資料3 三位一体の改革について
国と地方に関する「三位一体の改革」を推進することにより、地方の権限と責任を大幅に拡大し、歳入・歳出両面での地方の自由度を高めることで、真に住民に必要な行政サービスを地方が自らの責任で自主的、効率的に選択できる幅を拡大するとともに、国・地方を通じた簡素で効率的な行財政システムの構築を図る。
政府・与党は、「基本方針2004」に基づき、地方案を真摯に受け止め、平成18年度までの三位一体の改革の全体像について、下記のとおり合意する。
国庫補助負担金改革については、平成17年度及び平成18年度予算において、3兆円程度の廃止・縮減等の改革を行う。
税源移譲は、別紙1のとおり、平成16年度に所得譲与税及び税源移譲予定特例交付金として措置した額を含め、概ね3兆円規模を目指す。この税源移譲は、所得税から個人住民税への移譲によって行うものとし、個人住民税所得割の税率をフラット化することを基本として実施する。あわせて、国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しを行う。また、地域間の財政力格差の拡大について確実な対応を図る。
地方交付税については、平成17年度及び平成18年度は、地域において必要な行政課題に対しては適切に財源措置を行うなど、「基本方針2004」を遵守することとし、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保する。あわせて、2010年代初頭における基礎的財政収支の黒字化を目指して、国・地方の双方が納得できるかたちで歳出削減に引き続き努め、平成17年度以降も地方財政計画の合理化、透明化を進める。税源移譲に伴う財政力格差が拡大しないようにしつつ、円滑な財政運営、制度の移行を確保するため、税源移譲に伴う増収分を、当面基準財政収入額に100%算入(現行75%)する。決算を早期に国民に分かりやすく開示する。平成17年度以降、地方財政計画の計画と決算の乖離を是正し、適正計上を行う。その上で、中期地方財政ビジョンを策定する。不交付団体(人口)の割合の拡大に向けた改革を検討する。引き続き交付税の算定方法の簡素化、透明化に取り組む。また、算定プロセスに地方関係団体の参画を図る。
記
1.国庫補助負担金の改革について
(1) 総額
平成17年度予算、平成18年度予算において、地方向け国庫補助負担金について3兆円程度の廃止・縮減等の改革を別紙2のとおり行う。
(2) 各分野
文教
(1) 義務教育制度については、その根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持する。その方針の下、費用負担についての地方案を活かす方策を検討し、また教育水準の維持向上を含む義務教育の在り方について幅広く検討する。
こうした問題については、平成17年秋までに中央教育審議会において結論を得る。
(2) 中央教育審議会の結論が出るまでの平成17年度予算については、暫定措置を講ずる。
社会保障
(1) 国民健康保険については、地方への権限移譲を前提に、都道府県負担を導入する。
公共等その他
(1) 国の関与の必要のない小規模事業等については、廃止・縮減等を行う。
(2) 公共投資関係の補助金の交付金化については、省庁の枠を越えて一本化するなど、地方の自主性・裁量性を格段に向上させる。地域再生の取り組みにおいても三位一体の改革に資するものとなるよう留意する。
(3) 歴史的、地理的、社会的事情等の特殊事情に鑑み、沖縄等特定地域において講じられている補助制度に係る特例措置については、その趣旨を踏まえ必要な措置を講ずる。
(3) 国による基準・モニター等チェックの仕組み
補助負担金の廃止・縮減によって移譲された事務事業については、地方団体の裁量を活かしながら、確実に執行されることを担保する仕組みを検討する。
2.税源移譲について
税源移譲は、別紙1のとおり、平成16年度に所得譲与税及び税源移譲予定特例交付金として措置した額を含め、概ね3兆円規模を目指す。
この税源移譲は、所得税から個人住民税への移譲によって行うものとし、個人住民税所得割の税率をフラット化することを基本として実施する。あわせて、国・地方を通じた個人所得課税の抜本的見直しを行う。また、地域間の財政力格差の拡大について確実な対応を図る。
3.地方交付税の改革について
(1) 平成17年度、平成18年度は、地域において必要な行政課題に対しては、適切に財源措置を行うなど「基本方針2004」を遵守することとし、地方団体の安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の総額を確保する。あわせて、2010年代初頭の基礎的財政収支黒字化を目指して、国・地方の双方が納得できるかたちで歳出削減に引き続き努め、平成17年度以降も地方財政計画の合理化、透明化を進める。
(2) 税源移譲に伴う財政力格差が拡大しないようにしつつ、円滑な財政運営、制度の移行を確保するため、税源移譲に伴う増収分を、当面基準財政収入額に100%算入(現行75%)する。
