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第2部 平成24年度及び平成25年度の地方財政

1 平成24年度の地方財政

(1)平成24年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

「平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成23年12月22日閣議了解、平成24年1月24日に閣議決定された。この中で、以下の平成23年度の経済動向、平成24年度の経済財政運営の基本的態度及び平成24年度の経済見通しが示された。

(ア)平成23年度の経済動向

東日本大震災により我が国の経済活動は深刻な打撃を受け、マイナス成長が2四半期続くなど、平成23年度は厳しい状況からのスタートとなった。その後、官民の総力を結集した復旧・復興努力を通じてサプライチェーンの急速な立て直しが図られ、景気は持ち直しに転じたが、夏以降は急速な円高の進行や欧州政府債務危機の顕在化による世界経済の減速が、景気の持ち直しを緩やかなものにしている。

こうした状況に対し、政府は累次の補正予算を編成し、復興への支援を図りつつ景気の下方リスクに先手を打って対処してきている。復興需要を中心とする政策効果が景気を下支えすることから、景気は緩やかな持ち直しが続くものと見込まれる。

物価の動向を見ると、緩やかなデフレ状況が続いている。消費者物価は3年連続の下落となる。

平成23年度の国内総生産の実質成長率は、成長の発射台がマイナスであったことから、その後の景気の持ち直しにもかかわらずマイナス0.1%程度となる。国民の景気実感に近い名目成長率は、マイナス1.9%程度と見込まれる。

(イ)平成24年度の経済財政運営の基本的態度

東日本大震災からの復興に全力を尽くすとともに、欧州政府債務危機等による先行きリスクを踏まえ、景気の下振れの回避に万全を期す。デフレ脱却に断固として取り組み、全力を挙げて円高とデフレの悪循環を防ぐ。このため、政府は、日本銀行と一体となって、速やかに安定的な物価上昇を実現することを目指して取り組む。同時に、「日本再生の基本戦略」(平成23年12月24日閣議決定)の具体化を図るなど日本経済の再生に取り組み、中長期的に持続的な経済成長につなげる。

(財政政策)

当面は、「円高への総合的対応策」(平成23年10月21日閣議決定)を含め、平成23年度第3次補正予算、第4次補正予算において措置した施策の迅速かつ着実な実行により、復興需要の早期発現に努めるとともに、円高等による景気の下振れリスクや産業空洞化リスク等に先手を打って対処する。

平成24年度予算については、「日本再生元年予算」と位置づけ、震災復興に引き続き最優先で取り組むとともに、「日本再生重点化措置」等を通じて我が国経済社会の再生に向けた取組を進める。

国際金融市場に危機の伝播リスクがあることに鑑みれば、財政健全化は、経済成長と並ぶ車の両輪として進めるべき必須の課題である。このため、社会保障・税一体改革を着実に実現するとともに、「財政運営戦略」(平成22年6月22日閣議決定)の目標達成に向け、引き続き、財政健全化に取り組む。

(ウ)平成24年度の経済見通し

平成24年度の日本経済は、本格的な復興施策の集中的な推進によって着実な需要の発現と雇用の創出が見込まれ、国内需要が成長を主導する。

世界経済については、欧州政府債務危機を主因とする世界の金融資本市場の動揺が、各国政府等の協調した政策努力により安定化することを前提とすると、主要国経済は減速から持ち直しに転じていくと期待される。これは、我が国の輸出や生産にとって望ましい環境をもたらしていくと考えられる。

こうしたことから、我が国の景気は緩やかに回復していくことが見込まれる。

物価については、消費者物価上昇率はGDPギャップの縮小等により0.1%程度になると見込まれる。GDPデフレーターは緩やかに下落する。完全失業率は、雇用者数の緩やかな増加から低下する。

こうした結果、平成24年度の国内総生産の実質成長率は2.2%程度、名目成長率は2.0%程度と、実質、名目ともプラスに転じる。

先行きのリスクとしては、欧州政府債務危機の深刻化等を背景とした海外経済の更なる下振れ、円高の進行やそれに伴う国内空洞化の加速、電力供給の制約等が挙げられる。

イ 国の予算

政府は、「平成24年度予算編成の基本方針〜日本再生に向けて―危機をチャンスに〜」(平成23年12月16日閣議決定)及び「平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に基づいて平成23年12月24日、平成24年度予算政府案を閣議決定した。

平成24年度予算は、以下のような基本的考え方により編成された。

(ア)平成24年度予算の基本方針

平成24年度予算においては、東日本大震災からの復興、経済分野のフロンティアの開拓、分厚い中間層の復活、農林漁業の再生、エネルギー・環境政策の再設計の5つの重点分野を中心に、日本再生に全力で取り組む。あわせて、地域主権改革を確実に推進するとともに、既存予算の不断の見直しを行う。

a 東日本大震災からの復興

(a)被災地の経済社会の再生

日本再生の一丁目一番地は、東日本大震災の被災地の経済社会の再生である。被災地の方々が早期に復興を実感できるよう、「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成23年7月29日東日本大震災復興対策本部決定)に基づき、平成23年度補正予算に引き続き、平成24年度予算においても震災復興に全力を挙げる。

