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平成28年版
地方財政白書
(平成26年度決算)

第2部 平成27年度及び平成28年度の地方財政

1 平成27年度の地方財政

(1)平成27年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

「平成27年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成27年1月12日閣議了解、平成27年2月12日閣議決定された。この中で、以下の平成26年度の経済動向、平成27年度の経済見通し及び平成27年度の経済財政運営の基本的態度が示された。

(ア)平成26年度の経済動向

平成26年度の我が国経済をみると、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」の一体的推進により、緩やかな回復基調が続いているものの、個人消費等に弱さがみられ、年度前半には実質GDP成長率がマイナスとなった。

こうした経済動向の背景には、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減や夏の天候不順の影響に加え、輸入物価の上昇、さらには、消費税率引上げの影響を含めた物価の上昇に家計の所得が追い付いていないことなどがあると考えられる。こうした状況の下、経済の好循環を確かなものとし、地方に経済成長の成果が広く行き渡るようにするため、「緊急経済対策」を取りまとめた。雇用・所得環境が改善するなか、経済対策や政労使会議を含む各種政策の効果もあって、景気は緩やかに回復していくことが見込まれる。

物価の動向をみると、好循環が進展する中で、消費税率の引上げの影響もあって前年度よりも高い伸びとなっているが、原油価格の低下等により物価上昇のテンポは若干緩やかとなり、消費者物価(総合)は3.2%程度の上昇と見込まれる。

この結果、平成26年度の実質国内総生産(実質GDP)成長率はマイナス0.5%程度、名目国内総生産(名目GDP)成長率は1.7%程度と見込まれる。

(イ)平成27年度の経済見通し

平成27年度の我が国経済は、「緊急経済対策」など、「平成27年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に示された政策の推進や政労使の合意を踏まえた取組等により、実質雇用者報酬の伸びがプラスとなるなど雇用・所得環境が引き続き改善し、好循環が更に進展するとともに、交易条件も改善する中で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれる。

物価については、原油価格低下の影響はあるものの、日本銀行の「量的・質的金融緩和」の効果等もあり、消費者物価上昇率は1.4%程度となり、GDPデフレーターも上昇が見込まれるなど、デフレ脱却に向け着実な進展が見込まれる。

この結果、平成27年度の実質GDP成長率は1.5%程度、名目GDP成長率は2.7%程度と見込まれる。

なお、先行きのリスクとしては、海外景気の下振れや金融資本・商品市場の動向等に留意する必要がある。

(ウ)平成27年度の経済財政運営の基本的態度

今後の経済財政運営に当たっては、引き続き、「三本の矢」からなる経済政策(「アベノミクス」)を一体的に推進することにより、経済の好循環を確かなものとする。このため、政労使の合意を踏まえた取組や成長戦略を着実に実行することにより、好調な企業収益を、設備投資の増加や賃上げ・雇用環境の更なる改善等につなげ、経済の好循環の更なる拡大を実現するとともに、経済の脆弱な部分に的を絞り、かつスピード感を持って「緊急経済対策」を実施し、地方にアベノミクスの成果を広く行き渡らせていく。

また、強い経済の実現による税収の増加等と、聖域なき徹底的な歳出削減を一層加速させることにより、経済再生が財政健全化を促し、財政健全化の進展が経済再生の進展に寄与するという好循環を作り出す。このため、平成27年度予算において、裁量的経費のみならず義務的経費も含め、聖域を設けずに大胆に歳出を見直し、無駄を最大限縮減し、民需主導の持続的な経済成長を促す施策に重点化を図る。平成27年度のPB赤字対GDP比半減目標の達成が見込まれる中で、引き続き、デフレ脱却、経済再生への取組を進めるとともに、財政健全化の旗を降ろすことなく、PBを2020年度(平成32年度)までに黒字化するという目標を堅持する。平成27年度予算等を踏まえて、経済再生と財政健全化の両立を実現すべく、2020年度(平成32年度)の黒字化目標の達成に向けた具体的な計画を平成27年の夏までに策定する。

