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平成30年版
地方財政白書
(平成28年度決算)

第2部 平成29年度及び平成30年度の地方財政

1 平成29年度の地方財政

(1)平成29年度の経済見通しと国の予算

ア 経済見通しと経済財政運営の基本的態度

「平成29年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」は、平成28年12月20日閣議了解、平成29年1月20日閣議決定された。この中で、以下の平成28年度の経済動向、平成29年度の経済見通し及び平成29年度の経済財政運営の基本的態度が示された。

(ア)平成28年度の経済動向

平成28年度の我が国経済をみると、アベノミクスの取組の下、雇用・所得環境が改善し、緩やかな回復基調が続いている。ただし、年度前半には海外経済で弱さがみられたほか、国内経済についても、個人消費及び民間設備投資は、所得、収益の伸びと比べ力強さを欠いた状況となっている。

政府は、デフレから完全に脱却し、しっかりと成長していく道筋をつけるため、「未来への投資を実現する経済対策」(平成28年8月2日閣議決定。以下「経済対策」という。)を取りまとめた。雇用・所得環境の改善が続く中、経済対策等の効果もあって、景気は緩やかに回復していくことが見込まれる。

物価の動向をみると、これまでの原油価格の下落の影響等により前年比で伸びが低下している。

この結果、平成28年度の実質国内総生産(実質GDP)成長率は1.3%程度、名目国内総生産(名目GDP)成長率は1.5%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は0.0%程度になると見込まれる。

(イ)平成29年度の経済見通し

平成29年度の我が国経済は、経済対策など、「平成29年度の経済財政運営の基本的態度」に示された政策の推進等により、雇用・所得環境が引き続き改善し、経済の好循環が進展する中で、民需を中心とした景気回復が見込まれる。

物価については、景気回復により、需給が引き締まっていく中で上昇し、デフレ脱却に向け前進が見込まれる。

この結果、平成29年度の実質GDP成長率は1.5%程度、名目GDP成長率は2.5%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は1.1%程度の上昇と見込まれる。

なお、先行きのリスクとしては、海外経済の不確実性、金融資本市場の変動の影響等に留意する必要がある。

(ウ)平成29年度の経済財政運営の基本的態度

今後の経済財政運営に当たっては、引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本とし、名目GDP600兆円経済の実現と平成32年度(2020年度)の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指す。

経済対策の円滑かつ着実な実施により、内需を下支えするとともに、民需主導の持続的な経済成長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく。

一億総活躍社会の実現に向け、アベノミクス「新・三本の矢」に沿った施策を実施する。「戦後最大の名目GDP600兆円」に向けては、地方創生、国土強靱化、女性の活躍も含め、あらゆる政策を総動員することにより、デフレ脱却を確実なものとしつつ、経済の好循環をより確かなものとする。また、未来への投資の拡大に向けた成長戦略を推進するため、「日本再興戦略2016」(平成28年6月2日閣議決定)を着実に実施する。「希望出生率1.8」及び「介護離職ゼロ」に向けては、子育て・介護の環境整備等の取組を進め、国民一人ひとりの希望の実現を支え、将来不安を払拭し、少子高齢化社会を乗り越えるための潜在成長率を向上させる。

財政健全化については、「基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」及び「経済・財政再生アクション・プログラム2016」(平成28年12月21日経済財政諮問会議決定)に則って、これまでの歳出改革の取組を強化していく。平成29年度は、「経済・財政再生計画」の2年目に当たり、同計画に掲げる歳出改革等を着実に実行する。

日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する。

イ 国の予算

政府は、「平成29年度予算編成の基本方針」(平成28年11月29日閣議決定)及び「平成29年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」に基づいて平成28年12月22日、平成29年度予算政府案を閣議決定した。

