第2部 平成20年度及び平成21年度の地方財政

1 平成20年度の地方財政

 平成20年度の地方財政を取り巻く環境及びその運営状況は、次のとおりである。

(1) 平成20年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成20年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成19年12月19日に閣議了解、平成20年1月18日に閣議決定されたが、この中で平成19年度の我が国経済は、企業部門の底堅さが持続し、景気回復が続くと見込まれるものの、「改正建築基準法」施行の影響により住宅建設が減少していること等から、回復の足取りが緩やかになると見込まれた。こうした結果、平成19年度の国内総生産の実質成長率は、1.3%程度(名目成長率は0.8%程度)になると見込まれた。

 このような情勢認識に立って、「平成20年度の経済財政運営の基本的態度」においては、「希望と安心」の国の実現を目指すため、(1)成長力の強化、(2)地方の自立と再生、(3)安心と信頼のできる財政、社会保障、行政の構築、の3つを一体のものとして推進し、民間需要主導の持続的な成長を図るとともに、これと両立する安定的な物価上昇率を定着させるため、政府と日本銀行は、「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月19日閣議決定。以下「基本方針2007」という。)に示されたマクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、政策運営を行い、平成19年度に引き続き、サブプライム住宅ローン問題を背景とする金融資本市場の変動、原油価格の高騰、海外経済の動向等のリスク要因が我が国経済に与える影響については注視しつつ、経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行うこととされた。

 以上のような経済財政運営を前提として、平成20年度においては、世界経済の回復が続く下、平成19年度に引き続き企業部門の底堅さが持続するとともに、家計部門が緩やかに改善し、「自立と共生」を基本とした改革への取組の加速・深化と政府・日本銀行の一体となった取組等により、物価の安定の下での民間需要中心の経済成長になると見込まれた。こうした結果、平成20年度の我が国経済は、国内総生産の実質成長率が2.0%程度(名目成長率は2.1%程度)になるものと見通された。

イ 国の予算

 平成19年12月4日、「平成20年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で、平成20年度予算については、歳出全般にわたって、これまで行ってきた歳出改革の努力を決して緩めることなく、国・地方を通じ、引き続き「基本方針2006」及び「基本方針2007」に則り、最大限の削減を行うとともに、若者が明日に希望を持ち、お年寄りが安心できる「希望と安心」の国の実現のため、予算の重点化・効率化を行うこととして、このため歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、一般歳出及び一般会計歳出について厳しく抑制を図るとともに、新規国債発行額について極力抑制し、予算配分に当たっては、「公共事業関係費」の総額を前年度予算額から3%減算した額とすること等を基本に厳しく抑制した上で、引き続き予算執行実績を的確に踏まえた予算とすることとされた。また、予算配分の重点化・効率化に当たっては、「活力ある経済社会の実現」、「地方の自立と再生」及び「国民が安全で安心して暮らせる社会の実現」に施策を集中するとともに、各施策について成果目標を提示し、厳格な事後評価を行い、政策評価等を活用し、歳出の効率化・合理化を進め、さらに、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(平成18年法律第47号。以下「行政改革推進法」という。)に基づき、行政のスリム化・効率化を一層徹底し、国・地方の定数純減方針に則り、総人件費改革や特別会計改革、資産債務改革等により財政健全化に取り組み、適切に予算に反映させることとされた。

 公共投資については、歳出改革を進める中で、今後とも公共投資に関する改革を継続し、都市と地方の「自立と共生」の考え方を踏まえつつ、地域の自立・活性化、我が国の成長力強化、防災・減災等による安全・安心の確保等を推進するため、真に必要な公共投資を選別する観点から、整備水準や施設の利用状況等を踏まえた事業のメリハリ付けを行うとともに、コスト縮減や入札改革を進め、更なる重点化・効率化を図ることとされた。

