2 平成23年度の地方財政

(1)財政運営戦略

 平成22年6月22日、「財政運営戦略」が閣議決定された。この中で、財政健全化に向けて、下記のような具体的な取組を行っていくこととされた。

(ア) 財政健全化目標

a 収支(フロー)目標

 残高目標を達成するために、以下のとおり、収支の改善を図ることとする。

(1)国・地方の基礎的財政収支について、遅くとも平成27年度までにその赤字の対GDP比を平成22年度の水準から半減し、遅くとも平成32年度までに黒字化することを目標とする。

(2)国の基礎的財政収支についても、遅くとも平成27年度までにその赤字の対GDP比を平成22年度の水準から半減し、遅くとも平成32年度までに黒字化することを目標とする。

(3)平成33年度以降も下記の残高目標にかかる達成状況を踏まえつつ、財政健全化努力を継続する。

b 残高(ストック)目標

 平成33年度以降において、国と地方の公債等残高の対GDP比を安定的に低下させる。

c 進ちょく状況の公表・検証等

(イ) 財政運営の基本ルール

 各年度の予算編成及び税制改正は、以下の基本ルールを踏まえて行う。

a 財源確保ルール(「ペイアズユーゴー原則」)

 歳出増又は歳入減を伴う施策の新たな導入・拡充を行う際は、原則として、恒久的な歳出削減又は恒久的な歳入確保措置により、それに見合う安定的な財源を確保するものとする。

b 財政赤字縮減ルール

 上記の収支目標を達成するため、景気循環の状況等の要因も踏まえ、原則として国債発行額の縮減や国債依存度の引下げ、基礎的財政収支の改善など毎年度着実に財政状況の改善が図られるよう、国の予算編成を行うものとする。

c 構造的な財政支出に対する財源確保

 年金、医療及び介護の給付等の施策に要する社会保障費のような構造的な増加要因である経費に対しては、歳入・歳出の両面にわたる改革を通じて、安定的な財源を確保していくものとする。

d 歳出見直しの基本原則

e 地方財政の安定的な運営

 財政の健全化については、まず、国が本戦略に則り改革に取り組んでいくことはもとより、公経済を担う国及び地方公共団体が相協力しつつ行うことが必要である。地方公共団体に対し、上記の国の財政運営の基本ルールに準じつつ財政の健全な運営に努めるよう要請するとともに、国は、地方財政の自主的かつ安定的な運営に配慮し、その自律性を損ない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行ってはならない。

(ウ) 中期財政フレーム

 財政健全化目標の達成に資するため、経済・財政見通しや展望を踏まえながら複数年度を視野に入れて毎年度の予算編成を行うための仕組みとして、以下のように、平成23年度から平成25年度を対象とする中期財政フレームを策定する。

a 「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」の一体的実現に向けて

 平成23年度からの3か年は、「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的実現に向けて始動する「第一ステージ」と位置付けられる。この目標の実現を財政面から裏付けていくことが、中期財政フレームの基本となる考え方である。

 こうしたことから歳入・歳出両面にわたる取組として、(1)国債発行額の抑制、(2)抜本的な税制改革、(3)基礎的財政収支の改善目標の達成に向けて取り組む。

b 歳入・歳出両面にわたる取組

(1)国債発行額の抑制

 財政健全化目標を確実に達成するとともに、財政健全化への積極的な姿勢を市場に向けて発信し、市場の信任を確保する観点から、平成23年度の新規国債発行額について、平成22年度予算の水準(約44兆円)を上回らないものとするよう、全力をあげる。それ以降の新規国債発行額についても、財政健全化目標の達成へ向けて着実に縮減させることを目指し、抑制に全力をあげる。

 このため、歳入・歳出両面における最大限の努力を行う。

(2)歳入面の取組

 個人所得課税、法人課税、消費課税、資産課税等にわたる税制の抜本的な改革を行うため、早急に具体的内容を決定することとする。こうした税制の改革により、財政健全化目標の達成に向けて、必要な歳入を確保していく。

