2 地方財政の概況

 地方公共団体の歳入及び歳出は、一般会計と特別会計に区分して経理されているが、特別会計の中には、一般行政活動に係るものと企業活動に係るものがある。

 このため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門と水道、交通、病院等の企業活動部門に分け、前者を「普通会計」、後者を「地方公営事業会計」として区分している。

 以下、平成21年度の地方財政について、8までにおいて普通会計の状況を示すとともに、9において地方公営事業会計等の状況を示す。

(1)決算規模[資料編:第1表第5表第10表第73表

 地方公共団体(47都道府県、1,727市町村、23特別区、1,281一部事務組合及び112広域連合(以下、一部事務組合及び広域連合を「一部事務組合等」という。))の普通会計の純計決算額は、第1表のとおり、歳入98兆3,657億円(前年度92兆2,135億円)、歳出96兆1,064億円(同89兆6,915億円)で、歳入、歳出いずれも2年連続で増加している。

 また、前年度と比べると、歳入6.7%増(前年度1.1%増)、歳出7.2%増(同0.6%増)となっている。

 このように決算規模が前年度決算額を上回ったのは、歳入については、地方税が景気悪化や地方法人特別税の創設に伴う法人関係二税の減収等により減少しているが、国庫支出金が国の経済対策の実施により増加、また、地方譲与税が地方法人特別譲与税の創設により増加、地方債が臨時財政対策債の増加等により増加したこと等、歳出については、歳出削減努力により、人件費及び公債費は減少しているが、普通建設事業費、積立金及び補助費等が国の経済対策の実施等により増加したこと等によるものである。

 さらに、歳出から公債費及び公営企業繰出金のうち企業債の元利償還に係るものを除いた一般歳出は、69兆8,588億円(前年度65兆8,143億円)となっており、前年度と比べると6.1%増となっている。

 決算規模の状況を団体種類別にみると、第2表のとおりである。都道府県は、歳入、歳出ともに11年ぶりに前年度決算額を上回り、市町村(特別区及び一部事務組合等を含む。特記がある場合を除き、以下同じ。)も、歳入、歳出ともに3年連続で前年度決算額を上回っている。

 また、近年の決算規模の推移は、第7図のとおりである。

(2)決算収支

ア 実質収支[資料編:第7表

 実質収支(形式収支(歳入歳出差引額)から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額)の状況は、第3表のとおりである。

 平成21年度の実質収支は、1兆4,447億円の黒字(前年度1兆2,797億円の黒字)で、昭和31年度以降黒字が続いている。

 実質収支を団体種類別にみると、都道府県においては2,644億円の黒字(前年度2,659億円の黒字)であり、平成12年度以降黒字となっている。

 また、市町村においては1兆1,803億円の黒字(前年度1兆138億円の黒字)であり、昭和31年度以降黒字となっている。

 実質収支が赤字である団体数をみると、平成20年度に赤字であった19団体(19市町村)のうち12団体(12市町村)が引き続き赤字であり、1団体(1市町村)が新たに赤字団体となった結果、赤字団体数は13団体であり、前年度と比べると6団体減少している。

 さらに、近年の実質収支及び赤字団体の赤字額の推移は、第8図のとおりである。

 標準財政規模に対する実質収支額の割合である実質収支比率の推移は、第9図のとおりであり、平成21年度の実質収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は0.4ポイント上昇の2.3%となっている。

 実質収支比率を団体種類別にみると、都道府県は0.1ポイント上昇の1.0%、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。)は0.6ポイント上昇の3.6%となっている。

イ 単年度収支及び実質単年度収支[資料編:第7表

 平成21年度の単年度収支(実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額)は、1,720億円の黒字(前年度784億円の赤字)で、3年ぶりに黒字となっている。

 単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては15億円の赤字(前年度653億円の赤字)、市町村においては1,735億円の黒字(同131億円の赤字)となっている。

 また、実質単年度収支(単年度収支に財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた額)は、2年連続で黒字となっており、その黒字額は2,382億円(前年度1,828億円の黒字)となっている。

 実質単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては153億円の赤字(前年度194億円の黒字)、市町村においては2,535億円の黒字(同1,634億円の黒字)となっている。

 なお、実質収支、単年度収支及び実質単年度収支の赤字団体数の状況は、第4表のとおりである。

(3)歳入[資料編:第10表

 歳入純計決算額は98兆3,657億円で、前年度と比べると6兆1,522億円増加(対前年度比6.7%増)となっている。

 決算額の主な内訳をみると、第5表のとおりである。

 地方税は、景気の悪化や地方法人特別税の創設等により、前年度に比べると4兆3,756億円減少(同11.1%減)している。

 地方譲与税は、地方揮発油譲与税や地方法人特別譲与税の創設等により、前年度と比べると6,177億円増加(同91.0%増)している。

 地方特例交付金等は、平成20年度限定の措置であった地方税等減収補填臨時交付金が終了したこと等により、前年度と比べると771億円減少(同14.3%減)している。

 地方交付税は、15兆8,202億円で、前年度と比べると4,142億円増加(同2.7%増)している。また、地方交付税に臨時財政対策債を加えた額は、20兆4,739億円で、前年度と比べると2兆5,229億円増加(同14.1%増)となっている。

 国庫支出金は、国の経済対策等により、前年度と比べると5兆1,501億円増加(同44.1%増)している。

 地方債は、臨時財政対策債の増加等により、前年度と比べると2兆4,740億円増加(同24.9%増)している。

 歳入純計決算額の構成比の推移は、第10図のとおりである。

 地方税の構成比は、ピークとなった昭和63年度(歳入総額の44.3%)以降低下し、平成21年度は前年度と比べると7.1ポイント低下の35.8%となっている。

 地方交付税の構成比は、平成8年度から12年度までは上昇していたが、13年度以降、地方財政対策にあたり、交付税特別会計の借入金方式に代えて臨時財政対策債を発行し、基準財政需要額の一部を振り替えることとしたこと等から低下が続いている。21年度においては、前年度と比べると0.6ポイント低下の16.1%となっている。