 社会保障については、少子高齢化が進展する中で、経済・財政と均衡がとれ、将来にわたり持続可能な制度を構築するため、改革努力を継続することとされた。

 地方財政については、平成20年度予算においても、「基本方針2006」及び「基本方針2007」に則り、国の取組と歩調を合わせて、人件費、投資的経費、一般行政経費の各分野にわたり厳しく抑制し、安定的な財政運営に必要となる地方税、地方交付税等の一般財源の総額を確保するとともに、法人二税を中心に税源が偏在するなど地方公共団体間で財政力に格差があることを踏まえ、地方間の税源の偏在是正について、具体策を策定し、その格差の縮小を目指し、また、「ふるさと」に対する納税者の貢献や、関わりの深い地域への応援が可能となる税制上の方策の実現に向け、検討することとされた。

 平成20年度予算は、以上のような方針により編成され、平成19年12月24日に政府案の閣議決定が行われた後、第169回国会に提出され、平成20年3月28日に政府案どおり成立した。

 これによると、平成20年度の国の一般会計予算の規模は83兆613億円で、前年度当初予算と比べると1,525億円の増加(0.2%増)となった。歳入、歳出別に見た場合、歳入については、租税及び印紙収入が53兆5,540億円で、前年度当初予算と比べると870億円の増加(0.2%増)となり、公債の発行予定額は25兆3,480億円で、前年度当初発行予定額と比べると840億円の減少(0.3%減)となった。その結果、公債依存度は30.5%となった。一方、歳出については、一般歳出の規模は47兆2,845億円で、前年度当初予算と比べると3,061億円の増加(0.7%増)となった。また、地方交付税交付金等は15兆6,136億円で前年度当初予算と比べると6,820億円の増加(4.6%増)となった。

(2) 地方財政計画

 平成20年度の地方財政計画は、極めて厳しい地方財政の現状等を踏まえ、歳出面においては、「基本方針2006」及び「基本方針2007」に沿って、国の取組と歩調を合わせて、歳出全般にわたり見直しを行うことにより計画的な抑制を図る一方、喫緊の課題である地方の再生に向け、地方の知恵と工夫を活かした産業振興や地域活性化、生活の安全安心の確保等の施策の推進に財源の重点的配分を図ることとし、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税などの一般財源総額の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補てん措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

ア 地方税については、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の暫定措置として、法人事業税の税率の引下げを行うとともに、地方法人特別税を創設し、その収入額に相当する額を地方法人特別譲与税として都道府県に対して譲与するため所要の措置を講じることとする。

 また、最近における社会経済情勢等にかんがみ、個人住民税について、寄附金控除の拡充、上場株式等の配当等・譲渡所得等に対する税率の特例措置の見直し並びに公的年金からの特別徴収制度の創設を行い、自動車取得税及び軽油引取税の税率の特例措置の適用期限の延長並びに公益法人制度改革に対応した所要の措置を講じるほか、非課税等特別措置の整理合理化等を行うこととし、所要の措置を講じることとする。

イ 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

(ア) 平成19年度に予定されていた交付税特別会計借入金の償還を平成25年度以降に繰り延べた上で当該償還予定額(5,869億円)を平成20年度に繰り越し地方交付税の総額に加算するとともに、平成20年度に予定されている交付税特別会計借入金の償還を平成26年度以降に繰り延べる。また、平成18年度精算分の一部(5,016億円の減額のうち3,016億円)を平成21年度に繰り延べる。

(イ) 平成20年度の地方財源不足見込額5兆2,476億円については、平成19年度に講じた平成21年度までの間の制度改正に基づき、従前と同様の例により、次の補てん措置を講じる。その結果、平成19年度に引き続き、国と地方が折半して補てんすべき額は生じないこととなる。

a 建設地方債(財源対策債)の増発 1兆5,400億円

b 国の一般会計加算による地方交付税の増額 6,744億円(うち地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額2,000億円、同条第3項の加算額4,744億円)

c 地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)の発行 2兆8,332億円(うち既往の臨時財政対策債の元利償還分1兆2,522億円、決算かい離是正分1兆2,110億円、地方再生対策費分3,700億円)

d 地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律附則第4条第1項に規定する特別交付金の交付 2,000億円

 なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等3,092億円については、法律の定めるところにより平成26年度以降の地方交付税の総額に加算するとともに、平成18年度において一般会計から交付税特別会計に繰り入れた国負担分の借入金利子相当額の予算額と実際に要した額の差額847億円については、法律の定めるところにより平成21年度及び平成22年度の地方交付税の総額から減額する。

 また、交付税特別会計借入金の償還計画については、平成19年度から平成21年度までの各年度に行う予定となっている交付税特別会計借入金の償還を平成25年度以降に繰り延べる方式により、現行の償還期限の範囲で見直す。

(ウ) 上記の結果、平成20年度の地方交付税については、15兆4,061億円(前年度に比し1.3%増)を確保する。

ウ 平成20年度から適用される個人住民税における住宅借入金等特別税額控除の実施に伴う地方団体の減収分を補てんするため、地方特例交付金(減収補てん特例交付金)を創設する。

エ 地方債については、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方団体が、行政改革と財政の健全化を推進し、当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を引き続き推進しつつ、所要の地方債資金を確保する。

 この結果、地方債計画の規模は12兆4,776億円(普通会計分9兆6,055億円、公営企業会計等分2兆8,721億円)とする。

オ 地方の再生に向け、地域経済の振興や雇用の確保を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

(ア) 喫緊の課題である地方の再生に向けた総合的な戦略と連携して、「地方と都市の共生」の考え方の下、地方税の偏在是正により生じる財源を活用して、地方が自主的・主体的に取り組む地域活性化施策に必要な特別枠「地方再生対策費」4,000億円を計上し、地方の再生に向けた施策を積極的に推進する。なお、平成20年度においては、偏在是正策の効果が発現しないため、その財源のうち3,700億円を臨時財政対策債の発行により措置する。

(イ) 投資的経費に係る地方単独事業費については、国の公共投資関係費の取扱い等も勘案しつつ、前年度に比し3.0%減額することとする一方で、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

(ウ) 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、引き続き、地域において必要な行政課題に対して財源の重点的配分を図る。

(エ) 平成20年度から施行される予定の後期高齢者医療制度の安定的な運営に資するため、所要の財政措置を講じる。

(オ) 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

(カ) 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

カ 地方団体の公債費負担の軽減を図るため、平成19年度に引き続き平成21年度までの3年間で、徹底した総人件費の削減等を内容とする財政健全化計画又は公営企業経営健全化計画を策定し、行政改革・経営改革を行う地方団体を対象に、公営企業借換債を合わせて5兆円程度の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金及び公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、その財源として必要に応じ民間等資金による借換債を発行できることとする。

キ 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

ク 地方行財政運営の合理化を図ることとし、「基本方針2006」及び「基本方針2007」に沿って、職員数の純減や給与構造改革等に引き続き取り組むとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成20年度の地方財政計画の規模は、83兆4,014億円で、前年度と比べると2,753億円増加(0.3%増)となった。

 歳入についてみると、地方税は40兆4,703億円で、前年度と比べると975億円増加(0.2%増)(道府県税0.1%減、市町村税0.5%増)、地方譲与税は7,027億円で、前年度と比べると64億円減少(0.9%減)、地方特例交付金等は4,735億円で、前年度と比べると1,615億円増加(51.8%増)、地方交付税は15兆4,061億円で、前年度と比べると2,034億円増加(1.3%増)、国庫支出金は10兆831億円で、前年度と比べると908億円減少(0.9%減)、地方債(普通会計分)は9兆6,055億円で、前年度と比べると474億円減少(0.5%減)となった。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は22兆2,071億円で、前年度と比べると3,040億円減少(1.4%減)となった。なお、地方財政計画における職員数については、「基本方針2006」における5年間で5.7%の定員純減目標を踏まえ28,319人の純減としている。一般行政経費は26兆5,464億円で、前年度と比べると3,653億円増加(1.4%増)となり、一般行政経費に係る地方単独事業費は13兆8,410億円で、前年度と比べると1,100億円減少(0.8%減)となっている。公債費は13兆3,796億円で、前年度と比べると2,300億円増加(1.7%増)、投資的経費は14兆8,151億円で、前年度と比べると4,177億円減少(2.7%減)となっており、投資的経費のうち、公共事業費中の普通建設事業費は5兆3,210億円で、前年度と比べると1,465億円減少(2.7%減)となっている。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は8兆3,307億円で、前年度と比べると2,577億円減少(3.0%減)となった。