(b)原発事故からの再生

「福島の再生なくして、日本の再生なし」との考え方で、平成23年度補正予算に引き続き、平成24年度予算においても、被災者の支援に加え、放射性物質汚染廃棄物処理や土壌の除染等の取組を加速する。

b 日本再生重点化措置等を通じた経済分野のフロンティア開拓

平成24年度予算においては、「日本再生重点化措置」を最大限活用し、新たなフロンティア及び新成長戦略、教育・雇用等の人材育成、地域活性化、安心・安全社会の実現といった分野への投資に予算配分の重点化を図る。

c 分厚い中間層の復活に向けて

所得中位層に属する階層をかつての水準に回復させること等により、分厚い中間層を復活させることが必要である。そのためには、働く能力がある国民が全員参加できる社会の実現を目指すとともに、働く能力を育てる政策が必要であり、平成24年度予算において重点的に取り組む。

d 農林漁業の再生

「我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」(平成23年10月25日食と農林漁業の再生推進本部決定)に基づく5年間の行動計画の初年度として、競争力・体質強化を図り、若者が担う農業を目指して、農地の集約化、若者の新規就農を進め、6次産業化を始め、若者が魅力を感じ、安心して創意工夫を生かせる農業への改革を推進する。

e エネルギー・環境政策の再設計

福島原発事故の反省を踏まえ、事故収束と原子力安全の強化に万全を期すとともに、原子力発電に電力供給の過半を依存するとしてきた現行のエネルギーミックスをゼロベースで見直す。

f 地域主権改革

地域主権改革は、地域のことは地域で決めるための重要な改革である。平成23年度予算に引き続き、平成24年度予算においても補助金等の一括交付金化を更に進め、対象事業の拡大、増額を図るとともに、都道府県に加え、政令指定都市に対象を拡大する。

g 既存予算の不断の見直し

平成24年度予算は、東日本大震災からの復旧・復興の足取りを確実なものとするために、国民に追加的な負担をお願いしつつ編成される予算であると同時に、社会保障・税一体改革を控えた予算であり、これまで以上の緊張感を持って、徹底した無駄の排除を進めていく。

(イ)財政運営戦略の着実な実現

a 欧州の政府債務危機の状況も踏まえ、我が国財政への市場の信認を確保していくため、「財政運営戦略」における財政健全化目標の達成に向け、行政刷新会議の「提言型政策仕分け」等も活用しつつ既存歳出の見直しを進め、「中期財政フレーム(平成24年度〜平成26年度)」(平成23年8月12日閣議決定)に基づいて平成24年度予算編成を進める。

b 平成24年度当初予算における新規国債発行額(償還財源の確保された復興債を除く。)は、平成23年度当初予算の水準である約44兆円を上回らないものとするよう、全力を挙げる。

c 平成24年度当初予算における基礎的財政収支対象経費については、中期財政フレーム(平成24年度〜平成26年度)にのっとり、平成23年度当初予算の水準である約71兆円(年金差額分(基礎年金国庫負担割合2分の1と36.5%の差額をいう。)2.6兆円を除けば68.4兆円)を実質的に上回らないものとする。

このような方針に基づいて編成された平成24年度の一般会計予算の規模は、90兆3,339億円で、前年度当初予算と比べると2兆777億円減少(2.2%減)で、基礎的財政収支対象経費は、68兆3,897億円で、前年度当初予算と比べると2兆4,728億円減少(3.5%減)となった。なお、経済危機対応・地域活性化予備費は9,100億円で、前年度当初予算と比べると1,000億円増加(12.3%増)となった。

財政投融資計画の規模は、17兆6,482億円で、前年度計画額と比べると2兆7,423億円増加(18.4%増)となった。

なお、平成24年度当初予算案は、平成24年1月24日に国会に提出され、4月5日に成立した。

(ウ)東日本大震災関係

「東日本大震災からの復興の基本方針」において、震災復旧・復興対策について別途財源を確保し、多年度で収入と支出を完結させる枠組みが定められた。これを踏まえ「中期財政フレーム(平成24年度〜平成26年度)」では、別途管理での対応を可能とする等の配慮を行うとの基本的な考え方の下、歳出面での取組として、東日本大震災の復旧・復興対策に係る経費であって、既存歳出の削減により賄われる額を超えた金額のうち、復興債、更なる税外収入の確保及び時限的な税制措置により確保された金額については、財源と併せて別途管理し、「歳出の大枠」に加算するとされた。

この「中期財政フレーム(平成24年度〜平成26年度)」を前提に、「平成24年度予算の概算要求組替え基準について」(平成23年9月20日閣議決定)において、平成24年度予算の概算要求に当たっては、「平成24年度予算における東日本大震災からの復旧・復興対策に係る経費については、別途管理とし、所要の金額を要求することとする」こととされた。

「平成24年度予算編成の基本方針」では、復旧・復興対策に係る経費については、復興事業に係る歳入歳出を管理する特別会計を平成24年度に設置し、区分経理を行うこととされ、「東日本大震災復興特別会計」が設置されることとなった。