 租税特別措置については、平成22年度税制改正大綱の方針に沿ってゼロベースから見直すこととする。

 新たに減収を伴う税制上の措置については、それに見合う新たな財源を確保しつつ実施することを原則とする。

(3)歳出面の取組

 財政健全化目標の達成に向けて、平成23年度から平成25年度において、「基礎的財政収支対象経費」(国の一般会計歳出のうち、国債費及び決算不足補填繰戻しを除いたもの)について、恒久的な歳出削減を行うことにより、少なくとも前年度当初予算の「基礎的財政収支対象経費」の規模(これを「歳出の大枠」とする。)を実質的に上回らないこととし、できる限り抑制に努めることとする。

 なお、「地方財政の安定的な運営」の基本ルールを踏まえ、地方歳出についても国の歳出の取組と基調を合わせつつ、交付団体始め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源の総額については、上記期間中、平成22年度の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する。

 歳出増につながる施策を新たに実施又は拡充しようとする場合には、当年度当初予算の「基礎的財政収支対象経費」の規模が上記の「歳出の大枠」の範囲内となるよう、恒久的な更なる歳出削減により、これに要する財源を賄うこととする。

(注)地方交付税交付金等については、地方行財政に係る制度改正等を踏まえた地方財政対策等を経て決定する。

c 中期財政フレームに基づく各年度の予算編成

 概算要求段階での予算の組替え等に資するよう、毎年度、予算編成の基本理念や経費の性格にも留意しつつ、中期財政フレームと整合的な各閣僚別の概算要求枠を設定する。各閣僚は、「査定大臣」として、この概算要求枠の範囲内で優先順位をつけて、積極的な予算の組替え・歳出削減を行い、要求することとする。

d 中期財政フレームの改訂

 平成23年半ば頃、当面の経済見通しや中長期の経済・財政の状況と展望を踏まえつつ、中期財政フレームの改訂を行い、平成24年度から平成26年度までを対象とする新たな中期財政フレームを定める。以後同様に、毎年半ば頃、中期財政フレームの改訂を行い、翌年度以降3年間の新たな中期財政フレームを定める。各年度に策定した中期財政フレームに沿って、翌年度の概算要求・予算編成を行うものとする。

 改訂に際しては、既存の中期財政フレームで定められている2か年度分の歳入・歳出両面にわたる取組は原則として維持するものとし、新たに追加する年度の歳入・歳出両面にわたる取組についても、財政運営の基本ルールと整合的に定めるものとする。

(2)平成23年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

 「平成23年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成22年12月22日に閣議了解、平成23年1月24日に閣議決定された。この中で平成22年度の我が国経済は、同年秋から足踏み状態にあるが、今後は踊り場を脱する動きが進むとされた。このため、平成22年度の国内総生産の実質成長率は、3.1%程度と3年ぶりのプラス成長、国民の景気実感に近い名目成長率は1.1%程度と見込まれている。

 このような情勢認識から、平成23年度の経済財政運営の基本的態度については、

a 「3段構えの経済対策」のステップ1及びステップ2を更に推進し、景気・雇用面の下振れリスクに備え、民間部門のマインドを安定化する

b 新成長戦略本格実施元年の平成23年度は、ステップ3として、「成長と雇用」に重点を置いた予算や税制等の総合的な活用により、フェーズIが目指すデフレ脱却と自律的回復に向けた道筋を確かなものとする

c 需要面での取組を基本としつつ、フェーズIIまでを見据え、中長期的な供給面の成長制約に備えた取組を推進する

d 円高、デフレ状況に対する為替、金融面での対応を行う

 とされた。

 以上のような経済財政運営を前提として、雇用・所得環境の改善が民間需要に波及する動きが徐々に強まることから、景気は持ち直し、経済成長の好循環に向けた動きが進むことが見込まれた。こうした結果、平成23年度の我が国経済は、国内総生産の実質成長率が1.5%程度、名目成長率は1.0%程度と、それぞれ2年連続でプラス成長になると見込まれている。

イ 国の予算

 政府は、平成22年12月16日「平成23年度予算編成の基本方針」を閣議決定するとともに、同月22日に「平成23年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」を閣議了解し、これに基づいて同月24日、平成23年度予算政府案を閣議決定した。その中で、平成23年度予算編成にあたっては、以下のような基本的考え方に基づくものとされた。