 他方、平成20年度の地方債計画の規模は12兆4,776億円で、前年度当初計画と比べると332億円減少(0.3%減)となった。平成20年度の地方債計画は、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方公共団体が、行政改革と財政の健全化を推進し当面する諸課題に重点的・効率的に対処することができるよう、公的資金の重点化と地方債資金の市場化を引き続き推進しつつ、所要の地方債資金の確保を図ることとして策定している。

 なお、平成19年度に引き続き平成21年度までの3年間で、5兆円程度の公的資金(旧資金運用部資金3兆3,000億円程度以内、旧簡易生命保険資金5,000億円程度以内、公営企業金融公庫資金1兆2,000億円程度、公営企業金融公庫資金にあっては公営企業借換債による措置4,000億円(平成19年度2,000億円、平成20年度2,000億円)を含む。)の補償金免除繰上償還を行うこととしており、その財源として必要に応じ民間等資金による借換債を発行できることとした。

(3) 平成20年度補正予算

ア 平成20年度補正予算(第1号)

 平成20年度補正予算(第1号)は、平成20年9月29日に閣議決定され、同日第170回国会に提出され、10月16日に成立した。

 この補正予算においては、緊急安心実現総合対策費1兆8,081億円等を追加計上したほか、既定経費の節減9,599億円、予備費の減額1,000億円の修正減少額を計上した。また、歳入面では、公債金3,950億円、前年度剰余金受入6,319億円等を追加計上した。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成20年度当初予算に対し、1兆641億円増加し、84兆1,255億円となった。

イ 平成20年度補正予算(第1号)に係る地方財政補正措置

 平成20年度補正予算(第1号)の編成により、歳出の追加に伴う地方負担の増加が生じた結果、以下の地方財政補正措置が講じられた。

(ア) 追加の財政需要等に対する財政措置

a 国の補正予算により平成20年度に追加されることとなる公立文教施設整備費等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分3,169億円)については、原則として、地方債(充当率100%)を充当することとし、後年度においてその元利償還金の全額を基準財政需要額に算入する。

 その際、元利償還金の50%(義務教育施設改築事業等当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては、原則として当初の算入率)については、公債費方式により各団体の地方債発行額に応じて基準財政需要額に算入することとし、残余については単位費用により措置する。

b 地方債の対象とならない経費については、新たな地方負担が既定経費の節減に伴う地方負担の減少の範囲内であるため、全体として地方負担の追加は生じていないところである。

(イ) 地方税等減収補てん臨時交付金

a 地方税法等の一部を改正する法律(平成20年法律第21号)及び所得税法等の一部を改正する法律(平成20年法律第23号)が平成20年4月1日後に公布されたことにより生じた自動車取得税及び軽油引取税並びに地方道路税の収入の減少に伴う地方公共団体の平成20年度の減収を補てんするため、地方税等減収補てん臨時交付金を交付する。