日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する。

イ 国の予算

政府は、「平成27年度予算編成の基本方針」(平成26年12月27日閣議決定)及び「平成27年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に基づいて平成27年1月14日、平成27年度予算政府案を閣議決定した。

平成27年度予算は、以下のような基本的な考え方により編成された。

(ア)平成27年度予算の基本的な考え方

a 歳出の重点化・効率化と財政の信認確保

東日本大震災からの復興を加速するとともに、「経済の好循環」の更なる拡大を実現し本格的な成長軌道への移行を図りつつ中長期の発展につなげる取組―地方の創生、女性の活躍推進、教育の再生、イノベーションの促進とオープンな国づくり、安全・安心と持続可能な基盤確保―を強力に推進する。

平成27年度予算において、裁量的経費のみならず義務的経費も含め、聖域を設けずに大胆に歳出を見直し、無駄を最大限縮減し、民需主導の持続的な経済成長を促す施策の重点化を図る。このため「新しい日本のための優先課題推進枠」において、重点化施策を厳に絞り込んで措置する。

民間需要や民間のイノベーションの誘発効果が高いもの、緊急性が高いもの、規制改革と一体として講じるものを重視し、メリハリのついた予算とする。

デフレ脱却、経済再生への取組を進めつつ、平成27年度のPB赤字対GDP比半減目標を着実に達成するよう最大限努力する。

このため、国の一般会計において、非社会保障経費については、全体としては平成26年度に比べてできる限り抑制し、社会保障経費についても、いわゆる「自然増」も含め聖域なく見直し、効率化・適正化を図り、平成26年度からの増加を最小限に抑える。その際、消費税率10%引上げ時に想定されていた施策について消費税率8%を前提に優先順位付けを行う。

これらの取組により、平成27年度予算において「中期財政計画」に基づき、国の一般会計の基礎的財政収支をできる限り改善させる。また、新規国債発行額について、平成26年度予算に比し着実に減少させる。

b 主な歳出分野における取組

国の一般会計歳出に占める割合が高い分野における取組の基本的な考え方は以下のとおりである。他分野においても、経済社会構造の変化に対応しつつ、重点化・効率化を進めていく。

(a) 社会保障

世界に冠たる社会保障を次世代にしっかり引き渡していくため、中期的に受益と負担の均衡を目指しながら、持続可能な社会保障制度の確立に向けて着実に取組を進める。

消費税率10%の実現は平成29年4月となるが、子育て支援、医療、介護など社会保障の充実については、可能な限り、予定通り実施する。

医療・介護を中心に、社会保障給付について、都道府県ごとの医療提供体制と地域の医療費の差にも着目した医療費の適正化の推進、介護職員の処遇改善等の推進と経営状況等を踏まえた介護報酬の適正化、協会けんぽに対する国庫補助の安定化と超過準備金が生じた場合の特例措置、生活困窮者に対する自立支援の強化と生活保護の適正化に取り組むなど、徹底した効率化・適正化を行うことで極力全体の水準を抑制する。

また、消費税率8%への引上げによる財源を活用し、子育て支援など社会保障の充実を図りつつ、高齢世代への給付が中心となっている構造を見直し、全世代型の社会保障への転換を進める。

(b) 社会資本整備

社会資本整備については、厳しい財政状況の下、国民生活の将来を見据えて、既設施設の機能が効果的に発揮されるよう計画的な整備を推進する。その際、国際競争力の強化、地域の活性化、国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)、防災・減災対策、老朽化対策などの諸課題への一層の重点化を図る。

また、選択と集中を徹底するほか、インフラの維持管理・更新に係る中長期的なコストの縮減・平準化や、現場の担い手の確保・育成を図るとともに、PPP/PFIの推進により民間活力の発揮を図る。

(c) 地方財政

経済再生の進展を踏まえて、リーマンショック後の危機対応モードから平時モードへの切替えを進めるため、地方の税収動向等も踏まえ歳出特別枠や地方交付税の別枠加算を見直すなど、歳入面・歳出面における改革を進め、できる限り早期に財源不足の解消を目指し、財政の健全化を図る。

