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平成30年版
地方財政白書
(平成28年度決算)

2 地方財政の概況

地方公共団体の会計は、一般会計と特別会計に区分して経理されているが、特別会計の中には、一般行政活動に係るものと企業活動に係るものがある。

このため、地方財政では、これらの会計を一定の基準によって、一般行政部門と水道、交通、病院等の企業活動部門に分け、前者を「普通会計」、後者を「地方公営事業会計」として区分している。

以下、平成28年度の地方財政について、2から6までと10において普通会計の状況を、7において地方公営事業会計等の状況を、8において東日本大震災の影響を、9において健全化判断比率等の状況を示すとともに、11において公共施設の状況を示す。なお、普通会計決算については、平成23年度から、通常収支分(全体の決算額から東日本大震災分を除いたもの)と東日本大震災分(東日本大震災に係る復旧・復興事業及び全国防災事業に係るもの)を区分して整理している。

(1)決算規模[資料編:第1表第5表第10表第73表

地方公共団体(47都道府県、1,718市町村、23特別区、1,207一部事務組合及び113広域連合(以下一部事務組合及び広域連合を「一部事務組合等」という。))の普通会計の純計決算額は、第1表のとおり、歳入101兆4,598億円(前年度101兆9,175億円)、歳出98兆1,415億円(同98兆4,052億円)で、歳入、歳出いずれも減少している。対前年度比は歳入0.4%減(前年度0.2%減)、歳出0.3%減(同0.1%減)となっている。このうち通常収支分は、歳入97兆6,422億円(前年度97兆5,110億円)、歳出94兆7,666億円(同94兆5,708億円)で、東日本大震災分は、歳入3兆8,177億円(同4兆4,065億円)、歳出3兆3,749億円(同3兆8,344億円)となっている。

平成28年度の決算規模が前年度を下回ったのは、歳入においては、通常収支分について、貸付金元利収入が減少したものの、国庫支出金の増加等により0.1%増となった一方で、東日本大震災分について、東日本大震災復興基金からの繰入金の減少等により前年度と比べると13.4%減となったことによるものである。また、歳出においては、通常収支分について、公債費、積立金が減少したものの、扶助費、普通建設事業費の増加等により0.2%増となった一方で、東日本大震災分について、普通建設事業費の減少等により前年度と比べると12.0%減となったことによるものである。

決算規模の状況を団体種類別にみると、第2表のとおりである。都道府県の歳入及び歳出は、通常収支分及び東日本大震災分において減少し、全体として前年度を下回っている。市町村(特別区及び一部事務組合等を含む。特記がある場合を除き、以下同じ。)の歳入及び歳出は、通常収支分において増加した一方で東日本大震災分において減少し、全体として前年度を下回っている。また、近年の決算規模の推移は、第7図のとおりである。

(2)決算収支[資料編:第7表

ア 実質収支

実質収支(形式収支(歳入歳出差引額)から明許繰越等のために翌年度に繰り越すべき財源を控除した額)の状況は、第3表のとおりである。

平成28年度の実質収支は、1兆9,605億円の黒字(前年度1兆9,624億円の黒字)で、昭和31年度以降黒字となっている。

実質収支を団体種類別にみると、都道府県においては5,713億円の黒字(前年度3,845億円の黒字)であり、平成12年度以降黒字となっている。

また、市町村においては1兆3,892億円の黒字(前年度1兆5,779億円の黒字)であり、昭和31年度以降黒字となっている。

実質収支が赤字である団体はなく、平成27年度に引き続き、全団体で実質収支は黒字となっている。

なお、近年の実質収支及び赤字団体の赤字額の推移は、第8図のとおりである。標準財政規模に対する実質収支額の割合である実質収支比率の推移は、第9図のとおりであり、平成28年度の実質収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は前年度と同率の3.0%となっている。実質収支比率を団体種類別にみると、都道府県は0.7ポイント上昇の2.0%、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。)は0.6ポイント低下の4.1%となっている。

イ 単年度収支及び実質単年度収支

平成28年度の単年度収支(実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額)は、28億円の黒字(前年度1,252億円の黒字)となっている。

単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては1,868億円の黒字(前年度361億円の赤字)、市町村においては1,840億円の赤字(同1,613億円の黒字)となっている。

また、実質単年度収支(単年度収支に財政調整基金への積立額及び地方債の繰上償還額を加え、財政調整基金の取崩し額を差し引いた額)は、1,001億円の赤字(前年度5,018億円の黒字)となっている。

実質単年度収支を団体種類別にみると、都道府県においては1,566億円の黒字(前年度999億円の黒字)、市町村においては2,567億円の赤字(同4,019億円の黒字)となっている。

なお、実質収支、単年度収支及び実質単年度収支の赤字団体数の状況は、第4表のとおりである。

(3)歳入[資料編:第10表

歳入純計決算額は101兆4,598億円で、前年度と比べると4,576億円減少(0.4%減)している。このうち、通常収支分は97兆6,422億円で、前年度と比べると1,311億円増加(0.1%増)しており、東日本大震災分は3兆8,177億円で、前年度と比べると5,888億円減少(13.4%減)している。

歳入総額の主な内訳をみると、第5表のとおりである。

地方税は、法人関係二税(法人住民税及び法人事業税)の増加、固定資産税の増加等により、前年度と比べると2,938億円増加(0.8%増)している。

地方譲与税は、地方法人特別譲与税の減少等により、前年度と比べると3,390億円減少(12.7%減)している。

地方特例交付金は、前年度と比べると44億円増加(3.7%増)している。

地方交付税は、前年度と比べると1,516億円減少(0.9%減)している。また、地方交付税に臨時財政対策債を加えた額は、前年度と比べると8,459億円減少(3.9%減)している。

一般財源は、地方譲与税、震災復興特別交付税の減少等により、前年度と比べると1,924億円減少(0.3%減)している。

国庫支出金は、年金生活者等支援臨時福祉給付金の創設等により、前年度と比べると4,050億円増加(2.7%増)している。

地方債は、臨時財政対策債の減少等により、前年度と比べると3,007億円減少(2.8%減)している。

歳入純計決算額の構成比の推移は、第10図のとおりである。

地方税の構成比は、税源移譲等により、平成19年度には歳入総額の44.2%を占めるまで上昇し、その後、景気の悪化や地方法人特別税の創設等に伴って低下していたが、24年度に上昇に転じ、28年度においては、前年度と比べると0.4ポイント上昇の38.8%となり、5年連続で上昇している。

地方交付税の構成比は、平成8年度から12年度までは上昇し、13年度以降は、地方財政対策に当たり、交付税特別会計の借入金方式に代えて臨時財政対策債を発行し、基準財政需要額の一部を振り替えることとしたことや三位一体の改革に伴う地方交付税の改革等から総じて低下の傾向にあったが、22年度は上昇に転じた。平成28年度においては、前年度から0.1ポイント低下の17.0%となった。