 地方税等減収補てん臨時交付金の総額は656億円であり、その内訳は次のとおりである。

(a) 自動車取得税の収入の減少に伴う都道府県及び市町村の減収を補てんするために交付する自動車取得税減収補てん臨時交付金   116億85百万円

(b) 軽油引取税の収入の減少に伴う都道府県及び政令指定都市の減収を補てんするために交付する軽油引取税減収補てん臨時交付金   493億39百万円

(c) 地方道路税の収入の減少に伴う都道府県及び市町村の減収を補てんするために交付する地方道路譲与税減収補てん臨時交付金   45億95百万円

 地方税等減収補てん臨時交付金については、各地方公共団体の減収見込額に応じて交付し、その額は道路に関する費用に充てることとしている。

b 地方税等減収補てん臨時交付金の創設に伴い、平成20年度の普通交付税について、次のとおり基準財政収入額の再算定を行う。

(a) 自動車取得税減収補てん臨時交付金及び軽油引取税減収補てん臨時交付金については、その75%を基準財政収入額に算入する

(b) 地方道路譲与税減収補てん臨時交付金については、その100%を基準財政収入額に算入する

(ウ) 地域活性化・緊急安心実現総合対策交付金

 安心実現のための緊急総合対策に掲げられた「地方公共団体に対する配慮」として、地方公共団体が安心実現のための緊急総合対策に対応した総合的な対策を実施し、もって地域活性化を図ることができるよう、地域活性化・緊急安心実現総合対策交付金を創設する。

 地域活性化・緊急安心実現総合対策交付金の総額は260億円であり、交付限度額の算定式については、財政基盤のぜい弱な地方公共団体に重点を置き、原油高騰の影響が特に大きい離島や寒冷地に配慮して定める。

(エ) 安心実現のための緊急総合対策に係る特別交付税措置

 安心実現のための緊急総合対策として、離島・寒冷地での生活支援、学校給食に係る保護者負担の軽減、農林漁業者・中小企業への金融措置等による支援など地方公共団体の自主的な取組みに要する経費や原油価格の高騰に伴う救急自動車等の燃料費、寒冷地における公共施設の暖房費などの増加分に対し特別交付税措置を講じる。

ウ 平成20年度補正予算(第2号)

 平成20年度補正予算(第2号)の概算は、平成20年12月20日に閣議決定され、平成21年1月5日に第171回国会に提出され、1月27日に成立した。

 この補正予算においては、生活対策関係経費4兆6,880億円等を追加計上したほか、既定経費の節減7,569億円等の修正減少額を計上した。また、歳入面では、税収を7兆1,250億円減額計上する一方、公債金7兆4,250億円、地方公営企業等金融機構納付金3,000億円等を追加計上した。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成20年度の補正予算(第1号)による補正後予算に対し、4兆7,858億円増加し、88兆9,112億円となった。

エ 平成20年度補正予算(第2号)に係る地方財政補正措置

 平成20年度補正予算(第2号)の編成により、国税の減額補正に伴い地方交付税が減額されるとともに、歳出の追加に伴う地方負担の増加が生じた結果、以下の地方財政措置が講じられた。

(ア) 国税の減額補正に伴う地方交付税の減額に対する補てん措置

 今回の補正予算においては、平成20年度の国税の減収に伴い地方交付税が2兆2,731億円の減額となったところであるが、これについては、平成20年度当初における地方財政対策に準じ、次のとおり措置する。この結果、平成20年度の当初予算の地方交付税の総額が確保されるものである。

a 地方交付税の減2兆2,731億円については、全額を国の一般会計からの加算により措置する。

b aの加算のうち国負担分1兆320億円については、臨時財政対策加算とする。

c aの加算のうち1兆2,410億円(地方負担分)については、臨時財政対策債を発行することに代えて措置するものであることを踏まえ、平成23年度から平成27年度までの各年度の地方交付税総額から減額する。

(イ) 追加の財政需要等に対する財政措置

a 国の補正予算により平成20年度に追加されることとなる公立文教施設整備費等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分1,645億円)については、原則として、地方債(充当率100%)を充当することとし、後年度においてその元利償還金の全額を基準財政需要額に算入する。