平成29年度予算は、「平成29年度予算編成の基本方針」の次のような基本的考え方により編成された。

(ア)平成29年度予算の基本的な考え方

a 安倍内閣は、長く続いたデフレからの脱却を目指し、経済の再生を最優先課題と位置付け、アベノミクス「三本の矢」を推進してきた。平成27年10月からはアベノミクスの第2ステージに移り、一億総活躍社会の実現を目指し、「三本の矢」を強化して「新・三本の矢」(戦後最大の名目GDP600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロ)を放ち、少子高齢化という構造問題に正面から立ち向かい、成長と分配の好循環の実現に向け取り組んでいる。

b これまでのアベノミクスによる施策の実施により、政権発足前に比べ、GDPは名目、実質ともに増加しており、就業者数の増加、賃上げなど、雇用・所得環境は着実に改善し、経済の好循環が生まれている。

c 他方、経済の先行きについては、海外経済の不確実性や、金融資本市場の変動の影響等に留意する必要がある。あわせて、アベノミクスの成果を十分に実感できていない地域の隅々までその効果を波及させ、生まれはじめた好循環を腰折れさせることのないように、施策を実施していく必要がある。

d 政府は、引き続き、「経済再生なくして財政健全化なし」を基本とし、600兆円経済の実現と平成32年度(2020年度)の財政健全化目標の達成の双方の実現を目指す。

e 誰もが生きがいを持って充実した生活を送ることができる一億総活躍社会の実現に向け、アベノミクス「新・三本の矢」に沿った施策を推進する。

第一の矢である「戦後最大の名目GDP600兆円」に向けては、地方創生、国土強靱化、女性の活躍も含め、あらゆる政策を総動員することにより、デフレ脱却を確実なものとしつつ、経済の好循環をより確かなものとする。第二の矢である「希望出生率1.8」、第三の矢である「介護離職ゼロ」に向けては、子育て・介護の環境整備等の取組を進め、国民一人ひとりの希望の実現を支え、将来不安を払拭し、少子高齢化社会を乗り越えるための潜在成長率を向上させる。

f 「新・三本の矢」はそれぞれ相互に密接に関連しており、それらを一体的に推進することで、成長と分配の好循環を確立し、日本経済全体の持続的拡大均衡を目指す。

g 我が国財政は、国・地方の債務残高がGDPの2倍程度に膨らみ、なおも更なる累増が見込まれ、また、国債費が毎年度の一般会計歳出総額の2割以上を占めるなど、引き続き、厳しい状況にある。政府は、「基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」及び「経済・財政再生計画改革工程表」(平成27年12月24日経済財政諮問会議。以下「改革工程表」という。)に則って、これまでの歳出改革の取組を強化していく。

(イ)平成29年度予算の編成についての考え方

a 平成29年度予算編成に向けては、これまでにも増して、構造改革は無論として、金融政策に成長指向の財政政策をうまく組み合わせることに留意する必要がある。

財政健全化への着実な取組を進める一方、上記の基本的考え方に沿って、一億総活躍社会の実現のための子育て・介護や成長戦略の鍵となる研究開発など重要な政策課題について、必要な予算措置を講じるなど、メリハリの効いた予算編成を目指す。

b 一億総活躍社会は、実現段階に入る。誰もが自分の夢を追求できる、誰もが自分の能力を伸ばしていく、誰にも居場所があって頑張っていける、そういう気持ちになれる日本を創りあげるため、アベノミクス「新・三本の矢」に沿って、その取組を加速する。

また、東日本大震災、熊本地震をはじめ、各地の災害からの復興や防災対応の強化を着実に進める。

c 平成29年度予算は、「経済・財政再生計画」の2年目に当たり、同計画に掲げる歳出改革等を着実に実行する。改革工程表を十分踏まえて歳出改革を着実に推進するとの基本的考え方に立ち、その取組を的確に予算に反映する。

また、予算編成に当たっては、我が国財政の厳しい状況を踏まえ、引き続き歳出全般にわたり、聖域なき徹底した見直しを推進する。地方においても、国の取組と基調を合わせ徹底した見直しを進める。

d 歳出改革は、経済再生と財政健全化に資するよう、ワイズスペンディングの考え方に立って、「公的サービスの産業化」、「インセンティブ改革」、IT化などの「公共サービスのイノベーション」という3つの取組を中心に着実に推進する。引き続き、行政事業レビュー等を通じて各府省の取組を後押しするとともに、「見える化」の徹底・拡大に取り組む。また、PDCAサイクルの実効性を高めるため、点検、評価自体の質を高める取組が重要であり、指標や分析のオープンデータ化を積極的に進めるとともに、政策効果の測定につながる統計等の充実や早期公表に努める。経済・財政一体改革推進委員会においては、改革工程表に沿った諸改革の進捗状況を検証する。

