税を基本としつつ、国からの財源への依存度合いをできるだけ縮小し、より自立的な財政運営を行えるようにすることが望ましい。このことは、地域における行政サービスによる受益と負担の対応関係のより一層の明確化と国・地方を通じる行政改革や財政構造改革の推進にもつながるものと考えられる。

 このような地方の自立に向けた構造改革を推進するためには、国庫補助負担金、税源移譲を含む税源配分のあり方、地方交付税を相互に関連付けつつ検討し、これらを一体的に見直すことが必要である。この「三位一体の改革」は、地方分権の理念を踏まえ、地方の自主財源を充実し、地方の創意工夫と責任に基づく政策決定を進め、地域の真の自立を目指すものである。

(2) 平成14年度における改革の経過

 三位一体の改革については、平成14年6月25日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」において、「国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり方を三位一体で検討し、それらの望ましい姿とそこに至る具体的な改革工程を含む改革案を、今後一年以内を目途にとりまとめる」こととされた。

 これを受け、平成15年度予算においては、改革の「芽出し」として、義務教育費国庫負担金の負担対象経費について、共済長期給付及び公務災害補償に係る部分(2,184億円)を一般財源化することとした。また、在宅福祉事業費補助金のうち生きがい援助員の配置費に係る部分や介護保険事業費補助金のうち介護保険制度施行支援事業費等に係る部分等の国庫補助金(160億円)を一般財源化することとした。これらに伴う所要財源(2,344億円)については、その2分の1は地方特例交付金により、残りの2分の1は地方交付税の増額(交付税特別会計借入金により対応し、償還費の4分の3を国が負担)により、暫定措置を講じることとした。

 一方、市町村道整備に係る国庫補助負担金については、原則廃止することとし、ネットワーク関連や市町村合併など特別の観点で行うものに限定するとともに、採択基準を都道府県並み(5億円以上)に引き上げることとした。これに伴う影響については、直轄事業による高速道路整備に係る地方負担の導入に伴う影響と合わせて財源措置を講じることとし、自動車重量譲与税の譲与割合を現行の4分の1から3分の1に引き上げることにより、所要の税源を地方に移譲するとともに、地方道路譲与税の都道府県と市町村(一部事務組合等を除く。以下この章において同じ。)との間の配分を見直すこととした。

(3) 平成15年度における改革の経過

 平成15年6月27日に閣議決定された「基本方針2003」においては、改革によって達成されるべき「望ましい姿」として地方の一般財源の割合の引上げ、地方税の充実・地方交付税への依存の引下げ及び効率的で小さな政府の実現が、また、具体的な改革工程として国庫補助負担金の改革、税源移譲を含む税源配分の見直し及び地方交付税の改革が示された。

 これを受け、平成16年度予算においては、約1兆300億円の地方公共団体向けの国庫補助負担金の改革を実施することとし、児童保護費等負担金のうち公立保育所運営費分(1,661億円)、介護保険事務費交付金(305億円)、軽費老人ホーム事務費補助金(167億円)など、その対象事業を引き続き地方が主体となって実施する必要のある国庫補助負担金(計2,440億円)については、平成16年度から一般財源化することとした。これに伴う所要財源のうち、税源移譲対象額として精査した額(2,198億円)と、平成15年度予算において改革の「芽出し」として行われた国庫補助負担金の一般財源化に伴う影響額(2,344億円)のうち、国負担とされた額(2,051億円)とを併せ、4,249億円を税源移譲することとし、平成18年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施するまでの当面の措置として創設した所得譲与税により移譲することとした。これに伴い、平成15年度予算において講じた国庫補助負担金の一般財源化に伴う財源措置は廃止することとした。また、義務教育費国庫負担金及び公立養護学校教育費国庫負担金のうち退職手当及び児童手当に係る部分(2,309億円)については、暫定的に一般財源化を行うこととし、税源移譲予定特例交付金を設け、地方の財政運営に支障が生じないよう財源措置を講じることとした。

