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3 地方分権改革の推進

政府では、住民に対する行政サービスの向上や行政の効率化を図るとともに、地方が自らの発想で特色を持った地域づくりができ、その地域に合った行政を行うことができるよう、国と地方の役割分担の見直しを中心とした地方分権改革の推進に取り組んでいる。

(1)義務付け・枠付けの見直し

地方分権改革を進めるためには、これまで国が一律に決定し地方公共団体に義務付け・枠付けてきた基準、施策等を、地方公共団体が条例の制定等により自ら決定し、実施するように改めていく必要がある。

義務付け・枠付けの見直しについては、これまで地方分権改革推進委員会第2次勧告(平成20年12月8日。以下「第2次勧告」という。)で見直しの検討対象とされた4,076条項について、同委員会第3次勧告(平成21年10月7日)で特に問題があると提示された「施設・公物設置管理の基準」、「協議、同意、許可・認可・承認」及び「計画等の策定及びその手続」の3分野(1,216条項)のうち、許容類型に該当せず見直すべきとされたもの(889条項)を対象に、整理、検討が行われた結果、「地方分権改革推進計画」(平成21年12月15日)及び「地域主権戦略大綱」(平成22年6月22日)が閣議決定された(第1次・第2次見直し。636条項)。

また、第2次勧告で示された条項以外についても、地方債協議制度や地方から国等への寄附禁止規定などの見直しが行われ、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第37号。第1次一括法)、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第105号。第2次一括法)の成立により、所要の法律の整備が行われた。

さらに、第2次勧告で見直すべきとされた条項の中から、「地方からの提言等に係る事項」、「通知・届出・報告、公示・公告等」及び「職員等の資格・定数等」の3分野(1,212条項)を対象に、許容類型に該当せず見直すべきとされたもの(363条項)について、整理、検討が行われた結果、「義務付け・枠付けの更なる見直しについて」(平成23年11月29日)が閣議決定された(第3次見直し。291条項)。このうち、法律の改正により措置すべき事項については、第3次一括法案(地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案)が第180回国会に提出されたが、第181回国会に継続審議となり、衆議院の解散に伴い廃案となった。

これまでの3次にわたる見直しにより、第2次勧告の見直し検討対象4,076条項のうち、約6割の2,428条項が検討の対象となり、また、地方からの提言等に係る事項は全て検討の対象とする等、地方分権改革推進委員会で検討された事項の着実な見直しが行われ、地方公共団体の自主性の強化、自由度の拡大が図られている。

第1次一括法及び第2次一括法に係る義務付け・枠付けの見直しについては、平成24年4月までに全て施行され、これまで法令により全国画一的に定められていた公営住宅の入居・整備基準、道路の構造に関する基準、保育所の設備・運営に関する基準など施設・公物設置管理の基準等を条例に委任することにより、地域の実情や住民のニーズ等を反映した地方独自の基準の制定が進んでいる。

(2)事務・権限の移譲

地方分権改革においては、住民に最も身近な行政主体である基礎自治体に事務事業を優先的に配分し、基礎自治体が地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を担えるようにすることが必要不可欠である。

これまでの見直しでは、地方分権改革推進委員会第1次勧告(平成20年5月28日)において、基礎自治体へ権限移譲すべきとされた全ての事務(384条項)について、「補完性の原則」に基づき、検討が行われ、「地域主権戦略大綱」が閣議決定された(251条項)。この「地域主権戦略大綱」に基づく第2次一括法等が成立したことにより、所要の法令の整備が行われ、その多くは、平成24年4月から施行されている(22条項は平成25年4月施行)。また、これらの事項については地方交付税や国庫補助負担金などにより所要の財源措置を行っている。

また、国から地方への事務・権限の移譲については、これまでも必要な取組を行ってきたところであるが、今後、これまでの経緯や地方の声等も踏まえ、その在り方を検討していくこととしている。

(3)地方税財源の充実確保

「2 社会保障・税一体改革」のとおり、税制抜本改革法案が成立し、引上げ分の消費税収(国・地方)については、「制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用」(「社会保障四経費」)に則った範囲の社会保障給付における国と地方の役割分担に応じた配分を実現することとし、引上げ分の消費税収の地方分は、消費税率換算で、平成26年4月から0.92%分、平成27年10月から1.54%分とされた。

この地方分は、地方消費税の充実を基本とするが、財政力の弱い地方公共団体における必要な社会保障財源の確保の観点から、併せて消費税の交付税法定率分の充実を図ることとし、0.92%分については地方消費税分を0.7%、消費税の交付税法定率分を0.22%と、1.54%分については地方消費税分を1.2%、消費税の交付税法定率分を0.34%とすることとされている。

なお、現行分の地方消費税を除き、地方分の消費税収については、その使途を明確にし、官の肥大化には使わず全て国民に還元し、社会保障財源化することとされている。

また、地方公共団体の自主性・自立性を一層高めるとともに、税制を通じて、これまで以上に地方公共団体が地域の実情に対応した政策を展開できるようにするため、「地方税法」で定める特例措置について、国が一律に定めていた内容を地方公共団体が自主的に判断し、条例で決定できるようにする仕組み(「地域決定型地方税制特例措置(通称:わがまち特例)」)を平成24年度に導入した。

平成25年度以降については、地方分権改革を一層推進する観点から、国と地方の役割分担の大幅な見直しと併せて、それぞれの担う役割に見合った形へと国・地方間の税財源の配分の在り方を見直す必要がある。

また、社会保障・税一体改革における地方消費税の充実と併せて、地方法人課税の在り方を見直すことなどにより、税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系を構築することが必要である。

地方法人特別税及び地方法人特別譲与税については、地方消費税率の引上げ時期を目途に、抜本的に見直すとともに、地方法人課税の在り方を見直すことにより地域間の税源偏在の是正の方策を講ずることとしており、今後、地方公共団体の意見等も踏まえつつ、国・地方の税制全体を通じて幅広く検討を進めることとしている。

(4)地方自治制度の見直し

地方自治制度の見直しについては、内閣総理大臣の諮問機関である第30次地方制度調査会が平成23年8月24日に発足し、諮問事項である議会の在り方を始めとする住民自治の在り方、我が国の社会経済、地域社会などの変容に対応した大都市制度の在り方及び東日本大震災を踏まえた基礎自治体の担うべき役割や行政体制の在り方について審議が行われている。

同調査会では、まず総務省で検討されていた地方自治法改正案を早急に審議することとされ、平成23年12月15日に、「地方自治法改正案に関する意見」がとりまとめられた。

この意見を踏まえ、議会の通年会期制の創設、再議制度の対象の拡大、直接請求制度における署名数要件の緩和や、国等による違法確認訴訟制度の創設等を内容とする「地方自治法の一部を改正する法律案」が第180回国会に提出され、平成24年8月29日に成立した。

同調査会では、平成24年1月以降、大都市制度の在り方について審議が進められ、平成24年12月20日に、学識経験者を中心に構成された専門小委員会において、「大都市制度についての専門小委員会中間報告について」がとりまとめられた。

平成25年1月以降、残された諮問事項である基礎自治体の在り方について審議が行われている。

今後、同調査会においては、委員の任期である平成25年8月23日までに、大都市制度の在り方及び基礎自治体の在り方について、答申のとりまとめに向けた審議が引き続き行われる予定である。

なお、同調査会における審議内容のうち、特別区の他地域への適用に関しては、「大都市地域における特別区の設置に関する法律案」が議員提出法案として第180回国会に提出され、平成24年8月29日に成立した。

同法により、道府県の区域内において市町村を廃止し、特別区を設けるための手続等が定められた。

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