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平成28年版
地方財政白書
(平成26年度決算)

5 地方分権改革の推進

政府では、住民に対する行政サービスの向上や行政の効率化を図るとともに、地方が特色を持った地域づくりや地域に合った行政を展開することができるよう、国と地方の役割分担を見直し、地域の自主性・自立性を高めるため、地方分権改革の推進に取り組んでいる。

地方分権改革の推進は、地域が自らの発想と創意工夫により課題解決を図るための基盤となるものであり、地方創生における極めて重要なテーマである。

(1)概況

地方分権改革については、地方分権改革推進法(平成18年法律第111号)による地方分権改革推進委員会の勧告に基づき、第1次地方分権一括法から「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成26年法律第51号。以下「第4次地方分権一括法」という。)までの4次にわたる一括法により、地方に対する事務・権限の移譲及び規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)について、具体的な改革を積み重ねてきた。

平成26年には、地方公共団体等から地方に対する事務・権限の移譲及び規制緩和に係る提案を募る提案募集方式を導入し、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成27年法律第50号。以下「第5次地方分権一括法」という。)により、地方側の長年の懸案であった農地転用許可の権限移譲を始めとする更なる事務・権限の移譲等を行うなど、国が選ぶのではなく、地方が選ぶことができる地方分権改革を推進している。

併せて、国民に地方分権改革の成果を実感してもらうため、優良事例の普及や情報発信の強化等を図っている。

また、政府の地方分権改革の推進体制としては、内閣総理大臣を本部長とする地方分権改革推進本部が政策決定機能を担い、地方分権改革担当大臣の下に開催されている地方分権改革有識者会議が調査審議機能を担っている。さらに、地方分権改革有識者会議の下で、提案募集検討専門部会、雇用対策部会等を開催し、専門的な見地から検討を行っている。

(2)地方に対する事務・権限移譲及び規制緩和に係るこれまでの取組

ア 事務・権限移譲

地方分権改革においては、地方公共団体、特に住民に最も身近な行政主体である基礎自治体に事務事業を優先的に配分し、地方公共団体が地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を担うことができるようにすることが必要不可欠である。

国から地方公共団体への事務・権限の移譲については、第4次地方分権一括法、第5次地方分権一括法等の成立により、所要の法律の整備が行われた。

これにより、看護師など各種資格者の養成施設等の指定・監督等の国(地方厚生局)の事務・権限を都道府県への移譲することや、自家用有償旅客運送の登録、監督等の国(地方運輸局)の事務・権限を希望する市町村へ移譲すること等が行われた。

都道府県から基礎自治体への事務・権限の移譲については、第2次地方分権一括法、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成25年法律第44号。以下「第3次地方分権一括法」という。)、第4次地方分権一括法、第5次地方分権一括法等の成立により、所要の法律の整備が行われた。

これにより、都市計画に関する事務を市町村へ移譲することや、農地等の権利移動の許可権限を市町村の農業委員会へ移譲すること等が行われた。

以上のような事務・権限の移譲により、窓口の一本化等による住民の利便性向上、地域課題の解決に資する独自の取組、総合行政の展開による行政の効果的、効率的な運営が進んでいる。

イ 地方に対する規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)

地方分権を進めるためには、これまで国が一律に決定し地方公共団体に義務付け・枠付けを行ってきた基準、施策等を、地方公共団体が条例の制定等により自ら決定し、実施することができるように改めていく必要がある。

義務付け・枠付けの見直しについては、第1次、第2次、第3次及び第5次地方分権一括法等の成立により、所要の法律の整備が行われた。

義務付け・枠付けの見直しにより、これまで法令により全国画一的に定められていた公営住宅の入居・整備基準、道路の構造に関する基準、保育所の設備・運営に関する基準など施設・公物設置管理の基準等を条例に委任することにより、地域の実情や住民のニーズ等を反映した地方独自の基準の制定が進んでいる。

(3)提案募集方式による取組

これまでの成果を基盤とし、地方の発意に根差した新たな取組を推進することとして、平成26年から「地方分権改革に関する提案募集の実施方針」(平成26年4月30日地方分権改革推進本部決定。以下「実施方針」という。)により地方分権改革に関する「提案募集方式」を導入した。

平成27年においても「実施方針」に基づき、平成26年に引き続き提案募集を行うこととし、前年よりも募集受付期間を前倒して準備・検討期間を充実させたほか、提案の最大限の実現を図るため、提案団体には、内閣府への事前相談を必ず行うよう依頼するなど、事務手続の見直しを行った。

地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って、地方分権改革有識者会議提案募集検討専門部会において長時間に及ぶ審議等が行われた結果、地方分権改革推進本部及び閣議において、平成27年の地方からの提案に対する政府としての対応方針を定める「平成27年の地方からの提案等に関する対応方針」(平成27年12月22日閣議決定。以下「平成27年対応方針」という。)が決定された。

