画像に関するアクセシビリティ対応について
図やグラフなどの画像の内容の詳細については、総務省自治財政局財務調査課にお問い合わせください。
電話番号:03-5253-5111(内線5649)

平成26年版
地方財政白書
(平成24年度決算)

3 地方分権改革の推進

政府では、住民に対する行政サービスの向上や行政の効率化を図るとともに、地方が自らの発想で特色を持った地域づくりができ、その地域に合った行政を行うことができるよう、国と地方の役割分担の見直しを中心とした地方分権改革の推進に取り組んでいる。

(1)地方分権改革の概況

地方分権改革は、内閣総理大臣を本部長とし、全閣僚を構成員とする地方分権改革推進本部が、内閣としての政策検討機能を担い、地方分権改革担当大臣の下に開催されている地方分権改革有識者会議が、調査審議機能を担うという体制の下に推進されている。

地方分権改革推進委員会の勧告事項については、義務付け・枠付けの見直しや基礎自治体への権限移譲の取組を進めたところであり、残された課題である国から地方への事務・権限の移譲等に加え、第30次地方制度調査会答申で示された都道府県から指定都市への移譲等についての第4次一括法案を第186回国会に提出することにより、一区切りを迎えることとなる。

このように地方分権改革が新たな局面を迎えることから、平成26年度前半に地方分権改革の総括と展望を取りまとめ、今後の改革の方向性を明らかにし、改革に更に取り組むとともに、国民が改革の成果を実感できる情報発信を展開する。

(2)規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)

地方分権改革を進めるためには、これまで国が一律に決定し地方公共団体に義務付け・枠付けてきた基準、施策等を、地方公共団体が条例の制定等により自ら決定し、実施するように改めていく必要がある。

これまでの義務付け・枠付けの見直しでは、地方分権改革推進委員会第2次勧告(平成20年12月8日。以下「第2次勧告」という。)で見直しの検討対象とされた4,076 条項について、同委員会第3次勧告(平成21年10月7日)で特に問題があると提示された「施設・公物設置管理の基準」、「協議、同意、許可・認可・承認」及び「計画等の策定及びその手続」の3分野(1,216条項)のうち、許容類型に該当せず見直すべきとされたもの(889条項)について整理、検討が行われた結果、「地方分権改革推進計画」(平成21年12月15日)及び「地域主権戦略大綱」(平成22年6月22日)が閣議決定された(第1次・第2次見直し。636条項)。

また、第2次勧告で示された条項以外についても、地方債協議制度や地方から国等への寄附禁止規定などの見直しが行われ、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第37号。第1次一括法)、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第105号。第2次一括法)の成立により、所要の法律の整備が行われた。

また、第2次勧告で見直しの検討対象とされた4,076条項について、「地方からの提言等に係る事項」、「通知・届出・報告、公示・公告等」及び「職員等の資格・定数等」の3分野(1,212条項)のうち、許容類型に該当せず見直すべきとされたもの(363条項)について整理、検討が行われた結果、「義務付け・枠付けの更なる見直しについて」(平成23年11月29日)が閣議決定された(第3次見直し。291条項)。さらに、「義務付け・枠付けの第4次見直しについて」(平成25年3月12日閣議決定)において、第2次勧告で見直しの検討対象とされた4,076条項のうちこれまでの見直しで対象とならなかった1,648条項、これまで検討したものの見直しに至らなかった事項、新たに設けられた規定等地方分権改革推進委員会の勧告の対象とならなかった事項について、地方からの提案を受けた見直しが決定された(第4次見直し。48事項)。

第3次見直し及び第4次見直しに係る事項については、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成25年法律第44号。第3次一括法)等の成立により、所要の法律の整備が行われた。

義務付け・枠付けの見直しにより、これまで法令により全国画一的に定められていた公営住宅の入居・整備基準、道路の構造に関する基準、保育所の設備・運営に関する基準など施設・公物設置管理の基準等を条例に委任することにより、地域の実情や住民のニーズ等を反映した地方独自の基準の制定が進んでいる。

(3)事務・権限の移譲

地方分権改革においては、地方公共団体、特に住民に最も身近な行政主体である基礎自治体に事務事業を優先的に配分し、地方公共団体が地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を担えるようにすることが必要不可欠である。

都道府県から基礎自治体への事務・権限の移譲については、第2次見直しにおいて、地方分権改革推進委員会第1次勧告(平成20年5月28日)で示された82事項について検討が行われ、63事項の見直しが決定された。これを踏まえた第2次一括法の成立により、所要の法律の整備が行われた。また、第4次見直しにおいて、地方からの提案を受け、23事項について検討が行われ、9事項の見直しが決定された。これを踏まえた第3次一括法の成立により、所要の法律の整備が行われた。これらの事項については、地方交付税や国庫補助負担金などにより所要の財源措置を行った。

また、国から地方公共団体への事務・権限の移譲等及び都道府県から指定都市への事務・権限の移譲等については、「国から地方公共団体への事務・権限の移譲等に関する当面の方針について」(平成25年9月13日地方分権改革推進本部決定)により見直しの検討対象とされた96事項(地方が取り下げた事項を除く)及び第30次地方制度調査会答申(平成25年6月25日)により見直しの検討対象とされた64事項について整理、検討が行われた結果、「事務・権限の移譲等に関する見直し方針について」が平成25年12月20日に閣議決定された。