国の歳出の取組と基調を合わせ、地方財政計画の計上の見直しを行いつつ、必要な課題の財源を確保することでメリハリを効かせ、歳出の効率化・重点化を図るとともに、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源の総額については、平成26年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保する。

(d) 行政の徹底的な効率化

マイナンバー制度の導入に向けて準備を進めるとともに、行政のICT化と業務改革を進める。

国家公務員の構造的な人件費の増加の抑制や、国の行政機関の機構・定員の厳格な管理により、総人件費の抑制を図るとともに、地方公共団体に対し、国の給与制度の総合的見直しを踏まえ、地域民間給与のより的確な反映など適切な見直し等を要請する。

各府省庁の事業について、基金方式は真に必要な事業に絞り込むとともに基金の余剰資金の国庫返納に努めることを含め、毎年度のPDCAサイクルの下、行政改革推進会議の指摘事項を的確に反映し、効果的・効率的な予算を実現する。

このような方針に基づいて編成された平成27年度の一般会計予算案の規模は96兆3,420億円で、前年度当初予算と比べると4,596億円増加(0.5%増)となっており、基礎的財政収支対象経費は72兆8,912億円で、前年度当初予算と比べると2,791億円増加(0.4%増)となった。

また、東日本大震災復興特別会計の予算規模は3兆9,087億円で、前年度当初予算(3兆6,464億円)と比べると2,623億円増加(7.2%増)となった。

財政投融資計画の規模は14兆6,215億円で、前年度計画額と比べると1兆5,585億円減少(9.6%減)となった。

なお、平成27年度当初予算案は、平成27年2月12日に国会に提出され、4月9日に成立した。

(2)地方財政計画

平成27年度においては、通常収支分について、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、地方創生に対応するために必要な経費を計上するとともに、社会保障の充実分等を含め、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行う一方、国の取組と歩調を合わせて歳出抑制を図ることとした。また、歳入面においては、「経済財政運営と改革の基本方針2014」(平成26年6月24日閣議決定。以下「基本方針2014」という。)及び「中期財政計画」に沿って、交付団体を始め地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額を適切に確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとした。

また、東日本大震災分については、復旧・復興事業及び全国防災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとした。

なお、地方財政審議会からは、平成26年6月5日に「地域の元気づくりに向けた地方税財政改革についての意見」及び平成26年12月26日に地方一般財源総額の確保や地方創生への対応などを含む「今後目指すべき地方財政の姿と平成27年度の地方財政への対応についての意見」(附属資料参照)が述べられた。

以上を踏まえ、次の方針に基づき平成27年度地方団体の歳入歳出総額の見込額を策定した。

ア 通常収支分

(ア)地方税制については、経済再生と財政健全化を両立するため、消費税率(国・地方)10%(地方消費税率(消費税率換算)2.2%)への引上げ等の施行日を平成27年10月1日から平成29年4月1日に変更することにあわせ、平成27年度地方税制改正において、現下の経済情勢等を踏まえ、デフレ脱却・経済再生をより確実なものにするとともに、地方創生に取り組むため、成長志向に重点を置いた法人税改革としての法人事業税の所得割税率引下げ・外形標準課税の拡大、ふるさと納税の拡充及び手続の簡素化等のための税制上の措置を講じる。また、自動車取得税におけるエコカー減税の見直しや軽自動車税へのグリーン化特例の導入など車体課税の見直し等のための税制上の措置を講じる。