このような方針に基づいて編成された平成29年度の一般会計予算案の規模は97兆4,547億円で、前年度当初予算と比べると7,329億円増加(0.8%増)となっており、基礎的財政収支対象経費は73兆9,262億円で、前年度当初予算と比べると8,165億円増加(1.1%増)となった。

また、東日本大震災復興特別会計の予算規模は2兆6,896億円で、前年度当初予算(3兆2,469億円)と比べると5,573億円減少(17.2%減)となった。

財政投融資計画の規模は15兆1,282億円で、前年度計画額と比べると1兆6,471億円増加(12.2%増)となった。

なお、平成29年度当初予算案は、平成29年1月20日に国会に提出され、3月27日に成立した。

(2)地方財政計画

平成29年度においては、通常収支分について、極めて厳しい地方財政の現状及び現下の経済情勢等を踏まえ、歳出面においては、一億総活躍社会の実現や地方創生、公共施設等の適正管理に対応するために必要な経費を計上するとともに、社会保障関係費の増加を適切に反映した計上を行う一方、国の取組と基調を合わせた歳出改革を行うこととした。また、歳入面においては、「基本方針2015」で示された「経済・財政再生計画」を踏まえ、交付団体をはじめ地方の安定的な財政運営に必要となる地方の一般財源総額について、平成28年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保することを基本として、引き続き生ずることとなった大幅な財源不足について、地方財政の運営上支障が生じないよう適切な補填措置を講じることとした。

また、東日本大震災分については、復旧・復興事業及び全国防災事業について、通常収支とはそれぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとした。

なお、地方財政審議会からは、平成28年5月13日に「地域社会の持続・発展に向けた地方税財政改革についての意見」(以下「平成28年5月地財審意見」という。)及び平成28年12月14日に「今後目指すべき地方財政の姿と平成29年度の地方財政への対応についての意見」(以下「平成28年12月地財審意見(地方財政関係)」という。)(附属資料参照)が述べられた。

以上を踏まえ、次の方針に基づき平成29年度地方団体の歳入歳出総額の見込額を策定した。

ア 通常収支分

(ア)地方税制については、平成29年度地方税制改正では、我が国経済の成長力の底上げのため、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から、個人住民税における配偶者控除・配偶者特別控除の見直しのための税制上の措置を講ずることとしている。また、自動車取得税におけるエコカー減税等の見直しや居住用超高層建築物に係る固定資産税等の新たな税額算定方法の導入などの措置を講ずることとしている。

(イ)地方財源不足見込額については、地方財政の運営に支障が生じることのないよう、次の措置を講じることとし、所要の法律改正を行う。

a 地方交付税法第6条の3第2項に基づく制度改正として、平成29年度から平成31年度までの間は、平成28年度までと同様、財源不足が建設地方債(財源対策債)の増発等によってもなお残る場合には、この残余を国と地方が折半して補填することとし、国負担分については、国の一般会計からの加算により、地方負担分については、地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)により補填措置を講じる。臨時財政対策債の元利償還金相当額については、その全額を後年度地方交付税の基準財政需要額に算入する。

b 交付税特別会計の借入金については、平成29年度から平成31年度までは各年度4,000億円を償還、平成32年度から平成36年度までは償還額を1,000億円ずつ増額し、平成37年度から平成64年度までは各年度1兆円を基本に償還するよう、償還計画の見直しを実施する。

c これらに基づき、平成29年度の財源不足見込額6兆9,710億円については、次により補填する。

(a)地方交付税については、国の一般会計加算により1兆2,958億円(うち地方交付税法附則第4条の2第2項の加算額3,807億円、平成22年12月22日付け総務・財務両大臣覚書第3項(2)及び平成28年12月19日付け総務・財務両大臣覚書第8項に定める平成29年度における「乖離是正分加算額」2,500億円並びに臨時財政対策特例加算額6,651億円)増額する。