(ア) 予算編成の基本方針

 平成23年度予算は、「新成長戦略」(平成22年6月18日閣議決定)及び「財政運営戦略」(平成22年6月22日閣議決定)によって示された経済・財政政策の基本的な方針の下での最初の本予算でもある。

 予算編成の基本理念として、この予算を、これまで先送りされてきた重要政策課題に着手し、これを解決していくための出発点とし、「経済成長」、「財政健全化」、「社会保障改革」を一体的に実現し、元気な日本を復活させるための礎を築く必要がある。

a 「成長と雇用」の実現、デフレ脱却への道筋

b 国民の生活を第一に

c 確固たる戦略に基づく予算編成

 以上の理念の下、「新成長戦略」を着実に推進すると同時に、「財政運営戦略」に定めた財政規律の下に、成長と雇用拡大を実現することが平成23年度予算編成、そしてその後の予算編成を通じた、内閣の基本方針である。

(イ) 重点分野の基本的方向性

a 新成長戦略の実現へ向けて

 急速な円高の進行等の厳しい経済情勢にスピード感を持って対応し、デフレ脱却と景気の自律的回復に向けた道筋を確かなものとしていくために、「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」を決定し、そのステップ1として、平成22年度経済危機対応・地域活性化予備費を活用した緊急的な対応を行うとともに、ステップ2として、平成22年度補正予算を編成し、成立させてきたところである。

 そして、ステップ3として、平成23年度予算における新成長戦略の本格実施を図る。政府は既に「新成長戦略実現会議」を開催し、新成長戦略を強力に推進する体制を整えており、「21の国家戦略プロジェクト」のうち、世界の潮流からみて遜色のない高いレベルの経済連携を進め、必要な国内改革を先行的に推進するとともに、総合特区制度、医療の実用化促進のための医療機関の選定制度、「新しい公共」の活動を支える新たな制度等について、平成23年度から本格的に着手することとしている。国内投資の促進や、金融の円滑化を含めた施策を推進し、企業・産業の活力を向上させ、新たな雇用の創造を図る。

b マニフェスト主要事項等の重要な政策課題

 マニフェストに掲げる重要な政策課題として以下の項目が示されている。

・子ども・子育て支援

・農業予算

・一括交付金

・雇用対策

(ウ) 徹底した予算の組替えと無駄の削減

a 元気な日本復活特別枠の配分基本方針

 平成23年度予算においては、「平成23年度予算の概算要求組替え基準について」(平成22年7月27日閣議決定)に基づき、府省庁の枠を超えて予算を大胆に組み替え、元気な日本を復活させるための施策に重点配分を行う仕組みとして、「元気な日本復活特別枠」(以下「特別枠」という。)を設定する。

 特別枠への要望については、「組替え基準」を踏まえ、「元気な日本復活特別枠に関する評価会議」において、政策の評価が行われた。特別枠の予算配分は、この評価を基本としつつ、内閣総理大臣が政権としての重点や、国民の要請を踏まえ、思い切ったメリハリ付けを行い決定する。

b 事業仕分けの適切な反映

 事業仕分けは、予算編成過程を可視化し、国民目線に立った事業の見直し・無駄の削減を行うことによって、行政の在り方に大きな一石を投じた。これまでの事業仕分けの対象となった事業については、その結果を予算査定に適切に反映させるものとする。その際、担当大臣は広く国民の納得が得られるように十分な説明責任を果たしつつ、指摘された事業の見直しが確実に行われていることを担保する。また、事業仕分けの対象とならなかった事業についても、行政刷新会議で示された方向性を参考に、横断的に事業の見直しを行う。

(エ) 財政運営戦略の着実な実現

 平成23年度予算は、財政運営戦略及び中期財政フレームの下で編成される最初の本予算であり、財政健全化へ向けた日本政府の姿勢を示すものとして、内外の市場関係者も注視している。市場の信認を確保していくため、財政運営戦略・中期財政フレームに定めた規律の下に、財政健全化目標達成へ向けた第一歩とする。