国庫支出金の構成比は、平成15年度以降、三位一体の改革による国庫補助負担金の一般財源化、普通建設事業費支出金の減少等により低下していたが、20年度以降は国の経済対策の実施、東日本大震災への対応の影響等で総じて上昇の傾向にあった。平成24年度以降は低下に転じたが、28年度においては、前年度と比べると0.5ポイント上昇の15.5%となっている。

地方債の構成比は、平成20年度以降、臨時財政対策債の増加等により総じて上昇していたが、23年度以降は総じて低下の傾向にあり、28年度においては、前年度と比べると0.3ポイント低下の10.2%となっている。なお、臨時財政対策債を除いた構成比は、前年度と比べると0.4ポイント上昇の6.5%となっている。

一般財源の構成比は、平成18年度には62.3%であったが、19年度以降国庫支出金、地方債等の増加に加え、地方税及び地方特例交付金の減少等により低下していた。平成22年度以降は上昇の傾向にあり、28年度においては、前年度と横ばいの58.2%となっている。なお、一般財源に臨時財政対策債を加えた額の構成比は、前年度と比べると0.6ポイント低下の61.9%となっている。

歳入決算額の構成比を団体種類別にみると、第11図のとおりである。

都道府県においては地方税が最も大きな割合(39.2%)を占め、以下、地方交付税(17.5%)、国庫支出金(12.6%)の順となっている。

市町村においても都道府県と同様に地方税が最も大きな割合(32.8%)を占め、以下、国庫支出金(15.8%)、地方交付税(14.0%)の順となっている。

(4)歳出

歳出の分類方法としては、行政目的に着目した「目的別分類」と経費の経済的な性質に着目した「性質別分類」が用いられるが、これらの分類による歳出の概要は、次のとおりである。

ア 目的別歳出

(ア)目的別歳出[資料編:第34表

地方公共団体の経費は、その行政目的によって、議会費、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林水産業費、商工費、土木費、消防費、警察費、教育費、災害復旧費、公債費等に大別することができる。

歳出純計決算額は98兆1,415億円で、前年度と比べると2,638億円減少(0.3%減)している。このうち、通常収支分は94兆7,666億円で、前年度と比べると1,958億円増加(0.2%増)しており、東日本大震災分は3兆3,749億円で、前年度と比べると4,595億円減少(12.0%減)している。

歳出総額の目的別歳出の構成比は、第6表のとおりであり、民生費(26.8%)、教育費(17.1%)、公債費(12.8%)、土木費(12.2%)、総務費(9.1%)の順となっている。

民生費は、年金生活者等支援臨時福祉給付金の創設や除染関連基金への積立金の増加等により、前年度と比べると1兆859億円増加(4.3%増)している。

教育費は、小中学校の耐震化等全国防災事業費の減少等により、前年度と比べると497億円減少(0.3%減)している。

公債費は、臨時財政対策債の元利償還金は増加したものの、他の地方債の元利償還金の減少等により、前年度と比べると3,577億円減少(2.8%減)している。

土木費は、普通建設事業費の増加等により、前年度と比べると3,111億円増加(2.7%増)している。

総務費は、基金への積立金の減少等により、前年度と比べると7,072億円減少(7.4%減)している。

目的別歳出の構成比の推移は、第7表のとおりである。民生費の構成比は、社会保障関係費の増加を背景に上昇しており、平成19年度以降最も大きな割合を占めている一方で、農林水産業費、土木費の構成比は低下の傾向にある。

目的別歳出の構成比を団体種類別にみると、第12図のとおりである。

都道府県においては、市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等により教育費が最も大きな割合(22.1%)を占め、以下、民生費(17.0%)、公債費(13.8%)、土木費(11.1%)、商工費(6.9%)の順となっている。

また、市町村においては、児童福祉、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村)等の社会福祉事務の比重が高いこと等により民生費が最も大きな割合(37.2%)を占め、以下、総務費(12.1%)、土木費(11.8%)、教育費(10.2%)、公債費(10.1%)の順となっている。

(イ)一般財源の充当状況[資料編:第36表

一般財源の目的別歳出に対する充当状況は、第8表のとおりである。

一般財源総額(59兆949億円)に占める目的別歳出の割合をみると、民生費が最も大きな割合(24.1%)を占め、以下、教育費(18.0%)、公債費(17.5%)、総務費(10.2%)、土木費(7.8%)の順となっている。

一般財源充当額の目的別構成比の推移は、第13図のとおりである。近年、民生費充当分が上昇の傾向にある一方で、公債費充当分は低下の傾向にある。

イ 性質別歳出

(ア)性質別歳出[資料編:第73表

地方公共団体の経費は、その経済的な性質によって、義務的経費、投資的経費及びその他の経費に大別することができる。

義務的経費は、職員給等の人件費のほか、生活保護費等の扶助費及び地方債の元利償還金等の公債費からなっている。また、投資的経費は、道路、橋りょう、公園、公営住宅、学校の建設等に要する普通建設事業費のほか、災害復旧事業費及び失業対策事業費からなっている。

歳出純計決算額の主な性質別内訳をみると、第9表のとおりである。

義務的経費は、前年度と比べると2,226億円増加(0.5%増)している。これは、扶助費が年金生活者等支援臨時福祉給付金の創設等により6,755億円増加(5.1%増)したこと等によるものである。なお、公債費は、臨時財政対策債の元利償還金は増加したものの、他の地方債の元利償還金の減少等により、前年度と比べると3,560億円減少(2.8%減)している。

投資的経費は、前年度と比べると2,118億円増加(1.4%増)している。これは、普通建設事業費が1,231億円増加(0.9%増)し、災害復旧事業費が887億円増加(12.2%増)したこと等によるものである。

また、その他の経費は、前年度と比べると6,982億円減少(2.0%減)している。これは、基金への積立金の減少等により、積立金が4,517億円減少(12.0%減)したことや、制度融資に係る預託金の減少等により、貸付金が2,484億円減少(5.4%減)したこと等によるものである。

平成18年度以降のこれらの経費の増減額の推移は、第14図のとおりである。

次に、性質別歳出の構成比の推移は、第15図のとおりである。

義務的経費の構成比は、平成8年度以降上昇の傾向にあり19年度には52.1%となったが、20年度に低下に転じた。平成22年度においては子ども手当の創設に伴う扶助費の増加等により上昇したが、23年度においてはその他の経費の増加等の影響により低下し、28年度においては前年度と比べると0.4ポイント上昇の50.0%となっている。義務的経費の構成比の内訳をみると、人件費は、平成19年度以降総じて減少の傾向にあり、28年度においては前年度と横ばいの22.9%となっている。扶助費は、社会保障関係費の増加を背景に総じて増加の傾向にあり、平成28年度においては前年度と比べると0.7ポイント上昇の14.3%となっている。公債費は、平成18年度以降総じて減少の傾向にあり、28年度においては前年度と比べると0.3ポイント低下の12.8%となっている。

投資的経費の構成比は、平成23年度まで総じて低下の傾向にあり、24年度に上昇に転じた。平成28年度においては普通建設事業費、災害復旧事業費の増加等により前年度と比べると0.2ポイント上昇の15.4%となっている。

