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平成30年版
地方財政白書
(平成28年度決算)

8 東日本大震災の影響

(1)普通会計

平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、死者19,575人、行方不明者2,577人(平成29年9月8日、総務省消防庁発表)、被害総額(推計)約16兆9千億円(平成23年6月24日、内閣府(防災担当)発表)にのぼる被害をもたらすとともに、全国的にも生産、消費、物流等の経済活動に大きな影響を与えた。

政府は、東日本大震災発生直後から、被災者の生活の支援や被災地の復旧・復興対策に当たってきており、平成28年度においても前年度に引き続き、被災地の地方公共団体を中心に復旧・復興事業など多額の東日本大震災関連経費が支出されたところであり、その状況は次のとおりである。

ア 東日本大震災分の歳入及び歳出の状況

(ア)歳入[資料編:第136表

東日本大震災分の歳入は3兆8,177億円で、繰入金の減少等により、前年度と比べると13.4%減となっている。これを団体種類別にみると、都道府県においては2兆4,849億円で、繰入金の減少等により前年度と比べると3.8%減となっており、市町村においては1兆7,031億円で、国庫支出金の減少等により前年度と比べると25.6%減となっている。

歳入の構成比は、国庫支出金が34.0%(前年度31.6%)、繰入金が26.3%(同28.3%)、一般財源が15.8%(同16.7%)、地方債が3.9%(同6.5%)等となっている。

国庫支出金は1兆2,965億円で、東日本大震災復興交付金の減少等により、前年度と比べると6.9%減となっている。

繰入金は1兆41億円で、東日本大震災復興関連基金からの繰入金の減少等により、前年度と比べると19.5%減となっている。

一般財源は6,022億円で、震災復興特別交付税の減少等により、前年度と比べると18.1%減となっている。

地方債は1,507億円で、全国防災事業債の廃止等により、前年度と比べると47.5%減となっている。

(イ)歳出[資料編:第137表第138表

東日本大震災分の歳出は3兆3,749億円で、普通建設事業費の減少等により、前年度と比べると12.0%減となっている。これを団体種類別にみると、都道府県においては2兆2,167億円で、補助費等の減少等により、前年度と比べると1.3%減となっており、市町村においては1兆5,284億円で、普通建設事業費の減少等により、前年度と比べると25.1%減となっている。

a 目的別歳出

目的別歳出の構成比は、土木費が27.8%(前年度24.7%)、民生費が22.0%(前年度16.0%)、災害復旧費が14.2%(同12.2%)、総務費が11.0%(同15.1%)等となっている。

土木費は9,394億円で、普通建設事業費の減少等により、前年度と比べると0.9%減となっている。

民生費は7,426億円で、除染関連基金への積立金の増加等により、前年度と比べると21.0%増となっている。

災害復旧費は4,789億円で、災害復旧事業費の増加等により、前年度と比べると2.5%増となっている。

総務費は3,700億円で、東日本大震災復興関連基金への積立金の減少等により、前年度と比べると36.0%減となっている。

b 性質別歳出

性質別歳出の構成比は、普通建設事業費が39.4%(前年度42.2%)、積立金が21.9%(同20.9%)、災害復旧事業費が14.2%(同12.2%)、物件費が10.1%(同10.3%)等となっている。

普通建設事業費は1兆3,289億円で、補助事業費の減少等により、前年度と比べると17.9%減となっている。

積立金は7,382億円で、東日本大震災復興関連基金への積立金の減少等により、前年度と比べると8.0%減となっている。

災害復旧事業費は4,788億円で、補助事業費の増加等により、前年度と比べると2.5%増となっている。

物件費は3,414億円で、除染関連事業費の減少等により、前年度と比べると13.9%減となっている。

イ 特定被災地方公共団体等における決算の状況[資料編:第139表

(ア)特定被災県

a 歳入

特定被災県(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号。以下「東日本大震災財特法」という。)第2条第2項に定める特定被災地方公共団体である県をいう。)9県の歳入総額は10兆6,893億円で、前年度と比べると1.5%減(全国では0.8%減)となっている。

このうち、通常収支分は8兆2,397億円で、前年度と比べると1.2%減(全国では0.7%減)、東日本大震災分は2兆4,496億円で、前年度と比べると2.3%減(同3.8%減)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が0.6%減(全国では0.5%増)、地方交付税が0.9%増(同2.3%増)、国庫支出金が8.0%増(同3.0%増)等となっている。

b 歳出

特定被災県の歳出総額は10兆2,278億円で、前年度と比べると1.2%減(全国では1.0%減)となっている。

このうち、通常収支分は8兆444億円で、前年度と比べると1.5%減(全国では1.0%減)、東日本大震災分は2兆1,834億円で、前年度と比べると0.1%増(同1.3%減)となっている。

