第2部 平成18年度及び平成19年度の地方財政

1 平成18年度の地方財政

 平成18年度の地方財政を取り巻く環境及びその運営状況は、次のとおりである。

(1) 平成18年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成18年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成17年12月19日に閣議了解、平成18年1月20日に閣議決定された。

 これによると、平成17年度の我が国経済は、企業部門の好調さが、雇用・所得環境の改善を通じて家計部門へ波及しており、民間需要中心の緩やかな回復が続くと見込まれた。こうした結果、平成17年度の国内総生産の実質成長率は2.7%程度(名目成長率は1.6%程度)になると見込まれた。

 このような情勢認識に立って、平成18年度の経済財政運営の基本的態度については、「改革なくして成長なし」、「民間にできることは民間に」、「地方にできることは地方に」との方針の下、平成17年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(以下「基本方針2005」という。)等に基づき、郵政民営化の着実な実施、政策金融改革、総人件費改革、資産・債務改革、市場化テストによる民間への業務開放・規制改革等を通じ「小さくて効率的な政府」を実現するとともに、規制・金融・税制・歳出等の改革を推進するなど、各分野にわたる構造改革を断行し、こうした取組を進めることにより、経済活性化を実現し、民間需要主導の持続的な経済成長を図ることとされた。また、デフレからの脱却を確実なものとするため、政府は、日本銀行と一体となって政策努力の更なる強化・拡充を図り、今後とも、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととされた。

 以上のような経済財政運営を前提として、平成18年度の我が国経済は、国内総生産の実質成長率が1.9%程度(名目成長率は2.0%程度)になるものと見通された。

イ 国の予算

 平成17年12月6日、「平成18年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で平成18年度予算については、小さくて効率的な政府の実現に向け従来の歳出改革路線を堅持・強化するため、三位一体改革を推進するとともに、総人件費改革、医療制度改革、特別会計改革、資産・債務改革、政策金融改革等の構造改革について、順次予算に反映させることとされた。また、予算配分の重点化・効率化に当たっては、活力ある社会・経済の実現に向けた4分野(「人間力の向上・発揮―教育・文化、科学技術、IT」、「個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方」、「公平で安心な高齢化社会・少子化対策」、「循環型社会の構築・地球環境問題への対応」)について、これまでの実績・評価を考慮しつつ、政策効果が顕著なものについて重点的かつ効率的に推進することとされた。また、社会資本整備、社会保障制度及び地方財政の事項についても制度・施策の見直しを行い、さらに、ODAその他の歳出分野についても「基本方針2005」に即し、歳出の見直しに取り組むこととされた。

 社会資本整備については、上記の活力ある社会・経済の実現に向けた4分野を中心に「基本方針2005」を踏まえた施策の集中を図るとともに、整備水準、整備の緊急性、国と地方の役割分担等の観点から、きめ細かく重点化を図ることとされた。

 地方財政については、国と地方に関する「三位一体の改革」について、平成18年度までの三位一体の改革に係る「政府・与党合意」及び累次の「基本方針」を踏まえた取組の成果を平成18年度予算に適切に反映することとされた。 

 平成18年度予算は、以上のような方針により編成され、平成17年12月24日に概算の閣議決定が行われた後、平成18年1月20日に第164回国会に提出された。

 これによると、平成18年度の国の一般会計予算の規模は79兆6,860億円で、前年度当初予算と比べると2兆4,969億円の減少(3.0%減)となり、うち一般歳出の規模は46兆3,660億円で、前年度当初予算と比べると9,169億円の減少(1.9%減)となった。なお、公共投資関係費については、4.4%減の7兆2,015億円となった。また、公債の発行予定額は29兆9,730億円で、前年度当初発行予定額と比べると4兆4,170億円の減少(12.8%減)となり、公債依存度は37.6%となった。

 他方、財政投融資計画については、17年度編成において行った財投改革の総点検のフォローアップを行い、各事業の財務の健全性を確認した上で、真に必要な資金需要には的確に対応するとともに、引き続き対象事業の重点化・効率化に努めることとされ、計画規模は15兆46億円、前年度計画額と比べると2兆1,472億円の減少(12.5%減)となった。