その他の経費の構成比は、補助費等、繰出金の増加等により平成23年度まで総じて上昇の傾向にあったが、24年度に低下に転じ、28年度においては前年度と比べると0.6ポイント低下の34.6%となっている。

性質別歳出決算額の構成比を団体種類別にみると、第16図のとおりである。

人件費の構成比は、都道府県において市町村立義務教育諸学校教職員の人件費を負担していること等から、都道府県(27.3%)が、市町村(15.5%)を上回っている。また、扶助費の構成比は、市町村において、児童手当の支給、生活保護に関する事務(町村については、福祉事務所を設置している町村)等の社会福祉関係事務が行われていること等から、市町村(22.9%)が、都道府県(2.2%)を上回っている。

普通建設事業費のうち、補助事業費の構成比は、都道府県(7.8%)が市町村(6.2%)を上回る一方、単独事業費の構成比は、市町村(7.3%)が都道府県(5.0%)を上回っている。

その他の経費のうち、補助費等の構成比は、都道府県(27.2%)が市町村(7.1%)を上回る一方、繰出金の構成比は、市町村(9.4%)が都道府県(0.3%)を上回っている。

(イ)一般財源の充当状況[資料編:第75表

一般財源の性質別歳出に対する充当状況は、第10表のとおりである。

一般財源総額(59兆949億円)に占める性質別歳出の割合をみると、義務的経費が最も大きな割合(55.3%)を占め、以下、その他の経費(35.3%)、投資的経費(5.2%)の順となっている。なお、その他の経費の中では、補助費等が最も大きな割合(12.2%)を占めている。

一般財源充当額の性質別構成比の推移は、第17図のとおりである。

義務的経費充当分は、平成18年度までは、人件費充当分が低下の傾向にある一方で、扶助費充当分及び公債費充当分が上昇の傾向にあったことから、総じて上昇の傾向にあった。平成21年度以降は、公債費充当分が低下の傾向に転じたことから、総じて低下の傾向にあったが、28年度においては前年度と比べると0.4ポイント上昇の55.3%となっている。

投資的経費充当分は、総じて低下の傾向にあるが、平成28年度においては前年度と比べると0.1ポイント上昇の5.2%となっている。

その他の経費充当分は、総じて上昇の傾向にあるが、平成28 年度においては前年度と比べると0.3ポイント低下の35.3%となっている。

(5)財政構造の弾力性[資料編:第8表

ア 経常収支比率

地方公共団体が社会経済や行政需要の変化に適切に対応していくためには、財政構造の弾力性が確保されなければならない。財政構造の弾力性の度合いを判断する指標の一つとして、経常収支比率が用いられている。

経常収支比率は、経常経費充当一般財源(人件費、扶助費、公債費等のように毎年度経常的に支出される経費に充当された一般財源)が、経常一般財源(一般財源総額のうち地方税、普通交付税のように毎年度経常的に収入される一般財源)、減収補填債特例分及び臨時財政対策債の合計額に対し、どの程度の割合となっているかをみることにより財政構造の弾力性を判断するものである。

平成28年度の経常収支比率(特別区及び一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度と比べると1.7ポイント上昇の93.4%となった。経常収支比率の推移は第11表のとおりである。主な内訳をみると、人件費充当分が31.3%(前年度30.9%)、公債費充当分が20.0%(同20.1%)となっている。なお、減収補填債特例分及び臨時財政対策債を経常収支比率算出上の分母から除いた場合の経常収支比率は、100.1%(前年度99.3%)となっている。

また、経常収支比率を構成する分子及び分母の状況は次のとおりである。

分子である経常経費充当一般財源は、公債費が減少した一方で、扶助費、補助費等が増加したことにより、前年度と比べると0.4%増となっている。分母である経常一般財源等は、地方税が増加した一方で、臨時財政対策債、地方譲与税が減少したこと等により、前年度と比べると1.4%減となっている。

分子及び分母の推移は第18図のとおりである。分子である経常経費充当一般財源については、扶助費、補助費等が増加の傾向にあることから、分子全体としては増加の傾向にある。分母である経常一般財源等については、地方税が平成23年度以降増加の傾向にあることから、分母全体としては平成27年度まで増加の傾向にあったが、平成28年度は減少に転じた。なお、分子及び分母を10年前(平成18年度)と比べるとそれぞれ6.2%増、4.0%増となっており、分子の増加率が分母の増加率を上回っている。

経常収支比率を団体種類別にみると、都道府県は前年度と比べると0.9ポイント上昇の94.3%、市町村(特別区及び一部事務組合等を除く。以下アにおいて同じ。)は前年度と比べると2.5ポイント上昇の92.5%となっている。

経常収支比率の段階別分布状況をみると、第12表のとおりである。経常収支比率が80%以上の団体数は、都道府県においては東京都を除く46団体(前年度47団体全て)、市町村においては全体の90.6%を占める1,556団体(同1,481団体)となっている。

イ 実質公債費比率及び公債費負担比率

地方債の元利償還金等の公債費は、義務的経費の中でも特に弾力性に乏しい経費であることから、財政構造の弾力性をみる場合、その動向には常に留意する必要がある。その公債費による負担度合いを判断するための指標として、実質公債費比率及び公債費負担比率が用いられている。

実質公債費比率は、当該地方公共団体の標準財政規模(普通交付税の算定において基準財政需要額に算入された公債費等を除く。)に対して、一般会計等が負担する元利償還金及び公営企業債の償還に対する繰出金などの元利償還金に準ずるもの(充当された特定財源及び一般財源のうち普通交付税の算定において基準財政需要額に算入されたものを除く。)がどの程度の割合となっているかを示した比率であり、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(平成19年法律第94号。以下「地方公共団体財政健全化法」という。)において、財政の早期健全化等の必要性を判断する健全化判断比率の一つとして位置付けられている。

平成28年度の実質公債費比率(一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度と比べると0.6ポイント低下の9.3%となっている。

公債費負担比率は、公債費充当一般財源(地方債の元利償還金等の公債費に充当された一般財源)が一般財源総額に対し、どの程度の割合となっているかを示す指標であり、公債費がどの程度一般財源の使途の自由度を制約しているかをみることにより、財政構造の弾力性を判断するものである。

平成28年度の公債費負担比率(一部事務組合等を除く加重平均)は、前年度と比べると0.2ポイント低下の17.5%となっている。

近年の実質公債費比率及び公債費負担比率の推移は、第19図のとおりである。

実質公債費比率は、初めて算定された平成17年度以降低下してきている。

公債費負担比率は、純計については平成3年度以降上昇し、15年度に19.4%に達した後、おおむね横ばいの傾向にあり、21年度に低下に転じた後、再び横ばいの傾向にあったが、26年度以降再度低下している。

(6)将来の財政負担

地方公共団体の財政状況をみるには、単年度の収支状況のみでなく、地方債、債務負担行為等のように将来の財政負担となるものや、財政調整基金等の積立金のように年度間の財源調整を図り将来における弾力的な財政運営に資するために財源を留保するものの状況についても、併せて把握する必要がある。これらの状況は、次のとおりである。