(イ)地方交付税原資の安定性の向上と充実を図るため、所得税、法人税及び酒税の地方交付税率を見直すとともに、たばこ税を地方交付税の対象税目から除外する。

(ウ)地方交付税率の見直しを実施してもなお生じる地方財源不足見込額については、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じる。

a 財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等により対処することとした残余については、平成26年度に講じた平成28年度までの制度改正に基づき、国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については、「地方財政法」第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

b これに基づき、平成27年度の財源不足見込額7兆8,205億円については、次により補填する。

(a) 地方交付税については、国の一般会計加算により2兆1,155億円(うち「地方交付税法」附則第4条の2第2項の加算額3,926億円、平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)及び平成27年1月12日付け総務・財務両大臣覚書第7項に定める平成27年度における「乖離是正分加算額」400億円、地方税収の状況を踏まえた別枠の加算額2,300億円並びに臨時財政対策特例加算額1兆4,529億円)増額する。

また、交付税特別会計剰余金1,000億円を活用するとともに、「地方公共団体金融機構法」附則第14条の規定により財政投融資特別会計に帰属させる地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金3,000億円を財政投融資特別会計から交付税特別会計に繰り入れる。

(b) 「地方財政法」第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を4兆5,250億円発行する。

(c) 建設地方債(財源対策債)を7,800億円増発する。

c 上記の結果、平成27年度の地方交付税については、16兆7,548億円(前年度比1,307億円、0.8%減)を確保する。

d 交付税特別会計の借入金については、「特別会計に関する法律」附則第4条第1項に基づき、3,000億円の償還を実施する。

(エ)地方債については、極めて厳しい地方財政の状況の下で、地方財源の不足に対処するための措置を講じ、また、地方公共団体が防災・減災対策、公共施設の老朽化対策及び地域の活性化への取組を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

(オ)地域経済の基盤強化や雇用創出を図りつつ、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 地方が自主性・主体性を最大限発揮して地方創生に取り組み、地域の実情に応じたきめ細かな施策を可能にする観点から、一般行政経費に新たに「まち・ひと・しごと創生事業費」を1兆円計上している。

b 投資的経費に係る地方単独事業費については、公共施設等総合管理計画に基づき実施する公共施設の集約化・複合化等のために必要な経費として、新たに「公共施設等最適化事業費」を1,000億円計上するとともに、引き続き喫緊の課題である防災・減災対策に取り組めるよう「緊急防災・減災事業費」を5,000億円(前年度同額)確保することとし、全体で前年度に比し0.9%増額し、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

c 消費税・地方消費税の引上げによる増収分を活用した社会保障の充実として、子ども・子育て支援、医療・介護サービスの提供体制改革、医療・介護保険制度改革及び難病等に係る公平かつ安定的な制度の確立に係る措置を講じることとしており、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

d 一般行政経費に係る地方単独事業費については、社会保障の充実分等を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

e 消防力の充実、防災・減災対策等の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

f 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(カ)地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行う。

(キ)地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減、事務事業の見直しや民間委託など引き続き行財政運営全般にわたる改革を推進する。

イ 東日本大震災分

(ア)復旧・復興事業

a 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、以下に掲げる地方負担分等の全額を措置するため、5,898億円を確保する。

  • 直轄・補助事業に係る地方負担分4,215億円
  • 地方単独事業分953億円
  • 税制上の臨時的特例措置等に伴う減収分730億円

b 地方債については、復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

c 直轄事業負担金及び補助事業費、「地方自治法」に基づく職員の派遣、投資単独事業等の地方単独事業費及び「地方税法」等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出等について所要の事業費を計上する。

(イ)全国防災事業

a 地方税の臨時的な税制上の措置(平成25年度〜平成35年度)による地方税の収入見込額として708億円を計上するとともに、一般財源充当分として275億円を計上する。

b 地方債については、全国防災事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

c 国の全国防災対策費に係る直轄事業負担金及び補助事業費等について、所要の事業費を計上する。

以上のような方針に基づいて策定した平成27年度の地方財政計画の規模は、通常収支分は85兆2,710億円で、前年度と比べると1兆9,103億円増加(2.3%増)となり、東日本大震災分は、復旧・復興事業が2兆60億円で、前年度と比べると443億円増加(2.3%増)、全国防災事業が4,905億円で、前年度と比べると2,384億円増加(94.6%増)となった。