(2) 地方財政計画

 平成18年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、累次の「基本方針」や「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)等に沿って、歳出全般にわたり見直しを行うことにより歳出総額の計画的な抑制を図る一方、当面の重要課題である人間力の向上・発揮(教育・文化、科学技術、IT)、個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、公平で安心な高齢化社会・少子化対策、循環型社会の構築・地球環境問題への対応等に財源の重点的配分を図ることとし、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と安定的な財政運営に必要な地方交付税、地方税などの一般財源の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

ア 地方税については、現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するための「あるべき税制」の構築に向け、3兆円規模の所得税から個人住民税への税源移譲、定率減税の廃止、平成18年度の固定資産税の評価替えに伴う土地に係る固定資産税・都市計画税の税負担の調整措置の見直し、地方たばこ税の税率の引上げその他の所要の措置を講じることとする。

 このうち、税源移譲については、応益性や偏在度の縮小といった観点を重視し、個人住民税の税率を10%比例税率(道府県民税4%、市町村民税6%)とすることとし、平成19年度分から適用することとする。

イ 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

(ア) 恒久的な減税に伴う影響額以外の地方財源不足(以下「通常収支に係る財源不足」という。)の見込額5兆7,044億円については、次の措置を講じる。

a 平成16年度に講じた平成18年度までの間の制度改正に基づき、財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等を除いた残余については国と地方が折半して補てんすることとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補てん措置を講じる。

 また、投資的経費に係る地方単独事業費と一般行政経費に係る地方単独事業費の一体的かい離是正分の一般財源に相当する地方財源不足分については、基本的には国と地方が折半して負担することとするが、平成18年度は平成17年度是正分のうち2,800億円と平成18年度是正分の全額1兆円を地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により措置することとし、国負担となるべき分については後年度に調整することとする。

 臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

 なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等2,495億円については法律の定めるところにより、平成19年度以降の地方交付税の総額に加算することとする。

b これに基づき、平成18年度の通常収支に係る財源不足見込額5兆7,044億円については、次により完全に補てんする。

(a) 地方交付税については、国の一般会計加算により1兆1,472億円(うち、地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額1,685億円、同条第4項の加算額11億円、同条第8項の加算額2,747億円、臨時財政対策特例加算額7,029億円)増額する。

(b) 地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を2兆9,072億円発行する。

(c) 建設地方債(財源対策債)を1兆6,500億円増発する。

 なお、平成18年度税制改正により所得税から個人住民税への税源移譲が実施されることに伴う所得税に係る地方交付税率分の減少影響を緩和するため、地方財政に与える影響を勘案しつつ、平成19年度には2,600億円、平成20年度は2,000億円、平成21年度は1,400億円を交付税総額に加算することとする。

(イ) 平成11年から実施されている恒久的な減税については、平成18年度税制改正により、定率減税は、所得税については平成18年分、個人住民税については平成18年度分をもって廃止するとともに、税源移譲に伴い最高税率の特例を廃止し、特定扶養親族に係る扶養控除の額の加算の特例並びに法人税率の特例及び法人事業税率の特例を本則の制度とすることとされた。

 平成18年度においては、恒久的な減税に伴う地方財政への影響が引き続き見込まれるものであり、その影響額3兆376億円については、従前同様a、bの措置を講じる。また、平成19年度以降、恒久化される恒久的な減税に係る地方税の減収については、cの措置を講じる。

a 恒久的な減税の実施による地方税の減収1兆8,080億円について、その4分の3相当額を国と地方のたばこ税の税率変更による地方たばこ税の増収措置(1,142億円)、法人税の地方交付税率の引上げによる増収措置(4,962億円)及び地方特例交付金(減税補てん特例交付金、7,456億円)により、その4分の1相当額を地方財政法第5条の特例となる地方債(減税補てん債、4,520億円)により完全に補てんする。

b 恒久的な減税の実施による地方交付税への影響額1兆2,296億円のうち、平成18年度に新たに発生する地方交付税の減収1兆888億円については、交付税特別会計借入金により措置し、その償還は国と地方が折半して負担することにより完全に補てんする。なお、所得税の定率減税の縮減により、地方交付税原資が増加した分に相当する借入金の縮減(4,051億円)が見込まれる。また、平成11年度以降地方交付税への影響額の補てん対策として措置した交付税特別会計借入金に係る利子相当額のうち国負担分686億円は一般会計からの繰入れにより、地方負担分722億円は交付税特別会計借入金により措置する。

c 平成19年度以降、恒久化される恒久的な減税に係る地方税の減収について、次の措置により補てんする。

(a) 平成19年度以降、地方たばこ税の増収措置を恒久化する。

(b) 平成19年度以降、法人税に係る地方交付税率については34%とする。

(c) 平成19年度以降において、上記(a)及び(b)の措置によって補てんされない減収相当額については、国と地方が折半して補てんする措置を講じる。

(d) 減税補てん特例交付金については、平成19年度の総額は4,000億円、平成20年度の総額は2,000億円とし、平成21年度に廃止する。

(e) (c)による補てん措置として、一般会計から交付税特別会計に繰り入れる額は、平成19年度及び平成20年度にあっては、(d)の減税補てん特例交付金を除いた額とする。