東日本大震災復興特別会計予算の規模は3兆7,754億円となった。歳入については、復興特別税5,305億円、一般会計からの繰入5,507億円、復興債2兆6,823億円等が計上された。歳出については、公共事業等の追加5,091億円、東日本大震災復興交付金2,868億円、全国防災対策費4,827億円、震災復興特別交付税の財源としての地方交付税交付金5,490億円などの東日本大震災復興経費3兆2,500億円、東日本大震災復興予備費4,000億円等が計上された。

(2)地方財政計画

平成24年度においては、被災団体が東日本大震災からの復旧・復興事業に着実に取り組めるようにするとともに、被災団体以外の地方公共団体の財政運営に影響を及ぼすことがないよう、地方公共団体の歳入歳出総額の見込額の策定に当たっては、通常収支分と東日本大震災分を区分して整理することとした。

通常収支分については、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、経費全般について徹底した節減合理化に努める一方、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うとともに、地域経済の基盤強化等のため、地域が実施する緊急事業に対応するために必要な経費を計上するほか、歳入面においては、「財政運営戦略」に基づき定める「中期財政フレーム(平成24年度〜平成26年度)」に沿って、交付団体始め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、平成23年度地方財政計画と実質的に同水準となるよう確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとした。

また、東日本大震災分については、東日本大震災の復旧・復興事業及び東日本大震災の教訓を踏まえ全国的に緊急に実施する防災・減災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとした。

以上を踏まえ、次の方針に基づき平成24年度地方公共団体の歳入歳出総額の見込額を策定した。

ア 通常収支分

(ア)地方税について、平成24年度税制改正では、地域決定型地方税制特例措置(通称:わがまち特例)の導入、固定資産税等の負担調整措置を延長したうえで住宅用地に係る据置特例の見直し、自動車取得税における「エコカー減税」の重点化等を講じる。

(イ)地方財源不足見込額について、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じる。

a 財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発、別枠加算等に加えて、新たに平成24年度から平成26年度まで行うこととする地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金の活用により対処することとした残余については、平成23年度に講じた平成25年度までの制度改正に基づき、国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については、「地方財政法」第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

b これに基づき、平成24年度の財源不足見込額13兆6,846億円については、次により補填する。

(a)地方交付税については、国の一般会計加算により5兆8,613億円(うち「地方交付税法」附則第4条の2第2項の加算額867億円、同条第3項の加算額2,150億円、同条第4項の加算額6,235億円、平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)に定める平成24年度における「乖離是正分加算額」500億円、地方の財源不足の状況を踏まえた別枠の加算額1兆500億円及び臨時財政対策特例加算額3兆8,361億円)増額する。

また、交付税特別会計剰余金5,200億円を活用するとともに、「地方公共団体金融機構法」(平成19年法律第64号)附則第14条の規定により財政投融資特別会計に帰属させる地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金3,500億円を財政投融資特別会計から交付税特別会計に繰り入れる。

(b)「地方財政法」第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を6兆1,333億円発行する。

(c)建設地方債(財源対策債)を8,200億円増発する。

c 上記の結果、平成24年度の地方交付税については、17兆4,545億円(前年度比811億円、0.5%増)を確保する。

d 交付税特別会計の借入金については、「特別会計に関する法律」(平成19年法律第23号)附則第4条第1項に基づき、1,000億円の償還を実施する。

e なお、平成4年度までの国庫補助負担率の引下げ措置(投資的経費)に伴い一般会計から交付税特別会計に繰入れを予定していた額等644億円については、法律の定めるところにより平成30年度以降の地方交付税の総額に加算する。

(ウ)地方債については、極めて厳しい地方財政の状況の下で、地域主権改革を推進し、地域に必要なサービスを確実に提供できるよう地方財源の不足に対処するための措置を講じ、また、地方公共団体が地域の活性化への取組を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

(エ)地域主権改革に沿って、地域経済の基盤強化や雇用創出を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 「地方再生対策費」及び「地域活性化・雇用等対策費」について、一定の縮減を図った上で、「地域経済基盤強化・雇用等対策費」として整理・統合し、歴史的円高等の地域経済を取り巻く環境が激変する中、海外競争力強化等のため、地域が実施する緊急事業に対応するための緊急枠(1,750億円)を含めて1兆4,950億円を計上する。

b 投資的経費に係る地方単独事業費については、国の公共投資関係費の取扱い等も勘案しつつ、前年度に比し3.6%減額することとする一方で、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

c 一般行政経費に係る地方単独事業費については、地方公共団体における行政改革の状況等を踏まえ行政経費の縮減を行う一方、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

d 消防力の充実、防災対策等の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

e 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(オ)平成24年度までの3年間で1.1兆円規模の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金及び旧公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、高金利の地方債の公債費負担を軽減する措置を講じる。

(カ)地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行う。

(キ)地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減、事務事業の見直しや民間委託など引き続き自主的な改革を推進する。

イ 東日本大震災分

(ア)復旧・復興事業

a 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、以下に掲げる地方負担分等の全額を措置するため、6,855億円を確保する。