ア 地方債現在高[資料編:第100表

平成28年度末における地方債現在高は144兆9,087億円で、前年度末と比べると0.4%減(前年度末0.3%減)となっている。また、平成28年度末における臨時財政対策債を除いた地方債現在高は93兆137億円で、前年度末と比べると2.0%減(前年度末2.7%減)となっている。

地方債現在高の歳入総額及び一般財源総額に対するそれぞれの割合の推移は、第20図のとおりである。

地方債現在高は、昭和50年度末では歳入総額の0.44倍、一般財源総額の0.88倍であったが、地方税収等の落込みへの対応や減税に伴う減収の補填のため、また経済対策に伴う公共投資の追加等により地方債が急増したことに伴い、それぞれの割合は平成4年度末以降急増し、また、13年度からの臨時財政対策債の発行等があったことにより、依然として高い水準で推移している。平成28年度末では歳入総額の1.43倍、一般財源総額の2.45倍となっている。

近年の地方債現在高の目的別構成比及び借入先別構成比の推移は、第21図のとおりである。地方債現在高の目的別構成比は、臨時財政対策債(35.8%)、一般単独事業債(25.3%)の順となっている。前年度末の割合と比べると、一般単独事業債が0.4ポイント低下する一方、臨時財政対策債が1.0ポイント上昇しており、平成13年度以降、臨時財政対策債の構成比が上昇の傾向にある。地方債現在高の借入先別の構成比は、市場公募債(31.9%)、市中銀行資金(26.0%)、政府資金(22.3%)の順となっている。前年度末の割合と比べると、近年の公的資金の縮減及び市場における地方債資金の調達の推進等に伴い、政府資金が0.6ポイント低下する一方、市場公募債は0.2ポイント上昇している。

地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては88兆6,255億円、市町村においては56兆2,832億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.5%減、0.4%減となっている。また、臨時財政対策債を除いた地方債現在高を団体種類別にみると、都道府県においては56兆7,017億円、市町村においては36兆3,120億円で、前年度末と比べるとそれぞれ2.1%減、1.7%減となっている。

なお、地方財政状況調査においては、満期一括償還地方債の元金償還に充てるための減債基金への積立額は歳出の公債費に計上するとともに、地方債現在高から当該積立額相当分を控除する扱いとしているが、控除しない場合における地方債現在高は154兆6,465億円となっている。

イ 債務負担行為額[資料編:第101表

地方公共団体は、将来の支出を約束するために、債務負担行為を行うことができる。

この債務負担行為は、数年度にわたる建設工事、土地の購入等の場合のように翌年度以降の経費支出が予定されているものと、債務保証又は損失補償のように債務不履行等の一定の事実が発生したときに支出されるものとに大別することができる。

これらの債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額をみると、平成28年度末では15兆6,265億円で、前年度末と比べると1.3%増となっている。

翌年度以降支出予定額を目的別にみると、第22図のとおりである。

翌年度以降支出予定額を団体種類別にみると、都道府県においては5兆7,578億円、市町村においては9兆8,688億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.3%増、1.9%増となっている。

ウ 積立金現在高[資料編:第102表

地方公共団体の積立金現在高の状況は、第13表のとおりである。

平成28年度末における積立金現在高は23兆6,314億円で、前年度末と比べると1.3%増となっている。

積立金現在高の内訳をみると、年度間の財源調整を行うために積み立てられている財政調整基金は、前年度末と比べると0.1%減となっている。地方債の将来の償還費に充てるために積み立てられている減債基金(満期一括償還地方債に係るものを除く。)は、前年度末と比べると3.7%減となっている。将来の特定の財政需要に備えて積み立てられているその他特定目的基金は、前年度末と比べると3.1%増となっている。

積立金現在高を団体種類別にみると、都道府県においては7兆9,704億円、市町村においては15兆6,610億円で、前年度末と比べるとそれぞれ1.3%増、1.3%増となっている。

エ 地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担

地方債現在高に債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額を加え、積立金現在高を差し引いた地方公共団体の地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担の推移は、第23図のとおりである。

平成28年度末における地方債及び債務負担行為による実質的な将来の財政負担は136兆9,038億円で、前年度末と比べると0.5%減となっている。

団体種類別にみると、都道府県においては86兆4,129億円、市町村においては50兆4,909億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.6%減、0.4%減となっている。

オ 普通会計が負担すべき借入金残高

普通会計が将来にわたって負担すべき借入金という観点からは、地方債現在高のほか、交付税特別会計借入金及び地方公営企業において償還する企業債のうち、経費負担区分の原則等に基づき、普通会計がその償還財源を負担するものについても併せて考慮する必要がある。

この観点から、交付税特別会計借入金残高と企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものを地方債現在高に加えた普通会計が負担すべき借入金残高の推移をみると、第24図のとおりである。

これをみると、平成28年度末には、普通会計が負担すべき借入金残高は197兆3,189億円で、前年度末と比べると0.9%減となっている。

また、その内訳は、地方債現在高が144兆9,087億円、交付税特別会計借入金残高が32兆4,173億円、企業債現在高のうち普通会計が負担することとなるものが19兆9,929億円で、前年度末と比べるとそれぞれ0.4%減、1.2%減、3.7%減となっている。

(7)決算の背景

ア 平成28年度の経済見通しと国の予算

(ア)経済見通しと経済財政運営の基本的態度

「平成28年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成27年12月22日に閣議了解、28年1月22日に閣議決定された。その主な内容は、以下のとおりであった。

a 平成27年度の経済動向

平成27年度の我が国経済をみると、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を柱とする経済財政政策の推進により、雇用・所得環境が改善し、原油価格の低下等により交易条件が改善する中で、緩やかな回復基調が続いている。ただし、年度前半には中国をはじめとする新興国経済の景気減速の影響等もあり、輸出が弱含み、個人消費及び民間設備投資の回復に遅れがみられた。

政府は、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の実現に向け、「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」(平成27年11月26日第3回一億総活躍国民会議とりまとめ。以下「緊急対策」という。)を取りまとめた。雇用・所得環境が改善する中、緊急対策等の効果もあって、景気は緩やかな回復に向かうことが見込まれる。

物価の動向をみると、原油価格等の下落の影響があるものの、経済の好循環が進展する中で、物価の基調は緩やかに上昇している。

この結果、平成27年度の実質国内総生産(実質GDP)成長率は1.2%程度、名目国内総生産(名目GDP)成長率は交易条件の改善もあって2.7%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は0.4%程度の上昇と見込まれる。

b 平成28年度の経済見通し

平成28年度の我が国経済は、「緊急対策」など、「平成28年度の経済財政運営の基本的態度」に示された政策の推進等により、雇用・所得環境が引き続き改善し、経済の好循環が更に進展するとともに、交易条件が緩やかに改善する中で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれる。

物価については、経済の好循環の進展により、需給が引き締まっていく中で上昇し、デフレ脱却に向け更なる前進が見込まれる。

この結果、平成28年度の実質GDP成長率は1.7%程度、名目GDP成長率は3.1%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は1.2%程度の上昇と見込まれる。