この見直し方針の内容は、次のとおりであり、法律改正事項については、第4次一括法案を第186回国会に提出することを基本としている。

ア 国から地方公共団体への移譲等(66事項)

(ア)移譲する事務・権限(48事項)

例:<1>看護師など各種資格者の養成施設等の指定・監督等、<2>商工会議所の定款変更の認可、<3>自家用有償旅客運送の登録・監査等、<4>直轄道路・河川に係る整備等に関する計画、工事及び管理の実施等

(イ)移譲以外の見直しを行う事務・権限(18事項)

例:<1>ハローワークの求人情報の地方公共団体への提供、<2>農地転用の許可等

イ 都道府県から指定都市への移譲等(33事項)

(ア)移譲する事務・権限(29事項)

例:<1>県費負担教職員の給与等の負担、県費負担教職員の定数の決定、市町村立小中学校等の学級編制基準の決定、<2>病院の開設許可、<3>都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(都市計画区域マスタープラン)に関する都市計画の決定

(イ)移譲以外の見直しを行う事務・権限(4事項)

例:<1>パスポートの発給申請受理・交付、<2>農地転用の許可等

(なお、上記の他に、現行法により指定都市が処理することができる事務・権限が8事項ある。)

ウ 移譲に伴う財源措置その他必要な支援

移譲された事務・権限が円滑に執行できるよう、地方税、地方交付税や国庫補助負担金等により、確実な財源措置を講ずるとともに、マニュアルの整備や技術的助言、研修や職員の派遣などの必要な支援を実施する。

(4)地方税財源の充実確保

地方分権を推進し、魅力あふれる地域を創ることができるよう、その基盤となる地方税の充実確保に努めながら、地域間の税源の偏在性が小さく、税収が安定的な地方税体系を構築する必要がある。

このような観点から、地方税制において以下の改正を行うこととしている。

ア 地方消費税の充実

「消費税率及び地方消費税率の引上げとそれに伴う対応について」において、税制抜本改革法に基づき、経済状況等を総合的に勘案した検討を行った結果、消費税率(国・地方)については、平成26年4月1日に5%から8%へ引き上げることが確認された。

引上げ分の消費税収の地方分は、消費税率換算で、平成26年4月1日から0.92%分で、この地方分は、地方消費税の充実を基本とするが、財政力の弱い地方公共団体における必要な社会保障財源の確保の観点から、併せて消費税の交付税法定率分の充実を図ることとし、0.92%分については地方消費税分を0.7%、消費税の交付税法定率分を0.22%とすることとされている。

また、現行分の地方消費税を除き、地方分の消費税収については、その使途を明確にし、官の肥大化には使わず全て国民に還元し、社会保障財源化することとされている。

イ 地方法人課税の偏在是正

税制抜本改革法において、地方法人特別税・譲与税制度の抜本的な見直しを含む、地方法人課税の在り方を見直すこととされたことを受け、平成24年9月に地方財政審議会に「地方法人課税のあり方等に関する検討会」を設け、専門的な立場からの検討が進められ、平成25年11月に、法人住民税法人税割の一部交付税原資化等の提言が盛り込まれた報告書が取りまとめられた。その結果、平成26年度において以下の措置を講ずることとした。

消費税率(国・地方)8%段階において、地域間の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小を図るため、法人住民税法人税割の一部を国税化(法人税割の税率を引き下げ、その引下げ分に相当する地方法人税(国税)を創設)し、地方交付税原資化(地方法人税収の全額を交付税特会に直接繰り入れ)する。

この偏在是正により生じる財源(不交付団体の減少分)を活用して地方財政計画に歳出を計上する。

また、地方法人特別税の規模を1/3縮小し、法人事業税に復元する。

なお、「平成26年度税制改正大綱」(平成25年12月12日 自由民主党・公明党)においては、「消費税率10%段階においては、法人住民税法人税割の地方交付税原資化をさらに進める。また、地方法人特別税・譲与税を廃止するとともに現行制度の意義や効果を踏まえて他の偏在是正措置を講ずるなど、関係する制度について幅広く検討を行う。」とされている。

(5)地方自治制度の見直し

地方自治制度の見直しについては、平成25年6月に第30次地方制度調査会「大都市制度の改革及び基礎自治体の行政サービス提供体制に関する答申」が内閣総理大臣に提出された。同答申は、人口減少社会において、人々の暮らしを支え、経済をけん引していく核となる都市やその圏域を戦略的に形成し、国民がどこでも安心して快適な暮らしを営んでいけるようにするための制度の見直し等を提言したものである。

具体的には、都道府県から指定都市の事務移譲等による「二重行政」の解消や指定都市及び都道府県の事務の処理について連絡調整を行うために必要な協議を行うための協議会の設置、区の役割を拡充するため、条例により区の所管する事務を定める「都市内分権」、中核市・特例市制度の統合など大都市制度の見直し、新たな広域連携の推進策として、地方圏において地域の中枢的な役割を果たすべき都市である「地方中枢拠点都市」を中心とした連携、市町村間の広域連携が困難な市町村に対する都道府県による補完、三大都市圏における規模・能力が一定以上ある都市間の双務的な役割分担の促進等について提言されている。

ページトップへ戻る