 また、地方の歳出の徹底的な見直しを図り、地方財政計画の歳出を前年度と比べて1兆5,438億円抑制することにより地方交付税総額を抑制することとした。

(4) 平成16年度における改革の経過

 平成16年6月4日に閣議決定された「基本方針2004」においては、「基本方針2003」に掲げられた基本的な方向に沿って、着実に改革を推進していくこととされた。同方針においては、平成18年度までの三位一体の改革の全体像を平成16年秋に明らかにし、年内に決定することとされたうえで、税源移譲については概ね3兆円規模を目指し、平成18年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施すること、国庫補助負担金の改革については税源移譲に結び付く改革、地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大する改革を実施すること、地方交付税については、地方公共団体の改革意欲を削がないよう、国の歳出の見直しと歩調を合わせて地方の歳出を見直し抑制する一方、地域において必要な行政課題に対しては適切に財源措置を行うこと等が示された。

 これらの指針に基づき、平成16年6月9日、政府は「平成18年度までの三位一体の改革の全体像」の作成に当たり、地方六団体(全国知事会、全国都道府県議会議長会、全国市長会、全国市議会議長会、全国町村会及び全国町村議会議長会)に国庫補助負担金改革の具体案の取りまとめを要請した。これを受け、地方六団体は、平成16年8月24日、「国庫補助負担金等に関する改革案」を取りまとめ、政府に提出した。具体的には、平成17年度及び平成18年度における国庫補助負担金等の改革については、移譲対象補助金を3.2兆円、税源移譲額を3兆円程度(ただし、平成16年度削減に見合う税源移譲は別途措置)とすること等を提案した。これらの提案を受けた政府は、地方の意見を真摯に受け止め、関係大臣及び地方六団体が議論を行う「国と地方の協議の場」を設け、8回にわたり協議を行った。

 このような経緯を経て、平成16年11月26日、政府及び与党は、地方六団体の提案を真摯に受け止めることを基本としつつ、平成18年度までの三位一体の改革の全体像について合意(「三位一体の改革について」平成16年11月26日政府・与党。以下「全体像に関する政府・与党合意」という。)に達し、当該合意に基づき以下のとおり平成17年度及び平成18年度における具体的な改革の姿が明らかになった。

(ア) 平成18年度までの改革の全体像

(i) 国庫補助負担金の改革

 「基本方針2004」及び全体像に関する政府・与党合意においては、平成17年度及び平成18年度に地方公共団体に対する国庫補助負担金について3兆円程度の廃止・縮減等の改革を実施することとされた。

 このうち、義務教育制度については、「その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する。こうした問題については、平成17年秋までに中央教育審議会において結論を得る」こととされた。

 一方、国民健康保険については、地方への権限移譲を前提に、都道府県負担を導入することとされた。国の関与の必要のない小規模事業等については廃止・縮減等を行い、公共投資関係の補助金の交付金化については、省庁の枠を越えて一本化するなど、地方の自主性・裁量性を向上させることとされた。

 なお、平成17年中に、「(1) 生活保護・児童扶養手当に関する負担金の改革 (2) 公立文教施設等、建設国債対象経費である施設費の取扱い (3) その他」について検討を行い、結論を得ることとされた。

(ii) 税源移譲を含む税源配分の見直し

 税源移譲については、平成16年度予算において所得譲与税及び税源移譲予定特例交付金として措置した額を含め、概ね3兆円規模を目指すこととされた。この税源移譲は、平成18年度税制改正において、所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実現することとされた。これは、個人住民税所得割の税率をフラット化することを基本として実施し、併せて、国・地方を通じる個人所得課税のあり方の見直しを行うこととされた。

(iii) 地方交付税の改革

 地方交付税については、平成17年度及び平成18年度は、地域において必要な行政課題に対しては適切に財源措置を行うなど「基本方針2004」を遵守することとし、地方公共団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保することとされた。また、決算を早期に国民に分かりやすく開示するとともに、平成17年度以降、地方財政計画の計画と決算のかい離を是正し、適正計上を行い、そのうえで中期地方財政ビジョンを策定することとされた。さらに、不交付団体(人口)の割合の拡大に向けた改革を検討するとともに、引き続き地方交付税の算定方法の簡素化、透明化に取り組み、また算定プロセスに地方関係団体の参画を図ることとされた。