 国庫支出金の構成比は、平成12年度から13年度は14%台、14年度から16年度は13%台で推移したのち、三位一体の改革による国庫補助負担金の一般財源化、普通建設事業費支出金の減少等により低下してきたが、20年度に上昇に転じ、21年度においては国の経済対策等により前年度と比べると4.4ポイント上昇の17.1%となっている。

 地方債の構成比は、普通建設事業費の減少や平成16年度に臨時財政対策債の発行額が減少したこと等により低下していたが、21年度においては臨時財政対策債の増加等により、前年度と比べると1.8ポイント上昇の12.6%となっている。なお、臨時財政対策債の発行額を除いた構成比は、前年度と比べると0.1ポイント低下の7.9%となっている。

 一般財源の構成比は、平成16年度から地方税、地方譲与税及び地方特例交付金等の増加に加え、国庫支出金、地方債等の減少などにより上昇していたが、19年度に低下に転じ、21年度は地方税及び地方特例交付金等が減少したことから、前年度と比べると7.3ポイント低下の53.6%となっている。

 歳入決算額の構成比を団体種類別にみると、第11図のとおりである。

 都道府県においては地方税が最も大きな割合(32.4%)を占め、以下、国庫支出金(16.8%)、地方交付税(16.1%)の順となっている。

 市町村においても都道府県と同様に地方税が最も大きな割合(34.9%)を占め、以下、国庫支出金(15.5%)、地方交付税(14.3%)の順となっている。

(4)歳出

 歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と経費の経済的な性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、次のとおりである。

ア 目的別歳出

(ア) 目的別歳出[資料編:第34表

 地方公共団体の経費は、その行政目的によって、議会費、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、消防費、警察費、教育費、災害復旧費、公債費等に大別することができる。

 歳出純計決算額は96兆1,064億円で、前年度と比べると6兆4,150億円増加(対前年度比7.2%増)となっている。

 目的別歳出の構成比は、第6表のとおりであり、民生費(歳出総額の20.6%)、教育費(同17.1%)、土木費(同13.8%)、公債費(同13.4%)、総務費(同11.2%)の順となっている。

 民生費は、「介護職員処遇改善交付金」等の基金積立金の増加や生活保護費の増加等により、前年度と比べると1兆9,468億円増加(対前年度比10.9%増)している。

 教育費は、前年度と比べると2,914億円増加(同1.8%増)している。

 土木費は、普通建設事業費の増加により、前年度と比べると4,208億円増加(同3.3%増)している。

 公債費は、地方債元利償還金等の減少により、前年度と比べると2,746億円減少(同2.1%減)している。

 総務費は、衆議院議員総選挙及び各種基金への積立金の増加等により、前年度と比べると1兆7,987億円増加(同20.2%増)している。

 目的別歳出の構成比の推移は、第7表のとおりである。土木費、教育費及び公債費の構成比がそれぞれ低下の傾向にある一方、民生費の構成比が上昇の傾向にある。

 目的別歳出の構成比を団体種類別にみると、第12図のとおりである。

 都道府県においては、市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等により教育費が最も大きな割合(21.7%)を占め、以下、民生費(13.5%)、土木費(13.2%)、公債費(13.1%)、商工費(8.5%)の順となっている。

 また、市町村においては、児童手当支給事務、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉事務の比重が高いこと等により民生費が最も大きな割合(28.5%)を占め、以下、総務費(15.2%)、土木費(13.2%)、公債費(12.2%)、教育費(10.7%)の順となっている。

(イ) 一般財源の充当状況

 一般財源の目的別歳出に対する充当状況は、第8表のとおりである。

 一般財源総額(52兆7,618億円)に占める目的別歳出の割合をみると、民生費が最も大きな割合(19.2%)を占め、以下、教育費(18.8%)、公債費(18.7%)、総務費(12.0%)、土木費(9.6%)の順となっている。

 一般財源充当額の目的別構成比の推移は、第13図のとおりである。近年、民生費に充当された一般財源の構成比が上昇の傾向にあり、土木費に充当された一般財源の構成比が低下の傾向にある。

イ 性質別歳出

(ア) 性質別歳出[資料編:第73表

 地方公共団体の経費は、その経済的な性質によって、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別することができる。

 義務的経費は、職員給与費等の人件費のほか、生活保護費等の扶助費及び地方債の元利償還金等の公債費からなっており、そのうち人件費が52.2%を占めている。また、投資的経費は、道路、橋りょう、公園、公営住宅、学校の建設等に要する普通建設事業費のほか、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっており、そのうち普通建設事業費が99.1%を占めている。

 歳出純計決算額の主な性質別内訳をみると、第9表のとおりである。

 義務的経費は45兆9,152億円で、前年度と比べると3,068億円減少(対前年度比0.7%減)している。これは、生活保護費の増加等に伴う扶助費の増加(同7.1%増)があったものの、各団体の歳出削減努力により人件費が減少(同2.6%減)したこと及び地方債元利償還金の減少により公債費が減少(同2.1%減)したことによるものである。

 投資的経費は14兆5,185億円で、前年度と比べると1兆3,406億円増加(同10.2%増)している。これは、その大部分を占める普通建設事業費が、補助事業費、単独事業費ともに増加し(それぞれ同9.9%増、同11.8%増)、普通建設事業費全体で1兆3,930億円増加(同10.7%増)したことによるものである。

 また、その他の経費は35兆6,727億円で、前年度と比べると5兆3,812億円増加(同17.8%増)となっている。これは、定額給付金事業及び税還付金の増加等により、補助費等が2兆5,964億円増加(同32.1%増)したこと等によるものである。

 平成16年度以降の歳出決算増減額に占めるこれらの経費の推移は、第14図のとおりである。

 次に、性質別歳出の構成比の推移は、第15図のとおりである。

 投資的経費の構成比は、平成8年度以降低下していたが、21年度は前年度と比べると0.4ポイント上昇の15.1%となっている。

 義務的経費の構成比は、平成8年度以降、投資的経費の減少に伴い上昇の傾向にあったが、21年度は歳出総額が増加したのに対し義務的経費が減少したことから、前年度に比べると3.7ポイント低下の47.8%となっている。

