第2部 平成19年度及び平成20年度の地方財政

1 平成19年度の地方財政

 平成19年度の地方財政を取り巻く環境及びその運営状況は、次のとおりである。

(1) 平成19年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成19年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成18年12月19日に閣議了解、平成19年1月25日に閣議決定されたが、この中で、平成18年度の我が国経済は、企業部門の好調さが、雇用・所得環境の改善を通じて家計部門へ波及し、民間需要中心の回復が続くと見込まれた。こうした結果、平成18年度の国内総生産の実質成長率は、1.9%程度(名目成長率は1.5%程度)になると見込まれた。

 このような情勢認識に立って、「平成19年度の経済財政運営の基本的態度」において、政府は、「成長なくして日本の未来なし」の理念の下、「戦後レジームからの新たな船出」を行うため、イノベーションの力とオープンな姿勢により、今後5年間程度で「新成長経済への移行期」を完了し、その初年度である平成19年度においては、国民生活をより豊かにするため、「創造と成長」の実現を図るとの方針の下で、成長力強化に向けた改革を加速・深化させるとともに、併せて地域・中小企業の活性化や再チャレンジ可能な社会を目指すための取組を強力に推進し、「成長なくして財政再建なし」の理念の下、成長力強化を図りつつ、車の両輪である行財政改革を断行し、また、道州制の実現のための検討を加速することとされた。「基本方針2006」等を踏まえ、こうした取組を進めることにより、経済活性化を実現し、日本経済の潜在成長力を高めることとされた。また、政府・日本銀行は、マクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、物価安定の下での民間主導の持続的な成長のため、一体となった取組を行い、今後とも、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととされた。

 以上のような経済財政運営を前提として、平成19年度においては、世界経済の着実な回復が続く下、企業部門・家計部門ともに改善が続き、改革の加速・深化と政府・日本銀行の一体となった取組等により、物価の安定の下での自律的・持続的な経済成長が実現すると見込まれた。こうした結果、平成19年度の我が国経済は、国内総生産の実質成長率が2.0%程度(名目成長率は2.2%程度)になるものと見通された。

イ 国の予算

 平成18年12月1日、「平成19年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で、平成19年度予算編成に当たっては、歳出改革路線を強化するため、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年法律第47号。以下「行政改革推進法」という。)に基づき、行政のスリム化・効率化を一層徹底し、総人件費改革や特別会計改革、資産・債務改革等について、適切に予算に反映させることとされた。また、歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、一般歳出及び一般会計歳出について厳しく抑制を図り、引き続き予算執行実績を的確に踏まえた予算とすることとされた。予算の重点化・効率化については、持続可能な「創造と成長」を実現する観点から、「活力に満ちたオープンな経済社会の構築」及び「健全で安心できる社会の実現」に施策を集中するとともに、各施策について成果目標を提示し、厳格な事後評価を行い、政策評価等を活用し、歳出の効率化・合理化を進め、さらに、民間活力の活用による効率化に努めることとされた。

 社会保障については、これまでの制度改革の効果を検証しつつ、中長期的な展望に立って、改革努力を継続し、国民が負担可能な範囲となるよう制度全般にわたり不断の見直しを行うこととされた。

 公共投資については、歳出改革を進める中で、今後とも公共投資に関する改革を継続し、真に必要な社会資本整備を実施するために、地域の自立・活性化、我が国の成長力強化、防災・減災等による安全・安心の確保を推進する観点から、整備水準や施設の利用状況等を踏まえた事業のメリハリ付けを行うとともに、あらゆる分野での官民格差等を踏まえたコスト縮減や入札改革を進め、更なる重点化・効率化を図る必要があるとされた。

 地方財政については、国と地方の信頼関係を維持しつつ、「基本方針2006」に沿って、平成19年度予算においても、国の取組と歩調を合わせて、人件費、投資的経費、一般行政経費の各分野にわたり地方歳出を厳しく抑制することとされた。また、国・地方の財政状況を踏まえつつ、交付税、補助金の見直しとあわせ、税源移譲を含めた税源配分の見直しを行うなど、一体的な検討を図り、地方公共団体間で財政力に隔たりがある現状を踏まえ、その格差の縮小を目指し、交付税に依存しない不交付団体の速やかな増加を目指すこととされた。