また、交付税特別会計借入金の償還5,000億円のうち1,000億円を後年度へ繰り延べ、交付税特別会計剰余金3,400億円を活用するとともに、地方公共団体金融機構法附則第14条の規定により財政投融資特別会計に帰属させる地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金4,000億円を財政投融資特別会計から交付税特別会計に繰り入れる。

(b)地方財政法第5条の特例となる地方債(臨時財政対策債)を4兆452億円発行する。

(c)建設地方債(財源対策債)を7,900億円増発する。

d 上記の結果、平成29年度の地方交付税については、16兆3,298億円(前年度比3,705億円、2.2%減)を確保する。

(ウ)地方債については、引き続き厳しい地方財政の状況の下で、地方財源の不足に対処するための措置を講じ、また、地方団体が公共施設等の適正管理、防災・減災対策及び地域の活性化への取組を着実に推進できるよう、所要の地方債資金を確保する。

この結果、地方債計画(通常収支分)の規模は、11兆6,257億円(普通会計分9兆1,907億円、公営企業会計等分2兆4,350億円)とする。

(エ)地域経済の基盤強化や雇用創出を図りつつ、一億総活躍社会の実現、地方創生の推進、個性と活力ある地域社会の構築、住民に身近な社会資本の整備、災害に強い安心安全なまちづくり、総合的な地域福祉施策の充実、農山漁村地域の活性化等を図ることとし、財源の重点的配分を行う。

a 一億総活躍社会の実現に向け、保育士や介護人材等の処遇改善等の措置を講じることとし、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

b 「まち・ひと・しごと創生事業費」については、引き続き1兆円(前年度同額)計上する。

c 投資的経費に係る地方単独事業費については、公共施設等の集約化・複合化、老朽化対策等を推進し、その適正配置を図るため、平成27年度及び平成28年度に計上した「公共施設等最適化事業費」を拡充し、新たに「公共施設等適正管理推進事業費」として3,500億円計上するとともに、引き続き喫緊の課題である防災・減災対策に取り組めるよう「緊急防災・減災事業費」を5,000億円(前年度同額)確保することとし、全体で前年度に比し3.6%増額し、引き続き、地域の自立や活性化につながる基盤整備を重点的・効率的に推進する。

d 「重点課題対応分」については、引き続き2,500億円(前年度同額)計上する。

e 社会保障・税一体改革による「社会保障の充実」として、子ども・子育て支援、医療・介護サービスの提供体制改革、医療・介護保険制度改革等に係る措置を講じることとし、当該措置に係る地方負担について所要の財政措置を講じる。

f 一般行政経費に係る地方単独事業費については、社会保障の充実分等を適切に反映した計上を行うことにより、財源の重点的配分を図るとともに、地域において必要な行政課題に対して適切に対処する。

g 消防力の充実、防災・減災対策等の推進及び治安維持対策等住民生活の安心安全を確保するための施策に対し所要の財政措置を講じる。

h 過疎地域の自立促進のための施策等に対し所要の財政措置を講じる。

(オ)地方公営企業の経営基盤の強化を図るとともに、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図るため、経費負担区分等に基づき、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととする。

(カ)地方行財政運営の合理化を図ることとし、職員数の純減、事務事業の見直しや民間委託など引き続き行財政運営全般にわたる改革を推進する。

イ 東日本大震災分

(ア)復旧・復興事業

a 東日本大震災に係る復旧・復興事業等の実施のための特別の財政需要等を考慮して交付することとしている震災復興特別交付税については、直轄・補助事業に係る地方負担分等を措置するため、4,503億円を確保する。また、一般財源充当分として77億円を計上する。

b 地方債については、復旧・復興事業を円滑に推進できるよう、所要額についてその全額を公的資金で確保する。

この結果、地方債計画(東日本大震災分)における復旧・復興事業の規模は、188億円(普通会計分161億円、公営企業会計等分27億円)とする。

c 直轄事業負担金及び補助事業費、地方自治法に基づく職員の派遣、投資単独事業等の地方単独事業費並びに地方税法等に基づく特例措置分等の地方税等の減収分見合い歳出等について所要の事業費1兆2,842億円を計上する。

