2 平成19年度の地方財政

(1) 歳出・歳入一体改革

 平成18年7月7日、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(以下「基本方針2006」という。)が閣議決定された。

 「基本方針2006」においては、我が国経済について、長期停滞のトンネルを抜け出し、筋肉質の経済構造に変貌して、ようやく未来への明るい展望を持てる状況となり、「新たな挑戦の10年」の出発点に立ったとの認識を示した上で、三つの優先課題として、(1)成長力・競争力強化、(2)財政健全化、(3)安全・安心で柔軟かつ多様な社会の実現が掲げられている。

 中でも、「財政健全化」については、「歳出・歳入一体改革」の策定とその具体化が不可欠であるとされている。歳出・歳入一体改革に向けた取組として、2001〜06年度を財政健全化の第I期と位置づけた上で、基礎的財政収支黒字化を確実に実現する第II期(2007〜2010年代初頭)、債務残高GDP比の発散を止め、安定的引き下げを目指す第III期(2010年代初頭〜2010年代半ば)を設定している。

 また、第II期目標の達成に向けて、名目経済成長率3%程度の堅実な前提の下で、2011年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化するために必要となる対応額(歳出削減又は歳入増が必要な額)は16.5兆円程度と試算されている。

 このため、過去5年間の改革実績も踏まえながら、ゼロベースから聖域なく歳出を見直すことによって、国民負担の増加をできるだけ小さなものとするために最善の努力を尽くすことを基本方針として、2011年度の基礎的財政収支黒字化に向けた、2007〜2011年度までの5年間の歳出改革の方針が示されている。ただし、その時々の経済社会情勢に配慮しつつ、基礎的財政収支の黒字化目標の達成に向けた現実的な対応をとるため、2011年度までにとるべき歳出改革の内容について、毎年度、必要な検証・見直しを行っていくこととされている。

 こうした歳出削減を行ってなお、要対応額を満たさない部分については、歳入改革による増収措置で対応することを基本としている。

 なお、今後5年間の歳出改革の内容として、地方財政については、国と地方の信頼関係を維持しつつ、国・地方それぞれの財政健全化を進めるため、以下の取組を行うこととされている。

ア 地方歳出については、国の取組と歩調を合わせて、国民・住民の視点に立って、その理解と納得が得られるよう削減に取り組む。

(ア) 地方公務員人件費については、国家公務員の改革を踏まえた取組に加え、地方における民間給与水準への準拠の徹底、民間や国との比較の観点からの様々な批判に対する是正等の更なる削減努力を行い、平成18年4月末に総務省から公表された速報値を踏まえ、5年間で行政機関の国家公務員の定員純減(▲5.7%)と同程度の定員純減を行うことを含め大幅な人件費の削減を実現する。

(イ) 地方単独事業については、「選択と集中」の視点に立って、国の取組と歩調を合わせ、過去5年間の改革努力(5年間で▲5兆円超)を基本的に継続することとするが、地域の実情に配慮し、今後5年間については、地方単独事業全体として現在の水準以下に抑制することとし、投資的経費は国の公共事業と同じ改革努力を行い、一般行政経費は2006年度と同程度の水準とする。

 ただし、これまでの歳出削減努力がデフレ状況下で行われてきたことなども踏まえ、地域の経済動向等を十分に注視しながら、柔軟かつ機動的な対応に心がけることとする。

イ 以上の歳出削減努力等を踏まえ、地方交付税等については、以下の制度改革等を行う。

(ア) 地方交付税の現行法定率は堅持する。

(イ) 過去3年間、毎年1兆円近く削減してきた地方交付税等(一般会計ベース)について、地方に安心感を持って中期的に予見可能性のある財政運営を行ってもらえるよう、地方交付税の現行水準、地方の財政収支の状況、国の一般会計予算の状況、地方財源不足に係る最近10年間ほどの国による対応等を踏まえ、適切に対処する。