 性質別歳出決算額の構成比を団体種類別にみると、第16図のとおりである。

 人件費の構成比は、都道府県において市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していることなどから、都道府県が28.4%、市町村が18.6%となっている。また、扶助費の構成比は、市町村において児童手当支給事務、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村に限る。)等の社会福祉関係事務が行われていること等から、市町村が15.7%、都道府県が1.8%となっている。

 さらに、普通建設事業費のうち、補助事業費の構成比は、都道府県(6.7%)が市町村(5.2%)を上回る一方、単独事業費の構成比は、市町村(8.2%)が都道府県(6.3%)を上回っている。

(イ) 一般財源の充当状況[資料編:第75表

 一般財源の性質別歳出に対する充当状況は、第10表のとおりである。

 一般財源総額(52兆7,618億円)に占める性質別歳出の割合をみると、義務的経費が57.0%で最も大きな割合を占めている。また、投資的経費の割合は7.1%であり、歳出総額に占める投資的経費の割合(15.1%)に比べて小さくなっている。

 一般財源充当額の性質別構成比の推移は、第17図のとおりである。

 義務的経費に充当された一般財源の構成比は、平成3年度以降上昇の傾向にあったが、近年は横ばいとなっており、21年度は前年度と比べると1.6ポイント低下の57.0%となっている。

 一方、投資的経費に充当された一般財源の構成比は、平成3年度以降低下の傾向にあったが、21年度は前年度と比べると1.3ポイント上昇の7.1%となっている。

(5)財政構造の弾力性

ア 経常収支比率[資料編:第8表

 地方公共団体が社会経済や行政需要の変化に適切に対応していくためには、財政構造の弾力性が確保されなければならない。財政分析においては、財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つとして、経常収支比率が用いられている。

 経常収支比率は、経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源)が、経常一般財源(一般財源総額のうち地方税、普通交付税のように毎年度経常的に収入される一般財源)、減収補填債特例分及び臨時財政対策債の合計額に対し、どの程度の割合となっているかをみることにより財政構造の弾力性を判断するものである。

 平成21年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度より1.0ポイント上昇して93.8%となっており、集計開始(昭和44年度)以来最も高い値を示し、依然として高い水準での推移が続いている。その主な内訳をみると、人件費充当分が34.8%(前年度35.1%)、公債費充当分が21.5%(同21.5%)となっている。なお、減収補填債特例分及び臨時財政対策債の発行額を経常収支比率算出上の分母から除いた場合の経常収支比率を求めると、104.5%となる。

 また、経常収支比率が前年度を上回ったのは、第18図(その1)のように、分子である経常経費充当一般財源のうち、人件費や公債費等の減少により分子全体として減少し、分母である経常一般財源も、地方税や地方特例交付金等の減少により分母全体として減少したが、分母の減少率が分子の減少率を上回ったことによるものである。

 経常収支比率を団体種類別にみると、都道府県は前年度より2.0ポイント上昇し95.9%(前年度93.9%)、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。以下、この項において同じ。)は前年度と同じ91.8%となっている。

 経常収支比率の段階別分布状況をみると、第12表のとおりである。経常収支比率が80%以上の団体数は、都道府県においては47団体の全ての団体(前年度同数)、市町村においては全体の90.3%を占める1,559団体(同1,638団体)となっており、多くの団体の経常収支比率が高い水準にある。

イ 実質公債費比率及び公債費負担比率[資料編:第8表

 地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性をみる場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費による負担度合いを判断するための指標として、実質公債費比率及び公債費負担比率が用いられている。

 実質公債費比率は、地方債の元利償還金(繰上償還等を除く。)や公営企業債に対する繰出金などの公債費に準ずるものを含めた実質的な公債費相当額から、これに充当された特定財源及び一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除いたものが、標準財政規模(普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く。)に対し、どの程度の割合となっているかをみるものである。平成18年4月から地方債協議制度へ移行したことに伴い、公債費による負担度合いを判断し、起債に協議を要する団体と許可を要する団体とを判定するための指標として導入されたものであり、従来の起債制限比率について一定の見直しを行ったものである。

 実質公債費比率は、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(平成19年6月22日法律第94号)において、健全化判断比率の一つとして位置付けられている。なお、実質公債費比率の状況は、「第2章 平成21年度決算に基づく健全化判断比率等の状況」のとおりである。

 公債費負担比率は、公債費充当一般財源(地方債の元利償還金等の公債費に充当された一般財源)が一般財源総額に対し、どの程度の割合となっているかを示す指標であり、公債費がどの程度一般財源の使途の自由度を制約しているかをみることにより、財政構造の弾力性を判断するものである。

 平成21年度の公債費負担比率(全団体の加重平均)は、前年度と比べて0.6ポイント低下の18.6%(前年度19.2%)となっている。

 近年の公債費負担比率の推移は、第19図のとおりであり、近年はほぼ横ばいの状態が続いている。

(6)将来の財政負担

 地方公共団体の財政状況をみるには、単年度の収支状況のみでなく、地方債、債務負担行為等のように将来の財政負担となるものや、財政調整基金等の積立金のように年度間の財源調整を図り将来における弾力的な財政運営に資するために財源を留保するものの状況についても、併せて総合的に把握する必要がある。これらの状況は、次のとおりである。

ア 地方債現在高[資料編:第100表

 平成21年度末における地方債現在高は139兆2,781億円で、前年度末と比べると1.4%増(前年度末0.6%減)となっている。

 地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、第20図のとおりである。

 地方債現在高は、昭和50年度末では歳入総額の0.44倍、一般財源総額の0.88倍であったが、地方税収等の落込みや減税に伴う減収の補填、経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことに伴い、平成4年度末以降急増した。さらに、平成13年度からの臨時財政対策債の発行等があったが近年は横ばいで推移しており、平成21年度末には歳入総額の1.42倍、一般財源総額の2.64倍となっている。