通常収支分についてみると、歳入では、地方税は37兆4,919億円で、前年度と比べると2兆4,792億円増加(7.1%増)(道府県税16.2%増、市町村税0.5%増)、地方譲与税は2兆6,854億円で、前年度と比べると710億円減少(2.6%減)、地方特例交付金は1,189億円で、前年度と比べると3億円減少(0.3%減)、地方交付税は16兆7,548億円で、前年度と比べると1,307億円減少(0.8%減)、国庫支出金は13兆733億円で、前年度と比べると6,242億円増加(5.0%増)、地方債(普通会計分)は9兆5,009億円で、前年度と比べると1兆561億円減少(10.0%減)となった。

歳出では、給与関係経費は20兆3,351億円で、前年度と比べると63億円減少(0.0%減)となった。なお、地方財政計画における職員数については、4,020人の純減としている。一般行政経費は35兆589億円で、前年度と比べると1兆8,395億円増加(5.5%増)となり、このうち一般行政経費にかかる地方単独事業費は13兆9,964億円で、前年度と比べると428億円増加(0.3%増)となった。公債費は12兆9,512億円で、前年度と比べると1,233億円減少(0.9%減)、投資的経費は11兆10億円で、前年度と比べると25億円減少(0.0%減)となった。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は5兆2,758億円で、前年度と比べると479億円増加(0.9%増)となった。

東日本大震災分(復旧・復興事業)についてみると、歳入では、震災復興特別交付税は5,898億円で、前年度と比べると175億円増加(3.1%増)、国庫支出金は1兆3,717億円で、前年度と比べると364億円増加(2.7%増)などとなった。歳出では、一般行政経費は5,723億円で、前年度と比べると373億円増加(7.0%増)、投資的経費は1兆3,874億円で、前年度と比べると31億円減少(0.2%減)などとなった。

東日本大震災分(全国防災事業)についてみると、歳入では国庫支出金は1,524億円で、前年度と比べると788億円増加(107.1%増)、地方債は2,397億円で、前年度と比べると1,414億円増加(143.8%増)などとなった。歳出では公債費は983億円で、前年度と比べると181億円増加(22.6%増)、投資的経費は3,922億円で、前年度と比べると2,203億円増加(128.2%増)となった。

また、平成27年度の地方債計画の規模は、通常収支分が11兆9,242億円(普通会計分9兆5,009億円、公営企業会計等分2兆4,233億円)で、前年度と比べると9,059億円減少(7.1%減)となった。東日本大震災分は、復旧・復興事業が425億円(普通会計分355億円、公営企業会計等分70億円)で、前年度と比べると118億円減少(21.7%減)となり、全国防災事業が2,397億円(普通会計分)で、前年度と比べると1,414億円増加(143.8%増)となった。

(3)平成27年度補正予算

ア 平成27年度補正予算(第1号)

平成27年度補正予算(第1号)は、平成27年12月18日に閣議決定、平成28年1月4日に第190回国会に提出され、1月20日に成立した。

この補正予算においては、歳出面で、「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」(平成27年11月26日一億総活躍国民会議決定。以下「緊急対策」という。)及び「総合的なTPP関連政策大綱」(平成27年11月25日TPP総合対策本部決定)に沿って、一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策等1兆1,646億円、TPP関連政策大綱実現に向けた施策3,403億円、災害復旧・防災・減災事業5,169億円等を追加計上するほか、既定経費の減額1兆4,467億円の修正減少額が計上された。また、歳入面で、税収1兆8,990億円、前年度剰余金受入2兆2,136億円等が追加計上された。

この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成27年度当初予算に対し、3兆3,213億円増加し、99兆6,633億円となった。