(ウ) これにより、上記の歳出削減努力等とあわせ、安定的な財政運営に必要となる地方税、地方交付税(地方財政計画ベース)等の一般財源の総額を確保する。

(エ) 各地方公共団体に対する地方交付税の配分に当たっては、行政改革に積極的に努力している団体や地方税収の伸びがあまり期待できない団体に特段の配慮を行う。

(オ) 地方分権に向けて、関係法令の一括した見直し等により、国と地方の役割分担の見直しを進めるとともに、国の関与・国庫補助負担金の廃止・縮小等を図る。交付税について、地方団体の財政運営に支障が生じないよう必要な措置を講じつつ、算定の簡素化を図る。地方税について、国・地方の財政状況を踏まえつつ、交付税、補助金の見直しとあわせ、税源移譲を含めた税源配分の見直しを行うなど、一体的な検討を図る。

 以上の点を中心に住民の視点に立った地方公共団体の自発的な取組が促進されるような制度改革を行う。そのため、再建法制等も適切に見直すとともに、情報開示の徹底、市場化テストの促進等について地方行革の新しい指針を策定する。

 また、道州制導入の検討を促進する。

(2) 平成19年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成19年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成18年12月19日に閣議了解、平成19年1月25日に閣議決定された。

 これによると、平成18年度の我が国経済は、企業部門の好調さが、雇用・所得環境の改善を通じて家計部門へ波及し、民間需要中心の回復が続くと見込まれている。こうした結果、平成18年度の国内総生産の実質成長率は、1.9%程度(名目成長率は1.5%程度)になると見込まれている。

 このような情勢認識に立って、平成19年度の経済財政運営の基本的態度については、「戦後レジームからの新たな船出」を行うため、イノベーションの力とオープンな姿勢により、今後5年間程度で「新成長経済への移行期」を完了するものとし、その初年度である平成19年度においては、「創造と成長」の実現を図るとの方針の下で、成長力強化に向けた改革を加速・深化させるとともに、併せて地域経済の活性化や再チャレンジ可能な社会を目指すための取組を強力に推進し、「成長なくして財政再建なし」の理念の下、成長力強化を図りつつ、車の車輪である行財政改革を断行し、また、道州制の実現のための検討を加速することとされた。「基本方針2006」等を踏まえ、こうした取組を進めることにより、経済活性化を実現し、日本経済の潜在成長力を高めることとされた。また、政府・日本銀行は、マクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、物価安定の下での民間主導の持続的な成長のため、一体となった取組を行い、今後とも、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととされた。

 以上のような経済財政運営を前提として、平成19年度の我が国経済は、国内総生産の実質成長率が2.0%程度(名目成長率は2.2%程度)になるものと見通されている。

イ 国の予算

 平成18年12月1日、「平成19年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で、平成19年度予算については、歳出改革路線を強化するため、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年法律第47号。以下「行政改革推進法」という。)に基づき、行政のスリム化・効率化を一層徹底し、総人件費改革や特別会計改革、資産・債務改革等について、適切に予算に反映させることとされている。また、歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、一般歳出及び一般会計歳出について厳しく抑制を図り、引き続き予算執行実績を的確に踏まえた予算とすることとされている。また、予算配分の重点化・効率化に当たっては、「活力に満ちたオープンな経済社会の構築」及び「健全で安心できる社会の実現」に施策を集中するとともに、各施策について成果目標を提示し、厳格な事後評価を行い、政策評価等を活用し、歳出の効率化・合理化を進め、さらに、民間活力の活用による効率化に努めることとされている。

 社会保障については、これまでの制度改革の効果を検証しつつ、中長期的な展望に立って、改革努力を継続し、国民が負担可能な範囲となるよう制度全般にわたり不断の見直しを行うこととされている。

 公共投資については、歳出改革を進める中で、今後とも公共投資に関する改革を継続し、真に必要な社会資本整備を実施するために、地域の自立・活性化、我が国の成長力強化、防災・減災等による安全・安心の確保を推進する観点から、整備水準や施設の利用状況等を踏まえた事業のメリハリ付けを行うとともに、あらゆる分野での官民格差等を踏まえたコスト縮減や入札改革を進め、更なる重点化・効率化を図る必要があるとされている。

 地方財政については、国と地方の信頼関係を維持しつつ、「基本方針2006」に沿って、平成19年度予算においても、国の取組と歩調を合わせて、人件費、投資的経費、一般行政経費の各分野にわたり地方歳出を厳しく抑制することとされた。