 平成19年度予算は、以上のような方針により編成され、平成18年12月24日に政府案の閣議決定が行われた後、第166回国会に提出され、平成19年3月26日に政府案どおり成立した。

 これによると、平成19年度の国の一般会計予算の規模は82兆9,088億円で、前年度当初予算と比べると3兆2,228億円の増加(4.0%増)となった。歳入、歳出別にみた場合、歳入については、租税及印紙収入が53兆4,670億円で、前年度当初予算と比べると7兆5,890億円の増加(16.5%増)となり、公債の発行予定額は25兆4,320億円で、前年度当初発行予定額と比べると4兆5,410億円の減少(15.2%減)となった。このため、公債依存度は30.7%となった。一方、歳出については、一般歳出の規模は46兆9,784億円で、前年度当初予算と比べると6,124億円の増加(1.3%増)となった。また、地方交付税交付金等は14兆9,316億円で、前年度当初予算と比べると3,732億円の増加(2.6%増)となった。

(2) 地方財政計画

 平成19年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、「基本方針2006」に沿って、歳出全般にわたり見直しを行うことにより歳出総額の計画的な抑制を図る一方、活力ある地方を創るための施策等に財源の重点的配分を図ることとし、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税などの一般財源総額の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

ア 地方税については、現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現するため、法人所得課税等における減価償却制度を見直すとともに、上場株式等の配当・譲渡益に係る軽減税率の適用期限を1年延長するほか、非課税等特別措置の整理合理化等のため所要の措置を講じることとする。

 なお、所得譲与税は、所得税から個人住民税への税源移譲に伴い、平成18年度をもって廃止することとする。

イ 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

(ア) 地方財政の健全化に資するため、交付税特別会計の新規借入を行わないこととし、既往の借入金について、国・地方の負担区分に応じてそれぞれの償還責任を明確にする観点から、国の負担額18兆6,648億円を平成19年4月1日より国の一般会計借入金として承継するとともに、地方の負担額33兆6,173億円は、現行の償還期限である平成38年度までの償還計画を新たに作成した上で、計画的な償還を行う(平成19年度償還額5,869億円)。

(イ) 平成19年度から平成21年度の間は、平成18年度までと同様、財源不足が建設地方債(財源対策債)の増発等によってもなお残る場合には、この残余を国と地方が折半して補てんすることとし、国負担分については国の一般会計からの加算により、地方負担分については地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補てん措置を講じる。

 臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

 これらの措置を地方交付税法第6条の3第2項の制度改正として講じ、所要の法律改正を行う。

 なお、地方交付税法附則第4条の2第8項及び第9項に基づき平成19年度に一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額6,251億円については、法律の定めるところにより平成22年度以降の3年間で均等に加算する。

 また、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等3,712億円については、法律の定めるところにより平成25年度以降の地方交付税の総額に加算するとともに、平成17年度において一般会計から交付税特別会計に繰り入れた国負担分の借入金利子相当額の予算額と実際に要した額の差額1,546億円については、法律の定めるところにより平成20年度及び平成21年度の地方交付税の総額から減額する。

(ウ) 平成19年度の地方財源不足見込額4兆4,200億円については、上記(イ)の考え方に基づき、従前と同様の例により、次の補てん措置を講じる。その結果、国と地方が折半して補てんすべき額は生じないこととなる。

a 建設地方債(財源対策債)の増発 1兆5,900億円

b 地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債) 2兆6,300億円

c 地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律附則第4条第1項に規定する特別交付金 2,000億円

 なお、特別交付金については、平成19年度の交付額を4,000億円、平成20年度の交付額を2,000億円としていたが、地方税収の動向を踏まえ、交付期間を2年から3年に延長し、平成19年度から平成21年度までの各年度の交付額を2,000億円とする。

(エ) 平成19年度においても、投資的経費に係る地方単独事業費と一般行政経費に係る地方単独事業費の一体的かい離是正(一般財源ベース6,000億円)を行う。

 一体的かい離是正分の一般財源に相当する額のうち財源不足となるものについては、基本的には国と地方が折半して負担することとするが、平成19年度は、平成17年度是正分のうち2,100億円、平成18年度是正分のうち8,000億円及び平成19年度是正分のうち財源不足となるもの5,948億円を、地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により措置することとし、国負担となるべき分については後年度に調整する。