(ウ) 上記の結果、平成18年度の地方交付税については、15兆9,073億円(前年度に比し5.9%減)を確保する。

ウ 三位一体の改革の一環として、これまでの国庫補助負担金改革を踏まえ、平成18年度において、3兆94億円を所得譲与税として税源移譲することとし、税源移譲予定特例交付金を廃止する。

 この平成18年度所得譲与税については、税源移譲後の道府県民税所得割、市町村民税所得割の税率を踏まえ、都道府県へ2兆1,794億円、市町村(特別区を含む。)へ8,300億円をそれぞれ譲与する。

エ 平成18年度より、児童手当の制度拡充が行われることから、これに伴う地方負担の増加に対応するため、当分の間の措置として、地方特例交付金(児童手当特例交付金)を創設することとし、都道府県と市町村にそれぞれ総額の2分の1の額を交付する。

オ 地方債については、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方公共団体が、行政改革と財政の健全化を推進し、当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を一層推進しつつ、所要の地方債資金を確保する。

 この結果、地方債計画の規模は13兆9,466億円(普通会計分10兆8,174億円、公営企業会計等分3兆1,292億円)とする。

 また、平成18年4月から開始する地方債協議制度の円滑な実施を図る。

カ 社会経済情勢の推移等に即応して使用料・手数料等の適正化を図る。

キ 地域経済の振興や雇用の安定を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

(ア) 投資的経費に係る地方単独事業費については、「基本方針2003」を踏まえた事業規模の計画的抑制と併せ、かい離是正を行ったところである。その結果、平成18年度においては、前年度に比し19.2%減額することとしているが、かい離是正分を除いた場合は3.2%減額であり、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

(イ) 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、人間力の向上・発揮(教育・文化、科学技術、IT)、個性と工夫に満ちた魅力ある都市と地方の形成、公平で安心な高齢化社会・少子化対策、循環型社会の構築・地球環境問題への対応等の分野に係る施策に財源の重点的配分を図るとともに、かい離是正を行い、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

(ウ) 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

(エ) 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

ク 地方公共団体の公債費負担の軽減を図るため、普通会計における高金利の公的資金に係る地方債に対する特別交付税措置及び一定の公営企業金融公庫資金に係る公営企業債についての借換え措置を講じる。

ケ 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

コ 地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減や給与構造改革に取り組むとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成18年度の地方財政計画の規模は、83兆1,508億円で、前年度と比べると6,179億円減少(0.7%減)となった。

 歳入についてみると、地方税は34兆8,983億円で、前年度と比べると1兆5,794億円増加(4.7%増)(道府県税8.1%増、市町村税2.2%増)、地方譲与税は3兆7,324億円で、前年度と比べると1兆8,905億円増加(102.6%増)、地方特例交付金は8,160億円で、前年度と比べると7,020億円減少(46.2%減)、地方交付税は15兆9,073億円で、前年度と比べると9,906億円減少(5.9%減)、国庫支出金は10兆2,015億円で、前年度と比べると9,952億円減少(8.9%減)、地方債(普通会計分)は10兆8,174億円で、前年度と比べると1兆4,445億円減少(11.8%減)となった。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は22兆5,769億円で、前年度と比べると1,471億円減少(0.6%減)となった。なお、地方財政計画における職員数については、現下の治安状況を勘案し警察官3,500人の増員を見込むなど、真に必要とされるものに限って最小限の増員を行っているが、「行政改革の重要方針」(平成17年12月24日閣議決定)における4.6%以上純減するとの目標を踏まえ、その一年度分に相当する22,602人の純減としている。一般行政経費は25兆1,857億円で、前年度と比べると1兆9,000億円増加(8.2%増)となり、一般行政経費に係る地方単独事業費は13兆4,785億円で、前年度と比べると9,722億円増加(7.8%増)(投資的経費に係る地方単独事業費との一体的かい離是正分(1兆円の増額計上)を除いた場合は、前年度と比べると278億円減少(0.2%減))となった。公債費は13兆2,979億円で、前年度と比べると824億円減少(0.6%減)、投資的経費は16兆8,889億円で、前年度と比べると2兆6,322億円減少(13.5%減)となった。