 平成22年度当初予算における新規国債発行額約44兆円は、過去最高の水準である。平成23年度当初予算における新規国債発行額は、平成22年度当初予算の水準を上回らないものとするよう、全力をあげる。

 基礎的財政収支対象経費については、中期財政フレームに定めるとおり、平成22年度当初予算の水準である約71兆円(「歳出の大枠」)を上回らないものとする。これを達成するためには、特別枠への要望額の相当程度の絞り込みや、マニフェスト施策財源見合検討事項についての調整を行うことが不可欠であり、要求全体の更なる精査・削減と併せて検討する。

 このような方針に基づいて編成された平成23年度の一般会計予算の規模は92兆4,116億円で、前年度当初予算と比べると1,124億円の増加(0.1%増)となっており、基礎的財政収支対象経費は70兆8,625億円で、前年度当初予算と比べると694億円の減少(0.1%減)となっている。なお、経済危機対応・地域活性化予備費は8,100億円で、前年度当初予算と比べると1,900億円の減少(19.0%減)となっている。

 財政投融資計画の規模は14兆9,059億円で、前年度計画額と比べると3兆4,510億円の減少(18.8%減)となっている。

(3)地方財政計画

 平成23年度においては、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、経費全般について徹底した節減合理化に努める一方、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うとともに、地域活性化・雇用・子育て施策等に取り組むために必要な経費を計上するほか、歳入面においては、「財政運営戦略」に基づき、交付団体始め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、実質的に平成22年度の水準を下回らないよう確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとし、次の方針に基づき平成23年度地方団体の歳入歳出総額の見込額を策定することとなった。

(ア) 地方税制については、地域主権改革を推進する中で、地方がその役割を十分に果たすため、地方税を充実し、税源の偏在性が少なく、税収が安定的な地方税体系を構築していくこととしている。平成23年度税制改正では、個人住民税の諸控除や税負担軽減措置等の見直し等を行うほか、法人実効税率の引下げにあたっては、全体として地方の税収に極力影響を与えないよう配慮するとともに、航空機燃料税の税率引下げに伴い地方に減収が生じないよう、航空機燃料譲与税の譲与割合を引き上げることとし、所要の措置を講じることとしている。

(イ) 地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、地方交付税法第6条の3第2項に基づく制度改正を講じることとし、次の措置について所要の法律改正を行う。

a 平成23年度から平成25年度までの間は、平成22年度までと同様、財源不足が建設地方債(財源対策債)の増発等によってもなお残る場合には、この残余を国と地方が折半して補填することとし、国負担分については国の一般会計からの加算により、地方負担分については、地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。

 臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

b これに基づき、平成23年度の財源不足見込額14兆2,452億円については、次により補填する。

(1)地方交付税については、国の一般会計加算により5兆8,866億円(うち地方の財源不足の状況等を踏まえた別枠の加算額1兆500億円、地域活性化・雇用等対策費の上乗せ分に対応した別枠の加算額2,150億円、地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額867億円、同条第3項の加算額6,695億円、平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)に定める平成23年度における「乖離是正分加算額」500億円及び臨時財政対策特例加算額3兆8,154億円)増額する。また、平成23年度に予定されていた交付税特別会計借入金の償還7,593億円を後年度へ繰り延べるとともに、交付税特別会計剰余金5,000億円を活用する。

(2)地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)については、地方財政の健全化の視点も踏まえ、地方交付税の増額により一般財源総額を適切に確保した上で、大幅に縮減(1兆5,476億円)し、6兆1,593億円発行する。なお、臨時財政対策債の配分方法については、不交付団体を含む全団体に配分する方式(各団体の人口を基礎として算出)を廃止し、平成22年度に一部導入された、不交付団体には配分しない方式(各団体の財源不足額を基礎として算出)に移行する。

(3)建設地方債(財源対策債)を9,400億円増発する。

c 地方財政の健全化を図る観点から、交付税特別会計借入金33兆6,173億円について平成23年度から平成62年度までの償還計画を新たに作成した上で、以下のとおり着実な償還を行う。