(3) 決算を早期に国民に分かりやすく開示する。平成17年度以降、地方財政計画の計画と決算の乖離を是正し、適正計上を行う。その上で、中期地方財政ビジョンを策定する。
(4) 不交付団体(人口)の割合の拡大に向けた改革を検討する。
(5) 引き続き交付税の算定方法の簡素化、透明化に取り組む。また、算定プロセスに地方関係団体の参画を図る。
4.国による関与・規制の見直し
地方からの提言に係る国による関与・規制の見直しについては、別紙3のとおりとする。
併せて、地方公共団体の事業執行の円滑化、事務負担の軽減の観点から、地方公共団体のニーズを踏まえ、地方公共団体向け補助金等の執行過程における適正化等について、別紙4の措置を講ずる。
5.その他
上記について、経済財政諮問会議において、適切にフォローアップ(追跡調査)を行う。
別紙1
1.概ね3兆円規模の税源移譲を目指す。
2.概ね3兆円規模の税源移譲のうち、その8割方について次のとおりとする。
・義務教育費国庫負担金(暫定) | 8,500億円程度 |
(平成17年度分(暫定) | 4,250億円) |
・国民健康保険 | 7,000億円程度 |
・文教(義務教育費国庫負担金を除く) | 170億円程度 |
・社会保障(国民健康保険を除く) | 850億円程度 |
・農水省 | 250億円程度 |
・経産省 | 100億円程度 |
・公営住宅家賃収入補助 | 640億円程度 |
・総務省、環境省 | 90億円程度 |
・平成16年度分 | 6,560億円程度 |
税源移譲額 合計 | 24,160億円程度 |
3.平成17年中に、以下について検討を行い、結論を得る。
(1) 生活保護・児童扶養手当に関する負担金の改革
(2) 公立文教施設等、建設国債対象経費である施設費の取扱い
(3) その他
(注)
(1) 生活保護費負担金及び児童扶養手当の補助率の見直しについては、地方団体関係者が参加する協議機関を設置して検討を行い、平成17年秋までに結論を得て、平成18年度から実施する。
(2) 公立文教施設費の取り扱いについては、義務教育のあり方等について平成17年秋までに結論を出す中央教育審議会の審議結果を踏まえ、決定する。
別紙2
|
取組み状況 |
概要 |
---|---|---|
内閣本府 |
10億円程度 |
生活情報体制整備等交付金、交通事故相談所交付金、民間資金等活用事業調査費補助金 等 |
総務省 |
90億円程度 |
消防防災設備整備費補助金(緊急消防援助隊関係設備分を除く)、地域情報通信ネットワーク基盤整備事業費補助金、情報通信システム整備促進費補助金 等 |
文部科学省 |
義務教育費国庫負担金 8,500億円程度の減額(暫定) (うち17年度分(暫定)4,250億円) |
減額相当分は税源移譲予定特例交付金(教職員給与費を基本に配分)により措置 |
その他の国庫補助負担金等 230億円程度 |
要保護及準要保護児童生徒援助費補助金、教員研修事業費等補助金、高等学校等奨学事業費補助金、学校教育設備整備費等補助金 等 |
|
厚生労働省 |
9,340億円程度 |
国民健康保険国庫負担、養護老人ホーム等保護費負担金、児童保護費等補助金(産休代替保育士費等補助金等)、在宅福祉事業費補助金(生活支援ハウス等)、社会福祉施設等施設整備費補助金・負担金 等 |
農林水産省 |
3,040億円程度 |
経営体育成基盤整備事業費補助、治山事業費補助、農道整備事業費補助、水土保全林整備治山事業費補助、協同農業普及事業交付金、農業委員会交付金 等 |
経済産業省 |
180億円程度 |
小規模企業等活性化補助金、中心市街地商業等活性化総合支援事業費補助金、産業再配置促進環境整備費補助金、輸入関連事業者集積促進事業費補助金 等 |
国土交通省 |
6,460億円程度 |
公営住宅家賃対策等補助(公営住宅家賃収入補助)、住宅産業構造改革等推進補助金、土地利用転換計画策定等補助金、土地分類調査費等補助金、特定賃貸住宅建設融資利子補給補助 等 |
環境省 |
530億円程度 |
環境監視調査等補助金、鳥獣等保護事業費補助金、廃棄物処理施設整備費補助 等 |
合計 |
28,380億円程度 |
(注) 28,380億円のうち 17,700億円は税源移譲につながる改革
4,700億円はスリム化の改革
6,000億円は交付金化の改革
別紙3
NO. |
省庁名 |
事例 |
各府省の対応 |
---|---|---|---|
1 |
厚生労働省 |
木造による社会福祉施設の整備が困難。 |
構造改革特区において入居者の安全が確保されている場合に容認している。 |
2 |
厚生労働省 |
幼稚園、保育所の施設設置基準が異なり、保育所は調理室をもうけることが義務づけられている。公立保育所についても基準の見直しがされていない。 |
構造改革特区において公立保育所の外部給食搬入を容認している。 |
3 |
農林水産省 |
中山間地域総合整備事業により整備した活性化施設では直売施設等が認められていない。 |
地域再生計画の申請があり、認定基準を満たす場合、活性化施設を直売施設などに転用することを認める。 |
4 |
財務省 |
国庫補助事業で整備した施設の目的外使用の場合、補助金を返還しなければならないため、ボランティア団体への貸出しができない。 |