 なお、投資的経費に係る地方単独事業費は10兆911億円で、前年度と比べると2兆4,000億円減少(19.2%減)(一般行政経費に係る地方単独事業費との一体的かい離是正分(2兆円の減額計上)を除いた場合は、前年度と比べると4,000億円減少(3.2%減))となった。

(3) 平成18年度補正予算

ア 平成18年度補正予算(第1号)

 平成18年度補正予算(第1号)は、平成18年12月20日に閣議決定され、平成19年1月26日に第166回国会に提出され、2月6日に成立した。

 この補正予算においては、歳出面では、災害対策費8,784億円、義務的経費2,140億円、国債整理基金特別会計へ繰入9,009億円、地方交付税交付金2兆1,425億円、その他の経費7,736億円(市町村合併推進体制整備費補助金984億円を含む。)を追加計上したほか、既定経費の節減1兆372億円、予備費の減額1,000億円の修正減少額を計上した。また、歳入面では、最近までの収入実績等を勘案し、租税及印紙収入4兆5,900億円、その他収入1,813億円の増収を見込む一方、財政健全化の推進のため公債金は2兆5,030億円減額したほか、前年度剰余金受入1兆5,040億円を計上した。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成18年度当初予算に対し3兆7,723億円増加し、83兆4,583億円となった。

イ 平成18年度補正予算(第1号)に係る地方財政補正措置

 平成18年度補正予算(第1号)の編成により、国税の増収見込み等に伴い地方交付税の増加が見込まれたとともに、災害復旧事業の追加等に伴う地方負担の増加(4,415億円程度)が生じた結果、以下の地方財政補正措置が講じられた。

(ア) 地方交付税の追加等

 国の補正予算により増額された平成18年度分の地方交付税の額2兆1,425億円(平成17年度精算分6,031億円、平成18年度国税五税の自然増に伴うもの1兆5,394億円)については、平成18年度において普通交付税の調整額の復活に要する額881億円を交付するとともに、交付税特別会計借入金の返済(平成18年度当初借入金(地方負担分)の減額)5,336億円を行うこととしたうえで、残余の額1兆5,208億円について平成19年度分として交付すべき地方交付税の総額に加算して交付する措置を講ずることとする。

(イ) 追加の財政需要等に対する財政措置

a 国の補正予算により平成18年度に追加されることとなる災害復旧事業等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分4,170億円)については、原則として、地方債(充当率100%)を充当することとし、後年度においてその元利償還金の全額を基準財政需要額に算入することとする。その際、元利償還金の50%(義務教育施設改築事業等当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては、原則として当初の算入率)については、公債費方式により各地方公共団体の地方債発行額に応じて基準財政需要額に算入することとし、残余については単位費用により措置することとする。また、出資金、貸付金等については、資金手当のための地方債を措置することとしている。

b 老人医療給付費等地方債の対象とならない経費(245億円)については、追加財政需要額(5,100億円)の取り崩しにより対応することとする。

(4) 地方公共団体の予算

 平成18年度の地方公共団体の普通会計予算(9月補正後)の状況は、第43表のとおりであり、普通会計予算の総額(都道府県及び市町村の単純合計)は、前年度と比べると2.9%減となった。

 主な内訳をみると、歳入では、地方税が前年度と比べると4.4%増、地方譲与税105.0%増、国庫支出金11.9%減、地方債5.5%減となった。一方、歳出では、人件費が前年度と比べると4.1%減、普通建設事業費が3.7%減となった。

 なお、第43表の数値は、前年度からの繰越事業に係るものを含んでいる。

(5) 不交付団体の拡大

 地方公共団体の自由と責任を実現するには、地方交付税に依存しない自立した団体を増やすことが重要である。

 平成18年度の不交付団体は、都道府県では2団体(東京都及び愛知県)、市町村では1,820団体中169団体(うち大都市4団体(さいたま市、千葉市、川崎市及び名古屋市))であり、不交付団体の割合は、団体数では9.2%、人口割合では25.9%となっている。これらの数値は、三位一体の改革による税源移譲、景気動向を反映した法人関係税の増等により、それぞれ平成17年度の6.0%、18.4%からは増加している。

