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第3部 最近の地方財政をめぐる諸課題

1 地域の元気創造 〜地域からの日本再生に向けて〜

地域の活性化なくして日本経済の再生は見込みがたい。このため、何よりも地域の元気を創造し、地域からの経済成長に向けた取組を促していく必要がある。

また、自立的な地域経営を推進するため、地方圏における人口定住の受け皿を形成する「定住自立圏構想」の推進や、過疎地域などの条件不利地域の自立・活性化の支援にも引き続き取り組む必要がある。

(1)緊急経済対策と地域の元気創造本部

現在の我が国にとって最大かつ喫緊の課題は経済の再生にある。このため、大胆な金融政策、機動的な財政政策とともに、民間投資を喚起する成長戦略が進められているが、地域の元気が日本の元気につながることは言うまでもなく、地域の活性化なくして日本経済の再生は見込めない。

地域の活性化を実現するためには、地域資源を活用して、具体的な新しい事業や雇用の創出に結びつく取組が求められる。地域には、自然、景観、文化、再生可能エネルギー、地場産品等の多様な地域資源がある。また、地域金融機関の預貸率が低下しており、地域の資金が地域で十分活用されているとは言い難い状況にある。これらの特色ある地域資源を見直し、産業界、大学等、地域金融機関との連携により、各地方公共団体が将来に富を生み出す取組を行うことが重要である。

このため、平成25年1月11日に閣議決定された「緊急経済対策」において、地域の特色を生かした地域経済の活性化施策を打ち出すとともに、平成24年度補正予算(第1号)において関連事業費が計上された。

また、地域の元気を創造し、地域からの経済成長に向けた取組を推進するため、国は住民の生活に密接な地方行政と、放送、通信や高度なICT技術等の機能を連携させることにより、地方公共団体の地域活性化の取組を総合的に支援することが期待されている。

このため、平成25年2月8日に「地域の元気創造本部」(本部長・総務大臣)が設置され、地域活性化の視点から見た成長戦略に取り組む体制が整えられた。2月15日には同本部に設けられた有識者会議の第1回会議が開かれ、課題解決のための具体的な施策構築に向けた議論が開始されている。

ア 緊急経済対策と平成24年度補正予算(第1号)

「緊急経済対策」(第3章 具体的施策 III.暮らしの安心・地域活性化 2.地域の特色を生かした地域活性化 (3)農業の体質強化など地域の特色を生かした地域経済の活性化と住みよい地域の構築の加速)においては、「多様な地域の資源等を活用したイノベーションの推進や地域の自立を目指した産学金官の地域経済循環の促進等により、地域それぞれがもつ特色を生かして地域経済を活性化するための取組を進める。」とされ、「地方公共団体を核とした地域経済循環の創出による地域活性化等」に50億円が計上された(平成24年度補正予算(第1号))。その主な事業は次のとおりである。

(ア)地域経済循環創造事業(25億円)

地方公共団体が核となって進める地域資源を生かした事業化の取組について、初期投資に係る資金面での支援、事業の立ち上げ・運営等に必要な知識を有するマネジメント人材を斡旋する仕組みの構築等

(イ)過疎集落等自立再生緊急対策事業(15億円)

住民の一体性がある地域単位で市町村及び住民団体が集落外の組織や団体と連携しながら、集落を維持・活性化するために総合的に取り組む事業等への支援

(ウ)地域経営型包括支援クラウドモデル実証事業(10億円)

介護事業者など様々な地域の事業者が活用できるICT環境を整備し、地域の業務の生産性の向上と住民の利便性の向上を図るため、自治体クラウドのインフラを活用するモデルの構築

なお、これらの事業は、基本的に平成25年度当初予算案にも引き継がれ、いわゆる「15ヶ月予算」として切れ目のない対応が予定されている。

イ 地域の元気創造本部

「地域の元気創造本部」では、地域の元気を創造する施策の企画立案・推進や、情報の共有について検討が行われており、主な検討課題として、次のような項目が挙げられている。

(ア)地域経済イノベーションサイクルの全国展開の在り方

地域の資源や資金を結びつけて地域の元気事業の創出を図るイノベーションサイクルについて、全国各地で数多く積み重ねられることにより、ボトムアップ型の経済成長が期待される。事業化には、徹底した調査、地域資源を活用する事業の仕組み(ビジネスモデル)、適切な資金調達等が必要となる。これらの取組への地方公共団体の関与について、関係省庁が連携し支援の方策を確立することが必要である。

(イ)地域活性化のための新しい計画的な公共事業の在り方

新たに道路を作るなどの新規の公共事業や、高度成長期に作られ老朽化したインフラの長寿命化などだけでなく、過疎地域など地方を元気にする取組に直結し、地域の再生を計画的に支援する新しい公共事業が求められる。このような事業の在り方を具体化し、事業に取り組む地方公共団体をソフト・ハードを組み合わせ、ICTも活用して総合的に支援する諸施策の在り方を明らかにすることが必要である。

「地域の元気創造本部」では、これらの検討課題を解決する具体的な施策群を構築するため、建築、まちづくり、地域再生、金融など、幅広い分野の専門家から構成される有識者会議での議論を軸に検討が進められている。