(オ) 上記の結果、平成19年度の地方交付税については、15兆2,027億円(前年度に比し4.4%減)を確保する。

ウ 平成19年度においては、児童手当の制度拡充に伴う地方負担の増加に対応するため、地方特例交付金を増額することとする。

エ 地方債については、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方団体が、行政改革と財政の健全化を推進し、当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を一層推進しつつ、所要の地方債資金を確保する。

 この結果、地方債計画の規模は12兆5,108億円(普通会計分9兆6,529億円、公営企業会計等分2兆8,579億円)とする。

オ 社会経済情勢の推移等に即応して使用料・手数料等の適正化を図る。

カ 地域経済の振興を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

(ア) 投資的経費に係る地方単独事業費については、「基本方針2006」を踏まえた事業規模の計画的抑制と併せ、かい離是正を行ったところである。その結果、平成19年度においては、前年度に比し14.9%減額することとしているが、かい離是正分を除いた場合は3.0%減額であり、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

(イ) 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、活力ある地方を創るための施策等に財源の重点的配分を図るとともに、かい離是正を行い、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

(ウ) 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

(エ) 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

キ 地方団体の公債費負担の軽減を図るため、平成19年度から3年間で、徹底した総人件費の削減等を内容とする財政健全化計画又は公営企業経営健全化計画を策定し、行政改革・経営改革を行う地方団体を対象に、公営企業借換債を合わせて5兆円程度の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金及び公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行うこととし、その財源として必要に応じ民間等資金による借換債を発行できることとする。

ク 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

ケ 地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減や給与構造改革等に取り組むとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上の方針に基づいて策定した平成19年度の地方財政計画の規模は、83兆1,261億円であり、前年度と比べると247億円減少となった。

 歳入についてみると、地方税の収入見込額は40兆3,728億円(道府県税18兆8,524億円、市町村税21兆5,204億円)で、前年度と比べると5兆4,745億円増加(15.7%増)(道府県税22.2%増、市町村税10.5%増)、地方譲与税の収入見込額は7,091億円で、前年度と比べると3兆233億円減少(81.0%減)、地方特例交付金等は3,120億円で、前年度と比べると5,040億円減少(61.8%減)、地方交付税は15兆2,027億円で、前年度と比べると7,045億円減少(4.4%減)、国庫支出金は10兆1,739億円で、前年度と比べると276億円減少(0.3%減)、地方債(普通会計分)の発行予定額は9兆6,529億円で、前年度と比べると1兆1,645億円減少(10.8%減)となった。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は22兆5,111億円で、前年度と比べると658億円減少(0.3%減)となった。なお、地方財政計画における職員数については、「基本方針2006」における5年間で5.7%の定員純減目標を踏まえ34,358人の純減としている。一般行政経費は26兆1,811億円で、前年度と比べると9,954億円増加(4.0%増)となった。また、国庫補助負担金を伴わない一般行政経費は13兆9,510億円で、前年度と比べて4,725億円増加(3.5%増)したが、国庫補助負担金を伴わない投資的経費との一体的かい離是正分である6,000億円の増額計上を除いた場合は13兆3,510億円で、前年度と比べると1,275億円減少(0.9%減)となった。公債費は13兆1,496億円で、前年度と比べると1,483億円減少(1.1%減)、投資的経費は15兆2,328億円で、前年度と比べると1兆6,561億円減少(9.8%減)となった。なお、投資的経費のうち国庫補助負担金を伴わないものは8兆5,884億円で、前年度と比べると1兆5,027億円減少したが、国庫補助負担金を伴わない一般行政経費との一体的かい離是正分である1兆2,000億円の減額計上を除いた場合は9兆7,884億円で、前年度と比べると3,027億円減少(3.0%減)となった。

 他方、平成19年度の地方債計画の規模は12兆5,108億円で、前年度当初計画と比べると1兆4,358億円減少(10.3%減)となっている。平成19年度の地方債計画は、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方公共団体が、行政改革と財政の健全化を推進し、当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を一層推進しつつ、所要の地方債資金の確保を図ることとして策定している。