(イ)全国防災事業

全国防災事業については、地方税の臨時的な税制上の措置(平成25年度〜平成35年度)による地方税の収入見込額として720億円を計上するとともに、一般財源充当分として225億円を計上する。

以上のような方針に基づいて策定した平成29年度の地方財政計画の規模は、通常収支分は86兆6,198億円で、前年度と比べると8,605億円増加(1.0%増)となり、東日本大震災分は、復旧・復興事業が1兆2,842億円で、前年度と比べると4,957億円減少(27.8%減)、全国防災事業が946億円で、前年度と比べると364億円減少(27.8%減)となった。

通常収支分についてみると、歳入では、地方税は39兆663億円で、前年度と比べると3,641億円増加(0.9%増)(道府県税0.4%減、市町村税2.1%増)、地方譲与税は2兆5,364億円で、前年度と比べると1,042億円増加(4.3%増)、地方特例交付金は1,328億円で、前年度と比べると95億円増加(7.7%増)、地方交付税は16兆3,298億円で、前年度と比べると3,705億円減少(2.2%減)、国庫支出金は13兆5,386億円で、前年度と比べると3,202億円増加(2.4%増)、地方債(普通会計分)は9兆1,907億円で、前年度と比べると3,300億円増加(3.7%増)となった。

歳出では、給与関係経費は20兆3,209億円で、前年度と比べると65億円減少(0.0%減)となった。なお、地方財政計画における職員数については、2,900人の純減としている。一般行政経費は36兆5,590億円で、前年度と比べると7,659億円増加(2.1%増)となり、このうち一般行政経費にかかる地方単独事業費は14兆213億円で、前年度と比べると161億円減少(0.1%減)となった。公債費は12兆5,902億円で、前年度と比べると2,149億円減少(1.7%減)、投資的経費は11兆3,570億円で、前年度と比べると1,524億円増加(1.4%増)となった。なお、投資的経費に係る地方単独事業費は5兆6,297億円で、前年度と比べると1,956億円増加(3.6%増)となった。

東日本大震災分(復旧・復興事業)についてみると、歳入では、震災復興特別交付税は4,503億円で、前年度と比べると299億円減少(6.2%減)、国庫支出金は8,059億円で、前年度と比べると4,469億円減少(35.7%減)などとなった。歳出では、一般行政経費は4,200億円で、前年度と比べると1,264億円減少(23.1%減)、投資的経費は8,341億円で、前年度と比べると3,683億円減少(30.6%減)などとなった。

東日本大震災分(全国防災事業)についてみると、歳入では地方税は720億円で、前年度と比べると0億円増加(0.0%増)などとなった。歳出では公債費は946億円で、前年度と比べると364億円減少(27.8%減)となった。

また、平成29年度の地方債計画の規模は、通常収支分が11兆6,257億円(普通会計分9兆1,907億円、公営企業会計等分2兆4,350億円)で、前年度と比べると4,175億円増加(3.7%増)となった。東日本大震災分は、復旧・復興事業が188億円(普通会計分161億円、公営企業会計等分27億円)で、前年度と比べると192億円減少(50.5%減)となった。

(3)平成29年度補正予算

ア 平成29年度補正予算(第1号)

平成29年度補正予算(第1号)は、平成29年12月22日に閣議決定、平成30年1月22日に第196回国会に提出され、2月1日に成立した。

この補正予算においては、歳出面で、生産性革命・人づくり革命4,822億円、災害復旧等・防災・減災事業1兆2,567億円、総合的なTPP等関連政策大綱実現に向けた施策3.465億円等を追加計上するほか、既定経費の減額1兆2,416億円の修正減少額等が計上された。また、歳入面で、公債金(建設公債)1兆1,848億円、税外収入956億円、前年度剰余金受入3,743億円が追加計上された。

この結果、一般会計予算の規模は、歳入歳出とも平成29年度当初予算に対し、1兆6,548億円増加し、99兆1,095億円となった。

イ 平成29年度補正予算(第1号)に係る財政措置等

(ア)通常収支分

この補正予算においては、歳出の追加に伴う地方負担の増加が生じることから、以下のとおり財政措置を講じることとした。

a 今回の補正予算により平成29年度に追加されることとなる投資的経費に係る地方負担額等については、原則として、その100%まで地方債を充当できることとし、以下に掲げるものを除き、後年度における元利償還金の50%を公債費方式により基準財政需要額に算入し、残余については、単位費用により措置する。