なお、特定被災県の東日本大震災分の歳出は、全国の都道府県における東日本大震災分の歳出の98.5%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が東日本大震災復興関連基金への積立金の減少等により19.1%減(全国では15.2%減)、民生費が除染関連基金への積立金の増加等により8.9%増(同6.0%増)、災害復旧費が7.0%増(同12.6%増)等となっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、普通建設事業費が補助事業費の増加等により5.5%増(全国では5.5%増)、災害復旧事業費が7.0%増(同12.6%増)、積立金が2.0%増(同13.3%減)等となっている。

c 決算収支

特定被災県の実質収支は844億円の黒字で、前年度と比べると63億円減少(全国では1,868億円増加)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災県の地方債現在高は15兆9,929億円で、前年度末と比べると0.6%減(全国では0.5%減)となっている。債務負担行為額は1兆4,530億円で、前年度末と比べると6.6%減(同0.3%増)となっている。積立金現在高は1兆9,570億円で、前年度末と比べると4.0%減(同1.3%増)となっている。

(イ)特定被災市町村等

a 歳入

特定被災市町村等(「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令」(平成23年政令第127号)の別表第1に定める特定被災地方公共団体である市町村並びに同令の別表第2及び別表第3に定める市町村のうち特定被災地方公共団体以外のものをいう。)227市町村の歳入総額は7兆9,566億円で、前年度と比べると4.1%減(全国では0.6%減)となっている。

このうち、通常収支分は6兆3,989億円で、前年度と比べると1.4%増(全国では0.5%増)、東日本大震災分は1兆5,882億円で、前年度と比べると20.0%減(同25.6%減)となっている。

歳入総額の内訳を前年度と比べると、地方税が1.0%増(全国では1.0%増)、地方交付税が8.3%減(同4.2%減)、国庫支出金が6.0%減(同2.5%増)等となっている。

b 歳出

特定被災市町村等の歳出総額は7兆5,212億円で、前年度と比べると2.9%減(全国では0.1%減)となっている。

このうち、通常収支分は6兆1,373億円で、前年度と比べると2.2%増(全国では0.9%増)、東日本大震災分は1兆4,141億円で、前年度と比べると18.6%減(同25.1%減)となっている。

なお、特定被災市町村等の東日本大震災分の歳出は、全国の市町村における東日本大震災分の歳出の92.5%を占めている。

歳出総額の目的別の各費目を前年度と比べると、総務費が東日本大震災復興関連基金への積立金の減少等により8.4%減(全国では3.4%減)、民生費が1.8%増(同3.7%増)、災害復旧費が5.6%増(同8.4%増)等となっている。

歳出総額の性質別の各費目を前年度と比べると、普通建設事業費が補助事業費の減少等により6.2%減(全国では3.0%減)、災害復旧事業費が5.6%増(同8.4%増)、積立金が23.0%減(同10.7%減)等となっている。

c 決算収支

特定被災市町村等の実質収支は2,347億円の黒字で、前年度と比べると175億円減少(全国では1,887億円減少)している。

d 地方債現在高等の状況

特定被災市町村等の地方債現在高は6兆4,397億円で、前年度末と比べると0.8%増(全国では0.4%減)、債務負担行為額は1兆4,626億円で、前年度末と比べると17.2%減(同1.9%増)、積立金現在高は2兆7,234億円で、前年度末と比べると5.8%減(同1.3%増)となっている。

(2)公営企業会計

地方公営企業については、東日本大震災財特法第2条第2項に定める特定被災地方公共団体である9県及び東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律第二条第二項及び第三項の市町村を定める政令の別表第1に定める特定被災地方公共団体である178市町村(当該団体が加入する一部事務組合等を含む。以下「特定被災地方団体」という。)を対象として、東日本大震災の災害復旧事業に係る一般会計からの繰出基準の特例等を講じている。

特定被災地方団体における地方公営企業の決算状況は次のとおりである。

ア 特定被災地方団体における公営企業全体の経営状況[資料編:第140表

特定被災地方団体における法適用企業と法非適用企業(建設中のものを除く。)を合わせた収支の状況は、黒字事業が823事業(事業数全体の89.7%)で、前年度と比べると24事業減少(2.8%減)しており、黒字額は1,296億円で、前年度と比べると17億円減少(1.3%減)している。また、赤字事業は94事業(事業数全体の10.3%)で、前年度と比べると12事業増加(14.6%増)しており、赤字額は465億円で、前年度と比べると184億円増加(65.3%増)している。