 「基本方針2006」では、「例えば人口20万人以上の市の半分などの目標を定めて、交付税に依存しない不交付団体の増加を目指す」こととされているところであるが、平成18年度において、人口20万人以上の地方公共団体(112団体)のうち不交付団体は33団体(29.5%)となっている。

(6) 個別団体における財政健全化

 近年の地方財政は、バブル経済崩壊後の数次の景気対策による公共事業の追加や、減税の実施等により、借入金残高が累積しており、厳しい財政運営を余儀なくされている状況にある。平成17年度決算における経常収支比率については、前年度よりも0.1%ポイント低下したものの、91.4%と依然として高い水準となっている。実質公債費比率については、14.9%となっている。また、実質収支が赤字の団体数は前年度から2団体増加し、28団体となっている。

 各地方公共団体においては、このような厳しい財政状況を踏まえて、一層の事務事業の見直し、組織・機構の簡素効率化、外郭団体の統廃合等、定員管理・給与の適正化、民間委託等の推進など、自主的な行財政改革に積極的に取り組むとともに、独自課税の検討、地方税の徴収確保、使用料・手数料の適正化等を通じて歳入の確保を図るなど、財政運営の健全化に努めている。

 個別団体についてみると、夕張市の厳しい財政状況が明らかになり、平成18年6月20日には夕張市が地方財政再建促進特別措置法に基づく財政再建に取り組む意向を表明した。これを受けて北海道が行った「夕張市の財政運営に関する調査」(9月11日公表)では、多額の実質赤字を抱えるに至った要因として、第一に、炭鉱閉山に伴い人口がおよそ10分の1に激減する中で、観光振興、住宅、教育、福祉対策に市財政の許容範囲を超えた財政支出を行ってきたこと、第二に、人口急減などに伴う歳入の減少への対応が遅れたこと、第三に、予算上、一般会計から他会計に繰り出すべき予算を貸付金として措置するなどし、一般会計と他会計間で出納整理期間中に、次年度の他会計から当該年度の一般会計に償還する、年度をまたがる会計間の貸付・償還が行われてきた。これらの資金の資金手当を一時借入金により行うことにより、表面上の赤字額を見えなくする不適正な財務処理を行い、赤字の実態を表面化せずに拡大させたことが膨大な実質赤字額を拡大させた要因であるとしている。

 なお、こうした不適正な財務処理が明らかになったことを踏まえ、財政規模に比較して一時借入金が多額となっている市町村等を対象に、一時借入金を利用した、会計間のやりとりにより赤字を見えなくする財務処理が行われていないかを都道府県において確認した。その結果、北海道以外の都府県内の市町村にはそうした手法を行ったと見受けられる団体はなかったが、北海道の8団体において改善が必要である旨北海道が助言を行い、速やかに必要な会計処理の見直しを図るとの報告を受けた。

 その後、平成18年9月29日に夕張市議会が地方財政再建促進特別措置法による財政再建の申し出を議決し、11月14日には「夕張市財政再建の基本的枠組み案」が、平成19年1月26日には「夕張市財政再建計画素案」が夕張市より公表され、平成18年度末の解消すべき赤字額は約353億円、財政再建期間は18年度を基準とし19年度から36年度までの18年間と見込まれた。

 夕張市の財政再建に当たっては、住民に対する基礎的な行政サービスの提供を続けていくことが前提となり、その上で、夕張市が抱える多額の赤字を解消するために、行政サービスを最も効率的に提供する市町村の取組を参考にするなど、歳出削減、歳入確保の両面から聖域なく徹底した見直しが行われた。具体的には、平均の2倍いる職員数を同程度の規模の市町村の最小の規模にまで削減を進めること、給与水準は全国で最も低い水準まで下げ、年収は最大でこれまでの約4割減額すること、退職手当は順次支給月数を段階的に大幅に削減し、数年後には支給額で最大で4分の1程度まで減額することなど総人件費の大幅な削減を行うこととしている。その上で、事務事業の抜本的な見直し、観光事業の見直し、病院事業の見直し、施設の統廃合、市民負担の増加(市税の税率増加、使用料引き上げ、ゴミ処理有料化など)を行うこととしている。一方、あらゆる分野にわたる徹底した厳しい歳入歳出の見直しの中にあっても、高齢者の暮らしや子育て、教育に一定の配慮を行うこととしている。