なお、先行きのリスクとしては、アメリカの金融政策の正常化が進む中、中国をはじめとする新興国等の景気の下振れ、金融資本・商品市場の動向、地政学的な不確実性等に留意する必要がある。

c 平成28年度の経済財政運営の基本的態度

今後の経済財政運営に当たっては、これまでのアベノミクスの成果の上に、「デフレ脱却・経済再生」と「財政健全化」を双方共に更に前進させる。

デフレ脱却・経済再生については、アベノミクス第二ステージにおいて、戦後最大の名目GDP600兆円を2020年(平成32年)頃に達成することを目標とし、これまでの三本の矢を束ねて一層強化した新たな第一の矢である「希望を生み出す強い経済」を推進していく。その成長の果実を活用して、第二の矢の「夢をつむぐ子育て支援」、第三の矢の「安心につながる社会保障」を推進し、地方創生、国土強靱化、女性の活躍などの取組とあいまって、第二、第三の矢が「強い経済」にも寄与するメカニズムを通じて、新・三本の矢が一体となって成長と分配の好循環を強固なものとしていく。

一億総活躍社会の実現に向け最優先で推進する必要のある「緊急対策」に取り組むことにより、民間の取組ともあいまって、投資促進・生産性革命の実現や、賃金・最低賃金引上げを通じた消費の喚起等を推進し、名目GDP600兆円経済実現に向けた動きを加速するとともに、デフレ脱却への歩みを確実なものとし、足元の景気をしっかり下支えする。

加えて、「総合的なTPP関連政策大綱」(平成27年11月25日TPP総合対策本部決定)を踏まえ、我が国産業の海外展開・事業拡大や生産性向上、農林水産業の競争力の強化など、将来の成長、発展を視野に入れた取組を進める。

また、未来投資による生産性革命とローカル・アベノミクスを推進するため、「『日本再興戦略』改訂2015」(平成27年6月30日閣議決定)を着実に実施する。

財政健全化については、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定。以下「基本方針2015」という。)に盛り込まれた「経済・財政再生計画」に沿って、2020年度(平成32年度)の財政健全化目標を堅持し、計画期間の当初3年間(2016〜2018年度(平成28〜30年度))を「集中改革期間」と位置付け、2018年度(平成30年度)の国・地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス。以下「PB」という。)赤字の対GDP比▲1%程度を目安として、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」の3本柱の改革を一体として推進する。平成28年度は、「経済・財政再生計画」の初年度に当たることから、「デフレ脱却・経済再生」への取組を加速させるとともに、「経済・財政再生アクション・プログラム」(平成27年12月24日経済財政諮問会議決定)を十分踏まえた上で、歳出改革・歳入改革を着実に推進する。

日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する。

(イ)国の予算

政府は、「平成28年度予算編成の基本方針」(平成27年11月27日閣議決定)及び「平成28年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に基づいて平成27年12月24日、平成28年度予算政府案を閣議決定した。

平成28年度予算は、以下のような基本的な考え方により編成された。

a 基本的考え方

(a)「経済・財政再生計画」の着実な推進

<1>「経済再生なくして財政健全化なし」。これは、経済財政運営における安倍内閣の基本哲学であり、2020年度(平成32年度)の財政健全化目標の達成に向けた今後5年間の基本方針でもある。我々が目指すのは経済再生と財政健全化の二兎を得る道である。

<2>我が国経済は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を柱とする経済財政政策を推進してきた結果、雇用・所得環境の改善傾向が続く中で、2015年度(平成27年度)のPB赤字対GDP比半減目標も達成見込みである。この成果の上に、「デフレ脱却・経済再生」と「財政健全化」を双方共に更に前進させる。

<3>政府の経済財政運営の根幹である「基本方針2015」は、経済再生と財政健全化を共に達成しつつ、中長期的に持続する成長メカニズムの構築を目指す取組である。すなわち、経済再生については、消費や投資の拡大に結び付く経済の好循環の拡大、イノベーション等を通じた生産性の向上や供給面の取組による潜在的な供給力の強化、人口減少と地域経済の縮小の悪循環の連鎖に歯止めをかける、まち・ひと・しごとの創生を目指すものである。

こうした中、緩やかな回復基調にある我が国の経済は、いまだ個人消費の回復に地域間でのばらつきや生産活動が弱含むところもあり、地方によっては経済環境に厳しさがある。このため、ローカル・アベノミクスの浸透を更に図ることが重要である。

政府としては、今後とも、中国経済の減速などの足元の経済情勢のリスク要因を注視しつつ、「基本方針2015」に沿って経済財政運営を進めていく。

<4>「基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」においては、2020年度(平成32年度)の財政健全化目標を堅持し、計画期間の当初3年間(2016〜2018年度(平成28〜30年度))を「集中改革期間」と位置付け、集中改革期間における改革努力のメルクマールとして、2018年度(平成30年度)のPB赤字の対GDP比▲1%程度を目安としている。

そのための取組として、「デフレ脱却・経済再生」、「歳出改革」、「歳入改革」を3本柱とし、そのうち、「歳出改革」については、「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」、「公共サービスのイノベーション」という3つの取組を中心に着実に推進する。

歳出改革については、経済財政諮問会議の下に設置された経済・財政一体改革推進委員会において、主要歳出分野ごとの成果指標(KPI)設定や改革工程表の策定、誰もが活用できる形での情報開示(見える化)の徹底など、計画の具体化を進め、今後、改革工程表に沿って、着実に実行する。また、同委員会において、改革の進捗管理、点検、評価を行う。

(b)「一億総活躍社会」の実現とTPP(環太平洋パートナーシップ)を踏まえた対応

<1>アベノミクスの第二ステージで掲げた新・三本の矢の第一の矢「希望を生み出す強い経済」は、これまでの三本の矢を束ねて一層強化したものであり、具体的な目標は戦後最大の名目GDP600兆円を2020年(平成32年)頃に達成することである。その成長の果実を活用して、第二の矢の「夢をつむぐ子育て支援」、第三の矢の「安心につながる社会保障」を推進し、地方創生、国土強靱化、女性の活躍などの取組とあいまって、第二、第三の矢が「強い経済」にも寄与するメカニズムを通じて、新・三本の矢が一体となって成長と分配の好循環を強固なものとしていく。

政府は、誰もが生きがいをもって、充実した生活を送ることができる「一億総活躍社会」の実現を目指し、「一億総活躍国民会議」を発足させ、平成27年11月26日に緊急に実施すべき対策が取りまとめられたところである。

この緊急対策に取り組むことにより、名目GDP600兆円経済実現に向けた動きを加速するとともに、デフレ脱却を確実なものとし、足元の景気をしっかり下支えする。

<2>TPP協定についても、平成27年10月に大筋合意に達したことから、TPPを真に我が国の経済再生、地方創生に直結するものとするため、平成27年11月25日に決定した「総合的なTPP関連政策大綱」を踏まえ、我が国産業の海外展開・事業拡大や生産性向上、農林水産業の競争力の強化など、将来の成長、発展を視野に入れた取組を進める。