(イ) 平成17年度における改革の姿

 以上の全体像等に基づき、平成17年度予算において実施することとされた改革の姿は以下のとおりである。

(i) 国庫補助負担金の改革

 国民健康保険国庫負担、養護老人ホーム等保護費負担金、公営住宅家賃対策等補助のうち公営住宅家賃収入補助分など、税源移譲に結びつく改革に係るもののうち、暫定措置とされた義務教育費国庫負担金の減額分(4,250億円)を除いた国庫補助負担金(合計6,989億円)について、平成17年度から一般財源化することとし、所要の事業費について、その全額を地方財政計画に計上するとともに、地方交付税の基準財政需要額に算入することとされた。また、義務教育費国庫負担金については、4,250億円を暫定的に減額することとされた。

 他方、税源移譲に結びつく改革に加え、3,011億円のスリム化の改革及び3,430億円の交付金化の改革を行うこととされた。このうち交付金化の改革については、関係省庁の枠を越えて一本化した新たな交付金として、汚水処理施設整備交付金、道整備交付金及び港整備交付金を創設するほか、次世代育成支援対策施設整備交付金、地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金、地域住宅交付金、循環型社会形成推進交付金等を創設することとされた。

(ii) 税源移譲を含む税源配分の見直し

 税源移譲に結びつく改革のうち、暫定措置とされた義務教育費国庫負担金の減額相当分を除いた国庫補助負担金について、税源移譲額として精査した額(6,910億円)は、所得譲与税として税源移譲することとされた。この結果、平成17年度の所得譲与税は、平成15年度予算及び平成16年度予算の国庫補助負担金改革に伴うもの(4,249億円)を含め、1兆1,159億円とすることとされた。この譲与税は、国庫補助負担金の改革内容等を踏まえ、都道府県へ総額の5分の3、市町村へ総額の5分の2を譲与することとし、各都道府県及び市町村への譲与基準は、平成16年度予算と同様、人口によることとされた。

 また、義務教育費国庫負担金の減額相当分(4,250億円)については、平成16年度予算から措置された退職手当及び児童手当の暫定的一般財源化分(平成17年度所要額2,042億円)に加えて、税源移譲予定特例交付金により措置することとされた。この減額相当分に係る交付金は、教職員給与費を基本として交付することとされた。

(iii) 地方交付税の改革

 「地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保する」との全体像に関する政府・与党合意に基づき、平成17年度の地方交付税については、総額16兆8,979億円と平成16年度以上の額を確保することとされた。

 また、税源移譲等に伴う財政力格差拡大に適切に対応するため、税源移譲等に伴う増収分は、当面基準財政収入額に100%算入することとされた。

 これらに加え、ハードからソフトへと政策転換を進める地方の実情に応じ、地方財政計画歳出の投資的経費(単独事業費)を7,000億円減額(一般財源ベースで3,500億円)する一方、一般行政経費(単独事業費)を3,500億円(全額一般財源)増額することにより、地方財政計画と決算の一体的なかい離是正を行うこととされた。

 なお、地方交付税の算定方法については、引き続き簡素化・透明化に取り組むとともに、地方公共団体の自主的、自立的、効率的な財政運営を促す方向で必要な措置を講じることとされた。

(5) 平成17年度における改革の経過

 平成17年6月21日に閣議決定された「基本方針2005」においては、全体像に関する政府・与党合意及び累次の「基本方針」を踏まえ、平成18年度までに改革を確実に実現するため、税源移譲については概ね3兆円を目指すこと、国庫補助負担金改革については、税源移譲に結びつく改革・地方の裁量度を高め自主性を大幅に拡大する改革を実施するため、残された課題について平成17年秋までに結論を得ること、地方交付税については、国の歳出の見直しと歩調を合わせて、地方歳出を見直し抑制する等の改革を行うこと等が示された。