 その際、元利償還金の50%(義務教育施設改築事業等当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては、原則として当初の算入率)については、公債費方式により各団体の地方債発行額に応じて基準財政需要額に算入することとし、残余については単位費用により措置する。

b 地方債の対象とならない経費については、追加財政需要額(5,700億円)の取崩しにより対応する。

(ウ) 定額給付金事業に対する財政措置

 「生活対策」(平成20年10月30日新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)に掲げられた「景気後退下での生活者の不安にきめ細かく対処するための家計への緊急支援」として、総額2兆円規模の定額給付金事業を計上した。

(エ) 地域活性化・生活対策臨時交付金

 「生活対策」における「地方公共団体支援策」として、地域活性化等に資するきめ細かなインフラ整備などを進めるため、地域活性化・生活対策臨時交付金6,000億円を計上した。

 この交付金の財源は、国費3,000億円と併せ、地方公営企業等金融機構が旧公営企業金融公庫から承継した公庫債権金利変動準備金等のうち3,000億円の地方還元によることとする。

(オ) ふるさと雇用再生特別交付金及び緊急雇用創出事業交付金

 雇用情勢が急速に悪化しつつある中で、生活対策に掲げられた「雇用セーフティネット強化対策」及び新たな雇用対策に掲げられた「再就職支援対策」として、「ふるさと雇用再生特別交付金」及び「緊急雇用創出事業交付金」を創設する。

 ふるさと雇用再生特別交付金及び緊急雇用創出事業交付金の総額はそれぞれ2,500億円、1,500億円であり、平成23年度までの期間にわたり実施することとしている。

(カ) 年末年始等における離職者等への対応に係る特別交付税措置

 今回の補正予算における「ふるさと雇用再生特別交付金」及び「緊急雇用創出事業交付金」による対応が可能となるまでの年末年始等において、離職者等の臨時的な雇用・就業機会を創出するための対策及び居住の安定確保のための対策など地方公共団体が緊急・臨時的に実施する離職者等の緊急雇用・居住確保のため必要と認められる対策等に要する経費に対し、財政力に応じて5〜8割の特別交付税措置を講じる。

(4) 地方公共団体の予算

 平成20年度の地方公共団体の普通会計予算(9月補正後)の状況は、第43表のとおりであり、普通会計予算の総額(都道府県及び市町村の単純合計)は、前年度と比べると1.2%減となった。

 主な内訳をみると、歳入では、地方税が前年度と比べると1.3%増、地方譲与税0.2%増、地方交付税0.4%増、国庫支出金2.1%減、地方債1.2%減となった。一方、歳出では、人件費が前年度と比べると1.4%減、扶助費3.6%増、普通建設事業費3.3%減となった。

 なお、第43表の数値は、前年度からの繰越事業に係るものを含んでいる。

(5) 不交付団体の状況

 地方公共団体の自由と責任を実現するには、地方交付税に依存しない自立した団体を増やすことが重要である。

 平成20年度の不交付団体数は、都道府県は2団体(東京都及び愛知県)、市町村は1,788団体中177団体(うち政令指定都市5団体(さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市及び名古屋市))であり、不交付団体の割合は、団体数では9.8%と平成19年度の10.3%からは減少しているものの、人口割合では29.5%と平成19年度の27.1%からは増加している。これは横浜市が不交付団体になったことによるものである。

 平成20年度において、人口20万人以上の地方公共団体(113団体)のうち不交付団体数は34団体(30.1%)となっている。

(6) 個別団体における財政健全化

 近年の地方財政は、バブル経済崩壊後の数次の景気対策による公共事業の追加や、減税の実施等により、借入金残高が累積しており、厳しい財政運営を余儀なくされている状況にある。平成19年度決算における経常収支比率については、前年度(91.4%)と比べると2.0ポイント上昇の93.4%と過去最も高くなっている。また、実質収支が赤字の団体数は前年度から1団体減少し、25団体となっている。