(1)平成23年度から平成25年度までの間は、交付税特別会計借入金利払費の縮減により確保された財源等を活用し、各年度1,000億円を償還する。

(2)平成26年度以降平成32年度までの間は、償還額を毎年度1,000億円増額する。

(3)平成33年度以降は、財政運営戦略を踏まえた国の公債等残高の縮減の取組と歩調を合わせて償還する(30年間各年度1兆円の償還を基本)。

d 上記の結果、平成23年度の地方交付税については、17兆3,734億円(前年度に比し4,799億円、2.8%の増)を確保する。

e なお、平成5年度の投資的経費に係る国庫補助負担率の見直しに関し一般会計から交付税特別会計に繰り入れることとしていた額等1,103億円については、法律の定めるところにより平成29年度以降の地方交付税の総額に加算する。

(ウ) 地方債については、極めて厳しい地方財政の状況の下で、地域に必要なサービスを確実に提供できるよう地方財源の不足に対処するための措置を講じるとともに、地方団体が、必要性の高い分野への重点的な投資を行えるよう、公的資金の重点化と市場における地方債資金の調達を引き続き推進しつつ、所要の地方債資金を確保する。

(エ) 地域主権改革に沿って、地域経済の振興や雇用創出を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 平成22年度の歳出の特別枠「地域活性化・雇用等臨時特例費」(9,850億円)に代えて、子どもに対する現物給付等の子育て施策、住民生活に光をそそぐ事業、地球温暖化対策暫定事業等を勘案した2,150億円を上乗せした歳出の特別枠「地域活性化・雇用等対策費」1兆2,000億円を計上する。

b 投資的経費に係る地方単独事業費については、これまで単独事業費に計上してきた社会資本整備総合交付金を活用した道路事業を、公共事業費へ移し替えることとするとともに、国の公共投資関係費の取扱い等も勘案しつつ、前年度に比し5.0%減額(移替え影響除き)することとする一方で、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

c 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方団体における行政改革の状況等を踏まえ行政経費の縮減を行う一方、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

d 消防力の充実、自然災害の防止、震災対策の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

e 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(オ) 平成24年度までの3年間で1.1兆円規模の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金及び旧公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、高金利の地方債の公債費負担を軽減する措置を講じる。

(カ) 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(キ) 地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減等に取り組むとともに、事務事業の見直し、民間委託等の推進等行財政運営全般にわたる改革を推進する。

 以上のような方針に基づいて策定した平成23年度の地方財政計画の規模は、82兆5,054億円で、前年度と比べると3,786億円増加(0.5%増)となっている。

 歳入についてみると、地方税は33兆4,037億円で、前年度と比べると8,941億円増加(2.8%増)(道府県税4.4%増、市町村税1.6%増)、地方譲与税は2兆1,749億円で、前年度と比べると2,578億円増加(13.4%増)、地方特例交付金は3,877億円で、前年度と比べると45億円増加(1.2%増)、地方交付税は17兆3,734億円で、前年度と比べると4,799億円増加(2.8%増)、国庫支出金は12兆1,745億円で、前年度と比べると6,082億円増加(5.3%増)、地方債(普通会計分)は11兆4,772億円で、前年度と比べると2兆167億円減少(14.9%減)となっている。

 一方、歳出についてみると、給与関係経費は21兆2,694億円で、前年度と比べると4,170億円減少(1.9%減)となっている。なお、地方財政計画における職員数については、25,623人の純減としている。一般行政経費は30兆8,226億円で、前年度と比べると1兆3,895億円増加(4.7%増)となり、一般行政経費にかかる地方単独事業費は13兆8,601億円で、前年度と比べると316億円増加(0.2%増)となっている。公債費は13兆2,423億円で、前年度と比べると1,602億円減少(1.2%減)、投資的経費は11兆3,032億円で、前年度と比べると6,042億円減少(5.1%減)となっている。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は5兆3,558億円で、前年度と比べると1兆5,125億円減少(22.0%減)となっている。

 他方、平成23年度の地方債計画の規模は13兆7,340億円で、前年度と比べて2兆1,636億円減少(13.6%減)となっている。

(4)地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

 地方公営企業については、経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した新たな事業の展開等を図る必要がある。