 平成19年度予算は、以上のような方針により編成され、平成18年12月24日に政府案の閣議決定が行われた後、平成19年1月25日に第166回国会に提出された。

 これによると、平成19年度の国の一般会計予算の規模は82兆9,088億円で、前年度当初予算と比べると3兆2,228億円の増加(4.0%増)となっており、うち一般歳出の規模は46兆9,784億円で、前年度当初予算と比べると6,124億円の増加(1.3%増)となっている。なお、「平成19年度予算編成の基本方針」において、前年度の水準(29兆9,730億円)よりも大幅に減額することとされた公債の発行予定額は25兆4,320億円で、前年度当初発行予定額と比べると4兆5,410億円の減少(15.2%減)となっており、公債依存度は30.7%となっている。

 他方、財政投融資計画の規模は、14兆1,622億円、前年度計画額と比べると8,424億円の減少(5.6%減)となっている。

(3) 地方財政計画

 平成19年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、「基本方針2006」に沿って、歳出全般にわたり見直しを行うことにより歳出総額の計画的な抑制を図る一方、活力ある地方を創るための施策等に財源の重点的配分を図ることとし、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税などの一般財源総額の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

ア 地方税については、現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するため、法人所得課税等における減価償却制度を見直すとともに、上場株式等の配当・譲渡益に係る軽減税率の適用期限を1年延長するほか、非課税等特別措置の整理合理化等のため所要の措置を講じることとする。

 なお、所得譲与税は、所得税から個人住民税への税源移譲に伴い、平成18年度をもって廃止することとする。

イ 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

(ア) 地方財政の健全化に資するため、交付税特別会計の新規借入を行わないこととし、既往の借入金について、国・地方の負担区分に応じてそれぞれの償還責任を明確にする観点から、国の負担額18兆6,648億円を平成19年4月1日より国の一般会計借入金として承継するとともに、地方の負担額33兆6,173億円は、現行の償還期限である平成38年度までの償還計画を新たに作成した上で、計画的な償還を行う(平成19年度償還額5,869億円)。

(イ) 平成19年度から平成21年度の間は、平成18年度までと同様、財源不足が建設地方債(財源対策債)の増発等によってもなお残る場合には、この残余を国と地方が折半して補てんすることとし、国負担分については国の一般会計からの加算により、地方負担分については地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補てん措置を講じる。

 臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

 これらの措置を地方交付税法第6条の3第2項の制度改正として講じ、所要の法律改正を行う。

 なお、地方交付税法附則第4条の2第8項及び第9項に基づき平成19年度に一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額6,251億円については、法律の定めるところにより平成22年度以降の3年間で均等に加算する。

 また、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等3,712億円については、法律の定めるところにより平成25年度以降の地方交付税の総額に加算するとともに、平成17年度において一般会計から交付税特別会計に繰り入れた国負担分の借入金利子相当額の予算額と実際に要した額の差額1,546億円については、法律の定めるところにより平成20年度及び平成21年度の地方交付税の総額から減額する。

(ウ) 平成19年度の地方財源不足見込額4兆4,200億円については、上記(イ)の考え方に基づき、従前と同様の例により、次の補てん措置を講じる。その結果、国と地方が折半して補てんすべき額は生じないこととなる。

a 建設地方債(財源対策債)の増発 1兆5,900億円

b 地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債) 2兆6,300億円

c 地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律附則第4条第1項に規定する特別交付金 2,000億円

 なお、特別交付金については、平成19年度の交付額を4,000億円、平成20年度の交付額を2,000億円としていたが、地方税収の動向を踏まえ、交付期間を2年から3年に延長し、平成19年度から平成21年度までの各年度の交付額を2,000億円とする。

(エ) 平成19年度においても、投資的経費に係る地方単独事業費と一般行政経費に係る地方単独事業費の一体的かい離是正(一般財源ベース6,000億円)を行う。

 一体的かい離是正分の一般財源に相当する額のうち財源不足となるものについては、基本的には国と地方が折半して負担することとするが、平成19年度は、平成17年度是正分のうち2,100億円、平成18年度是正分のうち8,000億円及び平成19年度是正分のうち財源不足となるもの5,948億円を、地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により措置することとし、国負担となるべき分については後年度に調整する。

(オ) 上記の結果、平成19年度の地方交付税については、15兆2,027億円(前年度に比し4.4%減)を確保する。

ウ 平成19年度においては、児童手当の制度拡充に伴う地方負担の増加に対応するため、地方特例交付金を増額することとする。

エ 地方債については、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方団体が、行政改革と財政の健全化を推進し、当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を一層推進しつつ、所要の地方債資金を確保する。