これらの取組は、いずれも将来の我が国の成長、発展を見据えた重要な政策課題であり、それぞれを着実に、かつ整合的に進めていくことが必要である。

b 予算の編成についての考え方

(a)「一億総活躍社会」の実現、TPPを踏まえた対応

強い経済を実現するとともに、少子高齢化という構造的な問題について正面から取り組むことにより、将来への安全を確保し、誰もが生きがいを持って充実した生活を送ることができる「一億総活躍社会」の実現に向けた取組や、TPPを真に我が国の経済再生、地方創生に直結するものとするための取組といった喫緊の重要課題への対応に関しては、平成27年度補正予算での対応と併せて、「経済・財政再生計画」の趣旨や施策の優先順位を踏まえ、適切に対処する。

(b)「経済・財政再生計画」初年度における歳出改革の推進

<1>平成28年度は、「経済・財政再生計画」の初年度に当たることから、「デフレ脱却・経済再生」への取組を加速させるとともに、改革工程表を十分踏まえた上で、歳出改革を着実に推進するとの基本的考え方に立ち、改革工程表における取組を的確に予算に反映させる。併せて、同計画における国の一般歳出の水準の目安を十分踏まえた上で、予算編成を行う。

<2>具体的には、改革工程表に基づき実施する平成28年度の取組が、予算に反映する施策である場合は、予算編成過程における検討を経た上で、平成28年度予算にその取組を反映させる。特に、歳出改革に向けた施策の展開、見える化やPDCAサイクル構築に資するエビデンスの収集などが必要な場合には、有効と考えられるモデル事業、実証実験の取組について、検証スケジュールなど時間軸を明確にした上で、これまでの実績も踏まえ、平成28年度予算にその取組を反映させる。

<3>歳出改革の実現には、それぞれの施策、事業の実行主体が、責任を持って対応していくことが不可欠となる。こうした観点から、平成28年度歳入歳出概算についての閣議決定時において、予算への反映を含めた「経済・財政再生計画」に沿った取組について、各府省において適切に公表を行う。

こうした取組により、政策効果の見える化やPDCAサイクルの強化を促し、国民参加で更なる改革を推進していく。同時に、経済財政諮問会議における点検・評価や情報発信、行政事業レビュー等を通じて、各府省の取組を後押しする。

<4>予算編成においては、東日本大震災からの復興を加速するとともに、我が国財政の厳しい状況を踏まえ、歳出全般にわたり、聖域なき徹底した見直しを、引き続き、手を緩めることなく推進する。地方においても、国の取組と基調を合わせ徹底した見直しを進める。

「新しい日本のための優先課題推進枠」については、歳出改革に寄与するものを含め、政策効果が高いと認められるものに絞り込んで措置する。

平成28年度予算は、以上のような方針により編成され、平成28年1月22日に国会に提出され、3月29日に成立した。

平成28年度の一般会計予算の規模は96兆7,218億円で、前年度当初予算と比べると3,799億円増加(0.4%増)となっており、PB対象経費は73兆1,097億円で、前年度当初予算と比べると2,185億円増加(0.3%増)となった。なお、公債の発行予定額は34兆4,320億円で、前年度当初発行予定額と比べると2兆4,310億円減少(6.6%減)となっており、公債依存度は35.6%となった。

また、東日本大震災復興特別会計予算の規模は3兆2,469億円となった。歳入については、復興特別税3,766億円、一般会計からの繰入5,727億円、復興債2兆1,564億円等となっている。歳出については、復興関係公共事業等9,482億円、原子力災害復興関係経費1兆248億円、復興加速化・福島再生予備費4,500億円等となっている。

なお、財政投融資計画の規模は13兆4,811億円で、前年度計画額と比べると1兆1,404億円減少(7.8%減)となった。

イ 地方財政計画

平成28年度においては、通常収支分について、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、地方創生や地方の重点課題に対応するために必要な経費を計上するとともに、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行う一方、国の取組と基調を合わせた歳出改革を行うこととした。また、歳入面においては、「基本方針2015」で示された「経済・財政再生計画」に沿って、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、平成27年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとした。

また、東日本大震災分については、復旧・復興事業及び全国防災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとした。

なお、地方財政審議会からは、平成27年6月9日に「経済再生と財政健全化の両立に向けた地方税財政改革についての意見」及び12月18日に「今後目指すべき地方財政の姿と平成28年度の地方財政への対応についての意見」(附属資料参照)が述べられた。

以上を踏まえ、次の方針に基づき平成28年度地方団体の歳入歳出総額の見込額を策定した。

(ア)通常収支分

a 地方税制については、平成28年度地方税制改正では、経済の好循環を確実なものとするため、成長志向の法人税改革の一環として法人事業税所得割の税率引下げと外形標準課税の拡大等のための税制上の措置を講ずることとしている。また、地方創生の推進等を図るため地方法人課税の偏在是正に向けた措置等を講ずるとともに、消費税率(国・地方。以下同じ。)10%引上げ時の平成29年4月に自動車税及び軽自動車税に環境性能割を導入するなど車体課税の見直し等のための税制上の措置を講ずることとしている。

b 地方財源不足見込額については、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとする。

(a)財源不足のうち建設地方債(財源対策債)の増発等により対処することとした残余については、平成26年度に講じた28年度までの制度改正に基づき、国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については、地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

(b)これに基づき、平成28年度の財源不足見込額5兆6,063億円については、次により補填する。

<1>地方交付税については、国の一般会計加算により8,283億円(うち「地方交付税法」(昭和25年法律第211号)附則第4条の2第2項の加算額3,436億円、平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)及び平成27年1月12日付け総務・財務両大臣覚書第7項に定める平成28年度における「乖離是正分加算額」2,100億円並びに臨時財政対策特例加算額2,747億円)増額する。

また、「地方公共団体金融機構法」(平成19年法律第64号)附則第14条の規定により財政投融資特別会計に帰属させる地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金2,000億円を財政投融資特別会計から交付税特別会計に繰り入れる。

<2>地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を3兆7,880億円発行する。

<3>建設地方債(財源対策債)を7,900億円増発する。

(c)上記の結果、平成28年度の地方交付税については、16兆7,003億円(前年度比546億円、0.3%減)を確保する。

(d)交付税特別会計の借入金については、「特別会計に関する法律」(平成19年法律第23号)附則第4条第1項に基づき、4,000億円の償還を実施する。

c 地方債については、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方財源の不足に対処するための措置を講じ、また、地方団体が防災・減災対策、公共施設の老朽化対策及び地域の活性化への取組を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

この結果、地方債計画(通常収支分)の規模は、11兆2,082億円(普通会計分8兆8,607億円、公営企業会計等分2兆3,475億円)とする。

d 地域経済の基盤強化や雇用創出を図りつつ、地方創生の推進、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

(a)地方の重点課題に取り組むために必要な経費として、一般行政経費に新たに「重点課題対応分」を2,500億円計上することとしている。

(b)平成27年度に創設した「まち・ひと・しごと創生事業費」については、引き続き1兆円(前年度同額)計上することとしている。

(c)投資的経費に係る地方単独事業費については、公共施設等総合管理計画の策定団体数が増加していることなどを踏まえ、「公共施設等最適化事業費」を2,000億円(前年度比1,000億円増)に増額し、引き続き喫緊の課題である防災・減災対策に取り組めるよう「緊急防災・減災事業費」を5,000億円(前年度同額)確保することとし、全体で前年度に比し3.0%増額し、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