 このため、平成23年度においては、次のような措置を講じることとしている。

 公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆6,867億円(前年度2兆6,961億円)を計上している。

 地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆2,568億円(前年度2兆4,037億円)を計上している。

 また、普通会計分と合わせた公債費負担対策として、平成24年度までの3年間で1.1兆円規模の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金、旧公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、高金利の地方債の公債費負担を軽減する措置を講じることとしている。このうち、旧公営企業金融公庫資金の繰上償還の財源として、平成23年度地方債計画に公営企業借換債を300億円計上している。

 さらに、各事業における地方財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

(ア) 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入することとしている。

(イ) 病院事業については、地域における医師確保対策の充実を図るため、公立病院において医師の派遣を受けることに対して、地方交付税措置を創設することとしている。

(ウ) 以上のほか、地方公営企業会計制度の改正への対応に要する経費及び地方公営企業職員に係る子ども手当の増額に要する経費について、所要の地方財政措置を講じることとしている。

イ 国民健康保険事業

 国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア) 都道府県が、市町村の国保財政安定のために必要な取組等に対し交付する都道府県調整交付金(給付費等の7%)の所要額(5,212億円)について、地方交付税措置を講じることとしている。

(イ) 国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部を負担することとし、その所要額(3,818億円(都道府県3/4、市町村1/4))について地方交付税措置を講じることとしている。

(ウ) 低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし、その所要額(949億円(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4))について地方交付税措置を講じることとしている。

(エ) 高額医療費共同事業については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし、その所要額(2,777億円(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2))について地方交付税措置を講じることとしている。また、一件30万円以上の医療費を対象に、市町村国保の拠出金で賄う保険財政共同安定化事業については、都道府県内の市町村国保間の保険料の平準化や国保財政の広域化の観点から、都道府県が事業の対象となる医療費の額や市町村国保からの拠出金の拠出方法の基準を広域化等支援方針で定めることができることとしている。

(オ) 国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じることとしている。

(カ) 国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図ることを目的として、40歳から74歳までの国民健康保険加入者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業に対して、国及び都道府県が一部を負担することとし、その所要額(495億円(国1/3、都道府県1/3、市町村国保1/3))について地方交付税措置を講じることとしている。

ウ 後期高齢者医療制度

 後期高齢者医療制度については、実施主体である広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとしている。

(ア) 保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図る(均等割2割・5割・7割軽減)とともに、被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減を行うため、都道府県及び市町村が負担することとし、その所要額(2,114億円(都道府県3/4、市町村1/4))について地方交付税措置を講じることとしている。

 なお、「明日の安心と成長のための緊急経済対策」(平成21年12月8日)により、70歳から74歳までの窓口負担軽減措置、低所得者の保険料軽減措置(均等割9割、8.5割、所得割5割軽減)及び被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減措置(均等割9割軽減)については、後期高齢者医療制度を廃止するまでの間、継続されることとされている。このうち、70歳から74歳までの窓口負担軽減措置及び低所得者の保険料軽減措置に伴う平成23年度分の財政措置については、平成22年度補正予算において、全額国費により対応することとしている。また、被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減措置に伴う平成23年度分の財政措置については、均等割9割軽減のうち4割分については国費により措置することとして、所要額を平成22年度補正予算に計上するとともに、均等割9割軽減のうち5割分については、引き続き、地方交付税措置を講じることとしている。

(イ) 高額医療費負担金については、広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部を負担することとし、その所要額(1,414億円(国1/4、都道府県1/4、広域連合1/2))について地方交付税措置を講じることとしている。

(ウ) 財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金を設置しその拠出金に対して国及び都道府県が一部を負担することとし、その所要額(451億円(国1/3、都道府県1/3、広域連合1/3))について地方交付税措置を講じることとしている。

(エ) 不均一保険料助成については、医療給付の実績が低い広域連合内の市町村に対して、平成26年度まで他の市町村とは異なる不均一の保険料を設けることに対して国及び都道府県が負担することとし、その所要額(9億円(国1/2、都道府県1/2))について地方交付税措置を講じることとしている。

(オ) 実施主体である広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じることとしている。