3 情報開示の推進

 地方分権の進展に伴い地方公共団体の行政の自己決定権・自己責任が拡大されることに対応し、透明性の向上を図り、適切な情報開示を通じて説明責任を果たしていくことが求められている。

 とりわけ、地方財政が厳しい状況にある中で、適正な財政運営に資するためにも、財政状況に関して的確にその実情を伝え、住民の理解を得ることの重要性が高まっている。

 財政情報の分かりやすい開示という点では、平成13年度以降の決算について、全都道府県及び市町村(一部事務組合等を除く。以下、この項において同じ。)の決算収支の状況や主要財政指標等を取りまとめた「決算カード」を総務省ホームページ上で公表し、個別の地方公共団体の財政状況が一目で分かるよう配意している。さらに、平成16年度決算からは、態様の類似する地方公共団体間で容易に主要財政指標等の比較分析を行うことができる「財政比較分析表」を全都道府県及び市町村で作成し、総務省ホームページを通じて公表するといった取組を進めているところである。

 しかしながら、こうした現金主義に基づく決算だけでは、ストックとしての資産・負債に関する情報が十分提供されないといった問題もあり、発生主義を活用し、複式簿記の考え方を導入した公会計の整備を地方公共団体においても推進することが必要となっている。

 その整備状況については、平成18年5月31日現在、平成16年度版の普通会計バランスシートを作成済みの団体が、都道府県47団体(全団体)、大都市14団体(全団体)、大都市を除く市町村956団体(全体の52.3%)、平成16年度版行政コスト計算書を作成済みの団体が、都道府県45団体(同95.7%)、大都市14団体(全団体)、大都市を除く市町村554団体(30.3%)となっている。

 また、地方独立行政法人、一部事務組合等、地方三公社及び第三セクターを含めた連結バランスシートについては、平成16年度版より全ての都道府県及び大都市で作成・公表を行っているところであるが、大都市を除く市町村ではわずか3.4%の62団体にとどまっている。

 取組が進んでいる団体は、財務書類の精度を上げていくことが求められ、未作成の団体においては、まずは早期の着手が求められるところである。

 また、後述の再建法制の見直しに際し、地方公共団体の全ての会計に係る新たなフロー指標や、地方公社や第三セクターに係るものも含めた地方公共団体の実質的な負債を捉える将来負担比率の導入が検討されているが、財政の状況をもれなく把握の上、公表するという点で軌を一にするものであり、再建法制の見直しとの関係においても整備が急がれるところである。

 なお、総務省では、平成18年7月より「新地方公会計制度実務研究会」を開催し、「新地方公会計研究会報告書」で示された2つのモデルについて、倉敷市及び浜松市において、資産評価を含め、財務書類整備のためのマニュアル作成を念頭に実証的な検証を行っているところであり、その成果も踏まえ、公会計の整備が進むことが期待されるところである。

 他方、簡素で効率的な政府に向けた取組の一環として、徹底した行政改革や公務員の総人件費改革が行われる中で、地方公共団体自らが、給与・定員管理について、住民の理解と協力を得ながら一層の適正化を推進することが求められている。このため、地方公務員の給与・定員管理等の状況の公表について、その取組を一層充実させるため、全国共通の様式に沿って各団体が給与情報等をホームページで公表し、そのページと総務省のホームページとをリンクさせることにより団体間の比較を可能とする「地方公共団体給与情報等公表システム」を構築し、平成18年3月から運用を開始している。さらに、平成18年10月に給与構造の見直し等に対応した公表様式の充実を行っているところであり、住民等が団体間の比較分析を十分行えるよう、公表様式に沿った情報開示を徹底することとしている。このような取組を推進するとともに、市場化テストの実施過程・実施実績等(公共サービスの質の向上、経費削減効果などの成果等)についても住民に対して分かりやすく公表していくことが求められるところである。