(a)災害復旧事業債

i 補助災害復旧事業債

補助災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

ii 災害対策債

(i)熊本地震による災害に係る事業

中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業及び災害廃棄物処理事業に係る災害対策債の後年度における元利償還金については、その95%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

なお、災害対策債の発行要件を満たさない地方公共団体については、地方負担額の95%を特別交付税により措置する。

(ii)上記(i)以外の事業

災害対策債の後年度における元利償還金については、その57%を特別交付税により措置する。

iii 一般単独災害復旧事業債

一般単独災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、地方公共団体の財政力に応じ、その47.5%〜85.5%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

iv 地方公営企業災害復旧事業債

地方公営企業災害復旧事業債の後年度における元利償還金については、一般会計からの繰出額に応じ、その最大50%までを特別交付税により措置する。

(b)熊本地震による災害の復興事業に係る補正予算債

熊本地震による災害の復興事業に係る補正予算債の後年度における元利償還金については、その80%を公債費方式により基準財政需要額に算入する。

(c)公営企業債

当初における一般会計からの繰出額の一部に対する算定と同様の方式により措置する。

b この補正予算により平成29年度に追加されることとなる地方債の対象とならない経費については、地方財政計画に計上された追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応する。

(イ)東日本大震災分

この補正予算においては、地方負担の追加は生じない。

ウ 地方公務員の給与改定

平成29年の国家公務員の給与改定については、国の給与関係法の公布及び施行(平成29年12月15日)に伴い、その取扱いが決定されるとともに、国家公務員の退職手当の引下げについては、国の退職手当関係法の公布(平成29年12月15日)及び施行(平成30年1月1日)に伴い、その取扱いが決定されたが、それらについて適切に対応するよう「地方公務員の給与改定等に関する取扱いについて(平成29年11月17日付け総務副大臣通知)」で通知した。

なお、当該給与改定に係る一般財源所要額については、地方財政計画上の追加財政需要額(4,200億円)の一部により対応することとした。

(4)地方公共団体の予算

平成29年度の地方公共団体の普通会計予算の総額(都道府県及び市町村(一部事務組合等を除く。)の単純合計)は、前年度と比べると当初予算では0.3%減、9月補正後予算では1.8%減となっている。

主な内訳をみると、歳入では、

  • 地方税が当初予算、9月補正後予算ともに0.8%減
  • 地方譲与税が当初予算、9月補正後予算ともに2.7%増
  • 地方交付税が当初予算では1.7%減、9月補正後予算では2.0%減
  • 国庫支出金が当初予算では1.9%減、9月補正後予算では6.8%減
  • 地方債が当初予算では1.1%増、9月補正後予算では1.7%減

となっている。一方、歳出では、

  • 人件費が当初予算、9月補正後予算ともに0.3%減
  • 扶助費が当初予算では2.1%増、9月補正後予算では2.0%増
  • 普通建設事業費が当初予算では4.3%減、9月補正後予算では7.4%減

となっている。

詳細は第51表のとおりとなっている。

(5)地方公営企業等に関する財政措置

ア 地方公営企業

(ア)通常収支分

地方公営企業については、経営基盤の強化を図るとともに、上・下水道、交通、病院等住民生活に密接に関連した社会資本の整備の推進、公立病院における医療の提供体制の整備をはじめとする社会経済情勢の変化に対応した事業の展開等を図る必要がある。

このため、平成29年度においては、次のような措置を講じることとした。

公営企業会計と一般会計との間における経費負担区分の原則等に基づく公営企業繰出金については、地方財政計画において2兆5,256億円(前年度2兆5,143億円)を計上する。