 夕張市は、平成19年2月22日に財政再建の申出を行った。今後、市議会の議決を経て財政再建計画を策定し、総務大臣に協議し同意を得た後は、同計画に基づき再建に取り組むこととなる(平成19年2月26日現在の状況)。

(7) 地方債協議制への移行

 地方債許可制度については、平成9年の地方分権推進委員会の第2次勧告において、「地方債許可制度については、地方公共団体の自主性をより高める観点に立って廃止し、地方債の円滑な発行の確保、地方財源の保障、地方財政の健全性の確保等を図る観点から、地方公共団体は国又は都道府県と事前協議を行うこととする。」とされたことを踏まえ、平成10年の地方分権推進計画、平成11年に成立した地方分権一括法(「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(平成11年法律第87号))により、地方財政法や地方自治法等の関係法律の改正を行い、これを廃止し、協議制度に移行することとされた。施行時期については、財政構造改革との関係等から平成18年度からとされ、平成18年4月より地方債協議制度がスタートした。

 協議の相手先、スケジュール等の協議手続等の枠組み、許可団体への移行基準やその算定方法等協議制度の具体的な仕組みについては、平成18年2月3日に公布された地方財政法施行令の一部を改正する政令により、地方財政法施行令に所要の改正を行っている。

 従前は総務大臣又は都道府県知事の許可がなければ地方債を発行できなかったが、地方公共団体は、地方債を発行するときは、総務大臣又は都道府県知事に協議しなければならず、同意のある地方債についてのみ、公的資金の充当、あるいは元利償還金の地方財政計画、交付税の基準財政需要額への算入が行われるが、同意がない場合においても地方債を発行することができることとなった。その場合には、地方公共団体の長は、あらかじめ議会に報告しなければならないこととされている。

 その一方で、実質収支の赤字が一定以上大きい団体、公債費等の比率が一定以上の団体、赤字公営企業等は、地方債を発行するときは総務大臣等の許可を受けなければならないこととして、早期の財政健全化への取組を促すこととしている。

 普通会計の実質収支の赤字比率に係る許可団体移行の水準は、標準財政規模に応じ、その2.5%から10%の間で段階的、連続的に設定されている(都道府県、大都市、標準財政規模が500億円以上の市で2.5%、200億円規模で5%、50億円未満で10%)。

 なお、実質収支の赤字比率に係る許可団体数は、市町村(一部事務組合等を除く。)において、11団体であった。

 また、公債費等の負担を測る指標として、従来の起債制限比率について一定の見直し(満期一括償還方式の地方債に係る減債基金積立額の比率への反映ルールの統一、公営企業の元利償還金への一般会計からの繰入金の算入等)を行った新たな指標として、「実質公債費比率」を導入し、実質公債費比率が18%以上の団体は起債にあたって許可を要することとしている。

 実質公債費比率が18%以上であることにより許可団体となっている地方公共団体は、都道府県においては全体の8.5%を占める4団体となっており、市町村(一部事務組合等を除く。)においては全体の22.3%を占める412団体となっている。

 また、赤字公営企業の赤字比率(対営業収益)が10%以上の公営企業については、その事業に係る地方債の発行について許可が必要となる。

 なお、地方債協議制度への移行に伴い、地方債の手続についても、市町村分に係る財務事務所等の市町村ヒアリングを原則として都道府県ヒアリングに移行する等の簡素化を行うこととしている。

 また、地方債計画についても見直しを行い、退職手当債制度の改正や財政健全化債の行政改革推進債への移行に加え、国の予算等に基づく貸付金を財源とする従来の特定資金枠外債等についても地方債計画に記載し、いわゆる枠外債の原則解消を図っている。

 なお、各地方公共団体が個別に発行する全国型市場公募地方債については、従来の発行条件の統一条件決定方式から、平成18年9月以降、全ての地方公共団体が個別条件交渉方式に移行しているところである。

(8) 地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

 地方公営企業については、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の着実な整備を推進するとともに、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開を支援し、併せて地方公営企業の経営健全化等を推進するなど経営基盤の一層の強化を図る必要がある。

 このため、平成18年度においては、次のような措置を講じた。

 企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆7,346億円(前年度2兆8,659億円)を計上した。

