画像に関するアクセシビリティ対応について
図やグラフなどの画像の内容の詳細については、総務省自治財政局財務調査課にお問い合わせください。
電話番号:03-5253-5111(内線5649)

平成30年版
地方財政白書
(平成28年度決算)

5 財政マネジメントの強化

(1)地方公会計の整備と活用の促進

地方公会計は、現金主義会計による予算・決算制度を補完するものとして、発生主義・複式簿記といった企業会計的手法を活用することにより、現金主義会計では見えにくいコスト情報やストック情報を把握することを可能とするものであり、中長期的な財政運営への活用が期待できるものである。人口減少・少子高齢化が進展している中、財政のマネジメント強化のため、地方公会計を予算編成等に積極的に活用し、地方公共団体の限られた財源を「賢く使う」取組を行うことは極めて重要である。

地方公会計の整備については、「統一的な基準による地方公会計の整備促進について」(平成27年1月23日付け総務大臣通知)において、当該基準による財務書類等を、原則として平成27年度から29年度までの3年間で全ての地方公共団体において作成するよう要請したところであり(第132図)、平成29年3月31日時点における財務書類等の作成状況は、第54表のとおり、都道府県及び市区町村の98.8%に当たる1,767団体が平成29年度までに一般会計等財務書類の作成を完了する予定となっている。

第132図 統一的な基準による地方公会計の整備促進について

平成29年度中にほぼ全ての地方公共団体で財務書類等を整備されることから、これからの地方公会計は財務書類等を分かりやすく公表するとともに、事業別・施設別のセグメント分析を行い、資産管理、予算編成や行政評価等に積極的に活用していくことが重要である。

平成29年3月31日時点における財務書類の活用状況については、第55表のとおり、財政指標の設定・公表や簡易に要約した財務書類の作成等については比較的多くの地方公共団体が取り組んでいるが、事業別・施設別のセグメント分析や将来の施設更新必要額の推計等について、活用を更に進めることが求められる。

地方公共団体において財務書類等の活用が更に進むよう、「統一的な基準による地方公会計マニュアル」の充実を図るほか、平成30年度においても引き続き、地方公会計に関し、地方公共団体における人材育成等を支援することとしている。

(2)地方財政の「見える化」の推進

地方財政の「見える化」については、「地方財政白書」や「決算状況調」、「財政状況資料集」等により積極的な情報開示が行われてきた。

平成27年度決算からは、「財政状況資料集」において、住民一人当たりのコストについて性質別や目的別で網羅的に公表するとともに、有形固定資産減価償却率などのストックに関する情報についても、固定資産台帳の整備に合わせて、27年度決算から順次充実を図り、経年比較や類似団体比較を行うことができるようにしたところである。

地方公共団体においては、住民等に対する説明責任をより適切に果たし、財政マネジメントの強化を図る観点から、「財政状況資料集」等の活用による住民等へのより分かりやすい財政情報の開示に取り組むとともに、地方公会計の整備により得られるストック情報や基金の考え方・増減の理由・今後の方針等の基金の積立状況等を含め、公表内容の充実を図っていくことが求められる。

地方単独事業(ソフト)の決算情報については、平成28年度決算において地方公共団体間の重複部分を控除した決算額(純計額)を把握・公表しているが、30年度においては、「経済財政運営と改革の基本方針2017」(平成29年6月9日閣議決定。以下「基本方針2017」という。)を踏まえ、より詳細な把握・分析方法と「見える化」の推進方法について検討することとしている。