地方公営企業の建設改良等に要する地方債については、地方債計画において公営企業会計等分2兆4,350億円(前年度2兆3,475億円)を計上する。

各事業における地方財政措置のうち主なものは以下のとおりである。

a 簡易水道事業及び下水道事業(流域下水道、小規模集合排水処理施設及び個別排水処理施設に係るものに限る。)については、前年度に引き続き、事業年度における一般会計からの繰出しに代えて、臨時的に公営企業債(臨時措置分)を措置することとし、当該臨時措置分に係る公営企業債の元利償還金については、その全額(流域下水道のうち地方単独事業に係るものを除く。)を後年度において基準財政需要額に算入する。

b 公営企業をめぐる経営環境が厳しさを増す中で、計画的かつ合理的な経営を行うことにより収支の改善等を通じた経営基盤の強化等を図るため、経営戦略の策定に要する経費について、所要の地方交付税措置を講じる。特に、持続可能なサービス提供を実現していくためには、地方公共団体の枠組みを超えた取組が有効であることから、水道事業における広域化等に係る調査・検討に要する経費について重点的に支援する。

併せて、地方公共団体における専門的知識・ノウハウを有する外部人材を積極的に活用するため、引き続き公営企業の経営支援に係る地方交付税措置を講じる。

なお、水道事業における高料金対策及び下水道事業における高資本費対策に係る地方交付税措置については、経営戦略を策定していることを対象要件に加える。

c 水道事業については、簡易水道事業の統合推進に要する経費について、引き続き地方交付税措置を講じる。

また、統合後の上水道事業における経営基盤の強化等を図るため、国庫補助(簡易水道再編推進事業)の対象となった統合後に実施する建設改良事業について、過疎団体及び辺地を有する団体に対する措置を拡充して引き続き地方財政措置を講じる。

d 病院事業については、「新公立病院改革ガイドライン」(平成27年3月総務省自治財政局長通知)を踏まえ、平成28年度中に策定する新公立病院改革プランに基づき、その着実な実施を推進するため、再編・ネットワーク化に伴い必要となる施設・設備の整備費等について地方財政措置を講じるほか、不採算医療・特殊医療等に対しても地方交付税措置を講じる。

(イ)東日本大震災分

地方公営企業に係る復旧・復興事業については、一般会計から公営企業会計への繰出基準の特例を設け、一般会計から公営企業会計に対し所要の繰出しを行うこととし、当該繰出金に対しては、その全額(復興事業のうち東日本大震災復興交付金(効果促進事業)は95%)を震災復興特別交付税により措置することとしており、地方財政計画において162億円を計上する。また、復旧・復興事業に係る地方債については、地方債計画において公営企業会計等分27億円を計上する。

イ 国民健康保険事業

国民健康保険事業の厳しい財政状況に配意し、国民健康保険に対して、財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア)都道府県が、地域の実情に応じて、都道府県内の市町村間の医療費水準等の不均衡の調整及び市町村国保財政の共同事業拡大の円滑な推進など地域の特別事情への対応のため交付する都道府県調整交付金(給付費等の9%分)については、その所要額(6,593億円)について地方交付税措置を講じる。

(イ)国保被保険者の保険料負担の緩和を図る観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が保険料軽減相当額に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用に対し、都道府県が一部(都道府県3/4、市町村1/4)を負担することとし、その所要額(4,592億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)低所得者を多く抱える保険者を支援する観点から、市町村(一部事務組合等を除く。)が低所得者数に応じて、一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れを行う際に、当該費用(2,629億円)に対し、国及び都道府県が一部(国1/2、都道府県1/4、市町村1/4)を負担することとし、地方負担(1,314億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)高額医療費共同事業(3,389億円)については、市町村国保の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、市町村国保1/2)を負担することとし、地方負担(847億円)について地方交付税措置を講じる。

(オ)国保財政安定化支援事業については、国保財政の健全化に向けた市町村一般会計から国民健康保険特別会計への繰入れについて、所要の地方交付税措置(1,000億円)を講じる。

(カ)国民生活の質の維持・向上を確保しつつ、医療費の適正化を図ることを目的として、40歳から74歳までの国保被保険者に対して糖尿病等の予防に着目した健診及び保健指導を行うため、特定健康診査・保健指導事業(517億円)に対して、国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、市町村国保1/3)を負担することとし、地方負担(172億円)について地方交付税措置を講じる。