 近年の地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移は、第21図のとおりである。

 地方債現在高の借入先別の構成比は、政府資金(26.6%)、市中銀行資金(25.7%)、市場公募債(25.7%)、旧郵政公社資金(7.8%)の順となっている。

 また、前年度末の割合と比べると、近年の公的資金の縮減及び市場における地方債資金の調達の推進等に伴い、政府資金が1.1ポイント低下する一方、市場公募債は1.2ポイント上昇している。

 地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては82兆7,915億円、市町村においては56兆4,866億円で、前年度末と比べるとそれぞれ3.2%増(前年度末0.8%増)、1.1%減(同2.4%減)となっている。

イ 債務負担行為額[資料編:第101表

 地方公共団体は、将来の支出を約束するために、債務負担行為を行うことができる。

 この債務負担行為は、数年度にわたる建設工事、土地の購入等の場合のように翌年度以降の経費支出が予定されているものと、債務保証又は損失補償のように債務不履行等の一定の事実が発生したときに支出されるものとに大別することができる。

 これらの債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額をみると、平成21年度末では12兆1,753億円で、前年度末と比べると2.3%減(前年度末5.9%増)となっている。

 翌年度以降支出予定額を目的別にみると、第22図のとおりである。

 このうち、物件の購入等に係るものについては、土地の購入に係るもの(対前年度末比9.0%減)及び建造物の購入に係るもの(同5.8%減)が減少したこと等により、全体として3.8%減となっている。

 翌年度以降支出予定額を団体種類別にみると、都道府県においては5兆3,857億円、市町村においては6兆7,896億円で、前年度末と比べるとそれぞれ2.5%減(前年度末8.1%増)、2.1%減(同4.2%増)となっている。

ウ 積立金現在高[資料編:第102表

 地方公共団体の積立金現在高の状況は、第13表のとおりである。

 平成21年度末における積立金現在高は17兆2,221億円となっており、前年度末と比べると1兆9,484億円増加(対前年度末比12.8%増)している。

 積立金現在高の内訳をみると、年度間の財源調整を行うために積み立てられている財政調整基金は前年度末と比べると1.4%増となっている。地方債の将来の償還費に充てるために積み立てられている減債基金は前年度末と比べると3.4%減となっている。将来の特定の財政需要に備えて積み立てられているその他特定目的基金は前年度末と比べると21.5%増となっている。

 積立金現在高を団体種類別にみると、前年度末と比べ、都道府県においては国の経済対策の実施等により特定目的基金が前年度比55.3%増と増加したことにより、全体として1兆9,098億円増加(対前年度末比36.4%増)しており、市町村においては全体として386億円増加(同0.4%増)している。

エ 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担[資料編:第100表第102表

 地方債現在高に債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担の推移は、第23図のとおりである。

 平成21年度末における地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担は134兆2,313億円で、前年度末と比べると0.3%減(前年度末1.1%減)となっている。

 団体種類別にみると、都道府県においては81兆270億円、市町村においては53兆2,043億円であり、前年度末と比べるとそれぞれ0.6%増(前年度末0.1%減)、1.6%減(同2.5%減)となっている。

オ 普通会計が負担すべき借入金残高[資料編:第100表第133表

 普通会計が将来にわたって負担すべき借入金という観点からは、地方債現在高のほか、巨額の地方財源不足に対処するための交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「交付税特別会計」という。)借入金及び地方公営企業において償還する企業債のうち、経費負担区分の原則等に基づき、普通会計がその償還財源を負担するものについても併せて考慮する必要がある。

 この観点から、交付税特別会計借入金残高と企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものを地方債現在高(特定資金公共投資事業債を除く。以下、この項において同じ。)に加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第24図のとおりである。

 これをみると、バブル崩壊後の地方税収等の落込みや平成4年度以降の補正予算による経済対策に加え、平成6年度以降の減税による地方税の減収等に対応するための財源確保や平成13年度以降の臨時財政対策債の発行等に伴い、普通会計が負担すべき借入金残高は急増した。近年は横這いとなっているが、平成21年度末には、普通会計が負担すべき借入金残高は198兆1,708億円となっており、前年度末と比べると0.6%増(前年度0.8%減)となり、依然として高い水準にある。

 また、その内訳は、地方債現在高が139兆2,781億円、交付税特別会計借入金残高が33兆6,173億円、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものが25兆2,754億円となっている。

 なお、この普通会計が負担すべき借入金残高の国内総生産(名目ベース。)に対する比率は、前年度末と比べると1.8ポイント上昇の41.8%となっている。

(7)決算の背景

ア 平成21年度の経済見通しと国の予算

(ア) 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成21年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成20年12月19日に閣議了解、平成21年1月19日に閣議決定されたが、この中で平成20年度の我が国経済は、世界の金融資本市場の危機を契機に世界的な景気後退が見られる中で、外需面に加え国内需要も停滞し、景気の下降局面にあり、雇用情勢が急速に悪化しつつあるとともに、企業の資金繰りも厳しい状況となっているとされた。こうした結果、平成20年度の国内総生産の実質成長率は、マイナス0.8%程度(名目成長率はマイナス1.3%程度)になると見込まれた。

 このような情勢認識に立って、「平成21年度の経済財政運営の基本的態度」においては、国民生活と日本経済を守る観点から、当面は「景気対策」、中期的には「財政再建」、中長期的には「改革による経済成長」という3段階で、経済財政政策を進めるとともに、引き続き、「生活対策」の実現及び税制改正に併せ「生活防衛のための緊急対策」(平成20年12月19日経済対策閣僚会議決定)を着実に実施することとされた。また、「経済財政の中長期方針と10年展望」(平成21年1月19日閣議決定)に基づき、財政健全化の取組を進めつつ、世界の経済金融情勢の変化を受け、状況に応じて果断な対応を機動的かつ弾力的に行い、あわせて、改革による経済成長を目指し、「新経済成長戦略」(平成20年9月19日閣議決定)を基礎としつつ、将来の成長に向けたシナリオを取りまとめ、強力に推進することとされた。