  • 直轄・補助事業に係る地方負担分3,384億円
  • 地方単独事業分2,200億円
  • 税制上の臨時的特例措置等に伴う減収分1,271億円

b 地方債については、東日本大震災復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

c 直轄事業負担金及び補助事業費、「地方自治法」(昭和22年法律第67号)に基づく職員の派遣、投資単独事業等の地方単独事業費及び「地方税法」等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出等について所要の事業費を計上する。

なお、地方税については、被災者等の負担の軽減及び復旧・復興へ向けた取組の推進を図るため、3回にわたり講じられてきた税制上の臨時特例措置に加えて、平成24年度税制改正において、新たな復興支援措置として、避難等の指示が解除されていない区域内の土地及び家屋に係る固定資産税等の課税免除措置を平成25年度以降も継続すること等とする。

(イ)緊急防災・減災事業

a 平成24年度については、平成25年度から平成35年度までの地方税の臨時的な税制上の措置による地方税の増収が見込めないため、一般財源充当分として96億円を計上する。

b 地方債については、東日本大震災を教訓として、全国的に緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災等の事業を推進するため、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

c 国の全国防災対策費に係る直轄事業負担金及び補助事業費、地方単独事業費等について、所要の事業費を計上する。

以上のような方針に基づいて策定した平成24年度の地方財政計画の規模は、通常収支分は81兆8,647億円で、前年度と比べると6,407億円減少(0.8%減)となり、東日本大震災分は、復旧・復興事業が1兆7,788億円、緊急防災・減災事業が6,329億円となった。

通常収支分についてみると、歳入では、地方税は33兆6,569億円で、前年度と比べると2,532億円増加(0.8%増)(道府県税2.6%増、市町村税0.5%減)、地方譲与税は2兆2,615億円で、前年度と比べると866億円増加(4.0%増)、地方特例交付金は1,275億円で、前年度と比べると2,602億円減少(67.1%減)、地方交付税は17兆4,545億円で、前年度と比べると811億円増加(0.5%増)、国庫支出金は11兆7,604億円で、前年度と比べると4,141億円減少(3.4%減)、地方債(普通会計分)は11兆1,654億円で、前年度と比べると3,118億円減少(2.7%減)となった。

歳出では、給与関係経費は20兆9,760億円で、前年度と比べると2,934億円減少(1.4%減)となった。なお、地方財政計画における職員数については、10,908人の純減としている。一般行政経費は31兆1,406億円で、前年度と比べると3,180億円増加(1.0%増)となり、このうち一般行政経費にかかる地方単独事業費は13兆8,095億円で、前年度と比べると506億円減少(0.4%減)となった。公債費は13兆790億円で、前年度と比べると1,633億円減少(1.2%減)、投資的経費は10兆8,984億円で、前年度と比べると4,048億円減少(3.6%減)となった。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は5兆1,630億円で、前年度と比べると1,928億円減少(3.6%減)となった。

東日本大震災分(復旧・復興事業)についてみると、歳入では、震災復興特別交付税は6,855億円、国庫支出金は1兆772億円、地方債(普通会計分)は127億円などとなった。歳出では、一般行政経費は9,496億円(うち地方単独事業費2,691億円)、投資的経費は8,091億円(うち地方単独事業費700億円)などとなった。

東日本大震災分(緊急防災・減災事業)についてみると、歳入では、国庫支出金は2,059億円、地方債(普通会計分)は4,173億円などとなった。歳出では、一般行政経費は120億円(うち地方単独事業費50億円)、投資的経費は5,743億円(うち地方単独事業費1,350億円)などとなった。

また、平成24年度の地方債計画の規模は、通常収支対応分が13兆5,396億円(普通会計分11兆1,654億円、公営企業会計等分2兆3,742億円)で、前年度と比べて1,944億円減少(1.4%減)となり、東日本大震災に関連する事業分は、復旧・復興事業が359億円(普通会計分127億円、公営企業会計等分232億円)、緊急防災・減災事業が4,546億円(普通会計分4,173億円、公営企業会計等分373億円)となった。

(3)平成24年度一般会計の予備費等の使用

ア 平成24年度一般会計の予備費等の使用(第一弾)

(ア)主な内容

平成24年10月17日、内閣総理大臣は、景気が弱めの動きとなる中、景気下押しリスクに対応し、デフレからの早期脱却と経済活性化に向けた取組を加速していくことが喫緊の課題となっているとし、(1)「日本再生戦略」(平成24年7月31日閣議決定)における重点3分野(グリーン、ライフ、農林漁業)をはじめとする施策の実現前倒し、(2)東日本大震災からの早期の復旧・復興及び大規模災害に備えた防災・減災対策、(3)規制改革や民間の融資・出資の促進策など、財政措置によらない経済活性化策、を柱立てとする経済対策を策定するとともに、現下の経済情勢も踏まえ、上記の柱立てに基づき、緊要性の高い施策については予備費の使用決定を検討するよう指示した。

これを受けて、平成24年度一般会計の予備費及び経済危機対応・地域活性化予備費並びに東日本大震災復興特別会計予備費の使用が平成24年10月26日に閣議決定された。

各予備費の使用額は、一般会計予備費において232億円、経済危機対応・地域活性化予備費において「日本再生戦略」における重点3分野(グリーン、ライフ、農林漁業)をはじめとする施策の実現前倒し等2,490億円、東日本大震災復興特別会計予備費において東日本大震災からの早期の復旧・復興対策として被災地の産業・雇用の立て直し1,203億円が計上された。