(2)定住自立圏構想

我が国は、今後、総人口の減少及び少子化・高齢化の進行が見込まれており、特に地方圏においては、大幅な人口減少と急速な少子化・高齢化が見込まれている。このような状況を踏まえ、地方圏において安心して暮らせる地域を各地に形成し、地方圏から三大都市圏への人口流出を食い止めるとともに、三大都市圏の住民にもそれぞれのライフステージやライフスタイルに応じた居住の選択肢を提供し、地方圏への人の流れを創出することが求められている。

「定住自立圏構想」とは、中心市と周辺市町村が連携・協力することにより、圏域全体で必要な生活機能を確保し、地方圏への人口定住を促進する政策であり、平成21年度から全国展開を行っている。

定住自立圏形成の手続きは、人口5万人以上(少なくとも4万人超)の市が、圏域として必要な生活機能の確保について中心的な役割を担う意思を有すること等を明らかにする中心市宣言を実施し、中心市と隣接し、経済、社会、文化又は住民生活等において密接な関係のある周辺市町村と定住自立圏形成協定を締結することとしている。中心市は、圏域の将来像や推進する具体的取組を記載した定住自立圏共生ビジョンを策定し、これに取り組むこととしている。

平成24年1月末時点では、82団体が中心市宣言を行っており、72の定住自立圏が形成されている。また中心市56団体が周辺市町村247団体と定住自立圏形成協定を締結しており、70団体が定住自立圏共生ビジョンを策定済みとなっている。

平成24年度は、文化芸術、地域医療、産業振興の3分野について、他の定住自立圏のモデルとなるような取組を委託調査事業として採択する「『定住自立圏』推進調査事業」を実施した。平成25年度は、定住自立圏等において地域力を高める取組の充実・深化を図るため、圏域全体の活性化を目指した分野横断的な取組を重点的に支援することとしている。

(3)過疎対策等の条件不利地域の自立・活性化の支援

ア 基本的な考え方

過疎地域等は、都市部の災害防止、水源の涵養、安心・安全な食料の供給、森林による二酸化炭素の吸収などにより、都市部を支えている一方、人口減少、高齢化、身近な生活交通の不足、医師不足、維持が危ぶまれる集落の問題など、多くの課題が存在している。

平成12年に制定・施行された「過疎地域自立促進特別措置法」(平成12年法律第15号)においては、経済性・効率性と都市文化を育む都市地域と並び、過疎地域を多様で豊かな自然環境、広い空間、伝統文化等を有する個性的な地域として位置づけ、両者の共生・対流により相互に機能を補完し合いつつ発展し、美しく品格ある多様性に富んだ国土を持つ国を目指すことを目的としている。

これらのことを踏まえ、条件不利地域と都市が共生するという日本型の共生社会を実現するとともに、都市部を含めた国民全体の安心・安全な生活を確保していくことが必要である。

イ 具体的な取組内容

条件不利地域の自立・活性化への支援を着実に推進していくため、以下のような取組を進めている。

  • 地域医療提供体制の確保
  • 企業誘致・雇用対策(スモールビジネスの振興等)
  • 生活交通の確保(コミュニティバス、デマンドタクシー等の運行)
  • 集落の維持・活性化対策(「集落支援員」による集落点検の実施、話し合いの推進等)
  • 都市から地方への移住・交流の促進(移住・交流推進機構(JOIN)や関連NPO法人との連携、空き家活用によるU・Iターン促進対策等)

ウ 過疎法に基づく施策

過疎地域は、「過疎地域自立促進特別措置法」に基づき市町村毎に「人口要件」及び「財政力要件」により指定され、過疎地域に対しては、過疎対策事業債等の支援が行われる。

平成22年4月1日に「過疎地域自立促進特別措置法の一部を改正する法律」(平成22年法律第3号)が施行され、「過疎地域自立促進特別措置法」の失効期限の6年間の延長、過疎地域の要件の追加、過疎対策事業債のソフト事業への拡充及び対象施設の追加などの改正が行われた。

同法等の改正により過疎対策事業債について、ハード事業においては太陽光その他自然エネルギーを利用するための施設、認定こども園・市町村立の幼稚園、図書館などの施設についても支援対象に追加されるとともに、地域医療の確保、住民に身近な生活交通の確保、集落の維持及び活性化など、住民の安全・安心な暮らしの確保を図り、過疎地域の自立促進に資するソフト事業に対しても広く対象とすることとなった。

平成24年度においては、東日本大震災の発生による過疎対策事業の遅延が想定されることから、法の有効期限を5年間延長する「過疎地域自立促進特別措置法の一部を改正する法律」(平成24年法律第39号)が6月27日に施行され、法の期限は平成33年3月末日までとなり、より長期的視野に立った過疎対策事業の展開が可能となった。

また、前年度に引き続き、過疎地域等自立活性化推進交付金により、先進的で波及性のあるソフト事業、定住のための空き家改修や団地の整備及び廃校舎等の遊休施設を活用して行う地域間交流施設等の整備に対して支援措置を講じることとしている。

なお、平成24年4月1日現在での過疎関係市町村は775市町村となっており、過疎関係市町村の割合は45.1%となっている。

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