 以上のような経済財政運営を前提として、平成21年度においては、世界的な景気後退が続く中で、内需、外需ともに厳しい状況が続くが、「安心実現のための緊急総合対策」(平成20年8月29日「安心実現のための緊急総合対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)、「生活対策」及び「生活防衛のための緊急対策」の実施や交易条件の改善による効果が見込まれた。こうした結果、平成21年度の国内総生産の実質成長率は、0.0%程度(名目成長率は0.1%程度)になるものと見通された。

(イ) 国の予算

 平成20年12月3日、「平成21年度予算編成の基本方針」が閣議決定された。その中で、平成21年度予算編成にあたっては、「基本方針2006」等に基づき財政健全化に向けた基本的方向性を維持する観点から、重要課題推進枠の活用などにより予算配分の重点化を行うとともに、世界金融情勢の変化を受け、国民生活と日本経済を守るべく、「生活対策」に盛り込まれた内需拡大と成長力強化等に向けた税制上の措置とあわせ、状況に応じて果断な対応を機動的かつ弾力的に行い、行政支出総点検会議等の議論を踏まえ、政策の必要性をゼロベースで精査し、行政支出全般を徹底して見直すことにより、財政支出の抑制につなげることとされた。また、予算配分の重点化に当たっては、「生活者の暮らしの安心」、「金融・経済の安定強化」及び「地方の底力の発揮」に施策を集中するとともに、各施策について成果目標を提示し、厳格な事後評価を行い、政策評価等を活用し、歳出の効率化・合理化を進め、さらに、政策の棚卸しにより、従来から整理されず引き続いて行われているような政策は、思い切った見直しを行うこととされた。

 社会保障制度については、その機能強化と効率化を図る一方、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げに要する財源をはじめ、国・地方を通じて持続可能な社会保障制度とするために安定した財源を確保する必要があるとされた。

 公共投資については、歳出改革を進める中で、今後とも公共投資に関する改革を継続し、地域の自立・活性化、我が国の成長力強化、防災・減災等による安全・安心の確保等を推進するため、真に必要な公共投資を選別する観点から、整備水準や施設の利用状況等を踏まえた事業のメリハリ付けを行うとともに、コスト構造改善や入札改革を進め、更なる重点化・効率化を図ることとされた。

 地方財政については、平成21年度予算編成においても、国の取組と歩調を合わせて、人件費、投資的経費、一般行政経費の各分野にわたり、厳しく抑制を図るとともに、安定的な財政運営に必要となる地方税、地方交付税等の一般財源の総額を確保し、地域間の財政力格差に対応するため、地方再生対策の考え方に従った交付税配分の重点化を引き続き進め、地方交付税を財政の厳しい地域に重点的に配分し、景気後退や「生活対策」に伴う地方税や地方交付税の原資となる国税5税の減収等について、地方公共団体への適切な財政措置を講じることとされた。

 平成21年度予算は、以上のような方針により編成され、平成20年12月24日に政府案の閣議決定が行われた後、平成21年1月19日に第171回国会に提出され、平成21年3月27日に政府案どおり成立した。

 これによると、平成21年度の国の一般会計予算の規模は88兆5,480億円で、前年度当初予算と比べると5兆4,867億円の増加(6.6%増)となっており、うち一般歳出の規模は51兆7,310億円で、前年度当初予算と比べると4兆4,465億円の増加(9.4%増)となっている。なお、公債の発行予定額は33兆2,940億円で、前年度当初発行予定額と比べると7兆9,460億円の増加(31.3%増)となっており、公債依存度は37.6%となっている。他方、財政投融資計画の規模は15兆8,632億円で、前年度計画額と比べると1兆9,943億円の増加(14.4%増)となった。

イ 地方財政計画

 平成21年度においては、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、既定の加算とは別枠で地方交付税を1兆円増額し、歳出面においては、これに合わせて地方公共団体が雇用創出等を図るとともに「生活者の暮らしの安心」や「地方の底力の発揮」に向けた事業を実施するために必要な経費を計上するほか、「基本方針2006」等に沿って、国の取組と歩調を合わせて、歳出全般にわたり見直しを行うことにより計画的な抑制を図り、歳入面においては、地方税負担の公平適正化の推進と安定的な財政運営に必要な地方税、地方交付税などの一般財源総額の確保を図ることを基本とするとともに、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとし、次の方針に基づき策定された。

(ア) 地方税については、現下の社会・経済情勢を踏まえ、安心で活力ある経済社会の実現に資する観点から、個人住民税における新たな住宅借入金等特別税額控除の創設、上場株式等の配当等及び譲渡所得等に係る個人住民税の税率の特例措置の延長、土地及び住宅に係る不動産取得税の税率の引下げ措置の延長、平成21年度評価替えに伴う土地に係る固定資産税及び都市計画税の税負担の調整、環境への負荷の少ない自動車に係る自動車取得税の税率の引下げ等の特例措置の拡充、軽油引取税等の一般財源化等を行うほか、非課税等特別措置の整理合理化等を行うこととし、所要の措置を講じることする。

(イ) 地方公共団体が行う雇用機会の創出その他の地域の活性化に資する施策の実施に必要な財源を確保するために既定の加算とは別枠で地方交付税を1兆円増額した上で、地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

a 平成19年度に講じた平成21年度までの制度改正に基づき、財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等を除いた残余については国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計の加算等により、地方負担分については、地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。

 臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

 なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等2,472億円については、法律の定めるところにより平成27年度以降の地方交付税の総額に加算する。

b これに基づき、平成21年度の財源不足見込額10兆4,664億円については、次により完全に補填する。

(a)地方交付税については、平成19年度分の精算による4,994億円の減額を繰り延べるほか、国の一般会計加算により3兆2,784億円(うち地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額1,400億円、同条第3項の加算額5,831億円、臨時財政対策特例加算額2兆5,553億円)増額する。

(b)地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律附則第4条第1項に規定する特別交付金2,000億円を交付する。