(イ)平成24年度一般会計の予備費等に係る財政措置

平成24年度一般会計の予備費等の使用においては、歳出の追加に伴う地方負担が生じることから、これに対しては次のとおり財政措置を講じることとした。

a 一般会計の予備費及び経済危機対応・地域活性化予備費に係る財政措置

国の一般会計の予備費及び経済危機対応・地域活性化予備費の使用により追加されることとなる災害復旧事業及び公立学校施設の老朽化対策事業等投資的経費に係る地方負担額については、地方負担額の100%まで地方債を充当できることとし、後年度においてその元利償還金について以下のとおり地方交付税により措置する。

(a)災害復旧事業債

災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(b)その他

上記(a)以外については、後年度における元利償還金の50%を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、単位費用により措置する。

b 東日本大震災復興特別会計予備費に係る財政措置

国の東日本大震災復興特別会計予備費の使用により追加されることとなる中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業に必要な経費に係る地方負担額については、震災復興特別交付税により全額を措置する。

イ 平成24年度一般会計の予備費等の使用(第二弾)

(ア)主な内容

平成24年11月16日、内閣総理大臣は、経済情勢は厳しさを増しており、先行きの景気悪化懸念に全力で対処していくことが必要であるとして、経済対策を11月中に決定し、切れ目のない政策対応を講じていくことを指示した。

あわせて、10月26日に決定した予備費等の使用を経済対策の第一弾と位置付け、その第二弾として、経済危機対応・地域活性化予備費や復興予備費を積極的に活用し、緊要性が高く前倒しが必要な施策について速やかに実施に移すこととされた。

これを受けて、平成24年度一般会計の予備費及び経済危機対応・地域活性化予備費並びに東日本大震災復興特別会計予備費の使用が平成24年11月30日に閣議決定された。

各予備費の使用額は、一般会計予備費において衆議院総選挙関係経費等870億円、経済危機対応・地域活性化予備費において「日本再生戦略」における重点3分野(グリーン、ライフ、農林漁業)をはじめとする施策の実現前倒し等6,610億円、東日本大震災復興特別会計予備費において東日本大震災からの早期の復旧・復興対策として被災地の生活支援の強化、産業・雇用の立て直し等2,193億円が計上された。

(イ)平成24年度一般会計の予備費等に係る財政措置

平成24年度一般会計の予備費等の使用においては、歳出の追加に伴う地方負担が生じることから、これに対しては次のとおり財政措置を講じることとした。

a 一般会計の予備費及び経済危機対応・地域活性化予備費に係る財政措置

(a)一般会計の予備費及び経済危機対応・地域活性化予備費の使用により追加されることとなる投資的経費に係る地方負担額については、地方負担額の100%まで地方債を充当できることとし、後年度における元利償還金の50%を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、単位費用により措置する。

ただし、災害復旧事業債及び一般補助施設整備等事業債(出資金・貸付金(チッソ分))については、通常どおりの扱いとする。

(b)地方債の対象とならない経費については、地方財政計画に計上された追加財政需要額(4,700億円)の一部により対応する。

b 東日本大震災復興特別会計予備費に係る財政措置

東日本大震災復興特別会計予備費の使用により追加されることとなる事業に係る地方負担額については、以下のとおり財政措置を講じる。

(a)災害救助費等負担金事業に必要な経費に係る地方負担額については、震災復興特別交付税により全額を措置する。

(b)学校施設環境改善交付金事業に必要な経費に係る地方負担額については、その100%まで地方債(緊急防災・減災事業(補助・直轄))を充当できることとし、後年度における元利償還金の80%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(c)災害援護貸付金事業に必要な経費に係る地方負担額については、その100%まで資金手当のための地方債(一般事業債)を充当できる。

(4)平成24年度補正予算

ア 平成24年度補正予算(第1号)

平成24年度補正予算(第1号)は、平成25年1月15日に閣議決定、1月31日に第183回国会に提出され、2月26日に成立した。

この補正予算においては、歳出面で、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成25年1月11日閣議決定。以下「緊急経済対策」という。)に沿って、事前防災・減災等関連経費2兆2,005億円、成長による富の創出関連経費2兆6,924億円、暮らしの安心・地域活性化関連経費3兆1,017億円等を追加計上するほか、既定経費の減額1兆7,322億円等の修正減少額が計上された。また、歳入面で、税収2,610億円、税外収入1,495億円、公債金5兆2,210億円、前年度剰余金受入1兆9,870億円等が追加計上された。

この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成24年度当初予算に対し、10兆2,027億円増加し、100兆5,366億円となった。