 この結果、地方債計画の規模は12兆5,108億円(普通会計分9兆6,529億円、公営企業会計等分2兆8,579億円)とする。

オ 社会経済情勢の推移等に即応して使用料・手数料等の適正化を図る。

カ 地域経済の振興を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

(ア) 投資的経費に係る地方単独事業費については、「基本方針2006」を踏まえた事業規模の計画的抑制と併せ、かい離是正を行ったところである。その結果、平成19年度においては、前年度に比し14.9%減額することとしているが、かい離是正分を除いた場合は3.0%減額であり、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

(イ) 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、活力ある地方を創るための施策等に財源の重点的配分を図るとともに、かい離是正を行い、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

(ウ) 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

(エ) 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

キ 地方公共団体の公債費負担の軽減を図るため、平成19年度から3年間で、徹底した総人件費の削減等を内容とする財政健全化計画又は公営企業経営健全化計画を策定し、行政改革・経営改革を行う地方団体を対象に、公営企業借換債を合わせて5兆円規模の公的資金(財政融資資金、簡保資金及び公営公庫資金)の繰上償還(補償金なし)等を行うこととし、その財源として必要に応じ民間等資金による借換債を発行できることとする。

ク 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

ケ 地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減や給与構造改革に取り組むとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成19年度の地方財政計画の規模は、83兆1,261億円で、前年度と比べると247億円減少(0.0%減)となっている。

 歳入についてみると、地方税は40兆3,728億円で、前年度と比べると5兆4,745億円増加(15.7%増)(道府県税24.6%増、市町村税10.1%増)、地方譲与税は7,091億円で、前年度と比べると3兆233億円減少(81.0%減)、地方特例交付金は3,120億円で、前年度と比べると5,040億円減少(61.8%減)、地方交付税は15兆2,027億円で、前年度と比べると7,046億円減少(4.4%減)、国庫支出金は10兆1,739億円で、前年度と比べると276億円減少(0.3%減)、地方債(普通会計分)は9兆6,529億円で、前年度と比べると1兆1,645億円減少(10.8%減)となっている。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は22兆5,111億円で、前年度と比べると658億円減少(0.3%減)となっている。なお、地方財政計画における職員数については、「基本方針2006」における5年間で5.7%の定員純減目標を踏まえ34,358人の純減としている。一般行政経費は26兆1,811億円で、前年度と比べると9,954億円増加(4.0%増)となり、一般行政経費に係る地方単独事業費は13兆9,510億円で、前年度と比べると4,725億円増加(3.5%増)(投資的経費に係る地方単独事業費との一体的かい離是正分(6,000億円の増額計上)を除いた場合は、前年度と比べると1,275億円減少(0.9%減))となっている。公債費は13兆1,496億円で、前年度と比べると1,483億円減少(1.1%減)、投資的経費は15兆2,328億円で、前年度と比べると1兆6,561億円減少(9.8%減)となっており、投資的経費のうち、公共事業費中の普通建設事業費は5兆4,675億円で、前年度と比べると1,519億円減少(2.7%減)となっている。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は8兆5,884億円で、前年度と比べると1兆5,027億円減少(14.9%減)(一般行政経費に係る地方単独事業費との一体的かい離是正分(1兆2,000億円を減額計上)を除いた場合は、前年度と比べると3,027億円減少(3.0%減))となっている。

 他方、平成19年度の地方債計画の規模は12兆5,108億円で、前年度当初計画と比べると1兆4,358億円減少(10.3%減)となっている。平成19年度の地方債計画は、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方公共団体が、行政改革と財政の健全化を推進し、当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を一層推進しつつ、所要の地方債資金の確保を図ることとして策定している。

 なお、上述の公的資金の繰上償還(補償金なし)のうち、政府資金については、平成19年度から平成21年度までの間において、普通会計債及び公営企業債(上水道、工業用水道、下水道、地下鉄、病院に限る。)の5%以上の金利の地方債を対象として、金利段階に応じ、市町村合併や財政力、公債費、公営企業資本費等の状況に基づいて段階的に対象団体を設定し、3兆8,000億円程度以内の補償金なし繰上償還措置を行うこととしている(財政融資資金3兆3,000億円程度以内、平成20年度及び平成21年度において簡保資金5,000億円程度以内)(財政力指数1.0以上の団体を除く。)。