 なお、地方公共団体の公債費負担の軽減を図るため、平成19年度から3年間で、普通会計債及び公営企業債(上水道、簡易水道、工業用水道、下水道、地下鉄、病院)の年利5%以上の地方債を対象として、年利段階に応じ、市町村合併や財政力、公債費負担、公営企業資本費等の状況に基づいて段階的に対象団体を設定し、政府資金については3兆8,000億円程度以内(旧資金運用部資金3兆3,000億円程度以内、平成20年度及び平成21年度において旧簡易生命保険資金5,000億円程度以内、財政力指数1.0以上の団体を除く。)、公営企業金融公庫資金については1兆2,000億円程度(平成19年度から平成20年度の公営企業金融公庫の廃止までの間において実施。うち平成19年度2,000億円、平成20年度2,000億円、計4,000億円の公営企業借換債による措置を含む。)の補償金免除繰上償還を行うこととした。

(3) 平成19年度補正予算

ア 平成19年度補正予算(第1号)

 平成19年度補正予算(第1号)は、平成19年12月20日に閣議決定され、平成20年1月18日に第169回国会に提出され、2月6日に成立した。

 この補正予算においては、歳出面では、災害対策費7,308億円、義務的経費1,552億円、原油価格高騰対策費570億円等を追加計上したほか、既定経費の節減1兆2,006億円、予備費の減額1,000億円等の修正減少額を計上した。また、歳入面では、税収を9,160億円減額計上する一方、税外収入9,828億円、前年度剰余金受入8,286億円を増額計上した。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成19年度当初予算に対し、8,954億円増加し、83兆8,042億円となった。

イ 平成19年度補正予算(第1号)に係る地方財政補正措置

 平成19年度補正予算(第1号)の編成により、国税の減額補正に伴い地方交付税が減額されたとともに、災害復旧事業の追加等に伴う地方負担の増加が生じた結果、以下の地方財政補正措置が講じられた。

(ア) 国税の減額補正に伴う地方交付税の減額に対する補てん措置

 国の補正予算においては、平成19年度の国税の減収に伴い地方交付税が2,992億円の減額となったところであるが、これについては、一般会計における加算によりその全額を補てんすることとする。なお、当該加算については、平成19年度当初の地方財政対策において平成22年度以降平成24年度までに繰り延べることとした一般会計における法定加算分(6,251億円)を減額して充てることとする。

 この結果、平成19年度の当初予算の地方交付税の総額が確保されるものである。

 なお、平成19年度当初に行うこととしていた交付税特別会計借入金の償還については、平成25年度以降に繰り延べるとともに、当該償還予定額(5,869億円)を平成20年度当初の地方交付税の総額に加算することができることとする。

(イ) 追加の財政需要等に対する財政措置

a 国の補正予算により平成19年度に追加されることとなる災害復旧事業等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分3,615億円)については、原則として、地方債(充当率100%)を充当することとし、後年度においてその元利償還金の全額を基準財政需要額に算入することとする。その際、元利償還金の50%(義務教育施設改築事業等当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては、原則として当初の算入率)については、公債費方式により各団体の地方債発行額に応じて基準財政需要額に算入することとし、残余については単位費用により措置することとする。

b 地方債の対象とならない経費については、地方負担の追加は生じていないところである。

(4) 地方公共団体の予算

 平成19年度の地方公共団体の普通会計予算(9月補正後)の状況は、第43表のとおりであり、普通会計予算の総額(都道府県及び市町村の単純合計)は、前年度と比べると4.0%減となった。

 主な内訳をみると、歳入では、地方税が前年度と比べると14.1%増、地方譲与税81.2%減、国庫支出金9.6%減、地方債12.8%減となった。一方、歳出では、人件費が前年度と比べると3.4%減、普通建設事業費が17.8%減となった。

 なお、第43表の数値は、前年度からの繰越事業に係るものを含んでいる。

(5) 不交付団体の拡大

 地方公共団体の自由と責任を実現するには、地方交付税に依存しない自立した団体を増やすことが重要である。

 平成19年度の不交付団体数は、都道府県は2団体(東京都及び愛知県)、市町村は1,804団体中186団体(うち大都市4団体(さいたま市、千葉市、川崎市及び名古屋市))であり、不交付団体の割合は、団体数では10.3%、人口割合では27.1%となっている。これらの数値は、三位一体の改革による税源移譲、景気動向を反映した法人関係税の増等により、それぞれ平成18年度の9.3%、25.9%からは増加している。