ウ 後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度については、実施主体である広域連合の財政基盤の強化のための支援措置を次のとおり講じることとした。

(ア)保険料軽減制度については、低所得者に対する配慮として、後期高齢者の被保険者の保険料負担の緩和を図る(均等割2割・5割・7割軽減)とともに、被用者保険の被扶養者であった被保険者(以下「元被扶養者」という。)の保険料軽減を行う(均等割5割軽減)ため、都道府県及び市町村が負担(都道府県3/4、市町村1/4)することとし、その所要額(2,883億円)について地方交付税措置を講じる。

なお、「今後の社会保障改革の実施について」(平成28年12月22日社会保障制度改革推進本部決定)により、低所得者に対する所得割の軽減特例措置について、平成29年4月に2割軽減とし、平成30年4月に廃止(低所得者に対する均等割の軽減特例措置については継続)するとともに、元被扶養者に対する均等割の軽減特例措置について、平成29年4月に7割軽減、平成30年4月に5割軽減とし、平成31年4月に廃止することとされている。

また、70歳から74歳までの窓口負担軽減措置については、平成26年度から新たに70歳になる者から段階的に法定の負担割合(2割)に見直すこととされており、所要額が平成29年度予算に計上されている。

(イ)高額医療費負担金(3,094億円)については、広域連合の拠出金に対し、国及び都道府県が一部(国1/4、都道府県1/4、広域連合1/2)を負担することとし、地方負担(774億円)について地方交付税措置を講じる。

(ウ)財政安定化基金については、保険料未納や給付増リスク等による後期高齢者医療広域連合の財政影響に対応するため、都道府県に基金を設置しその拠出金(189億円)に対して国及び都道府県が一部(国1/3、都道府県1/3、広域連合1/3)を負担することとし、地方負担(63億円)について地方交付税措置を講じる。

(エ)実施主体である広域連合に対する市町村分担金、市町村の事務経費及び都道府県の後期高齢者医療審査会関係経費等について所要の地方交付税措置を講じる。

(6)個別団体における財政健全化

地方公共団体の財政状況は、法人関係二税や固定資産税の増等による地方税の増加の一方で、社会福祉費等の扶助費の増加や補助費等の増加により、平成28年度決算における経常収支比率は前年度(91.7%)と比べて1.7ポイント上昇の93.4%となったほか、借入金残高も累積していること等により、依然として厳しい状況となっている。

各地方公共団体においては、このような状況を踏まえて、地方税等の徴収対策、使用料・手数料の適正化、未利用財産の売払いなどの歳入確保や、事務事業の見直し、組織・機構の簡素効率化、外郭団体の統廃合等、定員管理・給与の適正化、民間委託等の推進、他の地方公共団体との連携、公共施設の最適化などの自主的な行財政改革に取り組んでいる。

各地方公共団体における財政の健全化は一定の推進が見られ、平成28年度決算に基づく健全化判断比率による早期健全化基準以上の団体は、財政再生団体の北海道夕張市のみとなっている。北海道夕張市では、市民生活に直結したサービスを維持しながら、早期の財政の再生に向けた最大限の取組を行っており、固定資産税・軽自動車税の税率の引上げや各種使用料・手数料の引上げなど、住民負担の増加を伴う取組等による徹底した歳入確保と、職員数の削減や職員給与の見直しなど、行政のスリム化等による徹底した歳出削減により、財政状況の改善を図っている。なお、夕張市については、財政再生計画期間終了後も持続的に存立・発展していけるよう引き続き財政の再生に努めつつ、地域の再生との両立を目指す取組を行うための内容を盛り込んだ財政再生計画の見直しを行い、当該見直しに対し平成29年3月に総務大臣が同意を行ったところであり、当該計画に基づき財政再生と地域再生に取り組むこととしている。

また、平成28年度決算における資金不足比率が経営健全化基準以上の公営企業は9会計であるが、これらの公営企業では定期的な料金改定の実施等により収入増加を図るとともに、職員数の削減や維持管理経費の削減等により積極的な支出の削減を図っているほか、収益の増加や経費の節減等により資金不足額の減少を図ることとしている。

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