(3)地方公営企業等の経営改革

公営企業は、料金収入をもって経営を行う独立採算制を基本原則としながら、住民生活に身近な社会資本を整備し、必要なサービスを提供する役割を果たしている。水道・下水道をはじめとして施設の老朽化に伴う更新需要が増大する中で、各公営企業が将来にわたって上記の役割を果たしていくためには、サービスの提供に必要な施設等について、その老朽化・劣化の状況や使用可能年数等について分析し、住民サービスの維持・将来の需要に対して必要な水準を検討した上で、計画的な維持・更新のための投資を行うことが求められる。同時に、人口減少等に伴う料金収入の減少などの地方公営企業を取り巻く厳しい経営環境を踏まえ、経営基盤の強化と財政マネジメントの向上を図ることも必要である。これらの課題に対応するため、事業廃止、民営化、広域化等及び民間活用といった抜本的な改革の検討並びに経営戦略の策定を推進するとともに、公営企業会計の適用拡大や経営比較分析表の活用等による公営企業の「見える化」を推進している。こうした一連の取組は、「経済・財政再生計画 改革工程表2017改定版」(平成29年12月21日経済財政諮問会議決定)にも位置付けられている。

ア 抜本的な改革の検討の推進

事業廃止、民営化、広域化等及び民間活用といった抜本的な改革の検討の推進については、「公営企業の経営のあり方に関する研究会」の報告書(平成29年3月22日)が取りまとめられ、各事業における改革の方向性や留意点、改革の検討に資する経営指標等について、考え方が示された。また、抜本的な改革の取組状況や課題等について最新の状況を調査し、結果を公表するとともに、その結果等を踏まえ、各公営企業における抜本的な改革の検討に資するよう、「公営企業の抜本的な改革等に係る先進・優良事例集」を作成・公表し(平成29年3月31日)、その活用を推進している。

抜本的な改革の推進に当たり、水道事業及び下水道事業については、報告書における留意点等を踏まえ、事業統合や施設・管理の共同化といった広域化等を推進するとともに、公共施設等運営権制度(いわゆるコンセッション方式)を含むPPP/PFI手法の導入や民間委託の拡充など更なる民間活用を推進することとしている。特に、水道事業の広域化等については、「市町村等の水道事業の広域連携に関する検討体制の構築等について」(平成28年2月29日付け総務省自治財政局公営企業課長・公営企業経営室長通知)を踏まえ、各都道府県における広域化等の検討体制を活用し、先進的な取組を行っている他の都道府県の検討状況を参考にしつつ、できる限り平成30年度までを目途に検討し、その結果の公表を行うよう要請している。下水道事業の広域化等については、「汚水処理の事業運営に係る「広域化・共同化計画」の策定について」(平成30年1月17日付け総務省自治財政局準公営企業室長等通知)を踏まえ、平成30年度中の可能な限り早期に「広域化・共同化計画」の検討体制を構築し、平成34年度までに計画を策定するよう各地方公共団体に要請している。また、病院事業については、「新公立病院改革ガイドライン」を踏まえ、病院事業を設置する地方公共団体において策定した新公立病院改革プランに基づき、地域医療構想の実現に向けた取組と整合を図りながら、再編・ネットワーク化、地方独立行政法人化や指定管理者制度の導入を含む経営形態の見直し、経営の効率化等を推進している。

イ 経営戦略策定の推進

経営戦略策定の推進については、平成32年度までに経営戦略を策定するよう平成28年1月に各地方公共団体に要請しており、平成29年3月31日時点での策定状況調査を実施した。調査結果によれば、第56表のとおり「策定済」の事業の割合は全体の43.1%となっている。調査結果については、全都道府県・市町村の事業別の策定状況を含め、総務省HPにおいて公表している。

地方公共団体に向けた支援策としては、「経営戦略策定ガイドライン」(平成28年1月公表。平成29年3月改訂)を取りまとめるとともに、総務省が委嘱した公認会計士等の専門家を経営アドバイザーとして派遣する「地方公営企業等経営アドバイザー派遣事業」や、総務省でリスト化した専門的知識・ノウハウを有する人材から地方公共団体が指導・助言を受けるための費用に対して地方財政措置を講じる「公営企業経営支援人材ネット事業」などを実施している。引き続き、こうした支援策の周知・活用を図ることで、経営戦略の策定を促進することとしている。