イ 平成24年度補正予算(第1号)に係る財政措置等

(ア)通常収支分

この補正予算においては、国税の増収見込み等に伴い地方交付税の増が見込まれるとともに、歳出の追加に伴う地方負担が生じること、また、平成24年度の普通交付税の執行抑制に伴い追加的な財政需要が生じたこと等から、以下のとおり財政措置を講じることとした。

a 地方交付税

(a)補正予算(第1号)において、「地方交付税法」第6条第2項の規定に基づき増額される平成24年度分の地方交付税の額2,906億円(平成23年度精算分2,244億円、平成24年度国税五税の自然増に伴うもの662億円)については、平成24年度において普通交付税の調整額の復活に要する額707億円を交付することとしたうえで、残余の額2,199億円について平成25年度分として交付すべき地方交付税の総額に加算して交付する措置を講じる。

(b)「9月以降の一般会計の執行について」(平成24年9月7日閣議決定)に基づき、普通交付税の9月交付については、市町村分は9月に交付すべき額(1.9兆円)の全額を交付し、道府県分は9月から11月について月割りの交付として、各月において9月交付分の3分の1(0.7兆円)を交付することとしたことに伴い、道府県が資金繰りのために行った一時借入れ等に係る追加的な金利負担については、平成24年度分の地方交付税の総額に0.5億円を加算し、その全額を特例として特別交付税とする措置を講じる。

b 追加の財政需要

(a)補正予算(第1号)により平成24年度に追加される投資的経費に係る地方負担額については、原則として、地方負担額の100%まで地方債を充当できることとし、後年度における元利償還金の50%(当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては当初の算入率)を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、原則として、単位費用により措置する。

(b)地方債の対象とならない経費については、地方財政計画に計上された追加財政需要額(4,700億円)の一部により対応する。

c 地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金)

緊急経済対策において追加される公共投資の地方負担が大規模であり、予算編成の遅延という異例の状況の中で、地方の資金調達に配慮し緊急経済対策の迅速かつ円滑な実施ができるよう、今回限りの特別の措置として、補正予算債による対応に加え、各地方公共団体の追加公共投資の負担額等に応じて配分し、地域経済の活性化と雇用の創出を図る「地域の元気臨時交付金(地域経済活性化・雇用創出臨時交付金)」を交付することとされている。

地域の元気臨時交付金の総額は、補正予算(第1号)に計上された公共事業及び施設費(以下「公共事業等」という。)の地方負担総額の8割に相当する額として1兆3,980億円とされている。

各地方公共団体への交付限度額は、補正予算(第1号)に計上された公共事業等の地方負担額等に応じて算定される。なお、財政力の弱い団体等に配慮し、財政力指数により調整を行うこととされており、最も財政力の弱い団体で地方負担額の9割程度となるよう算定される。

地域の元気臨時交付金の充当対象は、各地方公共団体が策定する地域の元気臨時交付金に係る実施計画に掲載された事業のうち、地方単独事業の所要経費(「地方財政法」第5条第5号等に掲げる場合に該当し、地方債を財源とすることができる経費に限る。)、建設公債の対象となる国庫補助事業(法令に国の補助負担割合が規定されていないものに限る。)の地方負担分等とされており、各地方公共団体の申請に基づいて、交付限度額を上限として交付金が交付される。

(イ)東日本大震災分

a 震災復興特別交付税

津波による被災地域において安定的な生活基盤(住まい)の形成に資する施策を通じて住民の定着を促し、復興まちづくりを推進する観点から、被災団体が、地域の実情に応じて弾力的かつきめ細かに対応することができるよう、平成24年度分の震災復興特別交付税の総額に1,047億円を加算する。

また、上記のほか、東日本大震災に係る復旧・復興事業に必要な経費に係る地方負担額については、平成24年度分の震災復興特別交付税の総額に167億円を加算したうえで全額を措置する。

b 震災復興特別交付税の対象とならない経費(全国防災対策費)に係る地方負担額については、その100%まで地方債(緊急防災・減災事業(補助・直轄))を充当できることとし、後年度における元利償還金の80%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(5)地方公共団体の予算

平成24年度の地方公共団体の普通会計予算(9月補正後)の状況は、第49表のとおりであり、普通会計予算の総額(都道府県及び市町村(一部事務組合等を除く)の単純合計)は、前年度と比べるとほぼ同額となっている。

第49表 平成24年度普通会計予算の状況(9月補正後)

主な内訳をみると、歳入では、地方税が前年度と比べると0.7%減、地方譲与税が6.2%増、地方交付税が3.5%増、国庫支出金が4.6%減、地方債が0.2%増となっている。一方、歳出では、人件費が前年度と比べると1.8%減、扶助費が4.1%減、普通建設事業費が6.6%増となっている。

(6)地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

平成24年度においては、地方財政計画と地方債計画が通常収支分と東日本大震災分を区分して整理することとされたことに伴い、地方公営企業に対する財政措置についても通常収支分と東日本大震災分に区分して整理している。

(ア)通常収支分

地方公営企業については、経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図る必要がある。

このため、平成24年度においては、次のような措置を講じることとした。

公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆6,590億円(前年度2兆6,867億円)を計上する。

地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆3,742億円(前年度2兆2,568億円)を計上する。