 各地方公共団体においては、このような厳しい財政状況を踏まえて、一層の事務事業の見直し、組織・機構の簡素効率化、外郭団体の統廃合等、定員管理・給与の適正化、民間委託等の推進など、自主的な行財政改革に積極的に取り組むとともに、独自課税の検討、地方税の徴収確保、使用料・手数料の適正化等を通じて歳入の確保を図るなど、財政運営の健全化に努めている。

 個別団体についてみると、夕張市においては、人口急減などに伴う歳入の減少が続くことへの対応が遅れ、組織のスリム化が進まず、観光振興等に多大な財政支出を行ってきたこと、さらに、不適正な財務処理を行い多額の赤字の実態を表面化させず拡大を招いたことにより、財政状況が極めて深刻な状態に悪化していることが、平成18年に明らかにされた。

 その後、夕張市は、北海道の助言を得ながら財政再建に向けた検討を進め、平成18年度末における約353億円の実質収支の赤字を解消するため、平成36年度までの財政再建計画を作成し、平成19年3月6日に総務大臣の同意を得て、現在、同計画に基づき、財政再建に取り組んでいる。

 なお、財政再建が確実かつ早期に進められるよう、北海道が夕張市に対し赤字相当額の資金手当として低利(金利0.5%)で資金の貸付けを行っていることから、総務省としてもこの貸付金に係る北海道及び夕張市の利子負担の一部について、特別交付税による財政支援を行っている。

 夕張市は赤字の解消にあたり、歳入面では、市民の負担増に一定の配慮をしながら、税率の見直しによる市税の増収を図るほか、ごみ処理の有料化、各種施設使用料などの受益者負担の見直しによる歳入の増加、さらに、税や使用料などの徴収率の向上に向けた対策を講じることにより歳入確保に努めている。また、歳出面では、行政のスリム化と事務事業の抜本的な見直しを図ることとし、特に、人件費については、職員の給与水準の引き下げや各種手当ての見直しにより削減を図り、全国の市町村で最も低い給与水準とするほか、当分の間、原則として新規採用を停止するとともに早期退職の促進により、類似団体と比較して2倍程度であった職員数の大幅な削減を進め、同程度の規模の市町村で最も少ない職員数の水準となるよう削減をすることとしている。現在、夕張市においては、職員の削減に対応して、必要な行政サービスの提供に支障が生じることのないよう、組織の再編成や業務の効率的な執行、他団体からの職員派遣の受け入れなどにより、行政執行体制の確保に努めている。

 このような徹底した歳入歳出の見直しの中にあっても、高い比率を占める高齢者や少子化の中で地域の将来を担う子どもたちに一定の配慮を行うこととし、バスの敬老パスや一部の公衆トイレの存続、保育料の見直しについての激変緩和、夏期休暇期間中のプールの存続等が財政再建計画に盛り込まれている。

 この財政再建計画は、策定時点で見込みうる内容を前提として歳入歳出を見込んでおり、計画を着実に実行することが基本となるが、診療所の改修など、その後に発生した事情等により、数次の変更を行っている。なお、この計画の変更においては、計画の主要部分である財政再建期間、財政再建の基本方針及び財政再建に必要な具体的措置については変更せず、財源についても補助金、寄附金等により確保されていることを基本としている。

 また、市民が行う地域再生事業を応援したいという寄附金が全国から寄せられており(「幸福の黄色いハンカチ基金」として積み立て)、こうした動きの中で市民にも自分たちの力で夕張を再生させるという意識が高まり、市民主体の活動が行われるようになってきている。

(7) 地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

 地方公営企業については、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の着実な整備を推進するとともに、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開を支援し、併せて地方公営企業の経営健全化等を推進するなど経営基盤の一層の強化を図る必要がある。

 このため、平成20年度においては、次のような措置を講じた。

 公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆6,352億円(前年度2兆7,249億円)を計上した。