 これらの指針に基づき、3兆円規模の税源移譲の実現を目指し、国庫補助負担金改革について「残された課題」(暫定とされた義務教育費国庫負担金の取扱い、生活保護・児童扶養手当に関する負担金の改革、公立文教施設等、建設国債対象経費である施設費の取扱い、残り約6,000億円の税源移譲に結びつく国庫補助負担金の改革)に取り組むために、前年に引き続き地方六団体から提出された「国庫補助負担金等に係る改革案(2)」(平成17年7月19日に取りまとめられ、7月20日に地方六団体会長から内閣総理大臣に提出)を政府は真摯に受け止めることを基本としつつ、5回にわたり国と地方の協議の場を開催した。

 このような経緯を経て、平成17年11月30日、政府及び与党は、三位一体の改革について再び合意(「三位一体の改革について」平成17年11月30日政府・与党。以下「平成17年度政府・与党合意」という。)に達した。これに基づき、平成18年度予算においては、以下のとおり改革を実施することとされている。

(i) 国庫補助負担金の改革

 国庫補助負担金の改革については、全体像に関する政府・与党合意において平成18年度までに行うことを決定済みの改革に加え、6,544億円の税源移譲に結びつく改革を行うこととされている。そして、既決定分の国庫補助負担金の改革に加え、この税源移譲に結びつく改革、さらにスリム化の改革及び交付金化の改革を進めることにより、4兆円を上回る国庫補助負担金の改革を達成することとしている。これにより、平成16年度から平成18年度までの国庫補助負担金改革の合計額は、4兆6,661億円となっている。

 このうち、税源移譲に結びつく改革については、その全額を地方財政計画に計上するとともに、施設整備費の一般財源化に伴い特別の地方債が充てられるものを除き、地方交付税の基準財政需要額に全額を算入することとされている。また、これに伴い、3兆94億円を所得譲与税として税源移譲するとともに、地方交付税の基準財政収入額に全額を算入することとしている。

 以上により、税源移譲に結びつく改革として1兆2,844億円の改革を行うほか、3,183億円の交付金化の改革、2,640億円のスリム化の改革を行うこととされている。

 議論の焦点となった主な国庫補助負担金についてみると、義務教育費国庫負担金については、義務教育制度の根幹を維持し、当該国庫負担制度を堅持するとの方針の下、費用負担について、小中学校を通じて国庫負担の割合は3分の1とし、8,467億円の減額及び税源移譲を実施することとしている。また、今後、与党において、義務教育や高等学校教育等の在り方、国、都道府県、市町村の役割について引き続き検討することとされている。

 社会保障の分野に関しては、児童扶養手当、児童手当、施設整備費及び施設介護給付費等について、国庫補助負担金の改革及び税源移譲を実施することとされている。児童扶養手当給付費負担金については国庫負担率を4分の3から3分の1に引き下げ、児童手当国庫負担金については国庫負担率を3分の2から3分の1に引き下げることとしている。なお、生活保護については、国庫負担率の引き下げは行わないこととされ、国は、関係者協議会において地方から提案があり、両者が一致した適正化方策について速やかに実施するとともに、地方は適正化について真摯に取り組むこととされている。

 一方、建設国債対象経費である施設整備費については、消防防災施設整備費補助金、公立学校等施設整備費補助金、地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金、資源循環型地域振興施設整備費補助金等の国庫補助負担金を税源移譲の対象とすることとされている。そして、その際には、廃止・減額分の5割の割合で税源移譲を行うものとしている。また、上記の施設費について、廃止・減額し、税源移譲を行う場合には、関連する運営費等の経常的経費についても併せて見直しを行うこととされている。