合理性がある場合には、各省各庁の長の承認を受けることにより補助目的外に転用できる。なお、地域再生プログラムで認定を受ければ転用は可能。 |
5 |
経済産業省 環境省 |
廃棄家電の引取等に関する監督業務について地方公共団体は権限を有していない。 |
現行制度でも対応可能であるが、効果的運用等について真摯に検討する。 |
6 |
国土交通省 |
福祉のまちづくりでの地方の総合行政に際して、バリアフリー法による国の基準、審査、命令が障害となっている。 |
基準、審査の廃止、地方への権限移譲は困難だが、市町村のバリアフリー化の基本構想の作成を支援する。 |
7 |
厚生労働省 |
個別的労使紛争の解決が国の事務とされ、地方と競合している。 |
複数の機関がそれぞれの性格に合った機能を持ち、当事者が選択できるシステムとしている。 |
8 |
農林水産省 |
持続性の高い農業生産方式の導入に際して、地方の特性を生かすことができない。 |
持続性の高い農業生産方式の範囲(同方式を構成する技術)について、都道府県の要望を踏まえた拡充を行う。 |
9 |
国土交通省 農林水産省 |
海岸保全施設の整備が一体的にできない。 |
平成17年度から、大臣間協議等の活用による一体的な整備を推進する。 |
10 |
経済産業省 |
商工会議所の定款(役員及び部会部分)変更の認可権限が国と都道府県に分かれている。 |
地方からの提案の詳細、具体的なニーズ等を確認した上で、真摯に検討する。 |
NO. |
省庁名 |
事例 |
各府省の対応 |
---|---|---|---|
11 |
農林水産省 |
大規模な農地転用について国の許可、協議が必要。 |
農地制度改革の中で検討していく。 |
12 |
環境省 |
国定公園内の新たな遊歩道整備に係る計画変更が困難。 |
すでに規制は廃止されている。 |
13 |
国土交通省 |
新住宅市街地開発法に基づき造成した宅地の処分に関して、国交大臣との協議が必要だが、時間がかかり、迅速な処分が困難。 |
協議に係る都道府県等の負担軽減を図ることにより、迅速な処分を促進するよう検討を進める。 |
14 |
国土交通省 |
新住宅市街地開発法に係る土地利用計画の一部変更に時間を要し、迅速な処分が困難。 |
土地利用計画の柔軟な見直しを容易にすることにより、迅速な処分を促進するよう検討を進める。 |
15 |
国土交通省 |
新住宅市街地開発法に係る小規模宅地処分が困難。 |
民間事業者を積極的に活用することにより、迅速な処分を促進するよう検討を進める。 |
16 |
農林水産省 |
松くい虫の防除作業のための区域指定の協議に時間がかかる。 |
平成16年中に、協議期間を従来の30日から15日に短縮する。 |
17 |
厚生労働省 |
認可保育所の入所要件が障害となっている。 |
条例の定め等によって現行制度でも対応可能である。 |
18 |
国土交通省 農林水産省 環境省 |
地方公共団体の各種基本計画にかかる国の関与が障害となっている。 |
必要な措置であり廃止困難であるが、必要に応じて、協議時間の短縮化、地方公共団体の負担軽減のための措置を検討する。(国土交通省、農林水産省、環境省) |
19 |
厚生労働省 |
職業能力開発校の設置が義務づけられており、利用者が少なくなっても廃校できない。 |
職業訓練の機会が十分確保されないおそれがあり、廃止できない。 |
20 |
各府省 |
国から地方公共団体への資料提出要求が後を絶たず、地方の過大な負担になっている。 |
各府省において、地方の指摘を踏まえ、地方公共団体の過重な負担にならないよう適切に運用すべき。(総務省) |
(注) 地方六団体の「国庫補助負担金等に関する改革案」(別表3)について、各府省から提出された検討結果等をまとめたものである。
別紙4
地方公共団体向け補助金等(以下「補助金等」という。)の執行については、地方公共団体の事業執行の円滑化、事務負担の軽減の観点から、これまでも各般の措置がとられてきているが、現状においてもなお不十分であるとの地方の声を国として真摯に受け止め、そのニーズを踏まえた抜本的な改善を図るために、以下の措置を講ずるものとする。
○ 補助金等の交付決定については、年度後半とりわけ年度末近くに行われている補助金等が少なくない現状に鑑み、できる限り第1四半期に行うように努め、遅くとも原則上半期に行う。
また、補助金等の交付についても、概算払い等を可能な限り活用し、上記の趣旨を踏まえ、地方公共団体の円滑な事業執行に資するよう早期に行う。
○ 地方向け補助金等の交付申請手続きについては、事前手続も含め、一層簡素化することとし、各省各庁において地方の要望を聴取し、各大臣が責任を持って具体的改善を図る。
○ なお、地方公共団体の事業執行の円滑化、事務負担の軽減のみならず、自主性の尊重の観点からも、できる限り地方の裁量権を確保できる仕組みとなるような交付金化等を図る。
これらは、地方のみならず、国の行政効率化にも著しく資することを踏まえ、その実現のため、各大臣は自らリーダーシップをとって改革に取り組み、実施状況を官房長官に報告することとする。