第1部 平成19年度の地方財政の状況

第1章 平成19年度の決算状況

平成19年度普通会計決算の概況

歳 出…歳出削減の継続

・89兆1,476億円(630億円減)8年連続の減。

※社会保障関係経費は児童手当制度の拡充や障害者自立支援法の本格施行により増加(民生費は7,176億円増)したものの、投資的経費は国の公共事業関係費の抑制や地方単独事業の抑制により9,154億円減少。

歳 入…歳出の減少を上回る歳入の減少

・91兆1,814億円(3,469億円減)8年連続の減。

※地方税は所得税からの税源移譲や定率減税の廃止などにより3兆7,607億円増加したものの、所得譲与税の廃止により地方譲与税は3兆140億円減少。また、地方交付税は7,926億円減少、地方特例交付金等は5,040億円減少。

財政構造の弾力性…経常収支比率は社会保障関係経費等の増加により過去最も高い

普通会計が負担すべき借入金残高の推移…依然として高い水準

1 地方財政の役割

 地方公共団体は、その自然的・歴史的条件、産業構造、人口規模等がそれぞれ異なっており、これに即応してさまざまな行政活動を行っている。

 地方財政は、このような地方公共団体の行政活動を支えている個々の地方公共団体の財政の集合であり、国の財政と密接な関係を保ちながら、国民経済及び国民生活上大きな役割を担っている。

(1) 国・地方を通じた財政支出の状況[第33表

 国・地方を通じた財政支出について、国(一般会計と交付税及び譲与税配付金、公共事業関係等の9特別会計の純計)と地方(普通会計)の財政支出の合計から重複分を除いた歳出純計額は149兆2,376億円で、前年度と比べると1.0%増(前年度1.9%減)となっている。

 歳出純計額の目的別歳出額の構成比の推移は、第1図のとおりであり、平成19年度においては、社会保障関係費が最も大きな割合(27.9%)を占め、以下、公債費(21.6%)、国土保全及び開発費(13.2%)、教育費(13.1%)の順となっている。

 なお、公債費の構成比が高い水準にあるのは、主に平成4年度以降の経済対策、租税収入の減少等により、国・地方を通じて公債の発行が増加したことによるものである。

 この歳出純計額を最終支出の主体に着目して国と地方とに分けてみると、国が61兆3,556億円(全体の41.1%)、地方が87兆8,820億円(同58.9%)で、前年度と比べると、国が2.5%増(前年度2.2%減)、地方が0.1%減(同1.7%減)となっている。

 また、歳出純計額の目的別歳出額についてさらに詳細に国と地方に分けて示したものが第2図である。これによると、防衛費等のように国のみが行う行政に係るものは別として、衛生費、学校教育費等、国民生活に直接関連する経費については、最終的に地方公共団体を通じて支出される割合が高いことがわかる。これを地方公共団体において実施されている具体的な行政事務でみると、衛生費については、住民の健康を保持増進し、生活環境の改善を図るため、医療、公衆衛生、精神衛生等に係る対策が推進されるとともに、し尿・ごみなど一般廃棄物の収集・処理等、住民の日常生活に密着した諸施策が実施されている。また、学校教育費については、幼稚園、小中学校、高等学校教育等が実施されている。司法警察消防費については、都道府県において、犯罪の防止、交通安全の確保その他地域社会の安全と秩序を維持し、国民の生命、身体及び財産を保護するため、警察行政が推進されるとともに、東京都及び市町村等において、火災、風水害、地震等の災害から国民の生命、身体財産を守り、これらの災害を防除し、被害を軽減するため、消防行政が推進されている。さらに、民生費(年金関係を除く。)については、社会福祉の充実を図るため、児童、高齢者、心身障害者等のための福祉施設の整備及び運営、生活保護の実施等の施策が行われている。

(2) 国民経済と地方財政

 政府部門は、国民経済計算上、中央政府、地方政府及び社会保障基金からなっており、家計部門に次ぐ経済活動の主体として、資金の調達及び財政支出を通じ、資源配分の適正化、所得分配の公正化、経済の安定化等の重要な機能を果たしている。その中でも、地方政府は、中央政府を上回る最終支出主体であり、国民経済上、大きな役割を担っている。

 なお、国民経済計算における社会保障基金については、労働保険等の国の特別会計に属するもの、国民健康保険事業会計(事業勘定)等の地方の公営事業会計に属するもの等が含まれている。

ア 国内総支出と地方財政[第34表第134表

 国民経済において地方政府が果たしている役割を国内総支出(名目ベース。以下同じ。)に占める割合でみると、第3図のとおりである。平成19年度の国内総支出は515兆8,579億円であり、その支出主体別の構成比は、家計部門が59.3%(前年度59.8%)、政府部門が22.0%(同22.0%)、企業部門が17.1%(同16.8%)となっている。

 政府部門のうち、地方政府及び中央政府が国内総支出に占める割合は、地方政府が11.2%(前年度11.4%)、中央政府が4.0%(同4.0%)となっており、地方政府の構成比は中央政府の約3倍となっている。

 なお、地方政府のうち普通会計分は50兆8,240億円で、国内総支出の9.9%(前年度9.9%)を占めている。

イ 公的支出の状況[第34表第134表

 政府部門による公的支出の推移は、第4図のとおりである。平成19年度の公的支出は、政府最終消費支出が前年度を上回ったことから前年度と比べると1.2%増(前年度1.3%減)の113兆7,452億円となっている。また、国内総支出に占める割合は、前年度と同じ22.0%となっている。

 公的支出の内訳をみると、政府最終消費支出が93兆1,260億円、公的総資本形成が20兆6,192億円となっており、これらを前年度と比べると、政府最終消費支出は2.4%増(前年度0.4%増)、公的総資本形成は3.8%減(同7.8%減)となっている。

 さらに、公的支出の内訳を最終支出主体別にみると、第5図のとおりである。中央政府は、前年度と比べると、政府最終消費支出が1.3%増(前年度1.0%減)、公的総資本形成が2.6%増(同8.9%減)で合計1.7%増(同3.6%減)であり、公的支出に占める中央政府の割合は前年度(18.2%)より0.1ポイント上昇の18.3%となっている。

 地方政府は、前年度と比べると、政府最終消費支出が1.5%増(前年度0.1%増)、公的総資本形成が6.4%減(同7.6%減)で、合計0.5%減(同2.0%減)であり、公的支出に占める地方政府の割合は、前年度(51.8%)より0.9ポイント低下の50.9%となっている。

 各最終支出主体が国内総支出の増加率にどの程度の影響を与えたかを示す指標である寄与度の推移は、第6図のとおりである。

 また、政府最終消費支出及び公的総資本形成に占める地方政府の割合をみると、政府最終消費支出においては前年度(47.4%)と比べると0.4ポイント低下の47.0%、公的総資本形成においては前年度(70.5%)と比べると2.0ポイント低下の68.5%となっており、公的総資本形成においては、約7割の額を地方政府が支出している。

 なお、ここでいう公的支出には、国・地方の歳出に含まれる経費の中で、移転的経費である扶助費、普通建設事業費のうち所有権の取得に要する経費である用地取得費、金融取引にあたる公債費及び積立金等といった付加価値の増加を伴わない経費などは除かれている。

 したがって、公的支出に占める中央政府及び地方政府の割合と歳出純計額に占める国と地方の割合は一致していない。