この「平成27年対応方針」は、全国知事会など地方が長年求めてきた課題である「ハローワークの地方移管」について、利用者の利便性を高めることを第一義として検討し、地方の意見も踏まえ、「地方版ハローワーク」(地方公共団体が行う無料職業紹介)や、地方公共団体がハローワークを活用する枠組みを創設することなどを内容としており、平成27年の地方からの提案等を踏まえ、国から地方公共団体又は都道府県から市町村への事務・権限の移譲、規制緩和(義務付け・枠付けの見直し)等を推進するものである。

「平成27年対応方針」に盛り込んだ見直し事項のうち、主なものは以下のとおりである。

ア 地方創生、人口減少対策に資するもの

  • 空き家への短期居住等に旅館業法が適用されない場合の明確化
  • 病児保育事業に係る看護師等配置要件の趣旨の明確化
  • 緑地面積率条例制定権限の町村への移譲
  • 都市公園における運動施設の敷地面積に係る基準の弾力化
  • 地方住宅供給公社が供給する賃貸住宅の賃借人の対象に学校法人を追加

イ これまでの懸案が実現に至ったもの

  • 新たな雇用対策の仕組み〜「地方版ハローワーク」の創設、地方公共団体が国のハローワークを活用する枠組み〜
  • 診療所に係る病床設置許可権限等の指定都市への移譲
  • 水質汚濁物質の総量削減計画に係る国の同意廃止

ウ 地域の具体的事例に基づくもの

  • 小規模な給水区域の拡張による水道事業の変更認可又は届出に係る水需要予測の簡素化
  • 施設入所児童等に係る予防接種の保護者同意要件の緩和
  • 災害時における放置車両の移動等に係る措置の拡大

エ 委員会勧告方式が対象としていなかったもの

  • 公営住宅の一部入居者(認知症患者等)に対する収入申告方法の拡大

「平成27年対応方針」に盛り込んだ事項のうち、法律の改正により措置すべき事項については、所要の一括法案等を平成28年通常国会に提出することを基本とするとともに、現行規定で対応可能な提案については、地方公共団体に対する通知等により明確化することとしている。また、引き続き検討を進めるものについては、内閣府において適切にフォローアップを行い、検討結果について、逐次、地方分権改革有識者会議に報告することとしている。

加えて、地方公共団体において、移譲された事務・権限を円滑に執行することができるよう、地方税、地方交付税や国庫補助負担金等により、確実な財源措置を講ずるとともに、マニュアルの整備や技術的助言、研修や職員の派遣などの必要な支援を実施することとしている。

今後とも、地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って、地方分権改革を着実かつ強力に進めることとしている。

(4)地方税財源の充実確保

地方創生を実現するためには、各地方公共団体が自らの発想で特色を持った地域づくりを進めていくことが重要である。地方分権の更なる推進とその基盤となる地方税財源の充実確保を図るとともに、地方法人課税のあり方の見直し等を通じて、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築を進め、また、公共サービスの対価を広く公平に分かち合うという地方税の応益課税を強化することが重要である。

なお、地方財政審議会からは、「平成27年6月地財審意見」及び平成27年11月20日に法人税改革、地方法人課税の偏在是正及び車体課税のあり方などを含む「平成28年度地方税制改正等に関する地方財政審議会意見」(附属資料参照)が述べられている。

このような観点から、地方税制において以下の事項について改正を行うこととしている。

ア 法人税改革(法人事業税所得割の税率引下げと外形標準課税の拡大)

成長志向の法人税改革の一環として、資本金1億円超の普通法人に係る法人事業税所得割の税率引下げと、外形標準課税(付加価値割、資本割)を、現行の8分の3から8分の5に拡大することとしている。

この結果、国税の法人税の税率引下げとあわせ、国・地方を通じた法人実効税率を32.11%から29.97%(平成28年度)に引き下げることとしている。

イ 地方法人課税の偏在是正

地域間の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小を図るため、消費税率(国・地方)10%段階において、法人住民税法人税割の税率を引き下げるとともに、当該引下げ分相当について地方法人税の税率を引き上げ、その税収全額を交付税特別会計に直接繰り入れ、地方交付税原資とすることとしている。

また、地方法人特別税・譲与税を廃止し、全額法人事業税に復元するほか、地方法人特別税・譲与税に代わる偏在是正措置に伴う市町村の減収補てん、市町村間の税源の偏在性の是正及び市町村の財政運営の安定化を図る観点から、法人事業税額の一部を都道府県が市町村に交付する法人事業税交付金を創設することとしている。

ウ 車体課税の見直し

自動車取得税については、消費税率10%への引上げ時である平成29年4月1日に廃止するとともに、自動車税及び軽自動車税に環境性能割をそれぞれ平成29年4月1日から導入することとしている。

また、平成27年度末で期限切れを迎える自動車税のグリーン化特例(軽課)については、基準の切り替えと重点化を行った上で1年間延長するとともに、平成27年度末で期限切れを迎える軽自動車税のグリーン化特例(軽課)については、現行の措置を1年間延長することとしている。

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