(c)自動車取得税の減税に伴う自動車取得税交付金の減収の一部を補填するため地方特例交付金(減収補填特例交付金)を500億円増額する。

(d)地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を5兆1,486億円発行する。

(e)建設地方債(財源対策債)を1兆2,900億円増発する。

 なお、自動車取得税交付金の減収を補填するための減収補填特例交付金の交付額は、平成21年度から平成23年度までの各年度500億円とする。

c 上記の結果、平成21年度の地方交付税については、15兆8,202億円(前年度に比し2.7%増)を確保する。

(ウ) 地方債については、極めて厳しい地方財政の状況の下で、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、地方公共団体が、地域の活性化に積極的に取り組み、生活関連基盤の整備を計画的に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

 併せて、地方公共団体の資金ニーズへの適時・適切な対応が可能となるよう、地方公営企業等金融機構を改組して地方公共団体金融機構を創設し、一般会計事業についても貸付対象とする。

 この結果、地方債計画の規模は、14兆1,844億円(普通会計分11兆8,329億円、公営企業会計等分2兆3,515億円)とする。

(エ) 地域の雇用創出を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 急速に悪化しつつある雇用情勢を踏まえ、雇用創出につながる地域の実情に応じた事業を実施するために必要な特別枠「地域雇用創出推進費」5,000億円を平成21年度及び平成22年度において計上する。

b 給与関係経費については、基礎年金公費負担割合を2分の1に引き上げる。

c 公債費については、金融秩序の混乱を踏まえ、地方債の償還財源を確保する観点から償還期限の見直しを行う。

d 投資的経費に係る地方単独事業費については、国の公共投資関係費の取扱い等も勘案しつつ、前年度に比し3.0%減額することとする一方で、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

e 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体の自助努力を促す観点から既定の行政経費の縮減を図る一方、地域の元気回復に向けて地方が自主的・主体的に取り組む地域活性化施策、定住自立圏構想の推進、医療・少子化対策等に財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

f 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

g 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(オ) 地方公共団体の公債費負担の軽減を図るため、平成21年度までの3年間で5兆円程度の公的資金(平成21年度においては旧資金運用部資金及び旧簡易生命保険資金)の補償金免除繰上償還を行い、高金利の地方債の公債費負担を軽減する措置を講じる。

(カ) 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制や医師確保対策をはじめ、社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(キ) 地方行財政運営の合理化を図ることとし、「基本方針2006」等に沿って、職員数の純減や給与構造改革等に引き続き取り組むとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進など行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成21年度の地方財政計画の規模は、82兆5,557億円で、前年度と比べると8,457億円減少(1.0%減)となった。

 歳入についてみると、地方税は36兆1,860億円で、前年度と比べると4兆2,843億円減少(10.6%減)(道府県税18.1%減、市町村税4.0%減)、地方譲与税は1兆4,618億円で、前年度と比べると7,591億円増加(108.0%増)、地方特例交付金等は4,620億円で、前年度と比べると115億円減少(2.4%減)、地方交付税は15兆8,202億円で、前年度と比べると4,141億円増加(2.7%増)、国庫支出金は10兆3,016億円で、前年度と比べると2,185億円増加(2.2%増)、地方債(普通会計分)は11兆8,329億円で、前年度と比べると2兆2,274億円増加(23.2%増)となった。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は22兆1,271億円で、前年度と比べると800億円減少(0.4%減)となっている。なお、地方財政計画における職員数については、「基本方針2006」における5年間で5.7%の定員削減目標を踏まえ23,868人の純減としている。一般行政経費は27兆2,608億円で、前年度と比べると7,144億円増加(2.7%増)となり、一般行政経費にかかる地方単独事業費は13兆8,285億円で、前年度と比べると125億円減少(0.1%減)となっている。公債費は13兆2,955億円で、前年度と比べると841億円減少(0.6%減)、投資的経費のうち、公共事業費中の普通建設事業費は4兆8,966億円で、前年度と比べると4,244億円減少(8.0%減)となっている。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は8兆808億円で、前年度と比べると2,499億円減少(3.0%減)となった。

 他方、平成21年度の地方債計画の規模は14兆1,844億円で、前年度当初計画と比べると1兆7,068億円増加(13.7%増)となった。平成21年度の地方債計画は、極めて厳しい地方財政の状況の下で、地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、地方公共団体が、地域の活性化に積極的に取り組むとともに、生活関連基盤の整備を計画的に推進できるよう、所要の地方債資金の確保を図ることとして策定している。

 併せて、地方公共団体の資金ニーズへの適時・適切な対応が可能となるよう、地方公共団体金融機構を創設(地方公営企業等金融機構の改組)し、一般会計についても貸付対象とすることとしている。

ウ 財政運営の経過

(ア) 平成21年度補正予算(第1号)

 平成21年度補正予算(第1号)は、平成21年4月27日に閣議決定され、同日第171回国会に提出され、5月29日に成立した。

 この補正予算においては、歳出面で、「経済危機対策」(平成21年4月10日「経済危機対策」に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議決定)を実施するための経済危機対策関係経費14兆6,987億円等を追加計上したほか、経済緊急対応予備費の減額8,500億円の修正減少額を計上した。また、歳入面では、公債金10兆8,190億円(建設公債7兆3,320億円の増額及び特例公債3兆4,870億円の増額)、財政投融資特別会計受入金3兆1,000億円等を追加計上した。

(イ) 平成21年度補正予算(第1号)に係る地方財政補正措置

 平成21年度補正予算(第1号)の編成により、歳出の追加に伴う地方負担の増加が生じた結果、以下の地方財政補正措置が講じられた。

a 地方公共団体への配慮

 極めて厳しい地方財政の現状を踏まえ、「経済危機対策」に基づき、「地方公共団体への配慮」として「地域活性化・公共投資臨時交付金」(1兆3,790億円)及び「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」(1兆円)を交付する。

(a)地域活性化・公共投資臨時交付金

 経済危機対策における公共事業及び施設費(以下「公共事業等」という。)の追加に伴う地方負担の軽減を図り、地方公共団体が国の施策と歩調を合わせ、地域における公共投資を円滑に実施できるよう、「地域活性化・公共投資臨時交付金」(総額1兆3,790億円)を交付する。