また、普通会計分と合わせた公債費負担対策として、平成24年度までの3年間で1.1兆円規模の公的資金(旧資金運用部資金、旧簡易生命保険資金、旧公営企業金融公庫資金)の補償金免除繰上償還を行い、高金利の地方債の公債費負担を軽減する措置を講じる。このうち、旧公営企業金融公庫資金の繰上償還の財源として、平成24年度地方債計画に公営企業借換債を300億円計上する。

さらに、各事業における地方財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

a 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入する。

b 簡易水道事業については、経営の効率化・健全化を図るため、法適化・統合推進に要する経費のうち、複数の簡易水道事業の統合に要する資産台帳作成や電算システム導入等のソフト事業について、地方交付税措置を講じる。

c 病院事業については、先般の東日本大震災を教訓として、災害時の医療に必要な資機材等の備蓄に係る地方交付税措置については、災害拠点病院に加え、新たに救急告示病院を対象とする。

d 以上のほか、地方公営企業職員に係る子どものための手当に要する経費について、所要の地方交付税措置を講じる。

(イ)東日本大震災分

東日本大震災の復旧・復興事業及び東日本大震災の教訓を踏まえ全国的に緊急に実施する防災・減災事業については、通常収支とはそれぞれ別枠で区分し、所要の事業費及び財源を確保することとした。

このため、平成24年度においては、次のような措置を講じることとした。

a 復旧・復興事業

地方公営企業に係る復旧・復興事業については、一般会計から公営企業会計への繰出基準の特例を設け、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととし、当該繰出金に対してはその全額を震災復興特別交付税により措置することとしており、地方財政計画において23億円を計上する。また、復旧・復興事業に係る地方債については、地方債計画において公営企業会計等分232億円を計上する。

b 緊急防災・減災事業

地方公営企業に係る緊急防災・減災事業については、一般会計から公営企業会計への繰出基準の特例を設け、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととし、地方財政計画において436億円を計上する。当該繰出金については緊急防災・減災事業債(補助)を充当することができる。緊急防災・減災事業に係る地方債については、 地方債計画において公営企業会計等分373億円を計上する。

旧公営企業金融公庫資金(地方公共団体金融機構資金も含む。)によって取得した施設が被災により滅失し繰上償還(補償金が課されない強制繰上償還)を行う場合、地方公共団体金融機構資金により、借換債を発行できることとし、被災施設借換債150億円を計上する。

イ 国民健康保険事業

国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア)都道府県の調整機能の強化と市町村国保財政の共同事業の拡大の円滑な推進等のため、国定率負担から都道府県調整交付金へ移す(給付費等の2%分)こととし、所要額(6,771億円)について地方交付税措置を講じる。

(イ)国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部(都道府県3/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(4,239億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用(986億円)に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(493億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)高額医療費共同事業(2,956億円)については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)を負担することとし、その所要額(739億円)について地方交付税措置を講じる。

(オ)国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じる。

(カ)国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図ることを目的として、40歳から74歳までの国民健康保険加入者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業(523億円)に対して、国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、市町村国保1/3)を負担することとし、その所要額(174億円)について地方交付税措置を講じる。

ウ 後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度については、実施主体である広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア)保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図る(均等割2割・5割・7割軽減)とともに、被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減を行うため、都道府県及び市町村が負担(都道府県3/4、市町村1/4)することとし、その所要額(2,481億円)について地方交付税措置を講じる。

なお、平成24年度は、70歳から74歳までの窓口負担軽減措置、低所得者の保険料軽減措置(均等割9割・8.5割、所得割5割軽減)及び被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減措置(均等割9割軽減)について継続する。また、被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減措置に伴う平成24年度分の財政措置については、均等割9割軽減のうち4割分については国費により措置することとして、所要額を平成23年度補正予算に計上するとともに、均等割9割軽減のうち5割分については、引き続き、地方交付税措置を講じる。

(イ)高額医療費負担金(2,070億円)については、広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、広域連合1/2)を負担することとし、その所要額(518億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金(590億円)を設置しその拠出金に対して国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、広域連合1/3)を負担することとし、その所要額(197億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)不均一保険料助成については、医療給付の実績が低い広域連合内の市町村に対して、平成26年度まで他の市町村とは異なる不均一の保険料を設けることに対して国及び都道府県が負担(国1/2、都道府県1/2)することとし、その所要額(3億円)について地方交付税措置を講じる。

(オ)実施主体である広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じる。

エ 平成24年度以降の児童手当制度

(ア)平成24年度以降の児童手当制度については、「平成23年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法」(平成23年法律第107号)の附則において、「平成24年度以降の恒久的な子どものための金銭の給付の制度」について、「地方自治法」に規定する全国的連合組織の代表者その他の関係者と十分に協議を行い、これらの者の理解を得るよう努めることとされた。