 平成19年度において、人口20万人以上の地方公共団体(113団体)のうち不交付団体数は34団体(30.1%)となっている。

(6) 個別団体における財政健全化

 近年の地方財政は、バブル経済崩壊後の数次の景気対策による公共事業の追加や、減税の実施等により、借入金残高が累積しており、厳しい財政運営を余儀なくされている状況にある。平成18年度決算における経常収支比率については、前年度と同率の91.4%と依然として高い水準となっている。実質公債費比率については、前年度と同率の14.9%となっている。また、実質収支が赤字の団体数は前年度から2団体減少し、26団体となっている。

 各地方公共団体においては、このような厳しい財政状況を踏まえて、一層の事務事業の見直し、組織・機構の簡素効率化、外郭団体の統廃合等、定員管理・給与の適正化、民間委託等の推進など、自主的な行財政改革に積極的に取り組むとともに、独自課税の検討、地方税の徴収確保、使用料・手数料の適正化等を通じて歳入の確保を図るなど、財政運営の健全化に努めている。

 個別団体についてみると、夕張市においては、人口急減などに伴う歳入の減少が続くことへの対応が遅れ、組織のスリム化が進まず、観光振興等に多大な財政支出を行ってきたこと、さらに、不適正な財務処理を行い多額の赤字の実態を表面化させず拡大を招いたことにより、財政状況が極めて深刻な状態に悪化していることが、平成18年に明らかにされた。

 その後、夕張市は、北海道の助言を得ながら財政再建に向けた検討を進め、平成18年度末で約353億円の実質収支の赤字を18年間で解消するための財政再建計画について、平成19年2月28日に市議会における議決を経て策定し、3月1日に総務大臣へ協議、3月6日に総務大臣の同意を得て、現在、同計画に基づき、再建に取り組んでいる。

 なお、赤字相当額の資金手当については、北海道が、市の財政再建が確実かつ早期に進められるよう低利(金利0.5%)で資金の貸付けを行っていることから、総務省としても、必要な支援を行っていくことを検討している。

 夕張市は赤字の解消にあたり、歳入面では、市民の負担増に一定の配慮をしながら、税率の見直しによる市税の増収を図るほか、ごみ処理の有料化、各種施設使用料などの受益者負担の見直しによる歳入の増加、さらに、税や使用料などの徴収率の向上に向けた対策を講じることにより歳入確保に努めている。また、歳出面では、行政のスリム化と事務事業の抜本的な見直しを図ることとし、特に、人件費については、職員の給与水準の引き下げや各種手当ての見直しにより削減を図り、全国の市町村で最も低い給与水準とするほか、当分の間、原則として新規採用を停止するとともに早期退職の促進により、類似団体と比較して2倍程度であった職員数の大幅な削減を進め、同程度の規模の市町村で最も少ない職員数の水準となるよう削減をすることとしている。現在、夕張市においては、職員の削減に対応して、必要な行政サービスの提供に支障が生じることのないよう、組織の再編成や業務の効率的な執行、他団体からの職員派遣の受け入れなどにより、行政執行体制の確保に努めている。

 このような徹底した歳入歳出の見直しの中にあっても、高い比率を占める高齢者や少子化の中で地域の将来を担う子どもたちに一定の配慮を行うこととし、バスの敬老パスや一部の公衆トイレの存続、保育料の見直しについての激変緩和、夏期休暇期間中のプールの存続等が財政再建計画に盛り込まれている。

 市の財政再建計画は、策定時点で見込みうる内容を前提として歳入歳出を見込んでおり、この計画を着実に実行することが基本となるが、診療所の改修など、その後に発生した事情等により、財政再建計画の変更について、9月19日に総務大臣の同意を得ている。この計画の変更においては、計画の主要部分である財政再建期間、財政再建の基本方針及び財政再建に必要な具体的措置については変更せず、財源についても補助金の活用、寄附金等により確保されている。今後、平成19年度の補正予算及び平成20年度の当初予算の編成を前提として、2回目の財政再建計画の変更が予定されている。