イ 平成27年度補正予算(第1号)に係る財政措置等

(ア)通常収支分

この補正予算においては、国税の増収見込み等に伴い地方交付税の増が見込まれるとともに、歳出の追加に伴う地方負担が生じることから、以下のとおり財政措置を講じることとした。

a 地方交付税

この補正予算において、「地方交付税法」第6条第2項の規定に基づき増額される平成27年度分の地方交付税の額1兆3,113億円(平成26年度精算分6,372億円、平成27年度国税の自然増に伴うもの6,741億円)については、平成27年度において普通交付税の調整額の復活に要する額469億円を交付することとしたうえで、残余の額1兆2,644億円について平成28年度分として交付すべき地方交付税の総額に加算して交付する措置を講じる。

b 追加の財政需要

(a) この補正予算により平成27年度に追加される投資的経費に係る地方負担額については、原則として、地方負担額の100%まで地方債を充当できることとし、後年度における元利償還金の50%(当初における地方負担額に対する算入率が50%を超えるものについては当初の算入率)を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、原則として、単位費用により措置する。

(b) 地方債の対象とならない経費については、地方財政計画に計上された追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応する。

(イ)東日本大震災分

この補正予算においては、地方負担の追加は生じない。

ウ 地方公務員の給与改定

平成27年の国家公務員の給与改定については、平成27年12月4日の閣議決定(公務員の給与改定に関する取扱いについて)において、その取扱い方針が決定されたが、地方公務員の給与改定については、「地方公務員法」の趣旨に沿って適切に対応するとともに、その実施に当たっては、国における給与法の改正の措置を待って行うよう、「地方公務員の給与改定等に関する取扱いについて」(平成27年12月4日付け総務副大臣通知)で通知した。

なお、地方財政計画ベースの所要額は、1,540億円程度、一般財源ベースで1,350億円程度と見込まれたが、当該一般財源所要額については、地方財政計画上の追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応することとし、新たな財源措置は行わないこととした。

(4)地方公共団体の予算

平成27年度の地方公共団体の普通会計予算(9月補正後)の状況は、第51表のとおりであり、普通会計予算の総額(都道府県及び市町村(一部事務組合等を除く)の単純合計)は、前年度と比べると1.7%増となっている。

主な内訳をみると、歳入では、地方税が前年度と比べると5.5%増、地方譲与税が3.4%減、地方交付税が0.8%減、国庫支出金が2.4%増、地方債が1.7%減となっている。一方、歳出では、人件費が前年度と比べると0.7%増、扶助費が4.5%増、普通建設事業費が2.9%増となっている。

(5)地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

(ア)通常収支分

地方公営企業については、経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図る必要がある。

このため、平成27年度においては、次のような措置を講じることとした。

公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆5,397億円(前年度2兆5,612億円)を計上する。

地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆4,233億円(前年度2兆2,731億円)を計上する。

各事業における地方財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

a 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入する。

b 病院事業については、地域の医療提供体制の確保等の観点から、平成27年3月までに新たな公立病院改革ガイドラインを策定する予定であり、また、引き続き公立病院の再編等を推進するため、所要の地方財政措置を講じる。

c 地方公営企業への公営企業会計の適用が円滑に実施されるよう、平成27年度から平成31年度までの5年間、公営企業会計の適用に要する経費について公営企業債を措置することとし、下水道事業及び簡易水道事業の元利償還金については、その一部を後年度において基準財政需要額に算入する。

d 長期的な収支見通しに基づき安定的な経営を行うことができるよう、財政融資資金に係る公営企業債のうち上下水道事業等について、施設の耐用年数等を踏まえて償還年限を延長する。

(イ)東日本大震災分

a 復旧・復興事業

地方公営企業に係る復旧・復興事業については、一般会計から公営企業会計への繰出基準の特例を設け、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととし、当該繰出金に対しては、その全額を震災復興特別交付税により措置することとしており、地方財政計画において263億円を計上する。また、復旧・復興事業に係る地方債については、地方債計画において公営企業会計等分70億円を計上する。

b 被災施設借換債

旧公営企業金融公庫資金(地方公共団体金融機構資金も含む。)によって取得した施設が被災により滅失し繰上償還(補償金が課されない強制繰上償還)を行う場合、地方公共団体金融機構資金による借換債を発行可能とし、被災施設借換債15億円を計上する。