(d)消費税・地方消費税の引上げによる増収分等を活用した社会保障の充実として、子ども・子育て支援、医療・介護サービスの提供体制改革、医療・介護保険制度改革及び難病等に係る公平かつ安定的な制度の確立に係る措置を講じることとしており、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

(e)一般行政経費に係る地方単独事業費については、社会保障の充実分等を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

(f)消防力の充実、防災・減災対策等の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策を推進する。

(g)過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

e 地方公営企業の経営基盤の強化、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

f 地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減、事務事業の見直しや民間委託など引き続き行財政運営全般にわたる改革を推進する。

(イ)東日本大震災分

a 復旧・復興事業

(a)東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、直轄・補助事業に係る地方負担分等を措置するため、4,802億円を確保する。また、一般財源充当分として79億円を計上する。

(b)地方債については、復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

この結果、地方債計画(東日本大震災分)における復旧・復興事業の規模は、380億円(普通会計分331億円、公営企業会計等分49億円)とする。

(c)直轄事業負担金及び補助事業費、「地方自治法」(昭和22年法律第67号)に基づく職員の派遣、投資単独事業等の地方単独事業費及び「地方税法」(昭和25年法律第226号)等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出等について所要の事業費1兆7,799億円を計上する。

b 全国防災事業

全国防災事業については、地方税の臨時的な税制上の措置(平成25年度〜平成35年度)による地方税の収入見込額として720億円を計上するとともに、一般財源充当分として589億円を計上する。

以上のような方針に基づいて策定した平成28年度の地方財政計画の規模は、通常収支分は85兆7,593億円で、前年度と比べると4,883億円増加(0.6%増)となり、東日本大震災分は、復旧・復興事業が1兆7,799億円で、前年度と比べると2,261億円減少(11.3%減)、全国防災事業が1,310億円で、前年度と比べると3,595億円減少(73.3%減)となった。

通常収支分についてみると、歳入では、地方税は38兆7,022億円で、前年度と比べると1兆2,103億円増加(3.2%増)(道府県税6.1%増、市町村税0.8%増)、地方譲与税は2兆4,322億円で、前年度と比べると2,532億円減少(9.4%減)、地方特例交付金は1,233億円で、前年度と比べると44億円増加(3.7%増)、地方交付税は16兆7,003億円で、前年度と比べると546億円減少(0.3%減)、国庫支出金は13兆2,184億円で、前年度と比べると1,451億円増加(1.1%増)、地方債(普通会計分)は8兆8,607億円で、前年度と比べると6,402億円減少(6.7%減)となった。

歳出では、給与関係経費は20兆3,274億円で、前年度と比べると77億円減少(0.0%減)となった。なお、地方財政計画における職員数については、4,900人の純減としている。一般行政経費は35兆7,931億円で、前年度と比べると7,342億円増加(2.1%増)となり、このうち一般行政経費に係る地方単独事業費は14兆374億円で、前年度と比べると410億円増加(0.3%増)となった。公債費は12兆8,051億円で、前年度と比べると1,461億円減少(1.1%減)、投資的経費は11兆2,046億円で、前年度と比べると2,036億円増加(1.9%増)となった。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は5兆4,341億円で、前年度と比べると1,583億円増加(3.0%増)となった。

東日本大震災分(復旧・復興事業)についてみると、歳入では、震災復興特別交付税は4,802億円で、前年度と比べると1,096億円減少(18.6%減)、国庫支出金は1兆2,528億円で、前年度と比べると1,189億円減少(8.7%減)などとなった。歳出では、一般行政経費は5,464億円で、前年度と比べると259億円減少(4.5%減)、投資的経費は1兆2,024億円で、前年度と比べると1,850億円減少(13.3%減)などとなった。

東日本大震災分(全国防災事業)についてみると、歳入では、地方税は720億円で、前年度と比べると12億円増加(1.7%増)などとなった。歳出では、公債費は1,310億円で、前年度と比べると327億円増加(33.3%増)となった。

また、平成28年度の地方債計画の規模は、通常収支分が11兆2,082億円(普通会計分8兆8,607億円、公営企業会計等分2兆3,475億円)で、前年度と比べると7,160億円減少(6.0%減)となった。東日本大震災分は、復旧・復興事業が380億円(普通会計分331億円、公営企業会計等分49億円)で、前年度と比べると45億円減少(10.6%減)となり、全国防災事業は皆減(2,397億円減少)となった。

ウ 財政運営の経過

(ア)平成28年度補正予算(第1号)

平成28年度補正予算(第1号)は、平成28年5月13日に閣議決定、同日に第190回国会に提出され、5月17日に成立した。

この補正予算においては、歳出面では災害救助等関係経費780億円、熊本地震復旧等予備費7,000億円を追加計上するほか、既定経費の減額7,780億円の修正減少額が計上された。

(イ)平成28年度補正予算(第1号)に係る財政措置等

a 通常収支分

この補正予算により追加される熊本地震による災害への対応に伴う地方負担に対しては、以下のとおり財政措置を講じることとした。

(a)災害救助費

災害救助に要する経費の40%(地方負担額を限度)に対して、特別交付税措置を講じる。

(b)災害弔慰金

災害弔慰金に要する経費に対して、所要の特別交付税措置を講じる。

(c)災害援護貸付金

災害援護貸付金に要する経費に対して、資金手当として地方負担額の100%まで地方債(一般事業債)を充当できる。(協議等の事業区分及び同意等の基準については、通常の例による。)

b 東日本大震災分

地方負担は生じない。

(ウ)平成28年度補正予算(第1号)により創設された一般会計熊本地震復旧等予備費の使用に係る財政措置等

平成28年度補正予算(第1号)により創設された一般会計熊本地震復旧等予備費について、平成28年5月31日に1,023億円、6月14日に590億円、6月28日に210億円及び7月26日に654億円の使用を閣議決定した。

これらの使用においては、歳出の追加に伴う地方負担が生じることから、以下のとおり財政措置を講じることとした。

a 一般会計熊本地震復旧等予備費の使用により追加されることとなる投資的経費に係る地方負担額については、地方負担額の100%まで地方債を充当でき、後年度においてその元利償還金について以下のとおり地方交付税により措置する。

(a)災害復旧事業債

<a>補助災害復旧事業債

補助災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

<b>災害対策債

中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び災害廃棄物処理事業に係る災害対策債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

なお、災害対策債の発行要件を満たさない地方公共団体については、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び災害廃棄物処理事業に係る地方負担額の95%を特別交付税により措置する。

<c>一般単独災害復旧事業債

一般単独災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、地方公共団体の財政力に応じ、その47.5〜85.5%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(b)補正予算債