(b)地域活性化・経済危機対策臨時交付金

 地方公共団体において、地球温暖化対策、少子高齢化社会への対応、安全・安心の実現、その他将来に向けた地域の実情に応じるきめ細かな事業を積極的に実施できるよう、「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」(総額1兆円)を交付する。

b 公共事業等の追加に伴う地方負担に対する財政措置

 今回の補正予算により平成21年度に追加されることとなる公共事業、施設費等の投資的経費の地方負担額については、地域活性化・公共投資臨時交付金とは別に、原則として、地方負担額の100%まで地方債を充当できることとし、後年度において、その元利償還金の全額を基準財政需要額に算入する。

 その際、元利償還金の50%(義務教育施設改築事業等当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては、原則として当初の算入率)については、公債費方式により各団体の地方債発行額に応じて基準財政需要額に算入することとし、残余については、単位費用により措置する。

(a)国の補正予算により平成21年度に追加される公共事業等のうち法令に国の補助負担割合が規定されているものに係る地方負担額については、地域活性化・公共投資臨時交付金を充当することはできない。このため、地方負担額については、地方債を充当することとなるが、地方負担額に応じて交付限度額が算定される地域活性化・公共投資臨時交付金を追加地方単独事業又は既往地方単独事業の財源に振り替えることにより、実質的な負担軽減が図られるものである。

(b)上記(a)以外の地方負担額については、地域活性化・公共投資臨時交付金又は地域活性化・経済危機対策臨時交付金を充当することができる。この場合において、地方債は交付金を充当した残余に充当することになる。

(c)地域活性化・公共投資臨時交付金は、当該地方公共団体の財政事情や地方単独事業の事業量、追加公共事業等の執行予定等に応じ、その一部を基金に積み立て、平成22年度以降における地方単独事業等の財源とすることも可能である。ただし、経済危機対策の趣旨を踏まえ、早期の執行に努められたい。

 また、今回の補正予算により平成21年度に追加されることとなる地方債の対象とならない経費(普通会計分:1,500億円)については、法令に国の補助負担割合が規定されていないものについては地域活性化・経済危機対策臨時交付金を充当できるほか、追加財政需要額(5,700億円)の取り崩しにより対応することとしている。

c 基金造成事業

 今回の補正予算により創設することとされている交付金等を財源として、2兆1,318億円を基金に積み立てることとしており、その概要は次のとおりである。

(a)地域医療再生臨時特例交付金(3,100億円)

 都道府県が地域の医療課題の解決に向けて策定する「地域医療再生計画」に基づいて行う医療圏単位での医療機能の強化、医師等の確保等の取組を支援するため、今回の補正予算において創設する。

 地域医療再生臨時特例交付金の総額は3,100億円であり、各都道府県においては、交付金を財源として地域医療再生のための基金を設置し、医療機関の連携強化、勤務医・看護師等の勤務環境の改善、大学病院等と連携した医師派遣機能の強化、医療機関・医療機器・IT基盤の整備など、地域の実情に応じた事業を実施する。

(b)介護職員処遇改善等臨時特例交付金(4,773億円)

 介護職員の処遇改善やスキルアップの取組等を行う事業者に対し助成を行うため、今回の補正予算において、「介護職員処遇改善等臨時特例交付金」を創設する。

 介護職員処遇改善等臨時特例交付金の総額は4,773億円であり、各都道府県においては、交付金を財源として基金を設置し、介護職員等の賃金改善を行うことを含む処遇改善計画を提出する事業者等に対し、平成23年度までの期間にわたり交付金を交付する。

(c)森林整備加速化・林業再生事業費補助金(1,238億円)

 森林整備の加速化と林業・木材産業等の地域産業の再生を目的として、今回の補正予算において、「森林整備加速化・林業再生事業費補助金」を創設する。

 森林整備加速化・林業再生事業費補助金の総額は1,238億円であり、各都道府県においては、補助金を財源として基金を設置し、間伐や路網の整備、製材施設・バイオマス利用施設等の整備、木質バイオマスや間伐材の流通の円滑化、学校の武道場等の公共施設等での地域材利用等を促進するための事業を、平成23年度までの期間にわたり実施する。

(d)地域グリーンニューディール基金(550億円)

 環境保全型の地域づくりを推進し、地域環境事業を実施する地方公共団体や民間事業者を支援するため、「地域グリーンニューディール基金」を創設することとし、今回の補正予算において、「地域環境保全対策費補助金」及び「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」を計上する。

 地域グリーンニューディール基金の総額は550億円であり、各都道府県及び指定都市においては、補助金を財源として既存の「地域環境保全基金」に別勘定を設けて拡充又は新設し、平成23年度までの間において、地球温暖化対策に係る地方公共団体実行計画や廃棄物処理計画等に基づき、地球温暖化対策の推進、不法投棄・散乱ごみ等の処理の推進、アスベスト廃棄物や微量PCB廃棄物の処理、海岸漂着物等の回収・処理等を実施する。

(e)施設整備関係の基金造成事業

 今回の補正予算においては、施設整備関係の基金造成事業として、次の交付金を創設し、各都道府県において、これらの交付金を財源として基金を設置する。

i 災害拠点病院、救命救急センター及び二次救急医療機関の耐震化のための「医療施設耐震化臨時特例交付金」(1,222億円)

ii 障害者関連施設や児童関連施設などの社会福祉施設等の耐震化・スプリンクラーの整備のための「社会福祉施設等耐震化等臨時特例交付金」(1,062億円)

iii 地域の介護ニーズに対応するための小規模(定員29人以下)の特別養護老人ホーム等の整備や定員30人以上の特別養護老人ホーム等の施設に係るスプリンクラーの整備のための「介護基盤緊急整備等臨時特例交付金」(2,495億円)