 また、地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分3兆1,292億円(前年度3兆2,747億円)を計上するとともに、既往債の利子を軽減する観点から、公営企業借換債について、資本費負担が著しく高い一定の公営企業に対する借換債(従来分)を確保するとともに、平成18年度の臨時特例分として、別途高金利の一定の公営企業債について借換債を措置することとし、貸付枠を総額2,000億円(前年度2,000億円)確保した。また、公営企業による社会資本整備を推進する観点から、平成17年度までとされていた公営企業金融公庫資金における臨時特別利率制度を平成19年度まで延長するとともに、貸付対象事業を地域社会基盤整備、防災・安全対策及び環境・福祉対策に再編し、所要の貸付枠を確保した。

 さらに、各事業における財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

(ア) 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入することとした。

(イ) 水道事業については、資本費又は石綿セメント管の敷設割合が一定以上の団体が行う石綿セメント管の更新事業のうち、平均事業費に上積みして実施する事業について、一般会計出資の対象とするとともに、当該一般会計出資に係る地方債の元利償還金について地方交付税による措置を講じるなど、所要の地方財政措置を講じることとした。また、水道事業・工業用水道事業について、将来にわたって活用する見込がない水利権等を整理することで事業規模の適正化及び経営の効率化を図る団体を支援するため、所要の国庫補助金の返還、企業債の繰上償還及び独立行政法人水資源機構負担金の精算に要する経費について、所要の地方債措置を講じることとした。

(ウ) 交通事業については、地下鉄等の鉄軌道における防災対策及び安全対策を総合的に支援するため、耐震性強化や防災情報の迅速な伝達体制の整備等について、国庫補助事業にあっては、地方負担額の2分の1までについて一般会計出資、28%を一般会計補助の対象とするとともに、当該一般会計出資及び一般会計補助に係る地方債の元利償還金について地方交付税による措置を講じるなど、所要の地方債措置を講じることとした。

(エ) 病院事業については、災害時における医療体制を整備するため、災害拠点病院が行う救急医療等に必要な資機材、薬品等の備蓄に要する経費について、一般会計からの繰出を行うこととし、当該繰出に要する経費に対し所要の地方財政措置を講じることとした。

(オ) 下水道事業については、建設改良費(元利償還金)に対する財政措置として、合流式と分流式の整備手法の区分に応じて、雨水分に対する一般会計繰出金を実態に見合った措置に見直すとともに、分流式下水道については公共用水域の水質保全など公的な役割が大きい反面で資本費が高いことにかんがみ、新たに汚水公費分として分流式資本費に対して地方財政措置を講じることとし、また、これに伴い既発債の元利償還金に対する従来の財政措置を保障するため、平成17年度までに発行した下水道事業債(既往分)の元利償還金について、従来の公費負担割合(雨水相当分7割)による額と新たな公費負担割合(雨水分及び汚水公費分)による額との差額を下水道事業債(特別措置分)に振り替え、特別措置分に係る下水道事業債の元利償還金については後年度において地方交付税の基準財政需要額に算入することとした。また、地理的条件や個別事情によって料金の対象となる汚水資本費(使用料対象資本費)が高水準となる事業に対し、一定の使用料徴収を前提に資本費の一部に地方交付税措置を講じることとした。

(カ) 港湾整備事業については、地方債の元利償還期間と減価償却期間との差により構造的に生じる資金不足を補うため、所要の地方債措置(資本費平準化債)を講じることとした。

イ 国民健康保険事業

 国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、平成17年12月1日に政府・与党医療改革協議会で決定された医療制度改革大綱を踏まえ、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア) 都道府県が、市町村の国保財政安定のために必要な取り組み等に対し交付する都道府県調整交付金の所要額(4,939億円)について、地方交付税措置を講じることとした。

(イ) 国民健康保険被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部を負担することとし(都道府県3/4、市町村1/4)、所要額(3,847億円)について地方交付税措置を講じることとした。

(ウ) 低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、引き続き、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)、所要額(844億円)について地方交付税措置を講じることとした。

(エ) 高額医療費共同事業については、交付基準額を70万円以上から80万円以上に引き上げた上で、引き続き、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)、所要額(1,818億円)について地方交付税措置を講じることとした。また、都道府県内の市町村国保間の保険料の平準化、財政の安定化を図るため、一件30万円以上の医療費について、市町村国保の拠出による保険財政共同安定化事業を平成18年10月から実施することとした。

(オ) 国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、引き続き、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じることとした。