イ 国民健康保険事業

国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア)都道府県が、地域の実情に応じて、都道府県内の市町村間の医療費水準等の不均衡の調整や市町村国保財政の共同事業拡大の円滑な推進、地域の特別事情への対応のため交付する都道府県調整交付金(給付費等の9%分)については、その所要額(6,816億円)について地方交付税措置を講じる。

(イ)国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部(都道府県3/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(4,618億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用(2,642億円)に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(1,321億円)について地方交付税措置を講じる。なお、当該事業については、消費税財源を活用して、平成27年度から拡充されている。

(エ)高額医療費共同事業(3,364億円)については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)を負担することとし、その所要額(841億円)について地方交付税措置を講じる。

(オ)国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計からの繰出しについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じる。

(カ)国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図ることを目的として、40歳から74歳までの国民健康保険加入者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業(487億円)に対して、国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、市町村国保1/3)を負担することとし、その所要額(162億円)について地方交付税措置を講じる。

ウ 後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度については、実施主体である広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア)保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図る(均等割2割・5割・7割軽減)とともに、被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減を行うため、都道府県及び市町村が負担(都道府県3/4、市町村1/4)することとし、その所要額(2,702億円)について地方交付税措置を講じる。

平成27年度は、低所得者の保険料軽減措置(均等割9割・8.5割、所得割5割軽減)及び被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減措置(均等割9割軽減)について継続される。また、被用者保険の被扶養者であった被保険者の保険料軽減措置に伴う平成27年度分の財政措置については、均等割9割軽減のうち4割分については国費により措置され、所要額が平成27年度予算に計上されるとともに、均等割9割軽減のうち5割分については、引き続き、地方交付税措置を講じる。

なお、70歳から74歳までの窓口負担軽減措置については、平成26年度から新たに70歳になる者から段階的に法定の負担割合(2割)に見直すこととされ、所要額が平成27年度予算に計上されている。

(イ)高額医療費負担金(2,825億円)については、広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、広域連合1/2)を負担することとし、その所要額(706億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金を設置しその拠出金(172億円)に対して国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、広域連合1/3)を負担することとし、その所要額(57億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)実施主体である広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じる。

(6)個別団体における財政健全化

地方公共団体の財政状況は、地方税や地方譲与税の増加等の一方で、障害者等の福祉対策等に要する経費である社会福祉費等の扶助費の増加のほか借入金残高も累積していること等により、平成26年度決算における経常収支比率は前年度(91.6%)と比べて0.5ポイント上昇の92.1%となっており、依然として厳しい状況となっている。

各地方公共団体においては、このような状況を踏まえて、地方税等の徴収対策、使用料・手数料の適正化、未利用財産の売払いなどの歳入確保や、事務事業の見直し、組織・機構の簡素効率化、外郭団体の統廃合等、定員管理・給与の適正化、民間委託等の推進、他の地方公共団体との連携、公共施設の最適化などの自主的な行財政改革に取り組んでいる。

各地方公共団体における財政の健全化は一定の推進が見られ、平成26年度において、青森県大鰐町が財政健全化計画の完了報告を行った結果、現状、北海道夕張市のみが財政再生団体となっている。唯一の財政再生団体である北海道夕張市では、市民生活に直結したサービスを維持しながら、早期の財政の再生に向けた最大限の取組を行っており、個人市民税・固定資産税・軽自動車税の税率の引上げや各種使用料・手数料の引上げなど、住民負担の増加を伴う取組等による徹底した歳入確保と、職員数の削減や職員給与の見直しなど、行政のスリム化等による徹底した歳出削減により、財政状況の改善を図っている。

また、平成26年度決算における資金不足比率が経営健全化基準以上の公営企業は13会計であるが、これらの公営企業では定期的な料金改定の実施等により収入増加を図るとともに、職員数の削減や維持管理経費の削減等により積極的な支出の削減を図っているほか、収益の増加や経費の節減等により資金不足額の減少を図ることとしている。

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