ウ 公営企業の経営状況の「見える化」の推進

公営企業の経営状況の「見える化」の推進については、平成26年に会計制度の全面的な見直しを行ったほか、公営企業会計の適用拡大や経営比較分析表の活用の推進等に取り組んでいる。

各公営企業が経営基盤の強化等により的確に取り組むためには、公営企業会計を適用し、貸借対照表や損益計算書等の財務諸表や固定資産台帳の作成等を行うとともに、経営比較分析表を活用することによって、各公営企業が自らの経営状況を的確に把握し、経営に活かすことが重要である。

(ア)公営企業会計の適用拡大

公営企業会計の適用拡大については、「公営企業会計の適用の推進について」(平成27年1月27日付け総務大臣通知)、「公営企業会計の適用の推進に当たっての留意事項について」(平成27年1月27日付け総務省自治財政局長通知)等を踏まえ、平成31年度までの集中取組期間において、下水道事業及び簡易水道事業を重点事業として公営企業会計への移行に適切に取り組むよう要請している。

平成29年4月時点における全都道府県・市町村等の個々の団体における公営企業会計適用の取組状況を調査した結果、第57表のとおり、人口3万人以上の団体のうち、「適用済」及び「適用に取組中」の団体の割合が、下水道事業(公共下水道及び流域下水道に限る。)で98.8%、簡易水道事業で92.6%となっており、平成28年4月時点と比較して取組が進捗している。引き続き、各地方公共団体における取組状況のフォローアップや、地方公営企業等経営アドバイザー派遣事業等を活用し、公営企業会計の適用拡大の取組を促進することとしている。

(イ)経営比較分析表の活用

平成28年2月に水道事業及び下水道事業の経営比較分析表の作成・公表を開始し、抜本的な改革の検討や経営戦略の策定への活用を促進している。また、前述「公営企業の経営のあり方に関する研究会」の報告書において、経営比較分析表の作成・公表対象事業の追加について考え方が示されたことを踏まえ、平成29年9月からバス事業及び電気事業について経営比較分析表の作成・公表を行っている。今後、新たに病院事業、観光施設(休養宿泊施設)事業及び駐車場整備事業を作成・公表対象事業とすることとしている。

エ 第三セクター等の経営改革の推進

各地方公共団体においては、財政規律の強化と財政的リスク管理の一環として、関係を有する第三セクター等について、自らの判断と責任により経営効率化・健全化に取り組むことが必要である。

総務省では、平成28年度決算における地方公共団体が出資・出捐をしている第三セクター等7,372法人のうち、地方公共団体が実際に損失補償などを行っている1,133法人について財政的リスクの調査を実施し、地方公共団体別に、調査対象法人全ての結果を公表したところである。

調査対象法人のうち、債務超過の法人は126法人、土地開発公社で債務保証などの対象となっている5年以上の長期保有土地が標準財政規模の10%以上のものは47法人である。また、地方公共団体の標準財政規模に対する損失補償などの額の割合が実質赤字比率の早期健全化基準相当以上の法人は60法人、経常赤字又は当期正味財産額が減少している法人は392法人である。

こうした状況を踏まえ、相当程度の財政的なリスクが存在する第三セクター等と関係を有する地方公共団体において、「第三セクター等の経営健全化方針の策定について」(平成30年2月20日付け総務省自治財政局公営企業課長通知)により、財政的なリスクの計画的な解消に向けて、抜本的改革を含む経営健全化のための具体的な対応等を内容とする経営健全化のための方針を策定・公表するよう要請したところである。

また、第三セクター等改革などの先進事例集を平成29年3月に公表し、全国に横展開している。先進事例集には、整理・再生等の抜本的改革や損失補償の削減、債務超過の解消などの経営健全化の取組事例について、取組の背景・要因、取組内容、検討過程、効果額や他団体の参考となる点等が盛り込まれている。

ページトップへ戻る