 このような中において、市民が行う地域再生事業を応援したいという寄附金が全国から寄せられており(「幸福の黄色いハンカチ基金」として積み立て)、市民の中にも自分たちの力で夕張の地域を再生させるという動きも芽生えてきている(平成20年2月19日現在の状況)。

(7) 地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

 地方公営企業については、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の着実な整備を推進するとともに、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開を支援し、併せて地方公営企業の経営健全化等を推進するなど経営基盤の一層の強化を図る必要がある。

 このため、平成19年度においては、次のような措置を講じた。

 企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆7,249億円(前年度2兆7,346億円)を計上した。

 地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆8,579億円(前年度3兆1,292億円)を計上した。

 また、普通会計分と合わせた公債費負担対策として、平成19年度から3年間で、普通会計債及び公営企業債(上水道、簡易水道、工業用水道、下水道、地下鉄、病院)の年利5%以上の地方債を対象として、年利段階に応じ、市町村合併や公営企業資本費等の状況に基づいて段階的に対象団体を設定し、補償金免除繰上償還(公営企業金融公庫資金にあっては公営企業借換債による措置を含む。)を行うこととした。このうち平成19年度の公営企業借換債については、高資本費対策分として、年利5.5%以上のもので、資本費負担が全国平均を著しく上回っているものを対象に借換枠を1,000億円とし、また、臨時特例措置(高金利対策分)として、高資本費対策分に該当しない年利7.0%以上のものを対象に借換枠を1,000億円とし、合計2,000億円を措置した。

 さらに、各事業における財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

(ア) 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入することとした。

(イ) 簡易水道事業については、簡易水道事業法適化計画を策定し、自主的に地方公営企業法の財務規定等を適用しようとする団体、又は、簡易水道事業統合計画を策定し、自主的に事業内の簡易水道施設を整理・統合しようとする団体に対し、所要の地方財政措置を講じることとした。

(ウ) 交通事業については、都市内交通の改善、人と環境にやさしい都市公共交通の構築等の観点から、高機能路面電車システムであるLRTシステムの構築を促進するため、国庫補助事業として行うLRTシステムの整備について、事業費の4分の1を超えない額を一般会計補助の対象とするとともに、当該一般会計補助に所要の地方債措置を講じることとした。

(エ) 病院事業については、女性医師及び看護師確保の観点から、院内保育所の運営に要する経費について、一般会計から繰出しを行うこととし、当該繰出しに要する経費に対し所要の地方財政措置を講じることとした。

(オ) 以上のほか、公営企業においても少子化対策を推進する観点から、3歳以上小学校修了前の児童に対する児童手当の給付に要する経費に加え、新たに0歳以上3歳未満の児童手当の給付に要する経費(平成19年度から実施された「児童手当制度における乳幼児加算」分を含む。)について所要の地方財政措置を講じることとした。

イ 国民健康保険事業

 国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、平成17年度に決定された医療制度改革大綱や、健康保険法等の改正などを踏まえ、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア) 都道府県が、市町村の国保財政安定のために必要な取組等に対し交付する都道府県調整交付金の所要額(5,102億円)について、地方交付税措置を講じることとしている。

(イ) 国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部を負担することとし(都道府県3/4、市町村1/4)、所要額(3,899億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(ウ) 低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)、所要額(875億円)について地方交付税措置を講じることとしている。

(エ) 高額医療費共同事業については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)、所要額(1,964億円)について地方交付税措置を講じることとしている。また、都道府県内の市町村国保間の保険料の平準化、財政の安定化を図るため、一件30万円以上の医療費について、市町村国保の拠出による保険財政共同安定化事業を実施することとしている。

(オ) 国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じることとしている。

ウ 後期高齢者医療制度の施行準備

 医療制度改革に伴い、平成20年4月より75歳以上の後期高齢者を対象とした後期高齢者医療制度が施行される。これに伴い、実施主体として全市町村が加入する広域連合が都道府県単位で設立される(平成18年度中に全都道府県で設立)ことから、平成19年度においては、広域連合への分担経費及び市町村の施行準備に要する事務経費等について、所要の地方交付税措置を講じることとしている。