(f)その他の基金造成事業

 今回の補正予算においては、その他の基金造成事業として、次の交付金を創設し、各都道府県において、これらの交付金を財源として基金を設置する。

i 相談体制の整備や人材の養成等を緊急に実施するための「地域自殺対策緊急強化交付金」(100億円)

ii 経済情勢の悪化により修学が困難な学生・生徒に対する授業料減免事業等への緊急支援等のための「高等学校授業料減免事業等支援臨時特例交付金」(486億円)

 また、今回の補正予算においては、次の交付金を計上し、それぞれの交付金を財源として設置している基金を拡充する。

(i)「地方消費者行政活性化交付金」(110億円)

(ii)「障害者自立支援対策臨時特例交付金」(1,523億円)

(iii)「高齢者医療制度円滑運営臨時特例交付金」(131億円)

(iv)「緊急雇用創出事業臨時特例交付金」(3,000億円)

(v)「子育て支援対策臨時特例交付金」(1,500億円)

(vi)「森林整備地域活動支援交付金」(31億円)

(ウ) 平成21年度補正予算(第1号)の執行の見直し

 平成21年9月に発足した新内閣による9月18日の閣議において、総理から、「平成21年度第1次補正予算の事業に係る執行の見直しについて」発言があり、平成21年度補正予算(第1号)に係る事業のうち、各大臣が所管する全てについて、その執行の是非を点検することとされた。その見直しの結果に基づき、平成21年10月16日に「平成21年度第1次補正予算の執行の見直しについて」を閣議決定し、「第1次補正予算の執行については、別紙の事業につき、掲げられた額を目途に、執行停止又は交付を予定している法人等に対する交付辞退若しくは自主返納の要請等を行うこととし、その見直しの結果を平成21年度第2次補正予算又は平成22年度予算に反映する。このため、交付辞退又は自主返納の手続が必要なものについては、その手続に直ちに着手する」こととされた。

 これを受けて、補正予算(第1号)にかかる事業の全部又は一部の執行停止等が行われ、補正予算に計上された14兆6,987億円のうち、独立行政法人等への基金造成等を中心に2兆8,369億円が執行停止又は返納とされた。

 平成21年度補正予算(第1号)の執行停止等とされた、2兆8,369億円の内訳については以下のとおりである。

a 基金事業(地方向け基金除く) 9,781億円
b 独立行政法人等官庁施設費等 2,523億円
c 公共事業関係費(金融対策除く) 4,792億円
d 地方向け支出(基金) 780億円
  (地域医療再生臨時特例交付金 750億円、地方消費者行政活性化交付金 30億円)
e 地方向け支出(基金以外) 2,715億円
f 金融対策 5,588億円
g その他の施策 2,191億円

 なお、この他に、地域活性化・公共投資臨時交付金について、追加公共事業等の停止に伴い890億円程度の見込み額が執行停止とされたため、合わせて2兆9,259億円の執行停止・返納とされた(その後、当該臨時交付金の執行停止額は900億円で確定した。)。

(エ) 平成21年度補正予算(第2号)

 平成21年度補正予算(第2号)の概算は、平成21年12月15日に閣議決定され、平成22年1月18日に第174回国会に提出され、1月28日に成立した。

 この補正予算においては、歳出面で、「明日の安心と成長のための緊急経済対策」(平成21年12月8日閣議決定)を実施するための明日の安心と成長のための緊急経済対策費7兆2,013億円等を追加計上するほか、既定経費の節減7兆3,441億円の修正減少額を計上している。また、歳入面で、税収9兆2,420億円等を減額計上する一方、公債金9兆3,420億円(建設公債1,000億円及び特例公債9兆2,420億円の増額)を追加計上した。

 この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成21年度の補正予算(第1号)による補正後予算に対し、846億円増加し、102兆5,582億円となった。

 平成21年度補正予算(第2号)の明日の安心と成長のための緊急経済対策の7兆2,013億円の内訳については以下のとおりである。

a 雇用 6,140億円
  (緊急対応 2,640億円、成長戦略への布石 3,500億円)
b 環境 7,768億円
  (「エコ消費3本柱」の推進 5,945億円、成長戦略への布石 1,822億円)
c 景気 15,742億円
  (金融対策 11,742億円、住宅投資 4,000億円)
d 生活の安心確保 7,849億円
e 地方支援 34,515億円

(オ) 平成21年度補正予算(第2号)に係る地方財政補正措置

 平成21年度補正予算(第2号)の編成により、国税の減額補正に伴い地方交付税が減額されるとともに、歳出の追加に伴う地方負担の増加が生じた結果、以下の措置が講じられた。

a 国税の減額補正に伴う地方交付税の減額に対する補填措置

 今回の補正予算においては、平成21年度の国税の減収に伴い地方交付税が2兆9,515億円の減額となったところであるが、これについては、平成21年度当初における地方財政対策に準じ、次のとおり措置する。この結果、平成21年度の当初予算の地方交付税の総額が確保されるものである。

(a)地方交付税の減2兆9,515億円については、全額を国の一般会計からの加算により措置する。

(b)(a)の加算のうち2分の1の国負担分については、臨時財政対策加算とし、2分の1の地方負担分については臨時財政対策債を発行することに代えて措置するものであることを踏まえ、後年度精算する。

b 追加の財政需要等に対する財政措置

(a)国の補正予算により平成21年度に追加されることとなる災害復旧事業等投資的経費に係る地方負担額(普通会計分225億円)については、原則として、地方債(充当率100%)を充当することとし、後年度においてその元利償還金の全額を基準財政需要額に算入する。

 その際、元利償還金の50%(当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては、原則として当初の算入率)については、公債費方式により各団体の地方債発行額に応じて基準財政需要額に算入することとし、残余については単位費用により措置する。

(b)地方債の対象とならない経費については、地方負担の追加は生じない見込みである。

c 地方公共団体によるきめ細かなインフラ整備等を支援する交付金の創設

 地方公共団体において、危険な橋りょうの補修、景観保全の必要性の高い地域における電線の地中化や都市部の緑化、森林における路網整備等投資的経費に係る事業について、「地域活性化・きめ細かな臨時交付金」(総額5,000億円)を交付する。