補正予算債の後年度における元利償還金については、その80%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

b 一般会計熊本地震復旧等予備費の使用により追加されることとなる地方債の対象とならない経費については、以下のとおり措置する。

(a)国宝重要文化財等保存整備事業

地方負担額の80%を特別交付税により措置する。

(b)被災農業者向け経営体育成支援事業

地方負担額の70%(施設の撤去に係るものについては80%)を特別交付税により措置する。

(エ)平成28年度補正予算(第2号)

平成28年度補正予算(第2号)は、平成28年8月24日に閣議決定、9月26日に第192回国会に提出され、10月11日に成立した。

この補正予算においては、歳出面で、「未来への投資を実現する経済対策」(平成28年8月2日閣議決定。以下「経済対策」という。)に沿って、一億総活躍社会の実現の加速7,119億円、21世紀型のインフラ整備1兆4,056億円、英国のEU離脱に伴う不安定性などのリスクへの対応並びに中小企業・小規模事業者及び地方の支援4,307億円、熊本地震や東日本大震災からの復興や安全・安心、防災対応の強化1兆4,389億円等を追加計上するほか、既定経費の減額4,175億円、熊本地震復旧等予備費の減額4,100億円の修正減少額が計上された。また、歳入面で、税外収入2,844億円、公債費2兆7,500億円、前年度剰余金受入2,525億円が追加計上された。

この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成28年度補正予算(第1号)による補正後予算に対し、3兆2,869億円増加し、100兆87億円となった。

(オ)平成28年度補正予算(第2号)に係る財政措置等

a 通常収支分

この補正予算においては、歳出の追加に伴う地方負担額が生じることからそれに対応するとともに、熊本地震による災害に係る復興基金の創設を支援するため、以下のとおり財政措置を講じることとした。

(a)追加の財政需要に係る財政措置

<a>この補正予算により平成28年度に追加されることとなる投資的経費に係る地方負担額については、その100%まで地方債を充当できることとし、以下に掲げるものを除き、後年度における元利償還金の50%を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、単位費用により措置する。

i 災害復旧事業債

(i)補助災害復旧事業債

補助災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(ii)災害対策債

中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び災害廃棄物処理事業に係る災害対策債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

なお、災害対策債の発行要件を満たさない地方公共団体については、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び災害廃棄物処理事業に係る地方負担額の95%を特別交付税により措置する。

(iii)一般単独災害復旧事業債

一般単独災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、地方公共団体の財政力に応じ、その47.5%〜85.5%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(iv)地方公営企業災害復旧事業債

地方公営企業災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、一般会計からの繰出額に応じ、その最大50%までを特別交付税により措置する。

ii 熊本地震による災害の復興事業に係る補正予算債

熊本地震による災害の復興事業に係る補正予算債の後年度における元利償還金については、その80%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

iii 公営企業債

当初における一般会計からの繰出額の一部に対する算定と同様の方式により措置する。

<b>この補正予算により平成28年度に追加されることとなる地方債の対象とならない経費については、地方財政計画に計上された追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応する。

(b)特別交付税の増額

熊本地震により被害を受けた地方公共団体が、地域の実情に応じて実施する様々な事業について、単年度予算の枠に縛られずに弾力的に対処できる資金として、復興基金の創設を支援するため、平成28年度分の地方交付税の総額に510億円を加算し、特例としてその全額を特別交付税とする措置を講じる。

b 東日本大震災分

この補正予算により平成28年度に追加されることとなる東日本大震災に係る復旧・復興事業に係る地方負担額については、平成28年度分の震災復興特別交付税の総額に165億円を加算したうえで措置する。

(カ)平成28年度補正予算(第3号)

平成28年度補正予算(第3号)は、平成28年12月22日に閣議決定、平成29年1月20日に第193回国会に提出され、1月31日に成立した。

この補正予算においては、歳出面で、災害対策費1,955億円、国際分担金及び拠出金等1,685億円、自衛隊の安定的な運用態勢の確保等1,706億円等を追加計上するほか、既定経費の減額4,164億円等の修正減少額が計上された。また、歳入面で、税収を1兆7,440億円減額計上する一方、税外収入1,047億円、公債費1兆8,526億円(建設公債1,014億円及び特例公債1兆7,512億円)が追加計上された。

この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成28年度補正予算(第2号)による補正後予算に対し、2,133億円増加し、100兆2,220億円となった。

(キ)平成28年度補正予算(第3号)に係る財政措置等

a 通常収支分

この補正予算においては、国税の減額補正に伴い地方交付税が減額されるとともに、歳出の追加に伴う地方負担の増加が生じることから、以下のとおり財政措置を講じることとした。

(a)地方交付税

この補正予算においては、平成28年度の国税の減収に伴い地方交付税が5,437億円の減額となったところであるが、これについては、平成28年度当初における地方財政対策に準じ、以下のとおり措置することとしており、この結果、平成28年度当初予算の地方交付税の総額が確保されるものである。

<a>地方交付税の減5,437億円については、全額を国の一般会計からの加算により措置する。

<b><a>の加算のうち2分の1の国負担分については臨時財政対策加算とし、2分の1の地方負担分については臨時財政対策債を発行することに代えて措置するものであることを踏まえ、後年度精算する。

(b)追加の財政需要

<a>この補正予算により平成28年度に追加されることとなる投資的経費に係る地方負担額については、その100%まで地方債を充当できることとし、以下に掲げるものを除き、後年度における元利償還金の50%を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、単位費用により措置する。

i 災害復旧事業債

(i)補助災害復旧事業債

補助災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(ii)災害対策債

中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び熊本地震による災害の災害廃棄物処理事業に係る災害対策債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

なお、災害対策債の発行要件を満たさない地方公共団体については、中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び熊本地震による災害の災害廃棄物処理事業に係る地方負担額の95%を特別交付税により措置する。

(iii)一般単独災害復旧事業債

一般単独災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、地方公共団体の財政力に応じ、その47.5%〜85.5%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(iv)地方公営企業災害復旧事業債

地方公営企業災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、一般会計からの繰出額に応じ、その最大50%までを特別交付税により措置する。

ii 熊本地震による災害の復興事業に係る補正予算債

熊本地震による災害の復興事業に係る補正予算債の後年度における元利償還金については、その80%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

<b>今回の補正予算により平成28年度に追加されることとなる地方債の対象とならない経費については、地方財政計画に計上された追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応する。

b 東日本大震災分

この補正予算においては、東日本大震災に係る復旧・復興事業費の減額に伴う地方負担の減により、平成28年度分の震災復興特別交付税の総額から213億円を減額する。

(ク)地方公務員の給与改定

平成28年の国家公務員の給与改定については、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」(平成28年10月14日閣議決定)において、その取扱いが決定されたが、地方公務員の給与改定については、「地方公務員法」(平成25年法律第261号)の趣旨に沿って適切に対応するとともに、その実施に当たっては、国における給与法の改正の措置を待って行うよう、「地方公務員の給与改定等に関する取扱いについて」(平成28年10月14日付け総務副大臣通知)で通知した。

なお、地方財政計画ベースの所要額は、1,370億円程度、一般財源ベースで1,200億円程度と見込まれたが、当該一般財源所要額については、地方財政計画上の追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応することとし、新たな財源措置は行わないこととした。

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