特定被災地方団体における公営企業の総収支は831億円の黒字で、前年度と比べると200億円減少(19.4%減)している。

前年度に比べ収支が改善した事業は8事業あり、水道事業で60億円(対前年度比12.1%増)最も大きく改善し、次いで電気事業で8億円(同12.7%増)、観光施設事業で3億円(同94.6%増)改善している。一方、前年度に比べ収支が悪化した事業は7事業あり、宅地造成事業で109億円(対前年度比218.0%減)と最も大きく悪化し、次いで病院事業で79億円(同6419.3%減)、交通事業で52億円(同357.9%減)悪化している。

また、前年度に比べ黒字額が減少し、赤字額が増加した事業は4事業あり、宅地造成事業においては、黒字額が6億円減少、赤字額が103億円増加している。

イ 特定被災地方団体における公営企業の料金収入[資料編:第141表

料金収入は1兆686億円で、前年度と比べると331億円減少(3.0%減少)している。

前年度に比べ料金収入が増加した事業は9事業あり、宅地造成事業で112億円(対前年度比17.0%増)の増加と最も大きく、次いで交通事業で22億円(同11.2%増)、下水道事業で16億円(同1.2%増)増加している。一方、前年度に比べ料金収入が減少した事業は6事業あり、病院事業で417億円(対前年度比9.6%減)と最も大きく減少している。

ウ 特定被災地方団体における公営企業の他会計繰入金[資料編:第142表

他会計からの繰入金は3,945億円で、前年度と比べると375億円減少(8.7%減)している。

この内訳をみると、収益的収入として2,354億円、繰入率(収益的収入に対する繰入金の割合)14.7%、資本的収入として1,591億円、繰入率(資本的収入に対する繰入金の割合)29.4%となっており、前年度に比べ収益的収入への繰入れは86億円減少(3.5%減)し、資本的収入への繰入れは289億円減少(15.4%減)している。

前年度に比べ他会計繰入金が減少した事業は12事業あり、下水道事業で175億円(対前年度比8.0%減)と最も大きく減少し、次いで港湾整備事業で96億円(同64.6%減)減少している。一方、前年度に比べ他会計繰入金が増加した事業は3事業あり、観光施設事業で8億円(対前年度比82.9%増)と最も大きく増加している。

エ 特定被災地方団体における法適用企業の経営状況[資料編:第143表

特定被災地方団体における法適用企業の純損益の状況をみると、黒字事業は253事業(対前年度比3事業減少、1.2%減)で、建設中のものを除いた341事業の74.2%となっており、赤字事業は88事業(同13事業増加、17.3%増)で、同25.8%となっている。

総収益(経常収益+特別利益)は1兆2,711億円で、前年度と比べると230億円減少(1.8%減)、総費用(経常費用+特別損失)は1兆2,111億円で、前年度と比べると99億円減少(0.8%減)で、この結果、純損益は600億円の黒字となっており、前年度と比べると131億円減少(18.0%減)している。また、総収支比率は105.0%と前年度より1.0ポイント低下している。

なお、総収益に占める料金収入の割合は73.5%(前年度74.9%)と前年度と比べると1.4ポイント低下している。

経常損益(純損益―特別損益)の状況をみると、経常利益を生じた事業数は252事業(対前年度比1事業増加、0.4%増)で、経常損失を生じた事業数は89事業(同9事業増加、11.3%増)となっている。経常損失を生じた事業数の全体事業数(建設中のものを除く。)に占める割合は26.1%と前年度より1.9ポイント上昇しており、事業別にみると、交通事業、ガス事業、病院事業において上昇している。

経常収益(営業収益+営業外収益)は1兆2,510億円で、前年度と比べると277億円減少(2.2%減)しており、経常費用(営業費用+営業外費用)は1兆1,899億円で、前年度と比べると52億円減少(0.4%減)している。なお、経常損益は612億円の黒字で、前年度と比べると225億円減少(26.9%減)している。また、経常収支比率は105.1%と前年度より1.9ポイント低下している。

オ 特定被災地方団体における法非適用企業の経営状況[資料編:第144表

特定被災地方団体における法非適用企業全体の形式収支(歳入歳出差引額)は646億円の黒字であり、前年度と比べると124億円減少(16.1%減)している。また、この額から翌年度への繰越財源を控除した実質収支は231億円の黒字であり、前年度と比べると69億円減少(23.0%減)している。

実質収支で黒字を生じた事業は569事業で、全事業数(建設中のものを除く。)の98.8%、赤字を生じた事業は7事業で全事業数の1.2%となっている。黒字事業の実質黒字額は236億円で、前年度と比べると70億円減少(22.8%減)している。また、赤字事業の実質赤字額は6億円で、前年度と比べると1億円減少(11.3%減)しており、営業収益(受託工事収益を除く。)に対する実質赤字額(赤字比率)は0.3%(前年度同率)となっている。

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