 なお、税源移譲することとされている施設整備費に係る国庫補助負担金のうち、公立学校等施設整備費補助金(不適格建物改築事業に限る)、次世代育成支援対策施設整備交付金(公立保育所に限る)及び地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金(都道府県交付金)等については、地方公共団体において引き続き必要な事業を円滑に実施できるよう、従来の補助金相当分(沖縄振興特別交付金により措置されるものを除く補助率かさ上げ分を含む。)について、特別の地方債を充当し、当該地方債の元利償還金については、後年度その100%を地方交付税の基準財政需要額に算入することとされている。

(ii) 税源移譲を含む税源配分の見直し

 税源移譲については、これまでの国庫補助負担金の改革の結果を踏まえ、3兆円規模とすることとされている。これは、2兆3,990億円程度の既決定分(全体像に関する政府・与党合意で決定済みのもの及び平成16年度分の合計額)に加え、新たに6,100億円程度の税源移譲(合計3兆90億円程度)を行うことによって、実施することとしている。

 この税源移譲は、平成18年度税制改正において、個人住民税所得割の税率を10%比例税率化すること等により、所得税から個人住民税への恒久措置として行い(平成19年分の所得税及び平成19年度分の個人住民税から適用)、平成18年度予算においては、税源移譲額の全額を所得譲与税によって措置することとされている。

(iii) 地方交付税の改革

 極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、累次の「基本方針」や「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)等に沿って、歳出全般にわたり厳しく見直しを行い、平成18年度の地方の一般歳出の規模は、対前年度比1.2%の減(児童手当拡充分等を除いた場合2.0%の減)とし、歳出総額の計画的な抑制を図っている。このように、地方財政計画の規模の抑制に努めることにより、財源不足額の圧縮を図ることとする一方、国と地方の信頼関係を維持しながら三位一体の改革を着実に推進するため、安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税等の一般財源等(ここにいう一般財源等とは、地方税、所得譲与税を除く地方譲与税、地方特例交付金、地方交付税及び臨時財政対策債の合計額である。)の総額として、平成18年度は、55兆6,334億円を確保している(対前年度比204億円増加)。

 また、平成18年度においても、ハードからソフトへと政策転換を進める地方の実情に応じ、平成17年度に引き続き、地方財政計画歳出の投資的経費に係る地方単独事業費を2兆円(一般財源ベースで1兆円)減額する一方、一般行政経費に係る地方単独事業費を1兆円(全額一般財源)増額することにより、地方財政計画と決算の一体的なかい離是正を行うこととしている。

 地方交付税の算定の改革については、平成18年度において以下の措置を講じることとしている。

(1) 地方公共団体の経営努力に対応した算定について、行政改革による歳出削減や徴税の取組強化に伴い増加する経費に係る算定を引き続き実施するとともに、更なる拡充を行うこと。

(2) 単位費用の算定に当たり、ごみ収集等についてアウトソーシング後の経費を算定の基礎とする見直しを引き続き進めること。

(3) 都道府県分について、道路橋りょう費(道路の面積)の種別補正、恩給費(恩給受給者数)の種別補正、高齢者保健福祉費(65歳以上人口)の人口急増補正の補正係数を廃止すること。

(4) 都道府県分に続き、大都市分の算定の簡素化を検討すること。

 三位一体の改革については、「地方にできることは地方に」という方針の下、平成18年度までに、4兆円程度の国庫補助負担金改革、3兆円規模を目指した税源移譲、地方交付税の見直しの確実な実現を図るため、地方の意見を真摯に受け止め、検討を進めてきた。

 この結果、約4.7兆円の国庫補助負担金の改革、約3兆円の税源移譲、約5.1兆円の地方交付税及び臨時財政対策債の改革等を行うこととなり、三位一体の改革全体として、国から地方への3兆円規模の税源移譲が実現することとなった点については、地方からも「画期的であり、今後の地方分権を進める上で大きな前進である。」と評価されている。

 地方分権に向けた改革に終わりはない。今後とも、平成18年度までの改革の成果を踏まえつつ、さらに地方分権を推進し、国・地方を通じた行財政改革を進める観点から、真に地方の自立と責任を確立するための取組を行っていくことが重要である。