これを受け、「子どもに対する手当制度に関する厚生労働大臣・地方六団体意見交換会」や「国と地方の協議の場」で議論が行われ、平成23年12月20日に関係4大臣間で「平成24年度以降の子どものための手当等の取扱いについて」が合意された。その内容は以下のとおりである。

a 支給額:3歳未満及び3歳以上小学校修了前の第3子以降 15,000円/月

      3歳以上小学校修了前の第1子・第2子、中学生 10,000円/月

b 所得制限は960万円(夫婦、子ども2人)を基準とし、平成24年6月分から適用する。年少扶養控除廃止に伴う手取り額の減少に対応するため、所得制限以上の者については、中学校修了までの子ども一人につき、月額5,000円を支給する。

c 費用負担については、国:地方=2:1とし恒久化する。公務員分については、所属庁から支給する。

d 「平成23年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法」で設けられた、保育料の手当からの直接徴収、学校給食費等の本人同意による手当からの納付、子どもの国内居住要件、施設入所子どもの施設の設置者への支給等については、同様の仕組みを設ける。

この4大臣合意を踏まえ、平成24年1月27日に「児童手当法の一部を改正する法律案」が第180回通常国会に提出された。

(イ)その後、与野党の実務者協議において、手当の名称や所得制限のあり方などについて議論が行われ、「児童手当法の一部を改正する法律案の修正について」(平成24年3月15日 民主党、自民党、公明党合意)が合意された。その具体的内容は以下のとおりである。

a 手当の名称は「児童手当」とし、法律名称は「児童手当法」とする。

b 子育て支援に係る財政上又は税制上の措置等に関する検討規定を設ける。

c 所得制限基準額以上の者への支給(月額5,000円)については、附則で、当分の間の特例給付とする。また当該給付のあり方について、子育て支援に係る財政上又は税制上の措置等の検討の結果に基づき必要な措置を講じる。

この結果、上記合意を内容とする議員修正を経て、3月30日に「児童手当法の一部を改正する法律案」が成立した。

(7)個別団体における財政健全化

地方公共団体の財政状況は、東日本大震災における減免等による税収減や生活保護の増加等に伴う扶助費の増等により、平成23年度決算における経常収支比率が前年度(90.5%)と比べると2.1ポイント上昇の92.6%となったことや、過去の公共投資等に係る借入金残高の累積等により、依然として厳しい状況となっている。

各地方公共団体においては、このような状況を踏まえて、地方税等の徴収対策、使用料・手数料の適正化、未利用財産の売払いなどの歳入確保や、事務事業の見直し、組織・機構の簡素効率化、外郭団体の統廃合等、定員管理・給与の適正化、民間委託等の推進などの自主的な行財政改革に取り組んでいる。

特に、唯一の財政再生団体である北海道夕張市や財政健全化団体である2市町では、市民生活に直結したサービスを維持しながら、早期の財政の健全化に向けた最大限の取組を行っており、個人市民税・固定資産税・軽自動車税の税率の引上げや各種使用料・手数料の引上げなど、住民負担の増加を伴う取組等による徹底した歳入確保と、職員数の削減や職員給与の見直しなど、行政のスリム化等による徹底した歳出削減により、財政状況の改善を図っている。

同様に、平成23年度決算における資金不足比率が経営健全化基準以上の公営企業は36会計であるが、これらの公営企業では定期的な料金改定の実施や、徴収体制の見直しによる未収金の減少等により収入増加を図るとともに、職員数の削減や維持管理経費の削減等により積極的な支出の削減を図っているほか、収益の増加や経費の節減等により資金不足額の減少を行うこととしている。

(8)宝くじの改革

宝くじは、刑法で発売が禁じられている「富くじ」の特例として、「地方財政法」及び「当せん金付証票法」(昭和23年法律第144号)に基づき、地方財政資金の調達を目的として、総務大臣の許可を受けて、都道府県及び政令指定都市が発売しているものである。

宝くじは、60年以上にわたって発売されており、国民に「夢」や「楽しみ」を提供し、国民の健全な娯楽として発展するとともに、地域住民の福祉の向上に寄与し、社会に貢献している。

しかしながら、近年、宝くじの売上額は、平成17年度の1兆1,047億円をピークに漸減傾向にあり、22年度には9,190億円にまで低下した。

このように宝くじの売上げが低迷していることや販売方法が時代にマッチしていないなどの指摘がなされていること等を踏まえ、平成23年度に宝くじ活性化検討会を設置し、宝くじ購入者をはじめとする消費者の利便性の向上、宝くじ運営の効率化等に向けた活性化方策について検討を行った。

同検討会の報告書においては、消費者の利便性の向上及び販売チャネルの拡充、運営全般にわたる競争性・効率性の確保、宝くじの魅力の向上といった観点から幅広い提言がなされた。

報告書の提言を踏まえ、電磁的記録による当せん金付証票の導入、当せん金の最高金額の倍率制限の緩和等を内容とする「当せん金付証票法」の一部改正を行った。

平成23年度には、東日本大震災復興支援グリーンジャンボ宝くじの発売やロト6の抽選の週2回化などの取組によって売上額が1兆44億円となり、3年ぶりに1兆円を超えたところである。

今後とも、地方公共団体の貴重な自主財源の充実を図るため、法改正を活かし、ジャンボくじ等での1等賞金の引上げや、インターネット販売の開始(平成26年1月にナンバーズ3、4から段階的に導入)など魅力的なくじの提供や、宝くじの収益金の使途・社会貢献の積極的なPRを通じて宝くじの魅力の向上を図るなど、宝くじの活性化、売上げ向上に向けた取組を進めることとしている。

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