(4) 地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

 地方公営企業については、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の着実な整備を推進するとともに、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開を支援し、併せて地方公営企業の経営健全化等を推進するなど経営基盤の一層の強化を図る必要がある。

 このため、平成19年度においては、次のような措置を講じることとしている。

 企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆7,249億円(前年度2兆7,346億円)を計上している。

 また、地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆8,579億円(前年度3兆1,292億円)を計上するとともに、普通会計分と合わせた公債費負担対策として、徹底した総人件費の削減等を内容とする財政健全化計画又は公営企業経営健全化計画を策定し、行政改革・経営改革を行う団体を対象に、平成19年度から3年間で5兆円規模の公的資金(財政融資資金、簡保資金、公営企業金融公庫資金)の補償金なし繰上償還等を行い、高金利の地方債の公債費負担を軽減することとしている。このうち、公営企業金融公庫資金に係る公営企業債については、平成19年度から20年度の2年間で1兆2,000億円程度の補償金なし繰上償還又は公営企業借換債の措置を実施することとし、平成19年度は4,000億円程度の繰上償還と2,000億円の公営企業借換債を措置することとしている。また、公営企業借換債については、既往債の利子を軽減する観点から、資本費負担が著しく高い一定の公営企業を対象とした従来分について利率要件を利率6.0%から利率5.5%に緩和した上で借換枠を1,000億円、臨時特例措置分について利率要件を利率7.3%から利率7.0%に緩和した上で借換枠を1,000億円とし、地方債計画に総額2,000億円(前年度2,000億円)を計上している。

 さらに、各事業における財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

(ア) 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入することとしている。

(イ) 簡易水道事業については、簡易水道事業法適化計画を策定し、自主的に地方公営企業法の財務規定等を適用しようとする団体、又は、簡易水道事業統合計画を策定し、自主的に事業内の簡易水道施設を整理・統合しようとする団体に対し、所要の地方財政措置を講じることとしている。

(ウ) 交通事業については、都市内交通の改善、人と環境にやさしい都市公共交通の構築等の観点から高機能路面電車システムであるLRTシステムの構築を促進するため、国庫補助事業として行う整備について、事業費の4分の1を超えない額を一般会計補助の対象とするとともに、当該一般会計補助に所要の地方債措置を講じることとしている。

(エ) 病院事業については、女性医師及び看護師確保の観点から、院内保育所の運営に要する経費について、一般会計から繰出を行うこととし、当該繰出に要する経費に対し所要の地方財政措置を講じることとしている。

(オ) 以上の他、公営企業においても少子化対策を推進する観点から、3歳以上小学校修了前の児童に対する児童手当の給付に要する経費に加え、新たに0歳以上3歳未満の児童手当の給付に要する経費(平成19年度から実施することとされた「児童手当制度における乳幼児加算」分を含む。)について所要の地方財政措置を講じることとしている。

イ 国民健康保険事業

 国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、平成17年度に決定された医療制度改革大綱や、健康保険法等の改正などを踏まえ、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア) 都道府県が、市町村の国保財政安定のために必要な取り組み等に対し交付する都道府県調整交付金の所要額(5,102億円)について、地方交付税措置を講じることとしている。

(イ) 国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部を負担することとし(都道府県3/4、市町村1/4)、所要額(3,899億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(ウ) 低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)、所要額(875億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(エ) 高額医療費共同事業については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)、所要額(1,964億円)について地方交付税措置を講じることとしている。また、都道府県内の市町村国保間の保険料の平準化、財政の安定化を図るため、一件30万円以上の医療費について、市町村国保の拠出による保険財政共同安定化事業を実施することとしている。

(オ) 国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じることとしている。

ウ 後期高齢者医療制度の施行準備

 医療制度改革に伴い、平成20年4月より75歳以上の後期高齢者を対象とした後期高齢者医療制度が施行される。これに伴い、実施主体として全市町村が加入する広域連合が都道府県単位で設立される(平成18年度中に全都道府県で設立予定)ことから、平成19年度においては、広域連合への分担経費及び市町村の施行準備に要する事務経費等について、所要の地方交付税措置を講じることとしている。