 地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆8,721億円(前年度2兆8,579億円)を計上した。

 また、公債費負担対策として行う公的資金補償金免除繰上償還の公営企業債分については、旧資金運用部資金約2兆6,800億円、旧簡易生命保険資金約3,500億円、公営企業金融公庫資金約1兆1,900億円(公営企業借換債による措置約4,000億円を含む。)の計画を平成19年度及び平成20年度において承認した。

 なお、事業別には、上水道(簡易水道含む。)約1兆2,900億円、工業用水道約500億円、地下鉄約4,100億円、下水道約2兆2,300億円、病院約2,500億円となっている。

 さらに、各事業における財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

(ア) 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入することとした。

(イ) 水道事業及び工業用水道事業において、将来にわたって活用する見込みがない水道施設等(用途廃止施設)を整理することで事業規模の適正化及び経営の効率化を図る団体を支援するため、施設処分等に要する経費について、所要の地方財政措置を講じることとした。

(ウ) ガス事業については、供給段階における事故を低減させるため、ねずみ鋳鉄管等の経年管対策に要する経費について、所要の地方財政措置を講じることとした。

(エ) 病院事業については、公立病院改革が円滑に進められるよう、公立病院等の再編・ネットワーク化に係る施設・設備の整備に際し、通常の医療機能整備に比して割高となる経費の一部について一般会計からの出資を行う場合、病院事業債(一般会計出資債)を措置するとともに、その元利償還金の一部に地方交付税措置を講じることとした。

 また、平成20年度に限り、平成15年度以降の医師不足の深刻化等により発生した不良債務を長期債務に振り替える公立病院特例債を発行できることとし、不良債務の計画的な解消を支援することとした。

イ 国民健康保険事業

 国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、平成17年度に決定された医療制度改革大綱や、健康保険法等の改正などを踏まえ、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア) 都道府県が、市町村の国保財政安定のために必要な取組等に対し交付する都道府県調整交付金の所要額(4,762億円)について、地方交付税措置を講じることとした。

(イ) 国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部を負担することとし(都道府県3/4、市町村1/4)、その所要額(3,226億円)について地方交付税措置を講じることとした。

(ウ) 低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)、その所要額(708億円)について地方交付税措置を講じることとした。

(エ) 高額医療費共同事業については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)、その所要額(2,090億円)について地方交付税措置を講じることとした。また、都道府県内の市町村国保間の保険料の平準化、財政の安定化を図るため、一件30万円以上の医療費について、市町村国保の拠出による保険財政共同安定化事業を実施することとした。

(オ) 国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じることとした。

(カ) 国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図るため、40歳から74歳までの国民健康保険加入者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業に対して、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/3、都道府県1/3、市町村国保1/3)、その所要額(990億円)について地方交付税措置を講じることとした。

ウ 長寿医療制度(後期高齢者医療制度)

 医療制度改革に伴い、平成20年4月から長寿医療制度(後期高齢者医療制度)が施行されたことに伴い、実施主体である広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア) 保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図る(均等割2割・5割・7割軽減)とともに、被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減を行うため、都道府県及び市町村が負担することとし(都道府県3/4、市町村1/4)、その所要額(2,406億円)について地方交付税措置を講じることとした。

(イ) 高額医療費負担金については、広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/4、都道府県1/4、広域連合1/2)、その所要額(900億円)について地方交付税措置を講じることとした。

(ウ) 財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金を設置しその拠出金に対して国及び都道府県が一部を負担することとし(国1/3、都道府県1/3、広域連合1/3)、その所要額(289億円)について地方交付税措置を講じることとした。

(エ) 不均一保険料助成については、医療給付の実績が低い広域連合内の市町村に対して、平成26年度まで他の市町村とは異なる不均一の保険料を設けることに対して国及び都道府県が負担することとし(国1/2、都道府県1/2)、その所要額(13億円)について地方交付税措置を講じることとした。

(オ) 実施主体である広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じることとした。